【文徒】2019年(令和元)12月11日(第7巻225号・通巻1645号)


Index------------------------------------------------------
1)【お詫びと訂正】
2)【記事】創社の書籍は2020年3月末をもって販売終了
3)【記事】旧「新人類」中森明夫の小説「青い秋」(光社)が気になる!
4)【本日の一行情報】
5)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.12.11 Shuppanjin

1)【お詫びと訂正】

昨日の《1)【記事】「小尾俊夫日誌 1965-1985」の版元は中央公論新社だった!》は、正しくは《1)【記事】「小尾俊人日誌 1965-1985」の版元は中央公論新社だった!》です。の「小尾俊夫」もすべて「小尾俊人」です。ここに訂正するとともにお詫び申し上げます。

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2)【記事】創社の書籍は2020年3月末をもって販売終了

J-CASTニュース」は12月8日付で「老舗出版の『創』、書籍販売を終了へ  20年めどに解散、惜しむ声続々」を掲載している。創社は2020年3月末をもって書籍販売を終了するそうだ。
https://www.j-cast.com/2019/12/08374568.html
既に創社は2016年9月に2020年をもって会社を解散することを発表している。大学予算の縮小化に伴う大学図書館への販売の低迷とデジタルシフトが経営に大きな打撃を与えたようである。
http://www.sobunsha.co.jp/images/soubun23iv.pdf
朝日新聞デジタルは2016年7月20日付で「学術書専門の創社、売り上げ激減 20年めどに解散へ」を掲載している。
《同社によると、最近は年10%の割合で売り上げが落ち続け、昨年は10年前の約3分の1だったという。》
https://www.asahi.com/articles/ASJ7N5PXJJ7NUCVL01Y.html
東京大学出版会の黒田拓也がこんな投稿をツイッターにしている。
《創社さんが2020年3月末の「店じまい」をご案内されたが、2016年にすでにその案内を出されている。その時にあるツイートをしたのだが、今になってそれがリツイートされている。恐らく「創社」で検索されたのであろう。その時の想いは全く変わっていないが、状況の厳しさは益々増しています。》
https://twitter.com/takuya1969/status/1204016857327423489
イスラム政治思想の池内恵も次のようにツイートしている。
《創社は適正規模の組織で良い本を適切な値段設定で出してきたと思います。社会の変化、業界の変化に際して、良い潮時に事業を手仕舞いされたことにも、尊敬の面を抱いています。惜しまれながら去るってなかなかできることではない。》
https://twitter.com/chutoislam/status/1202321594363740160
政治学者の五野井郁夫のツイートである。
《創社が解散の報。本当にお世話になりました。最も励まされた出版社のひとつです。わたしの創社デビューは、博士課程1年次に雑誌『創』の年始号巻末に掲載されたデモクラシー論でした。修士も刊行予定だったのですが、仕事が忙しく出せずに終わってしまいました。》
https://twitter.com/gonoi/status/1202425974568042496
トマス・アクィナス 理性と神秘」(岩波新書)の山本芳久のツイート。「神学大全」の社なのである。
《創社が来年解散すると、1960年から半世紀かけて翻訳されトマス・アクィナス神学大全』全45巻を入手することは大変困難になることが予想されます。『神学大全』は、冒頭から順番に通読しなければならない本ではありません。興味のある部分だけでも早めに入手しておくことを強くおすすめします。》
https://twitter.com/201yos1/status/1161461398741762048
私にとってはハイデッガー全集の創社である。ただし、ここのハイデガーはあまり評判が良くなかった。ギボンズの「経済学のためゲーム理論入門」もそうか…。

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3)【記事】旧「新人類」中森明夫の小説「青い秋」(光社)が気になる!

TOKYO MXの「5時に夢中!」11月28日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーで、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりが中森明夫の「青い秋」(光社)を横綱に位置付けた。「TOKYO MXプラス」は12月8日付で「昭和・平成のアイドルの裏話が続々!? 中森明夫による渾身の私小説」を公開し、中瀬の次のようなコメントを紹介している。
中森明夫さんと言えば、かつて“オタク”を命名し、新人類の旗手と呼ばれた人。人気アイドルや国民的カメラマンたちと時代を並走したフリーライターなんですけど、この作品では中野秋夫という名で出てきます。昭和・平成のアイドルたちとの交わりのなかで、中森さんしか知り得なかった裏話がどんどん出てきます。彼が付き合っていた女性との思い出を書いた最後の一編『彼女の地平線』では、思わず落涙してしまいました》
https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/201912081750/detail/
中瀬が落涙した!中森明夫NHKの「ラジオ深夜便」に出演し、約50分にわたり「青い秋」について語ったと光社新書の公式アカウントで「担当H」は次のようにツイートしている。
《『青い秋』が話題の中森明夫さんが、NHKラジオ深夜便」に出演されました。『青い秋』についてもたっぷりお話いただいています。とっても濃い約50分!以下の聞き逃しサービスのリンク、12月4日午前4時台のところから聞くことができます。やっぱり深夜便はいい番組!(担当H)》
https://twitter.com/kobunsha_shin/status/1202399516692901889
BuzzFeed News」は12月8日付で「『生まれる時代は選べない』”おたく”生みの親・中森明夫、半生を語る。」を公開している。
〈当時の空気感を著そうと、中森は自身の私小説という形で筆をとった。
全盛期に自ら命を絶った岡田有希子をはじめ、宮沢りえ、後藤久美子など、当時活躍したアイドルたちとの交流にも触れた。
《僕は結婚もしていないし、子供もいない。家庭的なものがないんです。私小説を書いても薄っぺらいんじゃないかと悩みました》
《でも、書いているうちにわかったんです。成熟できない、中高年になった自分のありのままの姿を書こうって》
人間的には“青い”まま、人生の秋を迎えた。そんな今の自分から『青い秋』という題名をつけた。「青春」ならぬ「青秋」だ。〉
https://www.buzzfeed.com/jp/keiyoshikawa/akio-nakamori-era
業界誌に職を得ながらも何故か金融業界を担当していた私には「おたく」という言葉を引っさげて登場した中森明夫が眩しくてしようがなかったものである。いずれにしても中森の魅力は優しさである。私は次のようにツイートする中森が好きである。
峯岸みなみAKB48卒業。AKB48に人生のもっとも長い時間を捧げた女性でした。彼女がその髪を切った動画は大事件になった。即座に私岡田有希子のことを思い、その後、山口真帆を擁護するきっかけになった。アイドルを愛する女の子が理不尽に傷ついてはいけない峯岸みなみさん、お疲れさまでした。》
https://twitter.com/a_i_jp/status/1203643030399410176
北海道新聞は11月9日付で「<中森明夫の銭湯的メッセージ>「青い秋」を生きる 失うものを書き遺す」を掲載している。中森は10代半ばに爆発的な読書体験をしていると書いているのだが、私も10代半ばに爆発的な読書体験をしている。この経験が現在の私を支えている。中森と私は、どこか似ているのだ。
《一時は三重の実家に連れ戻されたが、家出して、千葉のアパートに転がり込む。同郷の20代半ばの建築士の人が住まわせてくれた。半年以上もそこにいたろうか? 本棚にびっしりと並んだ学書や哲学書を読み尽くした(10代半ばのこの爆発的な読書体験がなければ、おそらく私は今の仕事をしていない)。》
https://www.hokkaido-np.co.jp/sp/article/363181/

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4)【本日の一行情報】

◎「月刊プリンセス」(秋田書店)2020年1月特大号の付録は1976年から連載がスタートし、単行本は65巻にもなる「王家の紋章」の0巻だ。
https://news.nicovideo.jp/watch/nw6270387
0巻が流行しそうだ。

朝日新聞デジタルは12月8日付で「『どっちみち皆、破滅』吾妻ひでおの精神 山本直樹さん」を掲載している。山本は吾妻のベスト選集の編集にあたっている。私も「プレイコミック」に連載していた「やけくそ天使」のファンである。
https://www.asahi.com/articles/ASMCW71YYMCWIIPE01R.html

西日本新聞が12月9日付で「『漫画村』元運営者の男を再逮捕 犯罪収益隠匿の疑い」を掲載している。
《再逮捕容疑は、アフィリエイト(成果報酬型)広告を掲載したサイトで、作者らの承諾を受けずに漫画の画像ファイルを公開して利用者を誘引。広告報酬として2016年12月26日から17年9月1日までの間、代理店3社から18回にわたり合計約4845万円を海外の銀行口座に入金させて犯罪収益を隠そうとした疑い。》
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/566545/
組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)で立件したのは全国で初めてのことである。

◎「BOOK☆WALKER 電子書籍ランキング2019」が発表された。
1位「転生したらスライムだった件」(講談社/月刊少年シリウス)マンガ
2位「五等分の花嫁」(講談社/週刊少年マガジン)マンガ
3位「この素晴らしい世界に祝福を!」(KADOKAWA/角川スニーカー庫)ライトノベル
4位「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」(SBクリエイティブ/GA庫)ライトノベル
5位「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」(集英社/ヤングジャンプコミックスDIGITAL)マンガ
6位「異世界迷宮でハーレムを」(KADOKAWA/角川コミックス・エース)マンガ
7位「盾の勇者の成り上がり」(KADOKAWA/ MFコミックス フラッパーシリーズ)マンガ
8位「ゴブリンスレイヤー」(スクウェア・エニックス/ビッグガンガンコミックス)マンガ
9位「幼女戦記」(KADOKAWA/角川コミックス・エース)マンガ
10位「異世界おじさん」(KADOKAWA/MFC)マンガ
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001016.000001227.html

◎Link-Uは、集英社と共同で、新しい総合電子書店「ゼブラック」のサービスを12月9日(月)から開始した。少年マンガ少女マンガ、青年マンガ、ライトノベル(サービス開始後にデジタル写真集も追加)といった集英社の人気コンテンツが詰まった電子書店となる。
https://www.link-u.co.jp/news/191209_zebrack/

◎「honto」が2019年 年間ランキングを発表した。電子書籍のベスト10は次の通りだ。
1位「FACTFULNESS」(日経BP社)
2位「メモの魔力 -The Magic of Memos-」(幻冬舎)
3位「1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365」(響社)
4位「キングダム」 53巻(集英社)
5位「鬼滅の刃 」15巻(集英社)
6位「進撃の巨人」28巻(講談社)
7位「ダンジョン飯」 7巻(KADOKAWA)
8位「ゴールデンカムイ」 17巻(集英社)
9位「凪のお暇」5巻(秋田書店)
10位「薬屋のひとりごと」4巻(スクウェア・エニックス)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000462.000009424.html

◎「連行される、捨てられる、私たちの前に立つ」は日本語に翻訳されるのだろうか。「ハンギョレ」に書評が掲載されている。次のようなくだりに目が止まった。
《1965年韓日協定第2条は、「1910年8月22日及びそれ以前に大韓帝国大日本帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効(already null and void)であることが確認される」と規定している。韓国は「もはや無効」という言葉を、大韓帝国大日本帝国の間のすべての条約は「当初から無効」と解釈し、日本は1910年の条約は当時には有効だったが韓国の独立以後効力を喪失したので「1965年時点で無効」という意味に解釈した。》
http://japan.hani.co.kr/arti/culture/35175.html
嫌韓の系譜」という本も刊行されている。これも読んでみたいものである。「ハンギョレ」は書評で《日本に対する絶望と希望に同時に出会えるこの本は、日本の古いヘイトと差別の歴史を系譜学的に扱い、「ヘイト」という感情の心理的哲学的省察まで加えている。》とまで評価している。
http://japan.hani.co.kr/arti/culture/35174.html

AppleのCEOであるティム・クックが来日した。星野源居酒屋で交流しているではないか。
https://japanese.engadget.com/2019/12/08/apple-ceo-84/

福島民友が12月09日付で「故郷の広野に書店を 20歳女性、『フルハウス』で夢へ一歩」を掲載している。
《震災・原発事故で書店がなくなった故郷の広野町に書店を開きたい―。同町出身で山形県立米沢女子短大2年の松本彩華さん(20)=同県米沢市=は、福島県南相馬市小高区在住の芥川賞作家柳美里さん(51)が開いた書店「フルハウス」で来春から働く。「10年以内に自分の書店を開店したい」。夢の実現へ一歩踏み出す。》
https://www.minyu-net.com/news/news/FM20191209-440644.php

◎首相の記者会見。指名されたのは讀賣、日経、NHKであり、東京、毎日、朝日は指名されず。藤本順一のツイートで知った。
https://twitter.com/1958fujijun/status/1203972035690414081

毎日新聞は12月10日付で「新聞、雑誌は生き残れるのか 下山進慶應大招聘教授“既成メディア余命宣告”」を掲載している。毎日の倉重篤郎のインタビューに「2050年のメディア」下山進は次のように語っている。
《「今新聞の読者は60代、70代が中心だが、彼らが5年後に健康寿命を超えることになると経済的、物理的(施設への入所、死去などで)に購読ができなくなる。10年で1000万部落ちたのに加速度がつき5年でまた1000万部落ちる。そうなると経営困難になる会社がたくさん出てくる。全国紙で残るのは有料課金版を持つ日経と他一紙ほどではなかろうか。地方紙は代替物がないからデジタル化を進め、特色ある報道をするところは生き残れるだろう」》
https://mainichi.jp/sunday/articles/20191209/org/00m/070/002000d
日経と朝日新聞が合併するというような事態が起これば面白いのだけれど。そうすると朝日+日経と読売が生き残る。

電通の出版ビジネス・プロデュース局にかかわる1月1日付人事である。
出版ビジネス・プロデュース局 MD(出版ビジネス・プロデュース局 MD 兼 関西雑誌部 GM) 中村理一郎
出版ビジネス・プロデュース局 出版業務推進1部 GM(出版ビジネス・プロデュース局 出版2部) 平田重遠
出版ビジネス・プロデュース局 出版業務推進2部 GM(出版ビジネス・プロデュース局 出版業務推進部) 阪部真希
出版ビジネス・プロデュース局 関西雑誌部 GM(出版ビジネス・プロデュース局 関西雑誌部) 大塚忠広
出版ビジネス・プロデュース局 アカウント室 アカウント2部 GM(出版ビジネス・プロデュース局) 今泉 睦
出版ビジネス・プロデュース局 出版4部 GM(出版ビジネス・プロデュース局 出版業務推進部 GM) 森田 繁
出版ビジネス・プロデュース局 アカウント室 アカウント3部 GM(出版ビジネス・プロデュース局 アカウント室 アカウント2部 GM) 城山知孝
2020プロデュースセンター パートナープロデュース2部 GM(出版ビジネス・プロデュース局) 金原 亨
https://www.advertimes.com/20191209/article303793/10/

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5)【深夜の誌人語録】

確信するとは「確心」することである。