【文徒】2019年(令和元)10月3日(第7巻179号・通巻1599号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】石川九楊河東碧梧桐―表現の永続革命」(藝春秋)
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
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1)【記事】石川九楊河東碧梧桐―表現の永続革命」(藝春秋)

左右社から「石川九楊自伝図録 わが書を語る」が刊行されたのを記念して、東京堂書店は2階エスカレータ前にてフェアを開催している。
https://twitter.com/books_tokyodo/status/1168443456886210560
石川九楊自伝図録 わが書を語る」は、左右社によれば観音開きで横長の作品を掲載するなど、作品集としてのデザインにも凝っている。
http://sayusha.com/catalog/books/p9784865282443
そんな石川九楊が定型の奴隷たることを拒否し、一回性の定型を模索した「新傾向俳句」の俳人にして書家であった河東碧梧桐の評伝を書きあげた。版元は藝春秋。タイトルは「河東碧梧桐 表現の永続革命」。「學界」での連載が一冊にまとまったのである。それにしてもサブタイトルからしトロツキーを連想させて良いじゃないか。「あるがままの今ある大衆ではなく、未だなきあるべき大衆こそが真の大衆なのである」なんて記述もある。いやはや、藝春秋は懐の深い出版社である。
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163911007
考えてみれば石川九楊もまた「永続革命」に身を置きつづけている表現者=書家である。石川の発言である。
《私は思う、現在、書にかかわる者は、将に書にかかわることを恥辱とし、その恥辱を拠所として、それを克服する方向を追求しつつ、書作しなければならない、と》
河東碧梧桐から石川九楊へという「精神のリレー」を私たちは見せられることになるのだ。
ここで正直に告白しておくと私は河東碧梧桐の俳句に多大なる影響を受けている。私の愛誦句を掲げておこう。
愕然として昼寝覚めたる一人かな
空をはさむ蟹死にをるや雲の峰
赤い椿白い椿と落ちにけり
https://www.iwanami.co.jp/book/b248972.html
碧梧桐は高浜虚子とともに正岡子規門の双璧と言われたが、高浜虚子系統の「ホトトギス」政治に「消しゴムでゴシゴシと、もしくはホワイトでペタペタと塗り潰し消し去られた俳人」なのである。石川はそんな碧梧桐の復権を俳句のみならず、俳句と書において試みているのである。石川九楊ならではの力業である。石川は、こう書いている。
《垂直に書くことなくしては「天」が出現することなく、水平に揺れるばかりの宗教なき日本に「かなわん(かなわない)」と敬遠、無視し、また排除しがちだ。本書を契機として、河東碧梧桐という近代の巨大な俳人人の復権がはかられ、さらなる研究と解明によって、日本近代、学史上にしかるべく正統に位置づけられることを願っている。》
帯を上野千鶴子が書いている。「京大俳句会」出身で句集「黄金郷」を刊行しているからね。

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2)【本日の一行情報】

◎「ジンズ(JINS)」は、光社の女性誌「STORY」「美st」とコラボした40代女性向けのメガネを発売する。
https://www.seventietwo.com/ja/news/jinsstorybstigarishinobu

◎8月18日、「ガトーフェスタむささび」という7歳児のパパが白泉社から刊行された大森裕子の「ねこのずかん」に関するツイートをしたところ14.1万の「いいね」、4.3万のリツイートを獲得した。
https://twitter.com/musasa_vi/status/1163026534342352896
白泉社は、このツイートをPOPにしようと、「ガトーフェスタむささび」に問い合わせ、快諾を得てPOPが完成した。このPOPを書店に案内したところ、次々に注があり、8月と9月は7月の倍近くの出庫となった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000046848.html
この絵本は児童書コーナーでなくても売れそうだ。

◎10月1日付で日販は持株会社体制に移行した。日販が日販グループホールディングスとなり、新たに日販が設立されたというカタチになる。
https://www.nippan-group.co.jp/corporate_profile/philosophy/
https://www.nippan.co.jp/wp-content/uploads/2019/02/20190219.pdf
丸善丸の内本店と日本橋店が日販からトーハンに帳合を変更した。

◎「週刊少年ジャンプ」(集英社刊)で連載されている「鬼滅の刃」が、2020年1月に舞台化されることになったが、「少年ジャンプ+」でチケットの最速先行販売が実施されることになった。
https://kimetsu.com/stage/
https://anime.eiga.com/news/109558/

◎宝島社が主催する、第18回 『このミステリーがすごい!』大賞がプラモデル創作家にして、フリー編集者の歌田年「模型の家、紙の城」に決定した。来年1月に刊行される。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000928.000005069.html

浪曲玉川奈々福の公演は今やプラチナチケットだそうである。跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授の松坂健が奈々福のプロフィールを紹介している。
《奈々福さん(年齢不詳)は上智大学学部卒。短歌専門誌、新潮社、筑摩書房で編集者をやっていたかたわら、三味線に興味をもって、日本浪曲協会主催の三味線勉強会に参加したのがきっかけで、玉川福太郎師匠に見いだされて浪曲師になったという履歴。》
https://www.travelnews.co.jp/column/kankyaku/20191001090052.html

中日新聞東京新聞北陸中日新聞夕刊で連載「春の流儀」を開始した、藝春秋の元常務取締役木俣正剛だが、「ダイヤモンドオンライン」が10月2日付で公開した「『春砲』を自らに放った元藝春秋社長候補・木俣正剛と和敬塾の邂逅」にも登場している。
《「村上春樹さんの『ノルウェイの森』は和敬塾をかなりデフォルメし、右翼的に描いています。村上さんは西寮の先輩ですが、西寮は和気あいあいとした、のどかな寮です。たぶん『ノルウェイの森』は北寮がモデルではないでしょうか。北寮には盾の会(三島由紀夫が結成した民兵組織)のメンバーも住んでいましたらから」
その頃の西寮には、木俣氏の2つ上に自民党政務調査会田村重信氏、1つ上にNHK解説委員を務めた早川信夫氏がいて、1つ下には元国土交通事務次官の徳山日出男氏らが入ってくる。木俣氏は上下関係を気にすることなく、自由にモノを言い合える和敬塾の生活を満喫していた。》
https://diamond.jp/articles/-/216297
和敬塾前川製作所の創業者・前川喜作が目白台の細川邸7000坪の土地を手に入れ、建設した男子学生寮である。前川喜作の孫娘は、中曽根康弘の長男・弘(元外務大臣のもとへ嫁いでいる。この孫娘の兄が元部科学事務次官の前川喜平である。

◎これは酷い話だ。産経新聞が10月1日付で「中国、産経新聞祝賀行事取材を拒否」を掲載している。
中国当局は1日に北京で行われた建国70年祝賀行事の取材証を産経新聞に発行しなかった。日本の他の報道機関は発行されており、産経新聞は1日までに中国外務省に書で抗議した。》
https://www.sankei.com/world/news/191001/wor1910010027-n1.html
取材証を発行された日本の他の報道機関は、このことをしっかりと報道すべきだろうし、日本新聞協会としても抗議声明を発表すべきなのではないだろうか。

北海道新聞が10月2日付で社説「NHK経営委 番組への介入許されぬ」を掲載している。
《個別の番組に対する特定企業からの抗議に唯々諾々と屈するようでは、NHKが公共放送の使命とする「自主自律を貫き、視聴者の判断のよりどころとなる正確な報道」はおぼつかない。》
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/350455?rct=c_editorial
毎日新聞は10月2日付で「NHK会長謝罪、放送部門トップが異例の持参 かんぽ報道問題」を掲載している。
かんぽ生命保険の不正販売問題を追及したNHK番組を巡り、日本郵政グループの要求を受けたNHK経営委員会が昨年10月、同局の上田良一会長を厳重注意した問題で、木田幸紀・放送総局長が郵政側に出向き、番組幹部の発言について事実上謝罪する上田会長名の書を渡していたことが判明した。放送部門の最高責任者である放送総局長が個別番組に絡む抗議に直接対応するのは異例だ。》
https://mainichi.jp/articles/20191001/k00/00m/040/392000c?fm=mnm
NHKはジャーナリズム失格である。NHKは既にぶっ壊れているのだ。公共放送のあり方が根底から問われているはずだ。
日本郵政グループの企業統治にしても深刻である。ずさん極まりないのである。京都新聞が10月2日付で社説「かんぽ不正  経営陣に乏しい危機感」を掲載している。
《グループトップの長門正貢・日本郵政社長は会見で「取締役会に全く情報が上がってきていなかった」と釈明、不正の要因とされる過剰なノルマについても「無理な数字を置いた自覚はなかった」と述べた。経営サイドと現場の距離感の大きさを浮き彫りにした。
https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/index.html

◎大広は赤坂と芝公園の2カ所に分かれていた東京本社オフィスを統合し、東京都港区芝2丁目14-5に移転し、10月1日から新オフィスでの営業を開始した。また会社分割(新設分割)によってクリエイティブ、プロモーション領域における広告制作関連事業およびキャスティング関連事業を担う大広WEDOが10月1日付で発足した。
https://www.daiko.co.jp/about/office/
https://www.daiko.co.jp/daiko-topics/2019/0808160012.html
《執務エリアから固定的なデスクをなくし、集中作業もミーティングも両方を受け入れられるテーブルでオフィス空間を構築した》(アドタイ)そうだ。
https://www.advertimes.com/20191001/article299412/

博報堂グループの博報堂ケトルは10月1日付けで、太田郁子が代表取締役社長及び共同CEOに、船木研が代表取締役及び共同CEOに就任した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000240.000008062.html

博報堂DYメディアパートナーズは、dAppsプロダクト開発チーム「PlayAsset」内で、コンテンツの著作権を管理し、コンテンツが利用されるたびに著作料がIPホルダーに還元されるシステム「IP Ledger」を開発した。
ゲームの中にブロックチェーン技術を組み込んだdAppsゲームと呼ばれるゲーム群は、ゲーム内のキャラクターやアイテムが資産性を持つため既存のゲームとは異なるゲーム体験を提供できる手法として注目されている。
2019年内に複数のdAppsゲームが市場に投入される予定もあり、今後市場が盛り上がり、ソーシャルゲームの発展と同様にIPコンテンツがdAppsゲーム市場に参入してくることが考えられる。
dAppsゲームはブロックチェーン技術を使用しているため、ゲーム開発の拡張性が高く、ゲーム内のキャラクターやアイテムが全く別のゲームでも使用できるという特徴を持っているが、コンテンツの著作権管理や会社間での収益分配の取り決めなど、現実的な問題が障害となり実装まで到達する事例が少ないというのが現状だという。また、IPホルダーからは、2次流通市場で自社のIPコンテンツが勝手に売買され、運営の手が届かない別のゲーム上で自由に使用されるのではないか、という懸念が挙げられている。
そこで、博報堂DYメディアパートナーズは、IPコンテンツの著作権を安全に管理することで参入ハードルを下げ、2次流通市場での取引のトラッキングが可能なシステムとして、「IP Ledger」を開発した。「IP Ledger」にIPコンテンツが登録されると、著作権トーク(NFT)が発行され、この権利を購入したdApps開発者は、購入したIPコンテンツを、自ら開発したdAppsゲーム内で発行&運営することが可能になる。発行されたIPコンテンツのブロックチェーン上での取引を追跡するために技術開発した「ProxyContract」が、売買の監視と売買手数料の一部を著作料としてIPホルダーに支払う処理を行う。
https://www.hakuhodody-media.co.jp/newsrelease/service/20191001_26601.html

◎エヌ・ティ・ティ・ソルマーレが運営する電子書籍サイトであるコミックシーモアは、電子コミック市場の更なる発展と電子書籍用促進のために、「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2020」を開催する。一般投票は10月1日(火)から11月30日(土)まで実施している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000299.000009284.html

琉球新報が10月2日付で社説「芸術祭補助金不交付 表現の自由脅かす検閲だ」を掲載している。
《いったんは交付が決まっていたにもかかわらず、交付を中止するなど前代未聞であり、横暴と言うしかない。》
表現の自由は民主主義の基盤となる人権であることを忘れはならない。憲法を尊重し擁護する義務のある為政者は表現行為が侵害されないよう常に最大限の注意を払うべき立場にある。
「不自由展」は6日にも再開する。化庁は不交付を取り消し、傷ついた表現の自由の回復に努めるべきだ。》
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-999773.html

◎「BUSINESS INSIDER JAPAN」が10月2日付で「年収8000万円の動画長者も出現。制作費数万円の『動画広告』が激変させた市場」公開している。
《こうした“動画長者”が生まれる背景には、動画の低コスト化と、オンライン事業者からの需要の高まりがある。
斎藤さんもクリエイターとして登録している、企業の DX(デジタルトランスフォーメーション)支援を行うKaizen Platform代表の須藤憲司氏は、動画制作事業の売り上げはこの1年で10倍になった、と明かす。》
https://www.businessinsider.jp/post-197171

サイバーエージェントが運営する「Ameba」から、歌舞伎俳優の市川海老蔵、元フリーアナウンサー小林麻央、片づけコンサルタントの近藤麻理恵をはじめ、元卓球選手の福原愛ハンドボール選手の宮崎大輔プロ野球・広島カープ鈴木誠也ど、国内外で活躍するアスリートと化人42名のブログが、「現代社会における生の情報を記録する資料として、それらを保存し、後世に伝える意義は大きい」として、国立国会図書館のインターネット資料収集保存事業(WARP)に保存された。
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=23718
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/news/1567950/

◎「NHK NEWS WEB」が10月1日付で「“やらせレビュー”のリアル」を公開している。
《あるSNSのグループでレビューの書き手を募集していた業者と知りあった。
業者が指定した商品をアマゾンで購入して、高評価のレビューを書くと、商品の購入代金を返金した上に、レビュー1件当たり数百円の報酬がもらえるというものだった。
“0円転売”という手法だった。》
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191001/k10012106921000.html

柴田錬三郎賞集英社など主催)は、姫野カオルコ「彼女は頭が悪いから」(藝春秋)に決まった。
https://twitter.com/shueisha_bungei/status/1179229838621761536
https://this.kiji.is/551943828748682337
https://twitter.com/BunshunBungei/status/1179229634724077577

◎「Mart」(光社)×パナソニック「Martおうち食パン部」キャンペーンが第4弾がスタートした。
https://mart-magazine.com/goods/appliance/24204/?utm_source=pr_191002&utm_medium=pr&utm_medium=earned&utm_campaign=pr_dsc_191002
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000207.000021468.html

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3)【深夜の誌人語録】

真似ることによって創造力は鍛えられる。