【文徒】2016年(平成28)年11月11日(第4巻211号・通巻898号)

Index--------------------------------------------------------
1)【記事】インターネット広告の構造こそが問われている!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】インターネット広告の構造こそが問われている!

BuzzFeed」の「【電通過労自殺】背後でつながる2つの『事件』 ブラックすぎるネット広告、精神論という名の対策」は、電通の過労死事件とネット広告不正事件の源は同じであるという視点から書かれた記事である。ネット広告の構造の問題を俎上にのぼせているのだ。
「背景にあるのは、急速に進展し、最先端なはずのネット広告業界にはびこるアナログすぎる暗部だ。
伸びる需要に人手が追いつかず、電通のような大手広告代理店でも、正社員にとっては過重労働になり、子会社ともなれば、過酷な労働状況で、人が次々と入れ替わる」
「かねてから問題が指摘されている社内の体質に加えて、インターネット広告の構造自体が新たな問題をもたらす。構造の中で『人』が疲弊していくのだ」
例えば「かねてから問題が指摘されている社内の体質」という書き方に異論がないわけではないが、昨日の「文徒」でも触れておいたが「インターネット広告の構造自体」に問題があることは間違いあるまい。
更に言えば「ネット広告の構造」に直面しているのは電通だけではない。それだけに、この記事に登場する電通マンの発言にはリアリティがあるのである。
「レポートを不正に書き換えたのは、だましてやろうという意図ではなく、激務の中で、ミスが起きてもなんとか数字上つじつまをあわせないといけない、という思いがあったのではないか。そう思えてなりません」
「2つの事件が地続きに起きていることは、この業界にいれば誰でもわかる話です。それなのに、どのメディアもネット広告の構造に踏み込んで批判をしない」
https://www.buzzfeed.com/satoruishido/dentsu-mondai?utm_term=.ig502Y09yG#.hlJJY9JWyv
確かにこの記事が指摘するように社員の「覚悟」や「自覚」「姿勢」で解決するような問題ではあるまい。それこそ「覚悟」や「自覚」「姿勢」で解決するような問題ではないという「自覚」なり「姿勢」が、フィリップ・コトラーの「デジタル化するか、さもなくば死」という言葉を引用してデジタルシフトの旗を振って来た石井直社長には問われているはずだ。
田原総一朗も「週刊朝日」で次のように書いている。
「ところで、電通ではネット広告がどんどん拡大して、新聞広告と肩を並べる状態になっているのだが、新聞、テレビ、ラジオなどの媒体広告は、クレームが厳しくても、即日、翌日に対応しなければならないわけではないが、ネット広告の場合は、毎日夕方に1日の運用結果が出るので、それをもとに翌日からの出稿について調整しなければならず、クライアントからの要望も数限りがない。つまり、毎日完全に作業に忙殺されることになるわけだ。そして自殺した女性・高橋まつりさんはこの職場であった」
https://dot.asahi.com/wa/2016110900190.html?page=1
厚生労働省主催の「過労死等防止対策推進シンポジウム」が11月9日に開かれ、電通の新入社員だった娘を過労自殺で失った母親が登壇し、約10分間にわたって語った内容の全文が朝日新聞に紹介されていた。私の目にとまったのは次のような部分である。
「週明けに上がってきたデータを分析して報告書を作成し、毎週クライアントに提出する仕事に加え、自宅に持ち帰って論文を徹夜で仕上げたり、企画書を作成したりしていました」
http://www.asahi.com/articles/ASJC95JJPJC9ULZU007.html?ref=rss
さしあたりネット広告の煩雑にして、アナログ的な業務を自動化するシステムの構築が求められているのではないだろうか。
電通デジタルが正社員を募集している。年俸は400万円〜600万円。
https://doda.jp/DodaFront/View/JobSearchDetail/j_jid__3001474524/

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2)【本日の一行情報】

大阪屋栗田の限定企画「SMAP×actorsフェア」は「ポポロ」(麻布台出版)や「シネマスクエア」(日之出出版)、「SWITCH」「キネマ旬報」「演劇ブック」でSMAPのメンバーが俳優として取り上げられているバックナンバー14点35冊を集めたものだ。大阪屋栗田には、今後もこういう販売会社らしい企画力を期待したい。
https://oakpress.oak-pd.co.jp/media/2016/11/08/92

◎「バラ色の明日」や「潔く柔く」で知られる実力派いくえみ綾の猫にまつわる仕事17年分を1冊にまとめた「そろえてちょうだい?」0巻が祥伝社から刊行された。これ傑作です、はい。
http://natalie.mu/comic/news/208557

◎サンリオのキャラクター「ハローキティ」と相田みつをの異色のコラボによる「幸運日めくり 願い(ウィッシュ)編 ハローキティにんげんだもの 〜毎日がもっと楽しくなる31の言葉〜」が「J-CASTニュース」によればネットで話題になっているそうだ。これダイヤモンド社の商品なんだね。こうした柔軟性がダイヤモンド社の武器なのだろう。東洋経済新報社にはない。
http://www.j-cast.com/2016/11/08282943.html

◎ぴあは、ユニー・ファミリーマートホールディングスの発足にともない、サークルK・サンクス店舗に加え、全国のファミリーマート店舗に、チケットぴあサービスを導入することで、ファミリーマートと基本合意したそうだ。
http://corporate.pia.jp/news/%E3%80%904337%E3%81%B4%E3%81%82%E3%80%91FM%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E5%90%88%E6%84%8F20161108.pdf
これは、ぴあにとっては大きい。ちなみに、ぴあはセブン&アイ・ホールディングスと資本業務提携している。
蛇足ながら「ぴあ ゴスペルワンダーランド」は渋い企画だ。淡野保昌、亀渕友香ラニー・ラッカーの鼎談をやっているんだぜ。こういうぴあが好きだなあ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000299.000011710.html

◎「DIGIDAY」の「米大統領選、日本の新聞5紙はいかにデジタル速報したか?」は次のように書いている。
Facebookのライブ動画が正式にリリースされて約9カ月。ABCニュースやニューヨーク・タイムズなどのレガシーメディアから、NowThisなどのニューメディアまで、アメリカのメディアはこぞって、今回の報道にこの機能を利用している。
対して、日本のメディアは、まだそこまで対応はしきれていない。切っても切れない関係の国とはいえ、自国のトピックではないためか、そこまで前のめりになる必要がないところもあるだろう」
http://digiday.jp/publishers/us-election-day-japanese-media/
島地勝彦はトランプ大統領当選を確信していた。高校時代の同級生と賭けまでしていたんだよね。これは仲俣暁生フェイスブックで知ったことなのだが、トランプ嫌いのリベラルである映画監督のマイケル・ムーアも早い段階でトランプ大統領誕生を予測していた。
http://www.huffingtonpost.jp/michael-moore/5-reasons-why-trump-will-win_b_11254142.html

◎グラングレスが運営する月額制ファッションレンタルサービス「Rcawaii」の協力によって、ギャル系ファッション誌「Happie nuts」が「小悪魔ageha」12月号のブックインブックという形で復刊した。今回限りということらしい。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000016773.html

◎「アタシ社」は編集者兼ライター兼カメラマンのミネシンゴとデザイナーの三根加代子という組み合わせの夫婦が経営する「ふたり出版社」だそうだ。「ウートピ」が紹介している。
http://wotopi.jp/archives/43296
美容文藝誌「髪とアタシ」を発行している。
http://www.atashisya.com/

◎「日刊大衆」で元週刊文春記者の中村竜太郎が「僕らの仕事は、権威を笠に着て生きている人に向かって、石を投げることだと思うんです」と語っている。
http://taishu.jp/detail/25373/

◎増刊号として発売する「レタスクラブ創刊29周年記念特大号」(KADOKAWA)の付録はビッグサイズ「SNOOPY縦型トートバッグ」。530円。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002772.000007006.html
オレンジページの元社長がSNOOPYの大ファンであったことを思い出す。

サイバーエージェントが運営するオンラインビデオ総研などによる調査によれば、2016年の動画広告市場は842億円、前年比157%。しかも、スマートフォン動画広告需要は前年対比2倍の成長を遂げ、動画広告市場全体の約7割に到達したそうだ。
https://www.cyberagent.co.jp/newsinfo/press/detail/id=12795
雑誌はデジタルシフトによって動画という武器を手にしたことを喜ばなければならないはずなのだが、どうも現実はそうじゃないんだよなあ。

◎「岩波ブックセンター」の故柴田信会長のお別れ会が11月21日午後2時より如水会館で開かれる。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201611/CK2016111002000264.html

文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を獲得した「月刊COMICリュウ」(徳間書店)連載の今井哲也の「アリスと蔵六」がテレビアニメ化されることになった。
http://anime.eiga.com/news/103624/

中央公論新社から刊行される予定であった読売新聞国際部による「ヒラリー、女性大統領の登場」は幻に終わった。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/11/09/story_n_12890140.html

◎面白おかしく書いているけれど、「中川淳一郎が明かす『電通博報堂』の実態 “25人で8時間”の悶絶会議、高給取りの“暇なおじさん”問題」(デイリー新潮)は精度が高い。さすが中川である。
http://www.dailyshincho.jp/article/2016/11100800/?all=1