【文徒】2017年(平成29)年1月5日(第5巻1号・通巻930号)

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1)【新年のご挨拶】
2)【記事】"ブラック企業"認定された電通的"自由"、その行く末への危惧。(岩本太郎)
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2017.1.5 Shuppanjin


1)【新年のご挨拶】

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いいたします。
出版人は本日が仕事始めでございます。お近くにおこしの際に、お立ち寄りいただければさいわいです。
今井照容

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2)【記事】"ブラック企業"認定された電通的"自由"、その行く末への危惧。(岩本太郎)

仕事納めの12月28日に、電通(および過労自殺した社員の上司)が厚労省東京労働局により労基法違反の疑いで書類送検されたニュースは、同日19時から石井社長ら経営陣が出席のうえ行われた記者会見がネット中継までされるなど、メディアでも大々的に報じられた。東京労働局が昨年11月の強制捜査からわずか1ヵ月半という異例の早さで立件に踏み切った背景について、朝日新聞は《「政治案件」で急展開か》などとしながら、翌29日の紙面次のように伝えた。
厚労省の関係者は、安倍政権が「働き方改革」を目玉政策に掲げていることを念頭に「政権の影響があると考えるのが自然だ」と話す。長時間労働の是正に向けた議論が年明けから本格化する予定で、その目前での送検にもなった。ある捜査関係者は「典型的な政治案件だ」と漏らした》
http://www.asahi.com/articles/ASJDX5J0NJDXULFA01J.html
世間に与えるインパクトでいえば、同様の問題が指摘されている朝日新聞を狙ったほうが大きいだろうが、さすがにそれはできないだろう。ともあれ、そうした政権の影響が本当にあるのかどうかは別として、世間に対するある種の見せしめとして行われているのでは、ということは電通側も当然感じているようで、朝日の別の記事はそんな社員たちのボヤキをまじえながら報じている。
《若手社員は「ウチは目立つ会社だし、見せ物になっているのかな。『働き方改革』と世の中が言うなかで、パフォーマンスの材料として扱われている気がする」と漏らす。「ずっと続けてきた働き方はすぐには変えられない。今は『反省しています。だから変えます』と言っているだけだ」》
http://www.asahi.com/articles/ASJDX5J0NJDXULFA01J.html
コラムニスト兼クリエーティブ・ディレクターでで、かつて電通に15年間在籍した前田将多は、28日の記者会見における中本祥一副社長の「電通ブラック企業ではない、と声を大にして言いたい。が、世間にそのように思われている事実は真摯に受け止める」という発言に「首肯する」と表明。翌日の『ハフィントンポスト』に寄稿した《電通はなくならない。自由がまたひとつ、なくなる》と題した記事の中で《ブラックどころか、自由放任が過ぎたのだ》《電通の美点と今回の汚点は表裏一体であった》としながら以下のような見解を披露している。
《今でも上限までの残業代は支払われ、それを越えてしまった場合でも支払われてきた。それを偽って少なく申告させた事実は、おそらくは人件費の削減が目的というよりも、労基署の目を逃れるため、または上司が責任を問われないための、その場しのぎの誤魔化しであったと考えられる》
《その自由の中で、自由を濫用する人に当たると不幸が起きる。自殺してしまった女性社員を最悪の事例として、それ未満の例であれば大抵の社員は程度の差こそあれ経験はあるはずだ。
電通の人は基本的には仕事が好きであるため、管理職である上司すらも現場を自由に飛び回って不在がちなことも多い。退職することなく何十年も在籍している人は、それだけでもこの仕事を愛している証左とも言えよう。本来は苦しくも楽しい仕事なのだ》
http://www.huffingtonpost.jp/shota-maeda/dentsu-overworking_b_13870446.html
いわゆる賃金未払いや社会保険などの手続きを疎かにしたまま非正規労働の社員を長時間労働で追い詰めたりするという、巷間"ブラック企業"と言われた時に思い浮かぶ企業のそれと、今回の電通におけるケースをまったく同列にひっくるめて論じられないことは言うまでもない。
が、ここまでの推移を見る限り、事態は「ブラック企業の象徴である電通に対して、一年の最後に遂にお上の裁きが下りました」というお祭り騒ぎの中で、前田の言うように電通から「自由」が奪われてしまうのだろうか。
国土交通省の前事務次官で同省顧問の徳山日出男が1月1日付で電通の顧問に就任したが、例えば徳山が石井社長退任後、どのような役割を担うことになるのか。ここが今後の電通を占うポイントになるやもしれない。
http://jp.reuters.com/article/idJP2016122801001581

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3)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎遂に宅配のヤマトのドライバーたちから「アマゾン多過ぎ」との悲鳴が上がってきたと『弁護士ドットコム』が昨年末にレポート。
Amazonの配送はもともと佐川急便が受け持っていた。ところが、運賃の値上げ交渉が決裂し撤退。入れ替わりで、ヤマトが2013年から参入した。現在、Amazonの配送はヤマトを中心に、日本郵便や「デリバリープロバイダ」と呼ばれる中小企業などが受け持っている。
佐川が撤退するような運賃でもヤマトが手を挙げたのは、佐川とのビジネスモデルの違いが大きい。佐川の宅配便の多くは、下請け業者に代金を払って届けてもらっている。これに対し、ヤマトはほぼ自社ドライバーで届けることができる。配達効率を上げれば、利益が出る。
しかし、目論見に反して、現場はパンク寸前だという。前述のAさんは次のように証言する。「この1年で周りのドライバーが10人ぐらいやめました。下請けの人にお願いして凌いでいるけど、社員自体はなかなか増えない。この間も、体験入社の子を1日、トラックの助手席に乗せたところ、『仕事が慌ただしすぎる』と言ってやめてしまいました」》
https://www.bengo4.com/internet/n_5530/

講談社の1月1日より、今年で生誕50周年を迎えた『天才バカボン』を起用した「読みぞめ」キャンペーンの特設サイトを開設。ちなみに同日の新聞各紙への全面広告は朝日と毎日には『天才バカボン』、読売には『進撃の巨人』が起用された。
http://yomizome.com/
http://corp.kodansha.co.jp/newyear/2017/

◎昨年秋の音楽専科社の倒産で去就が注目されていたヴィジュアル系バンド専門雑誌『SHOXX』と、声優情報誌の『Pick-upVoice』が、電子チケット販売やファンクラブ運営などを手掛けるEMTG(本社・港区赤坂)より1月以降復刊されることになった。『Pick-upVoice』は一時辰巳出版に移って『声優Pick-upActor』とのタイトルで10月に発売されていたが、編集部の公式ツイッターアカウントによれば1月26日からは元通りの誌名でEMTGより刊行が続く模様。
https://emtg.co.jp/archives/5816
https://twitter.com/PuV_official/status/813696613692547073
http://www.musicman-net.com/business/64272.html

ゲオホールディングスが12月27日に発表した系列1600店舗における「2016年 部門別年間売上ベストテン」の「新刊雑誌」部門で、何と『コロコロコミック』が1位から10位までを独占する結果が出てしまった!
http://www.geonet.co.jp/geo_wp/wp-content/uploads/2016/12/2681-20161227-geonenkanrankingu-3.pdf
http://dailynewsonline.jp/article/1250908/

◎「京都天狼院」が1月27日にオープンする。天狼院書店店主の三浦崇典が正式発表した。
http://tenro-in.com/event/31127

朝日新聞の12月30日付朝刊に8ページに渡って掲載されたファンによる「SMAP大応援プロジェクト」の広告について、これまで東京新聞の伝言コーナー「TOKTOK」でファンからのメッセージを伝え続けてきた中日(東京)新聞グループもこれを報道。東京新聞の記事は淡々と伝えるのみだったが、中日スポーツは記事の末尾で《ファンはこれまで東京新聞の伝言コーナー「TOKTOK」で、新アルバム発売祝福のコメントを掲載するなどメッセージを発信してきた》と言及。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016123001001230.html
http://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/entertainment/news/CK2016123102000142.html?ref=rank

◎元『週刊朝日』編集長の山口一臣が昨年11月30日付で27年半に渡って勤務した朝日新聞社を早期退職。新橋5丁目に事務所を構え、新会社「(株)POWER NEWS」を12月22日付で設立。「おやじベンチャー」を標榜しつつ「インターネットを使ったニュース配信サービスを中心とする"総合メディアカンパニー”を目指していますが、当面は編集・出版まわりの"よろず便利屋”としてみなさまのお役に立ちたいと考えています」との年賀状兼挨拶状が私(岩本)あてにも届いた。年末には事務所開きも行っていたようである。
https://twitter.com/Chijisen/status/813668833848238080

◎テレビの在京キー各局における2016年の年間平均視聴率での競争は日本テレビが3年連続の3冠を達成したと自ら発表。
http://www.nikkei.com/article/DGXLAS0040013_S7A100C1000000/
http://mainichi.jp/articles/20170102/k00/00e/020/076000c

著作権期間保護期間の終了により、この1月1日から作品が自由に使えるようになった著者のリスト。小説家では佐佐木茂索山中峯太郎、新井紀一など。学者では安倍能成小泉信三など。宗教家では鈴木大拙――といった人たちが該当するとのこと。
http://hi.fnshr.info/2017/01/01/2017-pd/

長崎県が半世紀前から建設を計画している「石木ダム」の水没予定地で、ダム建設に反対しながら暮らす13世帯の住民の姿を、写真家の村山嘉昭が記録した写真集『石木川のほとりにて 13家族の物語』(パタゴニア刊)に収録された写真が、県当局が建設反対運動に関わる者を現場から排除するための「通行妨害禁止仮処分命令申立書」の証拠書類用として著者の村山には事前に知されることなく使用されていたことが発覚。村山は12月27日付で長崎県知事に抗議文を提出し、その内容や事件のあらましについて自らのブログで公表した。
https://murayama.themedia.jp/posts/1815274
http://www.patagonia.jp/product/patagonia-books?p=BA001-0

◎米Twitter本社の内紛はまだ続いている。幹部クラスが次々に離れていく中、身売りの観測も再燃しているらしい。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1612/28/news050.html

◎一方で米Twitter本社は昨年11月にヘイトスピーチ対策への強化を打ち出している。神奈川新聞のインタビューに対し、ツイッター・ジャパンの代表取締役・笹本裕は《自由な声が発信される場がツイッターのあるべき姿だ。ツイッターは安全安心な場でなければならない。大事なのは言論の自由が損なわれないということ。言論の自由をどう保つかという問題だ》としつつ《ヘイトスピーチ表現の自由として守られるべき言論ではないと理解している。ツイートの削除、アカウントの凍結は表現の自由を損なうものではなく、安全安心に発信していくための一つの手段。自由で活発な表現を促すために大切なことだと思っている》等の見解を披露。
http://www.kanaloco.jp/article/222028

◎そのヘイトスピーチの日本における最大の“主犯格”である桜井誠が久々に韓流ファンとバトル中。年末の「日本レコード大賞」最優秀新人賞に韓国の男性7人組グループ、iKON(アイコン)が選ばれたことについてTwitterで難癖をつけたのがきっかけだとか。
http://www.sankei.com/entertainments/news/170101/ent1701010037-n1.html

◎俳優の仲代達矢が84歳にしてTwitterを今年の元旦より開始。
https://twitter.com/nakadai84/status/815323978352902145

◎3年前に「すき焼き応援県」宣言をした群馬県の地元地上波民放テレビ局・群馬テレビが1月9日より「スキヤキ」を題材にした自社制作アニメ番組『戦隊ヒーロー スキヤキフォース ぐんまの平和を願うシーズン』を放送開始。東京MXやTVKなど各地の独立局13社にもセールスをかける一方、海外販売も視野に入れつつ展開していくという。「上を向いて歩こう」というところだろうか。
http://www.gtv.co.jp/program/animation/sukiyaki_f/index.html
http://j.sankeibiz.jp/article/id=611

◎日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)の主催による「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2017」が1月28日に法政大学で開催される。「ネット上の作品の作り手と受け手が交流し、参加者の投票でネットにおけるジャーナリズムの頂点を決める“お祭り”」とのこと。JCEJの代表運営委員で、ネットメディア『ガ島通信』の主宰者でもある藤代裕之がアワード の開催目的や意義について語っている。
http://jcej.hatenablog.com/entry/2017/01/01/230017

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4)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

年初における一年の計は、一年前何を立てたかよく反省して立てられるべきだ。