【文徒】2016年(平成28)年11月14日(第4巻212号・通巻899号)

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1)【記事】メディア情況への提言 21世紀型大衆社会について
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】メディア情況への提言 21世紀型大衆社会について

客 リクルートって昔は、紙の雑誌をメインにしていたよね。
主 リクルートは、言ってみれば新聞の広告頁を雑誌に転化することで業績を伸ばしていったからね。新聞の求人広告を「就職情報」「FromA 」「B−ing 」という形で雑誌にしたり、同じようにして不動産広告を「ハウジング情報 」、旅行広告を「じゃらん」「ABロード」にしたりというように情報=広告の雑誌を次々に立ち上げていくことで成長していった。
客 今やその面影もない。
主 2000年を前後にしてデジタルシフトを加速度的に進めていったからね。リクルートは雑誌のカタチはしていたけれど、編集なんてないに等しかったから、デジタルシフトに舵を大胆に切れたんだよな。編集の抵抗なんてなかったわけさ。エンジニアもどんどん増やしていったんだよね。リクルートがデジタルシフトに舵をきったときに普通の出版社は他人事だと考えていた。
客 そのときに普通の出版社もデジタルシフトに踏み切っていれば、今のような惨状には至らなかったんじゃないのかな。
主 インターネットの打撃を被るのは新聞であって雑誌ではないと多くの雑誌編集者は考えていたと思うよ。女性ファッション誌が典型だけれど、日本の雑誌ってコンテンツとか何とか横文字を使ったところで、実用性に立脚した雑誌が大半でしょ。実用性に立脚していたということは、「表現」よりも「情報」を重視していたということさ。単なる「情報」提供であれば、ネットのほうが圧倒的に強いということに気づくのが遅すぎたと思うんだよ。なんだかんだ言ってもマガジンハウスの雑誌が持ちこたえているのは、日本の雑誌にあっては「表現」重視だったからだとオレは踏んでいる。
客 もちろん、紙のメディアが絶滅することはないだろうけれど、「情報」に軸足を置くメディアは、リクルートの歴史が証明するように大半が紙からデジタルに移行することになるんだろうね。
主 もう一つ付け加えておくとネットメディアも表現力を向上させることは、まず間違いないだろうし、大衆社会のあり方も変化せざるを得ないだろう。20世紀型の大衆社会を支えて来たのが、マスコミュニケーションだとすれば、21世紀型の大衆社会を支えるのはSNSだと思う。20世紀型の大衆社会においてはマスメディアが情報発信を独占していたけれど、21世紀型の大衆社会ソーシャルメディアの誕生により、大衆自身が情報を発信する。
客 大衆「発信」社会ということだね。
主 編集力の解放やジャーナリズムの解放が始まったと考えるべきなんだよ。アメリカの大統領選挙でも物凄い量のデマがSNSを通じて拡散していったけれど、これも編集力の解放やジャーナリズムの解放なくしてはあり得なかったことだ。そうした事態を前に、だからソーシャルメディアは駄目なんだという声も飛び交うかもしれないけれど、それはあまりにも近視眼的な見方だと思うよ。その手のラッダイト的な発想は無意味なはずさ。時代の不可避性には真摯に向き合うべきだとオレは考えている。
客 時代の風景は変わってしまったんだよね。

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2)【本日の一行情報】

TSUTAYA TOKYO ROPPONGI はブライアン・エヴンソン の短編集「ウインドアイ 」(新潮社)が刊行されるのを記念して、訳者の柴田元幸によるトーク&朗読会を12月 1日(木) に開催する。
http://top.tsite.jp/news/lifetrend/campaign/32443998/?sc_int=tcore_news_lifestyle

◎1967年10月2日深夜に放送をスタートしたラジオ番組「オールナイトニッポン」が、来年10月2日に放送開始50周年を迎えることを記念し、「オールナイトニッポン50周年」のロゴを一般公募することになった。賞金50万円。
http://www.allnightnippon.com/news/20161110-911/

◎2016年上半期 のABC公査部数で、月刊男性・女性ファッション雑誌(男性・女性ライフデザイン誌)全58誌 において宝島社の女性ファッション雑誌「sweet」が、2期連続で1位(197,740部)、「リンネル」は2位(178,712部)、「InRed 」は4位(177,691部)、「GLOW 」(176,457部) は5位 と なった。上位5誌中、4誌を宝島社の雑誌が占め、 全ファッション雑誌の累計販売部数のうち市場占有率が25.9%、5年連続で出版社別トップシェア となった。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000453.000005069.html

◎「AFPBB News」は「米大統領選、トランプ氏勝利で問われる報道のあり方」で次のように書いている。
「メディアに対する国民の信頼は、かつてなく失墜している。世論調査会社ギャラップ(Gallup)の今年の調査結果では、メディアは『ニュースを十分に、正確かつ公正に報じる』と考える人はわずか32%だった」
http://news.livedoor.com/article/detail/12264506/

◎ニュース閲覧アプリ「SmartNews」の媒体専用チャンネル「チャンネルプラス」において集英社の 「Marisol」の公式サイト「Marisol ONLINE」、ハースト婦人画報社ハースト婦人画報社の「ハーパーズ バザー(Harper’s BAZAAR)」という2つのチャンネル がオープンした。
http://about.smartnews.com/ja/2016/11/10/20161110woman/

◎40周年を迎えたビームスが公開した「TOKYO CULTURE STORY 今夜はブギー・バック(smooth rap)」。ビームス誕生から現在までの東京の40年をファッションと音楽から振り返る内容 だが、背景に「アンアン」「ポパイ」といったマガジンハウスの雑誌が登場してくるんだね。
http://www.beams.co.jp/special/tcs/
そうか「WHAT'S NEXT? TOKYO CULTURE STORY」がマガジンハウスから刊行されているのか。
http://crossmedia.magazineworld.jp/magazine/mook/tokyo-culture-story/
こういうアプローチができるのはマガジンハウスの強みだろう。広告会社は博報堂

岡村製作所は、個人や組織がこれからの「はたらく」を描くために、働き方や働く場をさまざまなステークホルダーと共に考えていく活動「WORK MILL(ワークミル)」を発足させた。具体的にはウェブマガジン配信やビジネス誌発刊、共創空間の運営を通じて、過去・現在・未来の多様な「はたらく」にまつわる情報や知見を、さまざまな視点で見つめ、引き出していくそうだ。
春と秋の 年2回 刊行するビジネス誌「WORK MILL」は「Forbes JAPAN」の別冊 として発売される。
http://www.okamura.co.jp/company/topics/other/2016/workmill.php

◎KADOKAWAは、スクウェア・エニックスとの共同原作プロジェクトとして、11月10日に、スマホ向けゲーム「アカシックリコード」の配信を開始した。KADOKAWAの小説投稿サイト「カクヨム」 では小説「アカシックリコード」の連載が始まった。
http://ir.kadokawa.co.jp/topics/20161110_a6px2.pdf

◎PLST×光文社のキャンペーンサイト「Good morning My Friend,PLST!」は、「VERY」12月号掲載「タイプ別に厳選 必要なのは、“毎日コート”“週末コート”」のスペシャルページを公開中だ。
http://cp.premium-k.net/gmmfp/very/special/201612/
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000021468.html

朝日新聞「“客の価値観”を本棚に編み込む新刊書店」は「本のにほひのしない本屋 神楽坂モノガタリ」 を取り上げている。
「東京・神楽坂上にある、ガラス張りのモダンな建物。カフェだと思って上った階段の先には書店があった。ここはカフェでもあり、新刊書店でもある空間だ。
『本屋と知らずに入る人も多いみたいですね』
 そう話すのは『本のにほひのしない本屋 神楽坂モノガタリ』の運営に携わる、児童書の出版社・えほんの杜代表取締役の永松武志さん(42)。同社は製本業を核として出版やウェブ制作などを行うフォーネット社の一部門で、2015年9月にこの店をオープンした」
http://www.asahi.com/and_w/interest/SDI2016110920551.html
選書と書籍の販売実務全般 を手がけるのは「あゆみBOOKS」 出身の久禮亮太 である。

司馬遼太郎産経新聞記者時代の 昭和30年 に本名の福田定一名義で刊行した「ビジネスエリートの新論語」が文春新書として刊行される。司馬遼太郎名で刊行される書籍としては20年ぶりの新刊となり、司馬作品のなかで初の新書での刊行となるそうだ。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166611102

ドナルド・トランプジェフ・ベゾス は仲が悪いようだ。
http://forbesjapan.com/articles/detail/14203

◎「週刊少年ジャンプ」(集英社)のレジェンド作家の過去作品の電子版をレンタルできるアプリ 「ジャンプレジェンド」 がリリースされた。1冊120円で2日間の閲覧ができるという。毎日21時ごろに、単行本1冊を無料で読める24時間有効なチケットを1枚配布するそうだ。
https://itunes.apple.com/jp/app/janpurejendo-mei-ri1ce-wu/id1145739594?mt=8

手塚治虫の「エロス」を題材にした「新潮」12月号が 重版されることになった。朝日新聞によれば「初版は通常の1・5倍となる1万1500部を刷って7日に発売したが、全国で売り切れ書店が続出し、5千部の重版を決めた」そうだ。
http://www.asahi.com/articles/ASJCB558RJCBUCVL00S.html
新潮社自身も興奮している。
「発売直前の報道でネットを中心に熱心な手塚ファンの期待が高まり、発売日である7日の午前中には『手塚治虫 秘蔵エロス遺稿公開』がヤフートピックスに登場。Twitterでも「手塚治虫」がトレンド入りしました。ネット書店のアマゾンでも、『新潮』が文芸誌としては異例の『雑誌の売れ筋ランキング』で1位に躍り出ると、その日の夕方に品切れという事態に陥りました 」
http://www.shinchosha.co.jp/news/article/258/

◎グッズワン が運営する「マンガワンSHOP 」は、小学館が運営するマンガアプリ「マンガワン」公式のキャラクターグッズSHOP だが、「マンガワン」連載の「テラモリ」のグッズ2種を「マンガワンSHOP」で限定販売している。
http://www.dreamnews.jp/press/0000142368/

KDDIは、スポーツインターネットメディア「SPORTS BULL」を運営する運動通信社 へ出資 するとともに、協業契約を締結し、「SPORTS BULL」で、サッカー日本代表の試合ハイライト動画やオリジナル動画、試合速報などの最新ニュースを配信する。
http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2016/11/10/2147.html

カルチュア・コンビニエンス・クラブの初となる宿泊施設 ドミトリー「GOEN LOUNGE&STAY」 がHIRAKATA T-SITEから100歩 の場所にオープンした。蔦屋書店のコンシェルジュが選書した日本の文化や歴史、伝統に関する書籍や雑貨が並ぶ「LOUNGE & LIBRARY」 もある。
http://top.tsite.jp/news/lifetrend/i/32527412/

◎海老名市立中央図書館 はカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者 をつとめる「ツタヤ図書館」として昨年11月にリニューアルオープンしたが、東京新聞によれば「利用者は目標の百万人には届かなかったが、一・七倍に増加」し、「運営経費も約一億五千万円増え 」たという。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201611/CK2016111102000172.html

◎コルクの佐渡島庸平社長は時代がどのように変化しているかを的確に捉えている。
「デジタル社会がもたらした大きな変化の一つに、コミュニケーションスタイルの変化があると思います。『みなさん』と呼びかけるよりも、『あなた』に向かって語りかける方が広く、深く浸透するようになった。だから、僕らは姿の見えないマスに対してではなく、姿の見える100万人の心にメッセージを届けることを重要なミッションとしています。
そのために必要なのが『さらけだす』こと。身の回りに起きていることを共有していかないと他人の心には届きませんし、人も巻き込めない。巻き込むためには、やりすぎるくらいでないといけない。だから、『さらけだす』『やりすぎる』『まきこむ』を、コルクの行動指針に掲げました 」(日経電子版)
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO08899390Y6A021C1000000?channel=DF180320167075&style=1

集英社の男性ファッション誌「MEN'S NON-NO」創刊30周年スペシャルイベント「メンズノンノフェス2016」で、「第31回 メンズノンノモデル公開オーディション」が実施された。
https://mdpr.jp/news/detail/1633800

JTB総合研究所の「スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査(2016)」によれば「スマートフォンでよく使う機能」として「SNS」を挙げた人は37.9%。昨年の44.8%から約7ポイント減となり、2013年の調査開始から初めて減少した。
https://docs.google.com/viewerng/viewer?url=http://www.tourism.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/research-20161110-sp.pdf

◎産経ニュースによれば「週刊文春暴力団関係者との交際を報じられ、参院選への出馬を辞退した元女優の田島美和氏(52)が出版元の文芸春秋謝罪広告の掲載などを求めた訴訟で最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は、田島氏の上告を受理しない決定をした」。
http://www.sankei.com/affairs/news/161110/afr1611100020-n1.html

◎「サントリー学芸賞」 が発表された。
〔 政治・経済部門〕
塩出浩之(琉球大学法文学部教授)
『越境者の政治史 ―― アジア太平洋における日本人の移民と植民』(名古屋大学出版会)
白鳥潤一郎(北海道大学大学院法学研究科附属高等法政教育研究センター協力研究員)
『「経済大国」日本の外交 ―― エネルギー資源外交の形成 1967〜1974年』(千倉書房)
〔芸術・文学部門〕
池上裕子(神戸大学大学院国際文化学研究科准教授)
『越境と覇権 ―― ロバート・ラウシェンバーグと戦後アメリカ美術の世界的台頭』(三元社)
沖本幸子(青山学院大学総合文化政策学部准教授)
『乱舞の中世 ―― 白拍子・乱拍子・猿楽』(吉川弘文館
金沢百枝東海大学文学部教授)
『ロマネスク美術革命』(新潮社)
〔社会・風俗部門〕
木村洋(熊本県立大学文学部准教授)
『文学熱の時代 ―― 慷慨から煩悶へ』(名古屋大学出版会)
〔思想・歴史部門〕
熊谷英人(明治学院大学法学部専任講師)
フランス革命という鏡 ―― 十九世紀ドイツ歴史主義の時代』(白水社
高山大毅(駒澤大学文学部講師)
『近世日本の「礼楽(れいがく)」と「修辞」 ―― 荻生徂徠以後の「接人(せつじん)」の制度構想』(東京大学出版会
http://www.suntory.co.jp/news/article/12785-1.html?fromid=top
塩出浩之は毎日出版文化賞角川源義賞につづく受賞だ。『文学熱の時代 ―― 慷慨から煩悶へ』も名古屋大学出版会が版元だ。ちなみに昨年、サントリー学芸賞を受賞した「対華二十一ヵ条要求とは何だったのか 第一次世界大戦と日中対立の原点」 も名古屋大出版会だった。最近、良い仕事が多い版元のひとつだ。
http://www.unp.or.jp/

◎これは意外な拾い物だった。適菜収の「安倍でもわかる政治思想入門」(ベストセラーズ)。毒のある本だけれど抱腹絶倒間違いなし。
http://www.kk-bestsellers.com/cgi-bin/detail.cgi?isbn=978-4-584-13759-8

スターツ出版の業績が好調だ。12 月に創刊した書籍「スターツ出版文庫」シリーズ が貢献している。
http://tyn-imarket.com/pdf/2016/11/11/140120161111438161.pdf

◎「経済産業省×ASCII STARTUP 日本発グローバル・ベンチャー公開選考会」が、11月15日(火)13時より、KADOKAWA富士見ビルで開催される。
http://eventregist.com/e/METIASCII?lang=ja_JP
http://ascii.jp/elem/000/001/263/1263675/

講談社の「国際派ジャーナリスト 35歳 石井 克尚 」が「FORZASTYLE」干場義雅編集長 の手で「ファッション改造」される!
http://forzastyle.com/articles/-/49993

知的財産高等裁判所有斐閣 の「著作権判例百選」について出版の差し止めを命じた決定を取り消した。「NHK NEWS WEB」は、こう報じている。
著作権に関する判決をまとめた専門雑誌の編集に加わった大学教授が『雑誌の改訂にあたって名前を外されたのは著作権の侵害だ』と訴えた仮処分で、知的財産高等裁判所は『助言する立場にとどまり著作権はない』として、出版の差し止めを認めた決定を取り消し、申し立てを退けました」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161111/k10010765871000.html

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3)【深夜の誌人語録】

偶然は、実は努力の結果なのである。