【文徒】2016年(平成28)年12月2日(第4巻225号・通巻912号)

1)【記事】ネット企業(DeNA)のレベルはいまだにこの程度だ
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.12.2.Shuppanjin

1)【記事】ネット企業(DeNA)のレベルはいまだにこの程度だ

DeNAは「当社運営のキュレーションプラットフォームについてのお知らせ」なる文章を発表し、健康や医療などのヘルスケア情報を扱うキュレーションプラットフォーム「WELQ」の記事を非公開とすることを発表した。要するに記事公開を中止したということだ。
「株式会社ディー・エヌ・エー(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長兼CEO:守安 功、以下DeNA)は、ヘルスケア情報を扱うキュレーションプラットフォーム「WELQ(ウェルク)」におきまして、医療情報に関する記事の信憑性について多数のご意見が寄せられたことを受け、検証および精査した結果、本日11月29日(火)21時をもって全ての記事を非公開といたしました。
ご利用いただいている皆様には、多大なるご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。
医学的知見を有した専門家による監修がなされていない記事が公開されていたことに関して、かねてより進めている医師や薬剤師などの専門家による医学的知見および薬機法をふまえた監修体制を速やかに整えます。その上で医学的根拠に基づく監修を順次行い、皆様に安心してご利用いただける状態にしたのち、WELQ編集部名義で記事を掲載していく方針です。
なお、キュレーションプラットフォームの運営にかかる社内体制強化のため、代表取締役社長兼CEOの守安を長とする管理委員会を直ちに設置します。当社運営のキュレーションプラットフォームは、編集部独自記事および外部ライターへの依頼記事だけでなく、一般ユーザーによる自由投稿による記事掲載も可能な形で運営しておりますが、本管理委員会を通じて、一般ユーザーが作成・投稿した記事のチェック体制強化など信頼性を担保できる仕組みを整備していくとともに、編集部独自記事や外部ライターへの依頼記事等につきましても、品質の向上に向けた改善を進め、より一層価値のある情報提供に努めてまいります」
http://dena.com/jp/press/2016/11/29/1/
この文章だけでは何が何だかサッパリわからない。説明が必要だ。実は、「WELQ」は、他のサイトの記事を無断掲載した疑いが持たれたり、肩こりの原因を「幽霊」とするなどのトンデモ系の情報を流していたのだ。
「『肩が重くなった』という言葉は、幽霊が憑いた時に広く使われていますよね。小説や漫画、ドラマや映画などで、聞いたことがある方は多いかと思います。
ちなみに『肩が重い』と訴える方を霊視すると、幽霊が後ろから覆いかぶさって腕を前に垂らしている、つまり幽霊をおんぶしているように見えるそうですよ。肩の痛みや肩こりなどは、例えば動物霊などがエネルギーを搾取するために憑いた場合など、霊的なトラブルを抱えた方に起こりやすいようです。
また右肩に憑くのは守護霊、という話もよく知られているかと思います。守護霊は人などにつき、その対象を保護する霊のことで、多くの方の守護霊はご先祖様だと言われています。
なお守護霊は実は1人ではなく、縁のある複数のご先祖様が憑くそうで、そうすると右肩にたくさんの守護霊が乗っている、ということになるので、肩の痛みやこりを感じるのは無理のないことなのかもしれません。
もちろんこれは科学的に実証された話ではないので、信じるか信じないかは人それぞれです」
https://web.archive.org/web/20161123140035/https://welq.jp/7762
「Buzz Feed」の「DeNAの『WELQ』はどうやって問題記事を大量生産したか 現役社員、ライターが組織的関与を証言」は次のように書いている。
DeNAはこのマニュアルで、記事の執筆時に『参考』にすべきサイトを案内している。本文をそのままコピペするのは禁止し、『文章が重複しないようにご自身の言葉でリライトをお願いします』と、引用ではなく、わざわざリライトを指示している。
記事をどのサイトから引用しているか追跡を難しくするためだと見られる。本来は適切に引用すべきところを、引用でないかのように見せかける悪質な行為と言える」
https://www.buzzfeed.com/keigoisashi/welq-03?utm_term=.pvqj2bjP61#.ph6A3lA9LE
ブログ「永江一石のITマーケティング日記 More Access! More Fun!」は「WELQ」について一線を越えていると厳しく批判している。
「…ユーザーに役立つという視点ではなく、検索されやすいキーワードを徹底して調べ上げて、とにかくライター(じゃなくてパクリ屋)にそれについての記事を書かせる。内容の真偽は全くチェックも精査もしない。かなりキーワードについての細かな指示が出ているのが分かります。しかし責任回避のために『キュレーターが勝手に書いてるので内容には責任は負わない』と明記する悪辣さ」
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=30141
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=30166
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=30231
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=30247
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=30289
東京都の福祉保健局も「WELQ」を問題視し、DeNAの担当者に来庁を依頼していたそうだ。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1611/30/news084.html
ネットの世界には金儲けしか頭にないような連中がゴマンといるということなのである。

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2)【本日の一行情報】

京都市立芸術大学キャリアデザインセンターは、都築響一を講師に招いて特別セミナー「圏外編集者in京芸」を12月14日に開催する。
http://www.kcua.ac.jp/event/20161214_career/
都築はマガジンハウスから生まれた「天才」のひとりである。

◎料理の動画レシピを配信する分散型メディア「KURASHIRU」を運営する運営するdely(代表取締役・堀江裕介)は、YJキャピタル、gumi ventures、ユナイテッド、フリークアウト取締役COOの佐藤裕介などの個人投資家から合計約5億円の資金調達を実施したという。
http://jp.techcrunch.com/2016/11/28/dely-raised/
Delyの創業は堀江が慶応大学在学中の2014年2月とのことだが、この僅か二年足らずの間に「共同創業者を除く全員が会社を去る」ような事態に直面している。delyは、もともと注文から30分ほどでランチなどを届けるというフードデリバリーサービスを展開していたが、2015年1月31日にこのサービスを突然終了してしまったのだ。
堀江は、フードデリバリーサービスから撤退した後、女性向けのキュレーションメディア「KURASHIRU」を立ち上げ、今年になってから、コンテンツの動画化を図り、更に料理のレシピに絞り込んでいった。現在、「KURASHIRU」の月間動画再生数は1億回を突破している。
https://kigyo.freee.co.jp/interview-delyhorie/
こういう変わり身の早さを出版社は苦手としている。変わり身の早さを「是」としてこなかったからなのだが、デジタルシフトにおいては、そうは言っていられないのかもしれない。

集英社の「週刊少年ジャンプ」に連載されているバレーボールを題材とした「ハイキュー!!」は舞台化され、12月4日の大千秋楽には、全国47都道府県にてライブビューイングを実施するなど大盛況だが、早くも2017年春、東京・宮城・大阪・福岡の4都市で、更に進化したハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」"勝者と敗者"の上演が決定した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000368.000012949.html

◎フジテレビは誤報が多くないか。
「フジテレビは11月30日に放送した「めざましテレビアクア」(月〜金曜前4・00)「めざましテレビ」(月〜金曜前5・25)で、ブラジルのサッカーチーム「シャペコエンセ」の選手、関係者を含む乗客乗員計81人が乗ったボリビアチャーター機が28日にコロンビアで墜落した事故で、元京都で現在はJ2山形に所属するMFディエゴ(32)が同チームに所属していると誤って報じた」(スポーツニッポン)
http://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2016/11/30/kiji/K20161130013820471.html

押切もえの携帯電話サーバーに不正アクセスし、メールを盗み見したとして日本経済新聞社デジタル編成局社員の寺井淳容疑者が不正アクセス禁止法違反容疑などで逮捕された。NMB48の元メンバー渡辺美優紀の保存データにも不正アクセスしているそうだ。
http://mainichi.jp/articles/20161130/k00/00e/040/229000c
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161130/k10010789751000.html

◎婦人服メーカーのエム・アイ・ディーは阪急うめだ本店で11月26日に「目指せいい女スタイル!『ブレンヘイム』×『ジェイジェイ』×『オッジ』スペシャルショップ」を開催した。雑誌社の垣根を乗り越えた取り組みだ。同様のイベントは伊勢丹新宿本店、JR名古屋高島屋でも開催されるそうだ。
http://www.senken.co.jp/news/corporation/mid-oggi-jj-161130/

◎学研プラスは、ゲーム「マインクラフト」を使ったプログラミングキャンプ(短期集中講座)を、12月26日に品川にある学研本社で開催する。パソコン版「マインクラフト」に「コンピュータークラフト」という拡張データを導入し、自動でモノづくりをするプログラミングを学ぶそうだ。
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20161129/Resemom_35190.html

司馬遼太郎賞は葉室麟の「鬼神の如く 黒田叛臣伝」(新潮社)に決定した。
http://www.nikkansports.com/general/news/1745057.html

◎ベストセラー「嫌われる勇気」(ダイヤモンド社)を原案とした刑事ドラマ「嫌われる勇気」がフジテレビで放送される。「嫌われる勇気」はダブルミリオンの可能性があるよなあ。
http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pickup/161130-026.html

◎JIAA(日本インタラクティブ広告協会)の長澤秀行常務理事事務局長の次のような指摘は、その通りだと思う。長澤は周知のように電通新聞局の出身である。
「これは経営戦術論になるが、今後みなさんはそれぞれ個々のメディアで戦うんでしょうか。テレビはキー5局で『TVer』を作りましたよね。それぞれの独自戦略もあるでしょうけど、一緒にやるところが出てきた。見逃し視聴に関してここしか出さない、ということを社の垣根を越えて合意した。そうなると、ユーザーはそのサイトを使わざるを得ない。なぜ新聞社はやらないんですか」
http://www.yomiuri.co.jp/yolon/ichiran/20161128-OYT8T50024.html?page_no=1
出版社も「一緒にやる」必要がある。垣根を壊すことで生き残るのだ。

デジタルハリウッド大学院では、海外での作品化(映画・TVドラマ・書籍出版・ゲーム・グッズ・etc)をねらう、日本のオリジナルコンテンツを発掘する「日本IPグローバルチャレンジ・プログラム」を開始する(IP=知的財産)。
このプログラムに共感した徳間書店の協力のもと、徳間書店保有する小説・マンガなどの原作IPを、デジタルハリウッド大学院でコンテンツマネジメントを研究する、30ヶ国を超える世界各国からの留学生らが中心となり自国での活用を企画。実際に海外の現地へ赴き、業界企業に直接提案を行う。30ヶ国からの留学生が、ネイティブラングエッジを駆使し、日本IP活用の母国映画やTVドラマを制作する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001170.000000496.html

WPPのメディアエージェンシーGroupMはグーグルやフェイスブックに対抗すべく、独自IDを構築すると発表した。
http://digiday.jp/agencies/wpp-xaxis-unique-id/

◎日販は2016年年間ベストセラーを発表した。
1位 「天才」幻冬舎
2位 「おやすみ、ロジャー」飛鳥新社
3位 「ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部 特別リハーサル版」静山社
4位 「君の膵臓をたべたい」双葉社
5位 「嫌われる勇気」ダイヤモンド社
6位 「どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法」サンマーク出版
7位 「羊と鋼の森文藝春秋
8位 「コンビニ人間文藝春秋
9位 「正義の法」幸福の科学出版
10位 「新・人間革命」聖教新聞社
http://www.nippan.co.jp/ranking/annual/
ベスト20に講談社小学館集英社の作品はランキングしていない。

トーハンも2016年 年間ベストセラーを発表。「正義の法」が第3位だ。
http://www.tohan.jp/bestsellers/upload_pdf/161201bestseller_2016y.pdf.pdf

◎日販は、学研プラスと共同で、書店併設のカフェスペースを使った英会話レッスン事業「English Cafe」を開始する。第一弾として、日販グループ会社の万田商事が運営するPAPER WALL CAFE nonowa 国立店にて、全10回のレッスンを12月6日(火)よりスタートする。
http://www.nippan.co.jp/news/english-cafe/
トーハンでも同社が運営支援する「Cafe nota nova」KaBoS宮前平店で、12月7日(水)に「English Cafe」がスタートする。
http://www.tohan.jp/news/20161201_873.html

◎新潮社から村上春樹の書下ろし2000枚に及ぶ7年ぶりの長編小説が来年2月に刊行される!
http://www.shinchosha.co.jp/harukimurakami/

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3)【深夜の誌人語録】

小さな工夫の積み重ねが飛躍を生む。