【文徒】2019年(令和元)12月12日(第7巻226号・通巻1646号)


1)【記事】「BookLive!」のBLランキングに名前を連ねる新興出版社

総合電子書籍ストア「BookLive!」は「BLマンガ・BL小説年間ランキング2019」を発表した。
BLマンガのベスト10は次の通り。
1位「抱かれたい男1位に脅されています。」(リブレ)
2位「ギヴン」(新書館)
3位「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(スクウェアエニックス)
4位「囀る鳥は羽ばたかない」(大洋図書)
5位「恋するインテリジェンス」(幻冬舎)
6位「SEX PISTOLS」(リブレ)
7位「ブルースカイコンプレックス」(東京漫画社)
8位「ララの結婚」(リブレ)
9位「パパだって、したい」(スクリーモ)
10位「花鳥風月」(新書館)
BL小説のベスト10は次の通り。
1位「空に響くは竜の歌声」(飯田実樹・ひたき/リブレ)
2位「二重螺旋」(吉原理恵子徳間書店Chara
3位「暴君竜を飼いならせ」(犬飼のの・笠井あゆみ徳間書店Chara)
4位「VIP」(高岡ミズミ・佐々成美/講談社
5位「龍の恋、Dr.の愛」(樹生かなめ・神葉理世奈良千春講談社
6位「発情」(岩本薫如月弘鷹/リブレ)
7位「美しい彼」(凪良ゆう・葛西リカコ/徳間書店Chara
8位「パブリックスクール」(樋口美沙緒・yoco/徳間書店 Chara
9位「続・仁義なき嫁」(高月紅葉・中田恵/ニューメディアプレス)
10位「眷愛隷属」(夜光花・笠井あゆみ/リブレ)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000082.000022823.html
リブレとか、東京漫画社スクリーモ、ニューメディアプレスなど聞きなれない版元の名前が並んでいる。どんな会社なのだろうか?
リブレの設立は2006年(平成18)のこと。ビブロスが2006年4月に倒産し、BL関連出版事業を継承すべく、アニメイトループのアニメイトムービックフロンティアワークスの3社共同出資により5月8日にリブレ出版株式会社として発足している。
《世界中の女性に夢と希望をお届けする事を使命と考え、出版、CD、DVD、グッズ、ゲームの企画制作などの事業を行って》いるBL専門出版社、とのことだ。
「抱かれたい男1位に脅されています。」は「b-boy」に連載されたBLマンガだが、ドラマCD化、TVアニメ化、舞台化され、累計で300万部を突破する大ヒットとなった。「広告会社、男子寮のおかずくん」は実写ドラマ化されたし、「真夜中アイドル!モザチュン」はCD化、ゲーム化されている。紙のマンガ誌に加え、Webコミックも展開しているが、それらは「pixivコミック」内で運営されていて、レベニューシェアされている。代表取締役社長は太田歳子。
https://libre-inc.co.jp/index.php
スクリーモ」はウェイブのレーベル名。ウェイブはインフォコム出身の関口航太によって、2010年4月に設立された。デジタル発のオリジナルコミックの出版事業と、電子コミック販売サイトの提供を行っている。スクリーモやCOMIC維新の電子コミックを紙書籍として出版している彗星社、ブラスト出版は子会社である。代表取締役の関口は一橋大学法学部の出身だが、体育会系競技ダンス部に所属し、全国大会で団体優勝している。
https://wwwave.jp/
東京漫画社は屋号。神保町の三省堂第二ビル4階に事務所を構える。社名は「有限会社ソフトライン」であり、本社は調布市深大寺なっている。代表取締役は馬部博幸。ここもBL専門出版社である
http://www.tokyomangasha.com/index.html
ニューメディアプレスはネットワーク出版の関連会社である。ネットワーク出版は小説・コミック・写真集等の作品を、デジタルコンテンツ用に編集し、各電子書店より配信している。ネットワーク出版は株式会社だが、ニューメディアプレスは有限会社である。
http://www.network-s.jp/

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2)【本日の一行情報】

ハースト婦人画報社は、日本で最も歴史ある女性誌婦人画報の公式サイトを12月9日にリニューアルオープンし、「婦人画報」は紙とデジタルの総合メディアとして情報発信することを可能とした。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000119.000008128.html

JTB読売テレビ、学研プラスは、社会貢献活動の一環として、11月26日(火)に在フィリピン日本国大使館附属マニラ日本人学校、27日(水)にファーイースタン大学で、読売テレビのアナウンサー森若佐紀子本野大輔、岩原大起による、オリジナル物語「うわばきクック」を使った日本語の特別授業を行った。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000542.000031978.html

◎済藤鉄腸、知らなかった。こんなツイートを公開している。
https://omiedesemne.ro/proza-scurta-ea-sare-de-tettyo-saito/
ルーマニア芸誌O mie de semneに私の新作短編「彼女は飛び込む」が掲載!これでルーマニアの芸誌3誌に作品が掲載という喜び。"なぜ川端や三島を擁する日本人がこの言語で小説を書くのかは分からない。だが彼の作品はこのサイトに掲載する価値がある"と。無上の喜び。》
https://twitter.com/GregariousGoGo/status/1203514353690898432
《この短編、ルーマニア人の友人によると法的な間違いがわりと残されたまま掲載されているそう。私としては、日本人であるが故ルーマニア語の間違いがある程度許容されて掲載されることで、ルーマニア人のルーマニア語に対する常識が揺さぶられる可能性があるやもと微かな希望を抱いている。》
https://twitter.com/GregariousGoGo/status/1203697154583171073

「創」に登場した王様書房の柴崎繁の発言。
《批判ではないですが、講談社がマンガに紐をかけるようになりました。そうすると子どもは読めません。マンガというのは立ち読みさせないと売れません。紐がかかった状態で送られてくるものは、仕方なくそのまま置いていますが、私の書店で紐かけはやりません。「どんなものでも全部見てごらん」と。見てもらって良かったら買ってもらう。それが本屋の前提です。見せないというのは写真集とか特別な場合に限ります。》
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191204-00010001-tsukuru-soci&p=1

◎代官山で料理教室「リコズキッチン」を主宰する料理研究家・山脇りこの「食べて笑って歩いて好きになる 大人のごほうび台湾」がぴあから発売された。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001429.000011710.html
山脇りこは長崎で生まれ、育った。「RRaU」に今年の8月15日付で発表した「最後の被爆地・長崎出身の私が家族に聞いた『数十年後に表れた原爆の恐怖』」によれば、山脇は「自分のうちが、爆心地から2.5キロほどのところ」にあり、「祖母も親とその兄弟姉妹が全員被爆」している。
《叔母が目にしたのは、片手がもぎとられたようにとれた人、焼けて、顔もわからないくらいにただれてしまっている人、目や鼻から血が止まらない人。水をと言われても水がなくて、薄黒い水を飲む人。高熱でうなされて意識が遠のいていく人。
それでも、そんな人々に包帯を巻いたり、言葉をかけたりしたそうです。来る日も来る日も。重度の被爆をした人々に素手で接する日々。》
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66508
山脇が言うように「私たちは、微力だけど無力ではない」のである

テレビ朝日ホールディングスは、東映の株式を追加取得し、議決権比率を13%から17.77%に高め、持分法適用関連会社にすると発表した。
https://www.toei.co.jp/company/ir/disclocure/__icsFiles/afieldfile/2019/12/09/20191209.pdf
https://www.tv-asahihd.co.jp/pdf/ir_news/pdf/20191209_kabushikitsuikashutoku.pdf
東映テレビ朝日ホールディングスの15.26%の株式を有する大株主である。
https://twitter.com/zukayer/status/1204272593735319552/photo/1

◎「プレジデントオンライン」が公開した「リクルートが『売上激減の地獄』から蘇ったワケ」は、ハワード・ユーの「LEAP ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則」(プレジデント社)の一部を再編集したものだが、雑誌関係者は絶対に読んでおくべき記事である。リクルートはデジタルシフトにあたって、書店販売の雑誌を廃止した。
《より多くの人々が、フェイスブックやスナップチャットでニュースを読んだりゲームをしたりして時間を過ごすようになると、コカ・コーラやP&Gやナイキなどの企業がそこに広告を出稿するようになる。プラットフォームが一定の規模になって初めて、その独占的な地位は揺るぎのないものになる。
リクルートもこれと同じロジックに従った。オンラインへの転換を最初に行うことによって、また価格戦略において競合企業よりも攻めに出ることによって、インターネット上での市場首位を固めたのだ。》
https://president.jp/articles/-/31190

集英社の「Myojo」が凄い。日販の11月の雑誌売上ランキングによれば冊数では第5位、売上金額では第4位である。他方、売上金額ランキングでは宝島社がベスト20に8位「リンネル」、11位「大人のおしゃれ手帖」、12位「InRed」、14位「素敵なあの人」、15位「& ROSY」、16位「mini」と6誌をランクインさせている。女性誌は宝島の圧勝という状況である。
https://hon-hikidashi.jp/more/98916/
女性ファッション誌はデジタルシフトを進めなければ宝島社に対抗できないのではないだろうか。

◎12月9日は開高健の没後30年であった。集英社から9月に刊行された「開高健のパリ」をはじめ、代表作を集めたフェアが全国の書店で実施されている。フェア実施店では、ビギナー向け小冊子「はじめての開高健」を無料配布中だそうだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000104.000011454.html
洋酒天国」を一号限りで復刊させるという企画を実現してくれる出版社はないものだろうか。

◎イー・ガーディアンが「SNS流行語大賞2019」を発表した。第1位となったのは「平成最後の○○」。第2位は番組のエンドロゴが元ネタである「終 制作・著作 NHK」。第3位は「手取り○○万」となった。
https://www.e-guardian.co.jp/info/2019/20191206-2.html

岡山城天守閣前広場で12月7日に開催された「The "O.SHIRO" Collection」は中国経済産業局がコンデナスト・ジャパン、協同組合関西ファッション連合(大阪市)などと共同企画した
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO53123540Z01C19A2LC0000?s=3

◎「本の雑誌が選ぶ2019年度ベスト10」の 第1位に宇佐美まことの「展望塔のラプンツェル」(光社)が選ばれた。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000233.000021468.html
「書店員マリ」のツイートが的確だ。
《私は、北上次郎さんが注目する作家の一人と言われていた宇佐美まことさんの小説を読むと、独特の濃い情念に捕らえられてしまった感覚に陥ります。『展望塔のラプンツェル』は途中、特に痛くて、辛い情念でした。それだけにラストの感動がすごかったです》
https://twitter.com/MacchiatoMari/status/1178659524615364615
社にとって小説が充実した2019年であったのではないだろうか。この「質」が「量」に転化すればシメたものである。葉真中顕の「Blue」もそうだが、宇佐美まことの「展望塔のラプンツェル」も絵空事を描くのではなく、情況から逃げることなく正面から向き合っている。元をたどれば「砂の器」の光社なのである。

◎ビジネス書ではエリック・シュミットの「1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」(ダイヤモンド社)が売れている
https://toyokeizai.net/articles/-/318744

◎「日刊ゲンダイDIGITAL」が「みずほFG元会長がNHK次期会長に “リベンジ選任”の仰天理由」を掲載している。
《今回の会長選任も棚ボタかもしれないが、安倍首相に連なる人選では、NHK改革は期待できそうにない。》
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/265986
朝日新聞デジタルは12月10日付で「NHK次期会長『どこかの政権とべったりではない』強調」を掲載している。
《今回の会長人事が官邸主導で行われたとの観測が上がる中、政権との距離について前田氏は「私はどこかの政権とべったりということはない」などと強調した。》
https://www.asahi.com/articles/ASMDB5G6CMDBUCVL01D.html

◎2020年1月31日(金)・2月1日(土)の2日間、次のような個性派本屋が集結する「二子玉川 本屋博」が、二子玉川ライズ ガレリアで開催される。
ATELIER、book pick orchestra、BOOKSHOP TRAVELLER、BOOKS青いカバ、BOOK TRUCK、Cat’s Meow Books、CHIENOWA BOOK STORE、Frobergue、H.A.Bookstore、HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE、JulyBooks/七月書房、MAIN TENT、Pebbles Books、plateau books、Printing Teller Book Service、SNOW SHOVELING、SUNNY BOY BOOKS、VALUE BOOKS、青と夜ノ空、青山ブックセンター、いか庫、絲 itoito、おへそ書房、かもめブックス、草舟あんとす号、恵一乗寺店、書坊、チェッコリ、ニジノ絵本屋、二子玉川 蔦屋家電、双子のライオン堂、古本 一角庫、ベースヤードトーキョー、リズム&ブックス。
https://hon-hikidashi.jp/bookstore/98544/
https://store.tsite.jp/futakotamagawa/bookshop-expo/
私には、このイベントに違和感がある。

◎12月9日、サントリー学芸賞の贈呈式が開催されたが、思想・歴史部門で受賞した板東洋介の「徂徠学派から国学へ 表現する人間」(ぺりかん社)が気になる。板東は皇學館大なんだよね。スピーチで述べた「私の人生の望みは、“美しい本”を作ることに尽きる。私にとって書くことはすべて。それ以外の事に関心はない」って、保田與十郎の変奏曲なんじゃないのかな。
https://ovo.kyodo.co.jp/news/a-1384893?fbclid=IwAR10m8GgtCF4kZRJyceTdLqp68K1s6wvZuK61uIqnkU6GenFp2hNd1qmqIU
http://www.perikansha.co.jp/Search.cgi?mode=SHOW&code=1000001811
「江戸の情炎 近世日本における『恋』の諸相」が無料公開されている。
https://twitter.com/nyx_jpn/status/1196059495366975488
ぺりかん社からは齋藤公太の「『神国』の正統論 『神皇正統記』受容の近世・近代」も刊行されている。これも気になってはいた。齋藤公太は国学院大学助教
http://www.perikansha.co.jp/Search.cgi?mode=SHOW&code=1000001810&word=%E3%80%8C%E7%A5%9E%E5%9B%BD%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%AD%A3%E7%B5%B1%E8%AB%96
讀賣新聞は書評で、この二冊を取り上げていた。評者は苅部直
儒学国学、立場は異なるが、彼らがいずれも日本の伝統思想にありがちな「心」の教説を離れ、生活の中に息づく「型」を重視したことに、板東は注意をむける。それは齋藤がとりあげる、複雑でたやすく見通せないものとしての「歴史」への関心にも通じるところがあるだろう。研究の最前線で、思想史は大胆に語り直される時期に来ているのである。》
https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20190525-OYT8T50116/
私が三角寛について書こうと思ったのは「思想史」よりも「精神史」に興味を持ったからだ。

◎ロイターは12月10日付で「トランプ政権がクラウド業者選びで『不適切な圧力』、アマゾンが訴え」を発表した。
《アマゾンは訴訟書で、トランプ政権が公の場や非公式の場でアマゾンに攻撃を繰り返し、「JEDI」と呼ばれる国防総省のクラウドプロジェクトの契約先をアマゾン・ウェブサービス(AWS)ではなくマイクロソフトに誘導したと指摘。トランプ氏は、AWSの親会社アマゾンの最高経営責任者(CEO)で、米紙ワシントン・ポストのオーナーでもあり、自身の政敵とみなすベゾス氏をたたくのが狙いだったと断言した。》
https://jp.reuters.com/article/amazon-jedi-lawsuit-idJPKBN1YD2IX

電通は、自家用車オーナー同士の間で愛車を一時的に交換することができるアプリサービス「CAROSET」(カローゼット)を開始した。
このサービスは、電通がCtoCサービスを開発・提供していく100%子会社として2018年10月に設立した「株式会社カローゼット」のサービス第1弾として開発された。一般公開に合わせて、複数の企業・団体と協業して、さまざまな形で実証を行っていく予定だという。
https://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2019118-1210.pdf

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3)【深夜の誌人語録】

努力とは諦めずに継続することである。