【文徒】2018年(平成30)12月5日(第6巻228号・通巻1402号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】増刷するごとに内容が変わる百田尚樹「日本国紀」
2)【記事】「高知 蔦屋書店」が12月3日オープン
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】
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1)【記事】増刷するごとに内容が変わる百田尚樹「日本国紀」

百田尚樹のベストセラー「日本国紀」について、作家の中沢けい次のようにツイートしている。
百田尚樹『日本国紀』は増刷のたびに内容に改変を加えているそうだけど。昔の活版印刷だったら、とっくに経費で会社がおかしくなっている。40年前、写植印刷の芸誌なんて信用できないって言われた。その頃、写植を使っていた芸誌は『群像』だけ。あとは活版印刷。本物の活字だと版そのものを作りなお(さ)なければならない事態が生じる場合もある。経費増大。電算写植からDTPへ。それだけ印刷にかかる費用も手間も安価になった。今頃になって『写植の印刷なんて信用できない』って言われた理由が分かった気がして苦笑。こんな事態を考えていたわけではないだろうけど」
https://twitter.com/kei_nakazawa/status/1069794217180848128
https://twitter.com/kei_nakazawa/status/1069795270810947584
例えば「ろだん」なる人物が主宰するブログ「論壇net」は「日本国紀」について言及したエントリを次々に公開している。
「【朗報】『日本国紀』、こっそり「男系」の誤りを認め修正」によれば初版では「日本には過去八人(十代)の女性天皇がいたが、全員が男系である。つまり父親が天皇である」とっていた表記が第4版では「日本には過去八人(十代)女性天皇がいたが、すべて男系である。つまり父親を辿ると必ず天皇に行き着く」と改められていたわけだが、「ろだん」によれば、この変更は百田が「公式に『男系』の定義が間違っていたことを認めたということ」になる。
https://rondan.net/5090
「論壇net」の「【速報】『日本国紀』、無断転載箇所を第5刷にて大幅改竄」は、次のように指摘している。
「まず、『日本国紀』(p. 53)にある仁徳天皇の逸話が、大阪新聞に掲載された真木嘉裕氏の意訳からの無断転載・改変であると報告されていました。本箇所について第5刷では、真木嘉裕氏の意訳を参照した旨が追記されました」
「またフランシスコ・ザビエルと、ルイス・フロイスを混同している箇所があり、加えて、その箇所も先行する日本語訳から無断転載している状態でした(pp. 149-150)。この箇所に至っては2ページにわたり大幅に書き改められました」
「ろだん」は版元たる幻冬舎の責任にも言及している。
「しかし幻冬舎の対応は極めて不誠実です。発売後わずか二週間(第1刷:2018.11.10、第5刷:2018.11.28)ほどで内容が改竄され、しかも現在書店では改竄前の第1刷から、改竄後の第5刷まで並んでいる状態です。通常ならば第1刷から第4刷までは回収・交換・返金するのが筋ではないでしょうか? 以上の件について幻冬舎は未だ沈黙を守っており、倫理的に問題があると考えます」
https://rondan.net/5459
「ろだん」は「【続報】『日本国紀』、第5刷で次々と改竄【ゴールデンブック、コミソテルソ】」では、こう指摘している。
「『日本国紀』第1刷(p. 379)の「ゴールデンブック」に関する記述が第5刷でごっそり改変されています。
この第1刷にある『ユダヤ人脱出に尽力した、樋口季一郎・安江仙弘・杉原千畝三者の名前がゴールデンブックなる記念碑に刻まれている』という記述が、これがWikipediaを中心に保守ブログなどで喧騒されてるだけのデマ情報であることは、刊行後かなり早い段階で指摘されていました。この指摘を受けての修正だと考えられますが、第一発見者であるHiroshi Matsuura氏への謝辞は『日本国紀』のどこを見ても確認されません」
https://rondan.net/5529
「ろだん」は追及の手を緩めない。「【悲報】『日本国紀』、第5刷でこっそり改竄するも、かえって重大なミスを犯してしまう」では、こう書いている。
百田尚樹『日本国紀』は、内容の錯誤のみならず、Wikipediaなどからの無断転載箇所が多数見つかり『日本コピペ紀』『日本ウィ紀』と揶揄されたり、こっそり重刷時に「改版」の指示なく内容まで書き換えてしまったりとお騒がせが続いています。
今回紹介したいのは、第5刷の時に書き替えられた『ゴールデンブック』の箇所が、かえって重大なミスを犯しているという指摘です
https://rondan.net/5628
更に「ろだん」は「【日本コピペ紀】長岡京Wikipediaコピペ疑惑」や「『日本国紀』、第5刷で慌てて改竄するも資料を熟読しなかったため再修正が必要に。第6刷以降で再び改竄か?【フランシスコ・ザビエル】」をエントリしている。
https://rondan.net/5657
https://rondan.net/5672
編集者兼ライターの「Yukinobu Muromachi」も版元の責任が問われていると考えているのだろう。
「これはヒドイ…。機械翻訳と批判されたアインシュタインの伝記本だって、出版社は自主回収して、訂正本を送ってきたぞ。幻冬舎がいかにダメな出版社か、よくわかる」
https://twitter.com/y_muromachi/status/1069216567534075905
能川元一のツイート。
「ちなみに『日本国紀』のような本に欠けているのも、歴史を構造的に把握するという姿勢。右派の歴史本が往々にして(特に人物に焦点を当てた)トリビア集みたいになるのはそのためだと思う」
https://twitter.com/nogawam/status/1069511634828189697
早川タダノリもツイートしていた。
「増刷で誤植の訂正にとどまらず内容を変えてしまうとは、『日本国紀』の『ウィ紀』化は本当だったとしか。今後同書から引用する際には、論中の出典URLを表記するときの『最終アクセス*年*月*日』みたいに、『最終アクセス第*刷』って入れるしかないじゃん」
https://twitter.com/hayakawa2600/status/1069164957567053825
当然、編集者にも責任があるはずだ。「日本国紀」の編集を担当としたのは有本香である。こんツイートも投稿されていた。
「有本さん、朝日新聞の”誤報・訂正ページの検索回避タグに関するお詫び記事”に対しては『この記事で納得しますか?』だの『単なる誤報の後処理と軽く見ないでください』だの啖呵切っといて、ご自分が関わった日本国紀の間違いに関しては、購入者に知らせもせず”こっそり”修正してても平気なんですねぇ」
https://twitter.com/ryuryukyu/status/1068361086204698624
作家の津原泰水も呟く。
「謝らずにこっそり直し続けるって業界初かも」
https://twitter.com/tsuharayasumi/status/1068466396277858304
五月書房新社の編集委員会委員長にして元朝日新聞記者の佐藤章のツイートである。
「価格をつけて出版市場に流れる『書籍』ー幻冬舎の『日本国紀』の帯に『私たちは何者なのか』とある。答えを与えよう。剽窃者、盗作者あるいは恥知らずである。無知なネトウヨならいざ知らず出版界にいる限り最低限やってはいけないことは知っていよう。最低線の責任は果たせ」
https://twitter.com/bSM2TC2coIKWrlM/status/1069539257767718912

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2)【記事】「高知 蔦屋書店」が12月3日オープン

「高知 蔦屋書店」が12月3日、高知市南御座の卸団地内にオープンした。蔦屋書店が四国に初出店となったわけである。倉庫をリノベーションしてのオープンだ。高知新聞は書いている。CDやDVDなどのレンタルは扱わない。
「『食と暮らしの市場』がテーマの1階(店舗面積2235平方メートル)は書店のほか、飲食店を中心に雑貨や美容関連などの専門店約20店が並ぶ。本や食を自由に楽しめる座席も多く設けられている。
2階(810平方メートル)は書籍・具コーナー。3階(1090平方メートル)は児童書を扱い、天候を気にせずに子どもが遊べる県内最大級のキッズスペース(有料)や、子育て支援センターを構える」
https://www.kochinews.co.jp/article/236168/
「職人のこだわりから 日常が楽しくなる市場」がコンセプトである。書店だが利益はスターバックスをはじめとした飲食や雑貨で利益をあげるというアプローチである。誤解を恐れずに言うと、出版物は「コマセ」なのである。
https://www.ryutsuu.biz/store/k120323.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000690.000018760.html
一階に入る店舗は「スターバックス コーヒー」、カフェレストラン「イソップの台所」、美容室「Haulea by RT」、コスメ「ナチュラルケア HIGAKI」、コーヒー豆、ワイン、チーズ、スパイスなど輸入食材「カルディコーヒーファーム」、服飾・生活雑貨・食物販「MARU雑貨」、フラワー・グリーン「UN DEUX PLANTS」、アクセサリー「OSEWAYA」、ジェラートVita」、バームクーヘン「フリンデン」、フレッシュジュース・デリ「マルゴデリ」、カレー・アジア料理「スパイスカリー大陸」、シュークリーム「ベイクドマジック」、ラーメン・ホルモン「まんしゅう」、お茶・スイーツ「CHA CAFE ASUNARO」、肉バル「RAKUDA NIKU BARU JAPAN」、イタリアンレストラン「Pizzeria ORTO」、ハンバーガーレストラン「デュロックマン56」。
一階の蔦屋書店では美味しい店を巡り、食べ歩く・ママが元気になる家・いつまでも元気で美しく、この3つのテーマを軸に日々の暮らしが楽しくなる本屋を目指すという。
https://store.tsite.jp/kochi/floor/1f.html
https://store.tsite.jp/kochi/floor/2f.html
https://store.tsite.jp/kochi/floor/3f.html
「沢渡茶カフェが「高知 蔦屋書店」に出店 12/3オープン」も高知新聞の記事である。
高知県吾川郡仁淀川町の沢渡集落で作られる茶や茶製品の生産販売を行う企業『ビバ沢渡』(仁淀川町別枝)が、12月3日にオープンする高知市の『高知 蔦屋書店』にカフェを出店する。高知市初出店で、県都での地元茶と町のPRを目指す」
https://www.kochinews.co.jp/article/236329/?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=tw-lp2018
「元高知県須崎市地域おこし協力隊・30代独身女子のブログ」が「【高知市のショップ】12月3日オープン!四国初の蔦屋書店レポート」をエントリしている。「UN DEUX PLANTS」や「Haulea by RT」についてはレポートしてくれているのだが、肝心の書店部分についてのレポートはないといって良いだろう。
http://blog.livedoor.jp/susaki14/archives/1073107883.html
早急に対策すべき課題もあるようだ。こんなツイートを発見した。
「高知 蔦屋書店、私が危ないと指摘していた駐車場後ろの低いバー部分には赤い三角コーンがずらっと並べられていました。今朝はこの三角コーンがなくて、このバーにつまづいて転倒している人がいました。ちょっとした設計ミスですね」
https://twitter.com/IYOTA2101/status/1069611490938806273
いずれにしても「街のTSUTAYA」をどんどん閉店し、こういう蔦屋書店を次々にオープンしていくことになるのだろう。蔦屋書店の本質は出版物が売れなくても利益を上げられる不動産ビジネスである。やがて、映画館も併設することになるのではないか。

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3)【本日の一行情報】

◎学研プラスは「大人の科学マガジン」で、過去の人気号を復刻する「BEST SELECTION」シリーズを立ち上げる。復刻第一弾となるのは、過去に2度商品化され、累計60万部のヒットとなった「ピンホール式プラネタリウム」。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1812/02/news009.html

◎「春オンライン」が「週刊春エンタ!」編集部による「『サザエさん』スポンサー問題 東芝撤退、Amazon参入で一話が短くなった!?」を掲載している。
http://bunshun.jp/articles/-/9829
11月29日に発売となった「週刊春エンタ!」はローソン限定商品である。
https://www.lawson.co.jp/lab/entertainment/art/1352992_5839.html

小学館Sho-Comi」にて連載されていた杉山美和子の「4月の君、スピカ。」が実写映画化されることになった。
http://www3.cinematopics.com/archives/99548

◎NHKの情報バラエティー番組「チコちゃんに叱られる!」(金曜後7:57、再放送土曜前8:15)が来年1月15日発売の「月刊コロコロコミック」(小学館)2月号からコミカライズ連載されることになった。
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2018/12/02/kiji/20181202s00041000270000c.html

小学館の国語辞典「大辞泉」が今年の新語を発表!大賞は【空白恐怖症】。次点は【卒婚】と【ご飯論法】。
https://japan.cnet.com/release/30284117/
オレなんか間違いなく【空白恐怖症】である。

◎日販が展開する、本のある空間づくりや選書などを行うブランド「YOURS BOOK STORE」(ユアーズブックストア)は、山口県で書店を営む榮堂と山口大学経済学部の学生27名とともに、「榮堂×山口大学 地方創生プロジェクト2018」を2018年10月より実施している。このプロジェクトにおいて学生が企画したアイデアの実証実験を、2018年12月2日(日)より榮堂の店頭で実施する。
https://www.nippan.co.jp/news/buneido_yamaguchidaigaku_20181130/

◎日販グループ会社のリブロプラスは、12月14日(金)、あゆみBOOKS早稲田店を「禄堂早稲田店」と改め、リニューアルオープンする。普段は可動式の本棚を設置し、庫売場として使用し、イベント時には本棚を移動することで、着席30名程度のイベントスペースとなる「Table Talk Waseda」が目玉となるようだ。リニューアルをプロデュースするのは「YOURS BOOK STORE」。
https://www.nippan.co.jp/news/bunrokudowaseda_20181203/
品揃えが「あゆみBOOKS早稲田店」時代よりも劣化しないことを祈るばかりである。日販は「Table Talk Waseda」とか「YOURS BOOK STORE」とか英語を駆使するのがお好きなようだが、書店の基本は日本語で書かれた本を売ることなんだけれど。私は、このホームページに流れる空気に馴染めない。・・・書店に欠かせない泥臭さを捨象してしまっているんだよね。
https://yoursbookstore.jp/about/

トーハンは、恒例となっている「冬に贈る絵本フェア『雪帯』」を12月上旬より全国約400書店で開催している。
http://www.tohan.jp/news/20181203_1320.html

◎米ディズニーはストリーミングサービス「Disney+」をスタートさせる。Netflixと激突することになる。
https://wired.jp/2018/12/03/disney-streaming-service/

◎「2018ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に平昌五輪で銅メダル獲得のカーリング女子日本代表チームが使用した言葉「そだねー」が選ばれた。
https://www.asahi.com/articles/ASLD34FTDLD3UCVL011.html

◎5年ぶりとなる原画展「進撃の巨人展 final」が来年夏、森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)で開催されることになった。
https://coconutsjapan.com/entertainment/shingeki-original-exhibition/10118/

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4)【深夜の誌人語録】

義は正しさとは別物である。