【文徒】2016年(平成28)10月24日(第4巻198号・通巻885号)

Index--------------------------------------------------------
1)【記事】ハースト婦人画報社の動向から見えて来るもの
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.10.24.Shuppanjin

1)【記事】ハースト婦人画報社の動向から見えて来るもの

ホワイトプラスの運営する宅配ネットクリーニング「リネット」は、ハースト婦人画報社の運営するオンライン・セレク トショップ「ELLE SHOP」の顧客に向け、「アパレルケアプログラム」を期間限定で提供する。 アパレルケアプログラムは、洋服の購入時や会員特典としてリネットのクリーニングチケットを届けることで、アフターケアを案内するサービスだ。
http://mailmag.lenet.jp/press_release/20161020_apparelcare.pdf
「雑誌も発行するデジタル・パブリッシャー」を志向するハースト婦人画報社らしい取り組みだ。
「エル・ガール」が11月22日発売の2017年1月号をもって休刊する ことになったのも同じ理由からだ。デジタルネイティブ世代のニーズはスマホにシフトしてしまっているのだ。
ハースト婦人画報社は、従来の出版社から脱皮し、『雑誌も発行するデジタル・パブリッシャー』への転身を目指し、デジタル事業に注力しています。特に『エル・ガール』の読者であるデジタルネイティブ世代のニーズは益々スマートフォンを中心としたデジタル・メディアにシフトしています。そのため、今年9月には、ビジュアル中心に情報取得するガール世代に向けて、スマートフォン・サイトをリニューアルし、画像領域を拡大したインターフェースに改変し、画像ズーム機能を採用するなど、ユーザビリティを強化しました。今後、さらに充実させるため、当社のリソースをデジタル・メディアに集中投下し、プリント・メディアを休刊することにしました」
「なお、スポンサー企業のニーズに応じて、プリント・メディアのオンデマンド発刊を今後行っていく予定です」
http://www.hearst.co.jp/whatsnew/Corp-161020-ELLEgirl-to-focus-resources-on-digital-media
「エル・デコ」は、今年もインテリア・ショップと「エル・デコ デザインウォーク」を開催する。103軒のショップが参加し、10月26日(水)〜11月7日(月)の開催期間に合わせて、新作発表やエキシビション、体験型イベントなど、様々な催しが都内各地で行われる。
10月22日10時に特設サイトを開設し、タブロイドを通じて、期間中の注目のイベントをエリアごとに紹介し、東京のデザイン&インテリアのイベント完全ガイドを提供 する。
http://www.hearst.co.jp/whatsnew/Corp-161021-ELLE-Decor-Design-Walk-2016
デジタルと紙とイベントと。この三角形を形成できるかどうかが雑誌にとって重要なテーマである。

                                                                                                                        • -

3)【本日の一行情報】

日本テレビの「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」が好評だが、「週刊新潮」が自社の校閲部を自画自賛している。
「手前味噌で恐縮だが、新潮社の校閲部と言えば、出版業界では“超一流”として知られた存在。ドラマの放映に際しても、新聞社やテレビ局からの取材依頼が殺到した」
http://www.dailyshincho.jp/article/2016/10200556/?all=1
新潮社の校閲部が超一流であることは認めるが、「週刊新潮」で書かなくても良いと思うのだけれど…。恐らく「デイリー新潮」での「拡散」を狙ったんだろうな。

◎「businessnewsline」の「企業はなぜTwitterの買収に名乗りを上げないのか? Twitterが敬遠される意外な理由」は、次のように書いている。
「企業はソーシャルサイトに対して、ポジティブな宣伝広告効果を求めているのに対して、ことにTwitterに関してはこのところ、テロリストが広報宣伝に使用したり、ネットいじめの場に使われるなど、一種の「4chan」化が進んでいることが、当初はTwitter買収に興味を示してきた企業が軒並み、アドバイザーを入れた本格調査を進めた後で、引いてしまう要因となっているものとも見られている」
http://business.newsln.jp/news/201610200427570000.html
日本ではセブン‐イレブンが世界で初めてTwitterのロゴを使用したオリジナル商品を発売するそうだ。
http://news.mynavi.jp/news/2016/10/20/139/

音楽専科社と関連の連合通信社は東京地裁より破産開始決定を受けた。音楽専科社は「芸能手帳 芸能界紳士録」、「月刊連合通信」等のマスコミ関連の業界紙を発刊する連合通信社の関連会社として設立された。
http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20161019_01.html

◎私はかつて「新大陸VS旧大陸」や「報道と隠蔽」で「編集力の解放」という言葉を使ったが、これが現実味を帯びて来たということだろう。
https://www.advertimes.com/20161020/article236273/

◎トゥ・ディファクトが運営するハイブリッド型総合書店「honto」は、10月20日(木)に、本を薦めるプロであるブックキュレーターが自由に設定したテーマにもとづいて選んだ本を提案する「ブックツリー」を本格的にスタートさせた。
http://www.2dfacto.co.jp/pdf/161020_1.pdf

カドカワ傘下の 角川ゲームスと上海のAlpha Games は、10月14日(金)に北京でAlpha Gamesが開催した「Alpha Games北京発表会」で、二社による製作委員会を組成し、スマートフォンゲーム「STARLY GIRLS -Episode Starsia-」をモチーフとする アニメ「星娘」を製作することを発表した。制作は角川ゲームスが担当し、日本をはじめ中国以外の事業展開は角川ゲームスが、中国でのネット配はAlpha Gamesが担当する。
http://animeanime.jp/article/2016/10/20/30982.html
東洋経済ONLINE」は「中国資本で生まれる『純日本製アニメ』の正体」で次のように書いている。
「アルファ社の親会社であるアルファグループは、子ども向け玩具で急成長したエンターテイメント企業だ。2013年からゲームやアニメ、コミック、映画などへ事業領域を広げている。自社独自のIP(知的財産)を複数保有し、アニメやコミック、ゲーム、玩具へクロスメディア展開することで成長を続けている」
「アルファ社では、角川ゲームス以外の日本企業とのパートナーシップも視野に入れている。中国・日本共同でゲームやアニメを開発するプロジェクトは成功するのか、星娘も試金石の1つとなりそうだ 」
http://toyokeizai.net/articles/-/141183

◎偽「アンアン」広告がフェイスブックを闊歩しているようだ。マガジンハウスが注意を喚起している。
「ananのサイトのデザインを巧みに模倣し、あたかもananで取り上げたかのような偽装記事を広告として掲載してダイエットサプリなどを販売する悪質サイトの被害報告が寄せられています。このサイトを利用して無料サンプルを申し込んだところ、気づかぬうちに高額の定期購入になっていて、代金を騙し取られたといった被害が明らかになっています。
このような宣伝広告は、ananとは一切関係がありません。また本誌、およびWEBサイトでも、該当する記事を取り上げた事実もありません。充分にご注意ください 」
http://magazineworld.jp/anan/attention-201602/
悪い奴らは「デジタルシフト」に敏感だ。

◎「ハリガネムシ」 で芥川賞を受賞した吉村萬壱がマンガを描いた。文藝春秋から「流しの下のうーちゃん」 を上梓する。
http://natalie.mu/comic/news/206213
http://books.bunshun.jp/articles/-/432

モーターマガジン社 の写真&カメラ情報誌 「カメラマン』」が、App Store の雑誌・新聞カテゴリに登場した。端末にアプリをダウンロードするだけで電子書籍による〝定期購読〟が行えるほか、バックナンバーも購入できる。1ヶ月 720 円、3カ月2,000 円、6ヶ月3,800円、12ヶ月 7,400円。
http://www.dreamnews.jp/press/0000140435/

日本広告審査機構JARO)と日本化粧品工業連合会は共同して、化粧品(薬用化粧 品を含む)におけるインターネット上の広告・表示の調査を外部機関に委託して実施した。その結果、問題表示のおそれのある広告・表示は全体の 85% に及んだ。インターネット上で広告・表示を行う広告主が医薬品等適正広告基準を順守できていない実態を浮き彫りにしてしまった。
http://www.jaro.or.jp/oshirase/pdf/20161012press.pdf
http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2016/10/jaro85.html

アメリカの新聞も苦労している。「ウォールストリートジャーナル」の「新聞広告激減で新たな変化の波」は「新聞各社は、自社のデジタル収入を増やして印刷広告の激減を埋め合わせるため、時間との競争に追われている 」と書いている。
「デジタル収入を増やすため、多くのパブリッシャーは料金の安いディスプレイ広告(写真やロゴを中心とした視覚的要素の強い広告)を徐々に放棄し、潜在的に儲けの大きい広告を多く提供しようとしている。ネイティブ広告(広告らしさを感じさせない自然な広告)、映像広告、仮想現実(VR)広告などだ。しかし、これまでのところ、デジタル広告収入は、印刷広告の落ち込みを相殺するほど十分に成長していない。とりわけ新聞広告料金が依然として相対的に高価なことも一因だ」
http://jp.wsj.com/articles/SB12188716230581874349104582387281558168826

◎デヴィッド・フランケル監督の「素晴らしきかな、人生」の主人公は広告代理店CEO である。
http://news.aol.jp/2016/10/21/collateralbeauty/

◎マガジンハウスの「& Premium 」は創刊3周年を記念して下北沢にある本屋〈B&B〉 でルイ・マルの「地下鉄のザジ」の上映会を開催する。何と12月号の表紙はザジだ。
http://andpremium.jp/news/issue-40/
こういうセンス、好きだなあ。

◎「ポケモンGO」の売上が史上最速 で6億ドルに達した。中国が米国を抜き世界最大の市場 だそうだ。
http://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1026047.html
ちなみにオレは現在レベル33。オレの図鑑には122匹のポケモンがコレクションされている。

◎「ミモレ×ソフール」コラボ記念スペシャトークショーが10月30日、大丸札幌店 6Fグリーンパティオで開催される。
http://mi-mollet.com/articles/-/6383

ディーン・フジオカ集英社の男性ファッション誌「UOMO」12月号 より「UOMOキャラクター」に就任した。
「清潔感あふれるルックス、モードな服も着こなすセンス、5つの言語を操る知性、ストイックに鍛えたカラダ、そして、男が惚れる男気! 究極に『スマート』な男、ディーン・フジオカさんはUOMOの顔にピッタリです!」(八巻富美子編集長)
http://www.47news.jp/topics/entertainment/oricon/culture/211571.html

産経新聞は大津支局の記者2人を処分した。
産経新聞大津支局の記者が大津市を提訴した住民団体の記者会見の録音データなどを市職員に渡した問題で、提供を指示した記者を減給に、実際に手渡した記者を譴責(けんせき)処分にしたと同社が明らかにした。小林毅・編集担当取締役ら4人も管理責任があったとして譴責処分にした。20日付」(朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASJBP3C6QJBPPTJB004.html

◎このブロガーは元電通マン。15年間、電通に勤めた経験をベースにした文章だ。「月刊ショータ」の「広告業界という無法地帯へ 」である。
「長時間勤務の問題は、電通上層部が何十年にも渡り頭を悩ませてきたことだ。
そこまで悩むならいい加減解決策を出せ、と言われるだろうが、そうはいかない。
理由のひとつは、『電通は自社でモノを作って売っている会社ではない』ということだ。自社の工場を動かす会社なら、製造量を制限して『はい、ここまで』と電気を消して、社員を帰らせれば済むかもしれない。しかし、広告業界というのはクライアント企業から仕事を請けて初めて仕事が発生する受注産業である」
こんな指摘もしている。
電通グローバル化を推進していて、外国の大きな会社を買収し、取締役に外国人を招き、会計年度まで海外に合わせて三月から十二月に移した。外ヅラだけグローバル企業を取り繕い、内実は昔ながらのドメスティックなやり方で、現代ならではの非人間的な組織運営を進め、どうするつもりなのか。
欧米の広告会社がどうしているのかは知らないが、グローバル気取りするなら、仕事の前に契約書でも取り交わして、することとしないことと、できることできないこと、その料金表を提示して、それを遵守したらどうなのか。『働くな。しかし任務は死んでも完遂せよ』と、社内の締め付けを強化して何かが解決するのか」
http://monthly-shota.hatenablog.com/entry/2016/10/20/214026

電通って素晴らしい会社だよなあ。「日本のテレビCM史の流れを変えた異才― 今村昭物語」を読むべし。今村とは私などにはサム・ペキンパー論が忘れがたい石上三登志のことだ。今村は大林宣彦鈴木清順をテレビCMの世界に引っ張り込んでしまうんだよなあ。
http://dentsu-ho.com/articles/4557
http://dentsu-ho.com/articles/4558
http://dentsu-ho.com/articles/4569
http://dentsu-ho.com/articles/4570
http://dentsu-ho.com/articles/4592
石上の「私の映画史 」(論創社)を読むべし。その昔、オレは今村昭のような存在に憧れて、プロダクション21というCMの制作会社に入社したんだよなあ。一階が開高健が贔屓にしていた「シェ・ルネ」でさ。プロダクション21の副社長は、やがて「ダック・コール」を書くことになる稲見一良だった。
http://ronso.co.jp/book/%e7%a7%81%e3%81%ae%e6%98%a0%e7%94%bb%e5%8f%b2/

◎米通信大手AT&Tがタイム・ワーナー を買収する可能性が高いようだ。
http://jp.wsj.com/articles/SB11722542889903014546304582388740007607660

◎「知られざる出版『裏面』史」を有田芳生や岡映里 がツイッターで紹介してくれている。
https://twitter.com/aritayoshifu/status/788510089334231040
https://twitter.com/okaimhome/status/789095918389702657
フェイスブックでは館淳一が絶賛してくれている。
〈これは出版関係、編集関係の人にはぜひ読んでほしいおすすめ本。会員制業界誌『出版人・広告人』に連載されていた元木昌彦氏インタビューをまとめたもの。インタビューイが個性的すぎる出版人ばかりで、その打ち明け話がくりびってんぎょー(古いね)の連続。『出版人・広告人』はほとんど一般の目に触れない雑誌だけに「もったいないなあ」と思っていたけれど、こうやってまとめられて実によかった。畏友・長澤潔氏もインタビューイのひとり〉
https://www.facebook.com/junichi.tate/posts/1181177895281431
配本が決まった。トーハンが450、大阪屋栗田が230、日販がTRCの70込みで300。日販には500をお願いしていたのだけれど、思いは通じず。

◎「web中公新書」がオープンした。
http://www.chuko.co.jp/shinsho/portal/

                                                                                                                        • -

3)【深夜の誌人語録】

敗北に敗北を重ねても挑戦しつづけるしかないのが人生である。