【文徒】2019年(令和元)12月13日(第7巻227号・通巻1647号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】世耕弘成の『報ステ』批判にテレ朝が謝罪、ネット上で弱腰との指摘続出
2)【本日の一行情報】
3)【人事】マガジンハウス 12月11日付役員人事
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1)【記事】世耕弘成の『報ステ』批判にテレ朝が謝罪、ネット上で弱腰との指摘続出(岩本太郎)

テレビ朝日報道ステーション』に世耕弘成自民党参院幹事長)が抗議した。10日の同番組での「桜を見る会」ニュース中、記者会見での「年内の定例会見はいつまでやるんですか」という質問に世耕が笑いながら「もう良いお年をというか……」と話す場面を放送。世耕がジャーナリズムを小馬鹿にしているという印象を与える「報道」であった。これを見た世耕が当夜のうちに「切り取りは酷い」と、Twitterでこう呟いた。『報道ステーションの「隠蔽」を暴いたのである。世耕は広報の「力学」を承知しているのだ。
《私は定例記者会見が終わった後、今日の会見が今年最後になるかもしれないという意味で「良いお年を」と言っただけなのに、それを桜を見る会をと絡めて、問題を年越しさせようとしているかのように編集している。印象操作とはこのことだ》
https://twitter.com/SekoHiroshige/status/1204413862696509440
さっそくテレ朝が反応した。翌11日の夕刻に世耕はツイッター”続報”した。
《先ほどテレビ朝日報道局長が幹事長室に来訪し、謝罪がありました。
①会見終了後の映像を使用したこと。
脈の異なる部分を繋いで編集したこと
が不適切で、今夜の番組内で何らかの対応をするとのことです。
放送内容を見て、謝罪を受け入れるか判断します》
https://twitter.com/SekoHiroshige/status/1204699667109302272
その数時間後に放送された『報道ステーション』ではアナウンサー富川悠太が「放送ではその説明が丁寧ではありませんでした」と述べ、「誤解を招く表現について」世耕と視聴者に謝罪した。テレビ朝日は世耕に白旗を掲げたのである。籠池泰典の長男・籠池佳茂がツイッターで指摘している。
《事実上、印象操作を認めたと言う事だよ》
https://twitter.com/YOSHISHIGEKAGO1/status/1204756976942514177
門田隆将は「おわび」の言い回しを含めて批判した。
《説明が丁寧でなかった?驚いた。意図的に違うものを繋げたいつもの印象操作、つまり捏造。ふざけた謝罪を世耕氏は受け入れてはならない。問われているのは報道手法そのものだからだ》
https://twitter.com/KadotaRyusho/status/1204768725829730304
蓮舫は11日の『報ステ』報道で世耕の発言を見た時点で《はい、幕引き。いい加減にしてほしい》などと呟いていたが、世耕はテレ朝の謝罪を放送後に立憲民主党の副代表兼参議院幹事長である蓮舫に、twitterで以下の引用RTを送っていた。
《本件はテレビ朝日報道責任者が私のもとに謝罪に訪れ、今夜の報道ステーションでキャスターが頭を下げて謝りました。
本ツイートも下げていただくよう要請いたします》
https://twitter.com/SekoHiroshige/status/1204782578005229568
世耕によるテレ朝への抗議を批判する声も次々に上がってはいたが、安倍首相と同じ「屁理屈」を展開するか、これまた安倍首相の得意とする感情論を押し出すのみであった。作家の中沢けいは《世耕さんもこのところ、だいぶ苦しいみたいね。余裕がないからすぐにクレームをつけるのね》と10日夜にツイート。そうか野党は余裕がないから「桜を見る会」を持ち出し、国会の機能を止めたのか。
https://twitter.com/kei_nakazawa/status/1204900660329644033
ライターでネットニュースの『読む国会』を運営する平河エリも呟く。
《私はあくまで政治家は報道に対して事実誤認は除いて抑制的であるべきだと思いますし、当該報道が謝罪するほど悪質のある切り取りだとは思いません。禍根を残す結果だと思います》
https://twitter.com/yomu_kokkai/status/1204751009165148162
報道ステーション』のやり口は事実誤認というよりも「捏造」に近いのではないだろうか。東京新聞労働組合も12日《こういうテレ朝の編集には句言う。ああいう公書「廃棄」はスルーか》と批判。
https://twitter.com/danketsu_rentai/status/1204889613317206016
マルクスであれば、東京新聞労働組合は逆立ちしていると言い放つのではないだろうか。
金子勝に至っては12日に《だらしないぞテレ朝》との前振りで檄を飛ばす。金子の言い分に快哉するほど私たち民衆は無知ではないとは言っておこう。
《関電闇マネーでは関連産業から献金受け原発大失敗、官民ファンドで大失敗、元徴用工問題の対韓輸出規制で大失敗、執拗に追及せよ》
https://twitter.com/masaru_kaneko/status/1204884113901010945
しかしテレビ朝日広報部は12日付の朝日新聞の取材に《相手があるので、答えは控える》と回答するのみだった。同記事では駒澤大学法学部准教授の逢坂巌による以下のコメントも合わせて報じた。
《脇の甘い編集につけ込まれて謝罪に追い込まれ、記者会見前後の様子を伝えてはいけないかのような状況になってしまった。報道できるファクトの範囲を自ら狭めてしまった印象だ》
https://www.asahi.com/articles/ASMDC7KLKMDCUCVL01V.html
『日本政治とメディア』(中公新書)などの著書を持つ逢坂は、過去にTBS出身の田中良紹がCSで立ち上げた『国会TV』の運営に参画した経験も持つだけに、報道に理解は示しつつもこうした批判を忘れない。
事態の本質とは直接関係のない、政治家の不用意な言動の場面を表面的な「批判」の脈に落とし込みやすいからと使う(なおかつ批判を受けたらすぐに引っ込める)テレビ朝日には「報道」という自らの仕事に対する理解も緊張感も欠けているのではないか。そのあたりを世耕に見抜かれ、一撃の下に屈する結果となってしまったのだ。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎オープン1周年を迎えた都内六本木の有料書店「喫」店長・伊藤晃が『nippon.com』のインタビューに登場。《売上は非公開なんですが、予想以上の数字です》とのことだが、企業とのコラボやタイアップなどの「広告収入」もかなりの比率を占めていると、ここ1年間の実績から手ごたえをつかんだ「ビジネスチャンス」について語っている。
《大元にあるのは、本だけでは通常の書店経営は立ち行かないということです。だけど僕らは書店という空間を存続させたい。そのために、極端なことを言えば、本が全く売れなくても成り立つビジネスを模索しています。その可能性が喫にはあるなと手応えを感じています》
《これまでは「売れる本」を置くのが前提でした。ところが、ここでは『こんな本、誰が買うんだろう?』という本が売れるんです。これまでの店長経験は完全に覆っています》
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/c07102/

講談社による池袋のエンターテインメントビル「Mixalive 東京」事業にテレビ東京が参入を図る背景を『東洋経済オンライン』がレポート。放送収入が落ち込む中、得意のアニメなどの版権ビジネスにライブ事業でテコ入れを図ろうとの狙いがあることを報じている。
https://toyokeizai.net/articles/-/318745
3年前に六本木グランドタワー内の現本社に移転したものの、フジテレビのお台場や日本テレビの汐留、TBSの赤坂サカスのような場を持たないことによる苦しさもあるのだろう。

◎『BLOGOS』が掲載記事のコメント欄を廃止するのだそうだ。ブロガーの木走まさみずがこれについて「ネットの特性を弱めるのは危険な方針」だとブログ投稿(『BLOGOS』にも転載)。木走はかつて『JANJAN』にも「市民記者」として参加しており、同紙や『オーマイニュース日本版』が廃刊に至る過程でコメント欄の書き込み制限に踏み切った故事に準え、『BLOGOS』編集部に「再考を期待したい」と呼び掛けている。
https://blogos.com/outline/422589/
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2019/12/09/154543

大阪府八尾市内にある毎日新聞の3つの販売所が景品表示法の制限額を超える景品を提供して新聞購読の勧誘をしたとして、大阪府が再発防止を求める措置命令を10日に行ったことを読売新聞が同日付で報じた。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20191210-OYT1T50303/

◎「1冊の本だけを売る書店」として知られる都内・銀座の「森岡書店」が、伊勢丹新宿店の本館4階に期間限定の洋品店「ブティッ森岡」を、去る11日から来週17日までオープンしている。同書店店主の森岡督行がセレクトした13組のブランドのアイテムを販売するほか、森岡による手描きイラストの展示も通じてブランドや展開アイテムの特徴などを紹介している。
https://www.fashionsnap.com/article/2019-12-09/morioka-popup-isetan/

博報堂・大広・読売広告社の2019年11月度売上高。全体で博報堂が前年比0.5%増、大広が1.1%減、読広が4.4%減といずれも横ばいか微減。ただし雑誌は3社とも前年比プラスで、大広は11.8%増、読広は35.7%と大幅増を記録している。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2433/tdnet/1776694/00.pdf

中川右介(評論家・元アルファベータブックス社長)による『幻冬舎plus』連載「オトコ・マンガ/オンナ・マンガの世界」第19回目は、「少年誌と少女誌を往還するマンガ家」としてあだち充が登場。
永島慎二石井いさみのアシスタントからデビューし『少年サンデー』の増刊号などで描いていたものの、ヒットが出ずに編集部からも見限られかけていたあだちが『少女コミック』に移って「陽当たり良好!」のヒットなどからブレイクしていった足跡を追っている。
https://www.gentosha.jp/article/14432/
しかし同記事は『excite』にも転載されているが、筆者である中川の署名がこちらでは記事から抜けているのはいかがなものか
https://www.excite.co.jp/news/article/Gentosha_14432/

◎マンガ・アニメの未来をテーマとして11月中旬に都内の豊島区役所で開催された国際カンファレンス「IMART」では「アニメのジャーナリズムのこれまでとこれから」と題したフォーラムも行われた。
パネリストは朝日新聞記者でコラム「アニマゲ丼」筆者の小原篤KADOKAWAのアニメ誌『ニュータイプ』編集長の角清人、専門サイト『アニメーション・ビジネス・ジャーナル』編集長の数土直志、アニメ評論家の藤津亮太。サイトの『アニメ!アニメ!』に詳しい内容が紹介されている。
https://animeanime.jp/article/2019/12/09/50251.html

◎インターネット古書サービスのバリューブックス(長野県上田市)が本棚に並べた古書をスマートフォンで撮影すると査定額の目安が分かるサービス「本棚スキャン」を開始した。スマホバリューブックスのサイトを開き「本棚スキャンを始める」をタッチするとカメラが起動。画面に20冊程度が映り込むようにして撮影すると、数秒後に1冊ずつの査定額の目安と合計額を提示するという仕組みだ。
https://www.valuebooks.jp/
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20191210/KT191209BSI090001000.php

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3)【人事】マガジンハウス 12月11日付役員人事

12月11日開催の定時株主総会と取締役会を経て以下の通り選任され、就任した。

代表取締役会長 石﨑 孟
代表取締役社長 片桐 隆雄
取締役 南 昌伸(総務局担当)
取締役 石渡 健(第一編集局、第四編集局、デジタル戦略局担当)
取締役 鉄尾 周一(第二編集局、第三編集局、第五編集局、書籍・ムック出版局担当)
取締役 浪花 寛通(経理・製作局、マーケティング局担当)
監査役 畑尾 和成
上席執行役員 熊井 昌広〔昇格〕(クロスメディア事業局・広告局担当、デジタル戦略局局長)
上席執行役員 西村 吾郎〔昇格〕(経理・製作局局長)
執行役員 芝崎 信明(第三編集局局長)
執行役員 矢代 卓〔新任〕(広告局局長)

木滑良久、秦義一郎、芝山喜久男はそれぞれ顧問に就任。