【文徒】2016年(平成28)年11月10日(第4巻210号・通巻897号)

Index--------------------------------------------------------
1)【記事】電通の石井社長が社員に向けて説明会を開催
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】電通の石井社長が社員に向けて説明会を開催

11月7日、電通の石井直は社員に向けて説明会を開いた。どの新聞も取り上げている。
電通の関係者などによると、石井社長は冒頭、『今日は厚労省の捜査が当社に入った。引き続き全面的に捜査に協力していく』と発言。終始険しい表情で、業務量の削減と業務プロセスの見直しを進め、社員の働き方の多様化や人材育成・人事評価・組織運営のあり方の見直しに取り組むと表明した。『社は大変厳しい局面にあるが、皆さんの力を結集してともに新しい電通をつくっていこう』と呼びかけ、不適正な労務管理への処分にも言及したが、社員が残業時間を減らしてウソの申告をする実態を認める発言はなかったという」(朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASJC81CXKJC7ULFA03Y.html
「異例の大規模捜査を受けた電通は同日、全社員に対し、働き方の改革を求めたが、社員からは『上層部の意識改革こそ必要だ』と冷ややかな声が上がった」(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/20161108-OYT1T50015.html
「一方、電通の石井直社長は七日、本社内で社員に労働環境の改善に向けた取り組みについて説明。同社の最大の財産は『人』であるとして、働き方の変革や業務の見直しなどを呼び掛けた」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201611/CK2016110802000130.html
「石井社長は長時間労働の背景として、環境の変化や仕事量の増大に加え、『いかなる仕事も引き受ける気質』を挙げた。その上で、『業務量自体の削減と分散化』『業務プロセスの見直し』『時間の使い方の改善』などを社員に求めた」
「50歳代の男性社員は「『電通人』の行動の基本原則は鬼十則。それに沿った行動を求められてきたのに、社長の説明は改革というより自己否定とも取れる内容。違和感を覚える」と首をひねる」
「先の50歳代の社員の受け止めは複雑だ。「『いかなる仕事も引き受ける気質』は鬼十則の『難しい仕事を狙え』『取り組んだら放すな』そのものだったはずなのに」と社長説明に不満を漏らしつつ、今回の強制捜査が労働時間も含めた職場環境の改善につながってほしいとも思う」(毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20161108/k00/00m/040/134000c
社員に対する説明会を開いて終わりではないだろう。電通もまたマスコミの重要な一角を占めている企業である以上、記者会見も開いて当然である。石井社長が前面に出ない限り、電通は取材から逃げ回っているという印象を大衆は間違いなく持つだろう。
電通の「鬼十則」が諸悪の根源であるかのように報じられているが、過労死した女子社員の「労働」に関して言えば「ZUU online」の次のような指摘のほうが的を射ていよう。
「今回の事件で女子社員は、デジタル広告の出稿データはデジタルであるにも関わらず、わざわざそれを出力して手でエクセルに入力してレポートを作成していたという。デジタルデータをアナログな方法で処理していたという、まったく笑えない話だ。
今回の事件は、立派な本社ビルや先端を行くようなカタカナの肩書き、業界をリードしていたと思われていた電通が、いまだにアナログな人海戦術でビジネスを成り立たせているという内情を明かした。このような構造的な問題は電通に限らず、この業界にまん延し、いまだに解決されていない。
逆に言えば、この問題に対処しようとする会社には次の時代のチャンスがある」
https://zuuonline.com/archives/127185
広告代理店のデジタルシフトのあり方が問われているのである。

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2)【本日の一行情報】

◎日経の「小学館『AneCan』10年の歴史に幕」は、次のように書き出されている。
小学館のファッション誌『AneCan(アネキャン)』が7日発売の12月号で休刊し、10年の歴史に幕を閉じた。『エビちゃん』こと蛯原友里さんや押切もえさんら人気モデルを専属に抱え30代前後の女性から支持を集めた。2010年に32万部だった発行部数は約8万部まで減少していた。スマートフォンの普及や若者の書店離れで、休刊に追い込まれる雑誌が増えている」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ07ILH_X01C16A1TI5000/
出版社が紙の女性ファッション誌を維持したいと本気で考えるのであれば、重心をデジタルに移すことである。紙に重心を置いたままのデジタルシフトは、百害あって一利なしであると思う。デジタルに重心を置きながら、イベントなどオーディエンスと直接的に繋がるリアルシフト、アジア地域を中心としたグローバルシフトに取り組む。むろん、紙の雑誌、デジタル、リアルにおいて共通して果たすべきは、メディアからサービスへという「認識論的切断」にほかなるまい。「認識論的切断」を英語で言えばパラダイムチェンジということになろうか。

美容外科医の高須克弥による「ダーリンは70歳 高須帝国の逆襲」が回収となったのは5月のことだが、高須は版元を通さず電子書籍版をリリースしたというのだけれど・・・。価格は紙版の半額にあたる500円。高須は「withnews」で次のように語っている。
「昔の身分制度に言及し、うちの高須家のひいおじいさんが情け深い人で、差別されていた子どもたちにも、かわいいのうと餅を投げてやっていたと書いた部分の変更を求められました。
私の出身の愛知・三河では家が完成したときなどにおこなう、『餅投げ』という風習がある。そうした場でも差別があった時代に、ひいおじいさんは餅を投げてあげていた。その時代にあったことを正確に言っただけで、そこでうそを言ってしまうと僕の意図が伝わらない。
しかし、小学館とけんかをする気はありません。話し合いをしたうえで、自分たちで電子書籍にしてスジを通す。それが一番よい落としどころだったと思っています」
http://withnews.jp/article/f0161108003qq000000000000000W03610101qq000014270A
私は小学館の判断が妥当であったと思っている。高須の発言を一方的に掲載する「withnews」にも問題があるのではないか。

◎全国で約813 店舗の書店販売を展開するTSUTAYAは、「TSUTAYAが『本との出会い』を変える。」をコンセプトに、TSUTAYAの書店スタッフが、まだ書籍化されていない投稿小説や企画段階の小説の中から、面白いと自信を持ってオススメできる作品を見つけ出し、書籍化するプロジェクト“書店スタッフが選ぶ「新刊プロデュース文庫」”を開始した。第一弾は、二宮敦人の「最後の医者は桜を見上げて君を想う」(発売元:TOブックス/TO文庫)だ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000135.000018760.html

文教堂グループホールディングスは「アニメガ」を展開しているがロフトと共同でアニメガの新業態を共同開発する。第1号は京都ロフトの店舗内にアニメガ京都ロフト店として11月中旬にオープンする。
http://animeanime.jp/article/2016/11/08/31248.html

◎アニメ映画「聲の形」が動員数160万人を突破、興行収入は21億円を突破。まだまだ数字が伸びそうだ。
http://animeanime.jp/article/2016/11/07/31232.html

◎1946年8月15日に中原淳一が創刊した雑誌「それいゆ」の創刊70周年を記念して、期間限定「中原淳一スペシャルショップ」が、HMV&BOOKS TOKYO1周年を記念した企画と連動しオープンする。創刊号の編集後記が素晴らしい。
「こんな本はくだらないと言はれるかも知れない。お腹の空いてゐる犬に薔薇の花が何も食欲をそゝらない様に。然し私達は人間である!!窓辺に一輪の花を飾る様な心で、この『ソレイユ』を見ていたゞきたい」
http://www.hmv.co.jp/newsdetail/article/1611071021/

◎サッカーニュースサイトの「GOAL」は37の国と地域において18言語でサイトを公開しているという。これが日本版のウエブサイトだ。
http://www.goal.com/jp
「DIGIDAY」によれば「その世界戦略の中心となっているのは、もちろんFacebookだ」そうだ。Facebookページのフォロワーは何と5200万人!
「『ゴール』は1年前にいち早くFacebookのライブ動画の実験をはじめたパブリッシャーのひとつで、200本を超えるライブ動画を、英国、フランス、イタリア、スペイン、米国、ブラジル、アルゼンチンなどの国々で公開してきた。各国の編集チーム(総勢350名)は、どの国でも使えるような動画を制作するのではなく、それぞれの母語でライブ動画を制作。また、制作用のツールを使いこなせるようになるにつれて、動画のスタイルも進化しているという」
日本ではLINEを使い、既に650万人のフォロワーを獲得している。では、そこから利益を得ているのか?「DIGIDAY」は、こう書いている。
Facebookなどのプラットフォームから収益を得るという点については、長い取り組みになることを覚悟しているようだ。『マネタイズは簡単ではないが、将来的にはチャンスがあるはずだ。そのチャンスを活用できるベストなポジションにいたいと我々は考えている。実際、いくつかの商機がすでに存在している』と、ブラウン氏は言う」
http://digiday.jp/publishers/football-site-goal-using-facebook-global-reach/

◎コピーライター/メディアコンサルタントという肩書を持つ境治が「アドタイ」で、「TV ネットで同時配信 放送法改正へ 19年にも全面解禁」というタイトルで掲載した10月19日の朝日新聞の朝刊一面の記事は「デマに近い報道」だと指摘している。
「見出しを文字通り受けとめると、これまで放送法で禁じられていたテレビ番組の同時配信が19年に全面的に解禁されることが決まったんだな、となってしまいます。それは大誤解なんです。
現状、民放テレビが番組を放送と同時にネット配信することを、法律は禁じていません。だから例えば、熊本地震の時には各局ともYouTubeを使ったり、AbemaTVやホウドウキョクなど独自のやり方で同時配信していました。あれは災害だから超法規的措置だった、わけではなく、法律上問題ないのでやったわけです」
NHKの場合は放送法で同時配信を特別な場合に限定されており、日常的にやるには法律の改正が必要です。だから『NHKの同時配信、19年に全面解禁』となっていれば正解に近づいたかもしれません。それでも、NHKの同時配信が決まったわけでも何でもないので、やはり誤報に限りなく近いのは変わりませんが」
https://www.advertimes.com/20161108/article237862/

ツイッターがサービスを停止するVineをLINEが買収する可能性があるのか・・・。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1611/08/news085.html

野間文芸賞堀江敏幸の「その姿の消し方」(新潮社)。野間文芸新人賞戌井昭人の「のろい男 俳優・亀岡拓次」(文藝春秋)に決定。野間児童文芸賞柏葉幸子の「岬のマヨイガ」(講談社)。
http://www.kodansha.co.jp/about/nextgeneration/award/24904.html
http://hon.bunshun.jp/sp/kametaku

東京ニュース通信社は、日本ABC協会に加盟し、ABC部数の公表を開始した。「TVガイド」の1〜6月期のABC部数は145,396部。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000126.000006568.html

◎昨年11月に開店した船橋ららぽーとTOKYO-BAY」1号店に続き、光文社の女性誌「Mart」がプロデュースしたレストランの2号店が10/6(木)に「ららぽーと湘南平塚」内にグランドオープンした。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000021468.html
雑誌のリアルシフトの例である。

光文社新書の「消えゆく沖縄 移住生活20年の光と影」発売を記念して仲村清司のトーク&サイン会が12月4日(日)にジュンク堂書店那覇店地下1Fイベント会場で開かれる。
http://honto.jp/store/news/detail_041000020359.html?shgcd=HB300
聞き手は「沖縄アンダーグラウンド」に取り組んでいる藤井誠二だ。
https://camp-fire.jp/projects/view/5955

◎「VOGUE JAPAN」ウェブ編集部がアルバイトスタッフを募集している。時給1,000円〜。
http://corp.condenast.jp/jobs/id/79/

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3)【深夜の誌人語録】

相手から理解されることがない限り、相手を理解したことにはならない。