【文徒】2016年(平成28)7月6日(第4巻125号・通巻812号)

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1)【記事】雑誌情況への提言 編集部にはエンジニア力が必要だ
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】雑誌情況への提言 編集部にはエンジニア力が必要だ

客 雑誌社もエンジニア系の人材獲得に漸く動き始めた。
主 本当に漸くだ。でも、エンジニアを獲得しても編集から隔離させておくんじゃ何の意味もない。理想は編集部に編集者とエンジニアが対等に同居することだ。アメリカのパブリッシャーは既にそうなっているはずさ。
客 しかし、優秀なエンジニアを獲得できているのだろうか。
主 紙からデジタルに転職して、また紙に戻って来るという人材もいるらしいけれど、エンジニアを採用するのであれば、紙の経験がない人材のほうが良いと思うんだよね。出戻り組だと、話は通じやすいのかもしれないけれど、それじゃ駄目なんじゃないの。結局、旧来の編集という枠組にエンジニア力が回収されてしまって、何も変わらなくなる。
客 なるほど。編集がエンジニア力を身に付けるためには、エンジニアの世界観に飛び込んで行くべきだというわけだね。
主 エンジニア力によって一度、従来の編集が堅持してきた世界観を破壊してもらう必要があるのではないだろうか。それから新入社員の採用にしても、紙の雑誌が好きだと言う、今の同世代からすれば「変態」を採用するのではなく、雑誌はこのままでは滅びると主張するくらいの人材を採用したほうが良いんだよな。
客 そこまで言うかい。
主 本もロクに読んだこともないくせに、紙の雑誌が好きですという類の人材は、足手まといになるだけだと思うよ。それなりに読書の研鑽を積んでいれば、実用系の雑誌の未来はデジタルシフトなしにはあり得ないということぐらいわかるはずだもの。
客 君の持論は、あらゆるメディアはインターネット化し、インターネット化することによってメディアからサービスへと進化していくというわけだろ。
主 サービスという言葉を使うと自称ジャーナリストの連中は眉をひそめる輩が多いけれど、もともとジャーナリズムってサービスなんじゃないだろうか。

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2)【記事】

◎一般の読者からすれば、わかりにくいのは間違いない。「Business Journal」の「買いたい本が発売日に書店にない理由が衝撃的…『いい加減すぎる』出版業界特有の驚愕事情が!」。
「このように、雑誌やコミックなどの発売日が確実に決められているもの以外の書籍は、『発売日』の概念がないということだった。
これには正直、驚いた。出版社が取次に卸す日が、いわゆる『発売日』で、店頭で販売開始される日ではないというのは、ユーザーからすると少しややこしい気がする」
http://biz-journal.jp/2016/07/post_15746.html

◎「週刊文春」7月7日号の「安倍首相自ら口説いた参院選トンデモ候補青山繁晴」について、同誌元編集長である花田紀凱は「選挙戦、真っ最中に、このタイトルで報じるのはやはり行き過ぎだ」と評している。
http://www.sankei.com/premium/news/160703/prm1607030026-n1.html
週刊現代」「フライデー」の元編集長である元木昌彦も「週刊文春が目くじら立てて追及するほどのタマとは思えない」と評したうえで、こう書いている。
「この特集の読みどころは、週刊文春が数々の疑惑を青山氏にぶつけたときに、青山氏が記者を罵倒した言葉の激しさ、汚さである。ひと言だけ紹介しよう。『本当に恥ずかしいヤツだな。そんなことで給料をもらってどうするんだ、お前は。人間が腐りかかっているぞ。家に帰って裸になった自分を見てみろ!』
嫌な取材だからといって、これほど相手の人格を傷つけるようないい方をする人間が参議院議員にふさわしいかどうか、私は疑問である」
http://www.j-cast.com/tv/2016/06/30271157.html

WPPグループの2016年世界のブランド価値ランキング「Brand Top 100 Most Valuable Global Brands Ranking」によれば、トップは「グーグル」、2位「アップル」、3位「マイクロソフト」、4位「AT&T」、5位「フェイスブック」、6位「VISA」、7位「アマゾン」という順位である。
https://markezine.jp/article/detail/24720

ジュンク堂書店福嶋聡による「書店と民主主義―言論のアリーナのために」(人文書院)が朝日、毎日、日経の書評欄で取り上げられている。
http://www.jimbunshoin.co.jp/news/n15617.html
「Aさんは男性客の購入した自由価格本の値札シールを丁寧に剥がして、カバーに消しゴムをかけているところだった。男性客の世間話を立ったまま聞きながら、Aさんはにこやかに消しゴムをかけている。自由価格本はセール品であり、そもそも綺麗な状態のものを期待するような商品ではない。値札を剥がしたり消しゴムをかけるのは購入者自身が持ち帰った後に自分の望むようにやればいい。それを書店員がやっているということは、恐らく何かしらの要望を訴えられたのだろう。
終始穏やかに対応しているAさんに、私は半ば胸を打たれる気がした。一人の購入者に尽くすというそのホスピタリティ。本当は分刻みで忙しい人だということを私は良く知ってる。なのにそのそぶりも見せない。一メートルと離れていない場所に座っていた私はその物静かな光景を前に感銘を噛み締め、ついに一言の挨拶もできないままその場を離れた」
このAさんこそ、ジュンク堂池袋本店時代の福嶋である。「ウラゲツブログ」が2007年3月25日にエントリした「尊敬する書店員Aさんのこと。絶望にどこまでも抵抗する、勇気の人。」からの引用である。
http://urag.exblog.jp/5288245/

◎「エルドライブ」を「少年ジャンプ+」(集英社)で連載中の天野明の原画展が「pixiv Zingaro」で7月28日から開催される。
http://pixiv-zingaro.jp/exhibition/amanoakira

◎ネットフリックスのリード・ヘイスティングCEOに「東洋経済」がインタビューしている。
iPhoneなど、スマートフォンで利用する場合は、アプリをインストールするだけで、簡単にネットフリックスを楽しむことができる。こうした利用の仕方を広げていきたい。
日本だけでなく、世界中でスマホによるサービスの視聴は広がっている。ポケットに入れられるテレビということだ」
http://toyokeizai.net/articles/-/125399
スマホをいかに占拠するか。そのためには、どういうサービスを提供すれば良いのか。雑誌社にも当然問われている課題である。

◎何故、パルコは「MERY」を選んだのか。
「しかし、MERYを選んだのは、『量』だけが大きな理由ではありません。決め手は『質』です。パルコはファッショントレンドをつくってきたという自負があるので、『質』が高い情報でなければ外部に発信していくわけにはいきません。その点で、MERYは記事の『文脈をつくる力』もそうですが、『クオリティの高さ』も併せ持っていると判断しました」
http://www.advertimes.com/20160704/article228640/
MERY」で育った10代、20代が30代、40代になったとき、果たして雑誌を手に取ってくれるのだろうか。このまま雑誌がデジタルシフトをネグレクトしつづけるのであれば、60代をターゲットにした女性ファッション誌しかビジネスとして成立しなくなるだろう。紙の雑誌に拘泥する限り、雑誌文化はやせ細っていくに違いない。

マーケティング支援のトライバルメディアハウスのエンターテイメント専門特化型ユニットであるマーケティングレーベル「Modern Age/モダンエイジ」は、新サービスとしてジャパンミュージックネットワークが運営する音楽情報の専門老舗メディア「BARKS」と共同でエンターテイメントや音楽を活用した企業向けに連続記事型コンテンツマーケティングプラン「STORY」の提供を開始する。
http://www.tribalmedia.co.jp/news/detail/323
光文社の女性ファッション誌と全く同じ名称のサービスとなる。

◎「資生堂×日本刀」の映像が公開されている。資生堂トップヘア&メーキャップアーティストの原田忠が刀匠・吉原義一の「現場」を訪ねる。第二弾は熊野筆
http://www.shiseidogroup.jp/artsandcrafts/japanesesword/

◎2011年に資本・業務提携を締結した学研ホールディングス市進ホールディングスだが、両社は提携業務を拡大し、埼玉地区の学習塾事業を協業して経営の効率化と安定化を図り、進学実績や業績・在籍生徒数で埼玉県ナンバーワン塾を目指すという。リセマムは次のように書いている。
「7月に市進HDが100%子会社のエスワンを設立。10月1日を効力発生日として、市進が埼玉地区で営む学習塾事業を吸収分割によりエスワンに承継。その後、学研スタディエがエスワンの増資を引き受ける形で、エスワンが学研スタディエの子会社になる。増資の引き受けにより、エスワン保有株式は市進HD30%、学研スタディエ70%となる予定」
http://resemom.jp/article/2016/07/04/32440.html

◎学研プラスは、画像投稿SNSサイト「インスタグラム」で見つけた、思わずマネしたくなる料理の作り方を紹介するレシピ本「インスタグラムで人気のおうちごはんBestレシピ」を発売した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000736.000002535.html

◎NewsPicks取材班による「韓流経営LINE」(扶桑社新書)によれば渋谷ヒカリエにオフィスを構えるLINE本社は日本市場に特化した組織であり、ソウルのLINEプラスはLINEの子会社であるが実態的にはLINEのグローバル戦略や海外進出にかかわる予算から何からを総てになっている、「海外本社」であるようだ。
http://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594075149
http://biz-journal.jp/2016/07/post_15750.html

◎米Facebookは、投稿を自動翻訳して複数言語で投稿できる機能を追加した。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1008482.html

主婦の友社の「コモ」は、9月7日発売の10月号をもって隔月刊を終了し、12月7日発売号から2、5、9、12月の季刊誌としてリニューアルされることになった。
https://www.wwdjapan.com/business/2016/07/04/00020936.html
デジタルシフトを前提にするならば、この選択は正しいと思う。

アメリカでは「サブスクリプションサービス」が流行しているそうだ。例えば雑誌を軸としたファッション系の「サブスクリプションサービス」は不可能だろうか。「TABI LABO」の「アメリカで大人気『ファッションサブスクリプション』って?」を読んでいて、次のような箇所を見つけた。
「2015年にスタートした、アメリカのビューティマガジン「allure」のボックス。月15ドル(1,500円)でエディターが選んだ化粧品サンプルを5〜6種類送ってくれるというもの。『BOBBI BROWN』や『PHILP B』、『juice BEAUTY』など有名ブランドのアイテムが入っているのが美容雑誌らしいところ」
http://tabi-labo.com/268895/fashion-subscription/

◎「東京喰種トーキョーグール」(集英社)の舞台化続編が、2017年夏に東京と大阪で上演されることになった。実写映画化もされ、2017年夏に公開される。
http://natalie.mu/comic/news/193203

◎出版界の4団体で構成する〈大震災〉出版対策本部が、JR東日本仙台支社・盛岡支社との共同事業として取り組むコミックイベント「マンガでつなGO東北」がいよいよ7月23日からスタートする。
https://jr-sendai.com/upload-images/2016/06/comictrain.pdf

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3)【深夜の誌人語録】

過去を取り戻すことは誰にもできない。私たちにできるのは未来を創造することだけである。