【文徒】2018年(平成30)12月4日(第6巻227号・通巻1401号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】取次店による2018年間ベストセラーが発表された
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
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1)【記事】取次店による2018年間ベストセラーが発表された

日販が「2018年間ベストセラー」を発表した。総合で第1位となったのは累計発行部数204万部の「漫画 君たちはどう生きるか」(羽賀翔一画、マガジンハウス)。2位はお笑いコンビ「カラテカ」の矢部太郎のエッセー漫画「大家さんと僕」(新潮社)。3位は「ざんねんないきもの事典」(高橋書店。4位「モデルが秘密にしたがる体幹リセットダイエット」(サンマーク出版)、5位「医者が教える食事術 最強の教科書」(ダイヤモンド社)、6位「続 ざんねんないきもの事典」(高橋書店)、7位「頭に来てもアホとは戦うな!」(朝日新聞出版)、8位「ゼロトレ」(サンマーク出版)、9位「君たちはどう生きるか(新装版)」(マガジンハウス)、10位「信仰の法」(幸福の科学出版)。
特筆すべきは総合ベスト10にフィクションは1点も入っていないことである。私がこの10冊のうちで読んでいるのは2冊だけである。「漫画 君たちはどう生きるか」と「大家さんと僕」だ。活字版「君たちはどう生きるか」は岩波で読んでいる。所詮、そういう類のベスト10であり、そういう類の本を売ることに寄りかかった経営では書店は潰れてしまうのではないだろうか。そういう類の本を業界では「売れ筋」と呼んできたわけだけれど。
https://www.nippan.co.jp/ranking/annual/
単行本フィクションの第1位は辻村深月かがみの孤城」(ポプラ社)。「かがみの孤独」は総合では13位にとどまる。2位は若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」(河出書房新社)、3位は川口俊和「コーヒーが冷めないうちに」(サンマーク出版)、4位は住野よる「青くて痛くて脆い」(KADOKAWA)、5位池井戸潤下町ロケット ゴースト」(小学館)。6位「屍人荘の殺人」(今村昌弘 東京創元社)、7位「オーバーロード(13)」(丸山くがね KADOKAWA)、8位「下町ロケット ヤタガラス」(池井戸潤 小学館)、9位「沈黙のパレード」(東野圭吾 藝春秋)、10位「俺、つしま」(おぷうのきょうだい 小学館)。
芸出版の新潮社が1点もランクインしていないのである。小学館が3点もランクインさせている。
https://www.nippan.co.jp/ranking/annual/index.php?ranking_title=2018%E5%B9%B4%E9%96%93%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%BC%EF%BC%88%E9%9B%86%E8%A8%88%E6%9C%9F%E9%96%93%EF%BC%9A2017.11.26%EF%BD%9E2018.11.24%EF%BC%89&cid=19
単行本ビジネスの第1位は斉藤孝の「大人の語彙力ノート」(SBクリエイティブ)、第2位は落合陽一+堀江貴の「10年後の仕事図鑑」(SBクリエイティブ)、第3位は「1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365」(響社)、第4位は佐藤航陽の「お金2.0」(幻冬舎)、第5位は伊藤羊一の「1分で話せ」(SBクリエイティブ)。
6位「嫌われる勇気 自己啓発の源流『アドラー』の教え」(ダイヤモンド社)、7位「スタンフォード式 疲れない体」(サンマーク出版)、8位「AI vs.教科書が読めない子どもたち」(東洋経済新報社)、9位「学びを結果に変えるアウトプット大全」(サンクチュアリ出版)、10位「SHOE DOG 靴にすべてを。」(東洋経済新報社)。
ベスト5の3点をSBクリエイティブが占めている!
https://www.nippan.co.jp/ranking/annual/index.php?ranking_title=2018%E5%B9%B4%E9%96%93%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%BC%EF%BC%88%E9%9B%86%E8%A8%88%E6%9C%9F%E9%96%93%EF%BC%9A2017.11.26%EF%BD%9E2018.11.24%EF%BC%89&cid=22
庫は1位「ラプラスの魔女」(東野圭吾 角川庫)、2位「人魚の眠る家」(東野圭吾 幻冬舎庫)、3位「羊と鋼の森」(宮下奈都 庫)、4位「ユートピア」(湊かなえ 集英社庫)、5位「君の膵臓をたべたい」(住野よる 双葉庫)、6位「コンビニ人間」(村田沙耶香 庫)、7位「日日是好日」(森下典子 新潮庫)、8位「祈りの幕が下りる時」(東野圭吾 講談社庫)、9位「木洩れ日に泳ぐ魚」(恩田陸 庫)、10位「億男」(川村元気 庫)。新潮庫が一点しかランクインしていない!
https://www.nippan.co.jp/ranking/annual/index.php?ranking_title=2018%E5%B9%B4%E9%96%93%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%BC%EF%BC%88%E9%9B%86%E8%A8%88%E6%9C%9F%E9%96%93%EF%BC%9A2017.11.26%EF%BD%9E2018.11.24%EF%BC%89&cid=26
新書ノンフィクションの第1位は「極上の孤独」(下重暁子 幻冬舎新書)、第2位は「日本史の内幕」(磯田道史 中公新書)、第3位は「未来の年表」(河合雅司 講談社現代新書)、第4位は「妻に捧げた1778話」(眉村卓 新潮新書)、第5位は「友だち幻想」(菅野仁 ちくまプリマー新書)。6位「不死身の特攻兵」(鴻上尚史 講談社現代新書)、7位「未来の年表(2)」(河合雅司 講談社現代新書)、8位「孤独のすすめ」(五木寛之 中公新書ラクレ)、9位「昭和の怪物 七つの謎」(保阪正康 講談社現代新書)、10位「自分のことだけ考える。」(堀江貴 ポプラ新書)。
講談社現代新書がベスト10に何と4点もランクインさせている。中公も健闘していると言って良いだろう。旧「御三家」では岩波新書が1点もランクインしていない。
https://www.nippan.co.jp/ranking/annual/index.php?ranking_title=2018%E5%B9%B4%E9%96%93%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%BC%EF%BC%88%E9%9B%86%E8%A8%88%E6%9C%9F%E9%96%93%EF%BC%9A2017.11.26%EF%BD%9E2018.11.24%EF%BC%89&cid=24
コミックのベストテンは講談社の「進撃の巨人」が3点ランクインしているが、他の7点は総て集英社の作品である。
https://www.nippan.co.jp/ranking/annual/index.php?ranking_title=2018%E5%B9%B4%E9%96%93%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%BC%EF%BC%88%E9%9B%86%E8%A8%88%E6%9C%9F%E9%96%93%EF%BC%9A2017.11.26%EF%BD%9E2018.11.24%EF%BC%89&cid=27
トーハンも年間ベストセラーを発表している。総合のベスト10は第1位は日販と同じく、「漫画 君たちはどう生きるか」(羽賀翔一画、マガジンハウス)。2位は日販では4位だった「モデルが秘密にしたがる体幹リセットダイエット」(サンマーク出版)。3位は「大家さんと僕」(新潮社)、4位は「ざんねんないきもの事典」「続ざんねんないきもの事典」「続々ざんねんないきもの事典」(高橋書店)という三点の合わせ技。5位「信仰の法」(幸福の科学出版)、6位「新・人間革命 (30)(上)」(聖教新聞社)、7位「医者が教える食事術 最強の教科書」、8位「ゼロトレ」(サンマーク出版)、9位「君たちはどう生きるか(新装版)」(マガジンハウス)、10位「頭に来てもアホとは戦うな!」(朝日新聞出版)。
http://www.tohan.jp/bestsellers/upload_pdf/20181130bestseller_2018y.pdf

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2)【本日の一行情報】

◎2018年「農村と読書」(第73回全国農村読書調査)の結果がまとまった。
「年齢別の総合読書率はトップが10代で61%、次いで40代の60%、50代の59%。職業別では学生がトップで61%、次いで自営業の59%となっている。うち雑誌の読書率は全体が44%で、40代の48%がトップに、最下位が10代の27%。月刊誌は全体が31%で、年齢別では雑誌と同様、40代が37%でトップ、10代はやはり最下位の18%だった。職業別では農業者が最も高く40%だった」
https://www.jacom.or.jp/noukyo/news/2018/11/181128-36770.php

大日本印刷JTBは、旅行者のパーソナルデータを情報銀行情報信託機能)で集約・活用する「次世代トラベルエージェントサービス」を共同で開発し、東京の上野エリアと京都の岡崎・蹴上および周辺エリアでの実証事業を開始する。このサービスは、旅行者がストレスなく最適なサービスを選択・利用するための支援と、地域の観光関連サービス事業者による効果的なデータ活用やサービス提供の両立を目指すものだという。
情報銀行を介して旅行者とサービス事業者(化施設、観光体験、飲食店、小売店など)との間でのデータの流通と、その利活用を促進し、新たな旅行体験の創出と、地域内の旅行者の回遊や消費の拡大・促進策を検証するそうだ。
https://www.jtbcorp.jp/scripts_hd/image_view.asp?menu=news&id=00239&news_no=188

◎「第11回 ペアレンティングアワード」を運営しているのは「FQ JAPAN」(アクセスインターナショナル)、「ゼクシィBaby」(リクルート)、「CHANTO」(主婦と生活社)、「nina’s」(祥伝社)、「Baby-mo」(主婦の友社)、「Pre-mo」(主婦の友社)に加え、「楽天ブックス」(楽天)である。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000004192.html

主婦の友社のレシピ本「予約のとれない料理教室 ライクライクキッチン『おいしい!』の作り方」の出足が好調のようである。ネット書店での事前予約が好調なことから、発売前に重版を決定したという。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000867.000002372.html

田村由美の近未来サバイバルSFマンガ「7SEEDS」(小学館)がアニメ化され、2019年4月よりNetflixで配信が開始される。
https://news.mynavi.jp/article/20181129-732323/

小学館集英社プロダクションが運営する通販サイト「マンガワンSHOP」で、浅野いにお「勇者たち」の原作イラストを使用したキャラクターグッズ10種の受注を開始した。
http://www.dreamnews.jp/press/0000185601/
画業20周年記念企画「浅野いにおの世界展~Ctrl+T2~」サンシャインシティ(東京・池袋)で12月21日から来月1月14日まで開催される。
https://www.toei.co.jp/event/details/1213557_2622.html

◎BLTが運営するギフトECサービス「Anny」は、ユーザー数320万人、1億2000万PVを達成した「MERY」との間でコンテンツ提携を行うことを発表した。
https://www.tsuhannews.jp/59460

◎サイバードは、現在推進しているVoice UI 事業において、小学館とともに、LINEが提供する AI アシスタント「Clova」搭載のスマートスピーカーに対応する音声サービス「みじかいおはなし 366」を提供開始した。  http://www.cybird.co.jp/wp-content/uploads/2018/11/a5db02246e0092b3bbdfb2dccb5c9387.pdf

◎「ブックパス」が2018年ベストセラーランキングTOP10を発表した。男性コミック1位は「転生したらスライムだった件講談社。略して「転スラ」)。女性コミック1位は「あなたがしてくれなくても」(双葉社)。
小説1位は「火花」(藝春秋)。グラビア1位は大原優乃ファースト写真集「ゆうのだけ」(集英社)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000068.000034485.html

講談社伊勢丹がコラボするミステリーウィークの開催が決まった。謎ときイベントvol.3のテーマはミステリーの女王 アガサ・クリスティだという。伊勢丹新宿店だけでなく、ジェイアール京都伊勢丹でも開催される。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001958.000001719.html

ライフネット生命保険は、TVアニメ「転生したらスライムだった件」と共同プロモーションを開始した。「転スラ」の原作は、小説投稿サイト「小説家になろう」で発表された小説を講談社の「月刊少年シリウス」がコミカライズしたもので、現在も連載中。シリーズ累計700万部突破の人気作だ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000415.000001163.html

日本経済新聞社は新聞広告がどれほど読まれたかを「見える化する新しい仕組みを開発した。スマホタブレット端末を使い、新聞紙面のイメージを画面上にそのまま表示する「日本経済新聞 紙面ビューアー」の閲読ビッグデータを分析し、それぞれの新聞広告がどの程度読まれたかを推計する。広告効果を数値で分かりやすく広告主に伝えるという。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000104.000011115.html

◎「オトナミューズ 」2019年 1月号の付録は「ビームス」の大人向けリュック。税込み1000円。雑誌の中身には全く関心がないけれど・・・何故か買ってしまったオレ。
https://youpouch.com/2018/11/28/543292/

新聞通信調査会が発表した「メディアに関する世論調査」。ニュースとの接触状況については、接触率が高い順に、民放テレビのニュースが 91.8%、NHK テレビのニュースが 79.8%、新聞が 70.1%、インターネットのニュースが 66.5%、ラジオのニュースが 33.7%となった。この調査には雑誌の「ざ」の字も出て来ない
https://www.chosakai.gr.jp/wp/wp-content/themes/shinbun/asset/pdf/project/notification/yoron2018hodo.pdf
https://www.chosakai.gr.jp/wp/wp-content/themes/shinbun/asset/pdf/project/notification/yoron2018hokoku.pdf

◎「パーソナルコンピュータの父」アラン・ケイの賛同を得て2018年12月10日(月)に開催されるインターネット商用化25周年 & 「The Demo」 50周年記念シンポジウム「IT25・50 ~本当に世界を変えたいと思っている君たちへ~」が開催されるがデジタルハリウッド大学[DHU]が協賛するそうだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001565.000000496.html
このイベントの仕掛人は、「出版人・広告人」の連載を創刊以来つづけている高木利弘である。当日、高木は司会をつとめる。

◎「BUSINESS INSIDER JAPAN」が掲載した「AIがメディアを激変させる NYタイムズの『感情広告』実証、中立報道AIの衝撃」は、私たちにとっても他人事ではあるまい。
機械学習で読者の感情を予測するだけではなく、色々な思想が含まれている記事の表現方法自体を、機械学習で中立にして報道するニュースサイトも登場しました。私の知り合いが機械学習エンジニアとして勤めていた小さなスタートアップで、『Knowhere News』というサイトです」
「分断したアメリカと言われますが、メディアもリベラルと保守、中間と色々な立場があり、同じニュースでもヘッドラインの表現方法が違います。自分の思想に合う媒体だけを見る人も多いと思いますが、そのアメリカ分断の流れの中、AIを使って『バイアス表現をなくす』メディアが生まれたのが2018年というのが、いかにも時流を表した事柄かなと感じます」
https://www.businessinsider.jp/post-180400
出版業界は習うのは好きだが、「習うよりも慣れろ」の時代なのかもしれない。

◎平和・協同ジャーナリスト基金賞の奨励賞に講談社から2点選ばれた。青木美希の「地図から消される街」(講談社現代新書)と「ゲンバクとよばれた少年」(中村由一・渡辺考・宮尾和孝)である
http://www.labornetjp.org/news/2018/1543560921939staff01
中村由一が「現代ビジネス」に「『ゲンバク』と呼ばれた長崎の被爆少年が受けた『あまりに酷い差別』」を寄稿している。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56743
「NAGASAKIじんけん歴史散歩」もオススメである。
http://naga-jinken.c.ooco.jp/shiryo/fieldwork-2.htm
高山彦の「生き抜け、その日のために 長崎の被差別部落キリシタン」(解放出版社)も読んでおきたい。長崎を語るには「原爆」、「キリシタン迫害」、「部落差別」は避けては通れない三つの要素である。タイトルとなった「生き抜け、その日のために」は高山が松本治一郎の評伝「水平記」で紹介した松本の言葉である。
https://pdmagazine.jp/today-book/book-review-103/
「博奕打ち 総長賭博」の山下耕作監督による「夜明けの旗 松本治一郎伝」も機会があったら是非鑑賞してもらいたい。私の好きな映画である。11月8日と11月20日東映チャンネルで放映されていた。

司馬遼太郎賞は朝井まかての「悪玉伝」(KADOKAWA)に決定。
https://mainichi.jp/articles/20181201/k00/00m/040/025000c

主婦の友社が版元の「うちの3姉妹」(松本ぷりっつ)の映画化が決定した。29年ぶりに復活する「東映まんがまつり」にて、4本立て映画のうちの1本として、4月26日(金)に劇場公開される。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000869.000002372.html

◎世界化社の「家庭画報」2019年1月号は「通常サイズ版」、軽くてコンパクトな「プレミアムライト版」に加えて、フィギュアスケートの髙橋大輔選手のオリジナルポスターを表紙にシュリンクさせた「特装限定版」も発売している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000528.000009728.html

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3)【深夜の誌人語録】

ともかく打席に立ちつづけることだ。まぐれでもヒットはヒットなのである。