【文徒】2016年(平成28)年12月27日(第4巻241号・通巻928号)

Index--------------------------------------------------------
1)【記事】 「大江戸温泉物語」報道でTBSが“情報操作”(?)
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「大江戸温泉物語」報道でTBSが“情報操作”(?)(岩本太郎)

中国・上海に21日、東京のお台場に本社を置く「大江戸温泉物語」と同じ名称の温浴施設がオープン。しかし日本の会社に訊ねたら「当社とは一切関係ない」――というニュースは23日にまずNHK、ついでTBSが報じて以来、大手メディア各社が次々に後追いし、ネット上でも話題を呼ぶことになった。22日に自社公式サイトでも両者の関係を否定した東京側に対し、上海側は「日本の会社からブランド使用の許可を得た」とする書面の画像を示して反論するなど、騒動は早くも泥仕合の様相を呈しつつある。
http://corporate.ooedoonsen.jp/news/2313
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161223/k10010817561000.html?utm_int=detail_contents_news-related-auto_001
http://www.huffingtonpost.jp/2016/12/24/ooedo-onsen-monogatari_n_13834962.html
真相については今後の推移を推移を見守るしかないが、そうした中でここまでのメディアの報道に「おや?」という部分が一つあった。NHKに続いて23日夕方のニュースでこの件を伝えたTBS系の報道なのだが、上海と東京の両施設の玄関に掲げられた「大江戸温泉物語」の看板を「非常によく似ています」と説明しながら画面で上下に並べ、見ようによってはナレーションに反して両者の差異を強調するかのように紹介していたのだ(下記リンクの動画00:18秒)。確かに上海と東京とでは看板に使用されているロゴの書体が異なっている。
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20161223-00000170-jnn-int
TBSの“比較画像”から違いを読むと、まるで上海ロゴが東京の正式ロゴを“パクリ改変”したもののように見えるが、実は上海ロゴだって東京の会社が使用している正式ロゴとほぼ同じなのだ。(下記サイト左肩のロゴ参照)
http://corporate.ooedoonsen.jp/
TBSとしては、「また中国がヘタなパクリ改変をした」と見せたかったのかもしれないが、真相は「どっちも東京の正式ロゴだった」わけだ。
この件は、中国企業が日本企業の意匠を無断でパクったのか、あるいは中国での商標未登録などのミスがあったのか、事情はまだ判明していない。が、正式ロゴを“改変されたロゴ”のように見せかねないTBSの報道には、「また中国がパクった」と見せたかったような、結論?意図?演出?を感じて、ちょっとモヤッとしたのだった。
声高な反近隣諸国的言説よりも、サイレント・ナショナリズムのほうが危険かもしれない。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎主婦ブロガーの「こだま」が2014年の「文学フリマ」で発売された同人誌『なし水(すい)』に掲載して大反響を巻き起こした私小説『夫のちんぽが入らない』が、タイトルはまったくそのまま来年1月18日に扶桑社から単行本として発売されることになったそうだ。
性体験を含めて若き日からの著者の半生が赤裸々に綴られているらしいこの作品、単行本化に際しては内容はかなり加筆されたようだが、タイトルについては同人誌掲載時と同じ。扶桑社の内部でもかなり物議を醸したものの、同社の販売部から全国の書店に呼びかけ、事前にゲラを読んでもらうなどして反響を見極めたうえで、敢えてそのままのタイトルとしたという。《サイトから「タイトルを声に出して言わなくても注文できる申込書」をダウンロードできるようにした》ほか、様々なPR作戦が盛り込まれているそうだ。
https://twitter.com/eshi_ko
http://www.fusosha.co.jp/special/kodama/
http://www.excite.co.jp/News/bit/E1481895415846.html

◎昨年12月25日に過労自殺した電通社員の母親が手記を発表し、各メディアがその全文を含めて報道した。一方でこの間の健闘ぶりが光る『BuzzFeed News』は《「うちは電通のこと書けないね」長時間労働に悩む女性記者たち マスコミの抱える課題》と題し、新聞記者として働く20代の女性らに取材しながら大手メディア各社における長時間労働の実態に迫っている。
https://www.buzzfeed.com/kotahatachi/newsrepoter-20-women?utm_term=.eo6GwOwKM#.qnGD1o1qb
しかし「うちは電通のこと書けないね」って、報道関係者の間では少し前までは別の意味合いで使われていたんだけどね。
BuzzFeed News』に続いて『週刊ポスト』もこの件で《「電通ブラック批判」急先鋒の朝日新聞がブーメランで沈黙》と報じた。
http://www.news-postseven.com/archives/20161224_477940.html?PAGE=1#container
また、『MyNewsJapan』は《「別れ話」で逃げ切るつもりだった電通の甘すぎる認識――新入社員パワハラ過労自殺事件の真相 》と題して、以前から囁かれてきた「自殺の原因は彼氏との別れ話だった(との情報操作が行われた)のではないか」との説の真相を追い続けている。
http://www.mynewsjapan.com/reports/2298

DeNAWELQ』に端を発した騒動がなおも続く中、これまで各キュレーションサイトで勝手に使われた自らの写真の使用料を請求してきたフォトグラファーの有賀正博が新たな動きに出た。自身が行った写真使用料支払い請求に応じなかった「NAVERまとめ」運営母体であるLINEに関連して「Yahoo!をはじめとする広告配信サービス会社はNAVERまとめへの広告配信を停止してください」と求めるネット署名をChange.orgで始めたのだ。
https://www.photo-yatra.tokyo/blog/archives/11209
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1612/25/news015.html

日本雑誌協会は22日、今年の大晦日に加盟社が一斉発売する正月商品(雑誌・コミックス・ムックが約130点、書籍が約40点。総発行部数は約840万部)のラインナップを公式発表した。
http://www.j-magazine.or.jp/newyear2017/newyear.html
http://www.yomiuri.co.jp/culture/20161223-OYT1T50015.html

◎出版科学研究所の調査によると、2016年に出版された紙の書籍と雑誌の販売額は推定で約1兆4500億円で、12年連続で減少。そのうち雑誌は約7200億円と、41年ぶりに書籍を下回る見通しらしい。「雑高書低」時代の終わりだ。漫画雑誌の推定発行部数も11月までで前年同期比12%減と、過去最大の落ち込みとなっているとのこと。
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2016122602000232.html
https://this.kiji.is/186010176032785916?c=39546741839462401

◎東京・池袋の「天狼院書店」店主の三浦崇典が同書店を起業したのは『1坪の奇跡―― 40年以上行列がとぎれない吉祥寺「小ざさ」味と仕事』 (稲垣篤子著・ダイヤモンド社より2010年刊)を読んだことがきっかけだったそうだ。『ダイヤモンド社書籍オンライン』で23日から始まった連載エッセイの第1回目で三浦は、たった1坪の店で少女時代から40年間に渡り羊羹を売り続け、3億円以上を売り上げてきたという稲垣にアドバイスを乞うた日の回想も含めて綴っている。
http://diamond.jp/articles/-/112219

◎『KBOOM』などの韓流雑誌の版元として知られたガム出版20日付で事業を停止して自己破産の準備に入ったそうだ。韓流ブームだった2011年頃には年間約5億4000万円の売り上げがあったが、ブームが下火となり日韓関係が悪化したりする中で雑誌や書籍の売り上げが減少していたらしい。ネット上では資金繰りに窮して、発行予定の写真集の先払いとして同社が読者から集めた代金の返金が滞っているらしいといった情報も流れている。
http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20161220_01.html
http://www.sankeibiz.jp/business/news/161220/bsd1612201738003-n1.htm
http://okutta.blog.jp/archives/9609364.html

和歌山市の複合商業施設「ガーデンパーク和歌山」内にある書店「TSUTAYA WAY(ツタヤウェイ)」は15日より大人向け漫画コーナー「おとな×コミック」を新設。店内にある既存の漫画コーナーからは離れた、家庭医学書などが並ぶ棚の近くに設けたそうだ。
《店員の岩瀬竜太さんは「『最近の書店の漫画売り場は年配の人には入りづらい。大人が手に取りやすい漫画売り場があれば』と、ある漫画誌編集長から言われたことがきっかけ。(中略)最近、漫画を読んでいない人に手にとってほしい。小説よりも気軽に読めるのでプレゼントや贈り物にもどうぞ」と呼び掛ける。「成人向けじゃないので女性も安心して立ち寄ってほしい」とも》
http://wakayama.keizai.biz/headline/774/

◎音楽ジャーナリストの柴那典による近著『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)では、今や「メディアの王様」ではなくなったテレビの現場において苦悩する制作者たちの声が紹介されている。22日から『cakes』で一部が特別掲載されている同書の中で、例えばフジテレビで『FNS歌謡祭』『FNSうたの夏まつり』など音楽番組の総合演出を手掛けてきたディレクター・浜崎綾の以下のような発言は目を引く。
《しかも、そういう時代にテレビは不利なんです。ここ数年、ヒットするものはSNSで拡散されるもの、シェアされるものになってきてますよね。特に音楽のヒットはスマホから生まれるようになった。でも、テレビは著作権や肖像権の問題で、拡散やシェアをブロックせざるを得ないところがある。(略)今でも昭和の時代にブイブイ言わせていた人はそういうSNS以降の感覚をわかっていないと思うんですけど、今の30代の制作者はみんなそれに気付いている。そのことによってテレビを作る人間の意識が変わってきました》
https://cakes.mu/posts/14802

◎そのテレビ局において長年「商売にならない」として日陰者扱いされてきたドキュメンタリーを、いかにマネタイズしながら支援していくかという取り組みがあちこちから沸き起こっているようだ。テレビ業界ジャーナリストの長谷川朋子が、札幌において自治体がまちづくり計画の中でドキュメンタリー番組制作を支援している事例、あるいはNHKNetflixなどの動画ストリーミングサービスとも連携しながらドキュメンタリーを海外市場に発信しているケースなどを紹介している。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/hasegawatomoko/20161221-00065707/

◎今年4〜6月にMBS・TBS系で放送されていたテレビアニメ『僕のヒーローアカデミア』の新シリーズが、来年4月からは読売テレビ日本テレビ系に異例の“引っ越し”をしたうえで放送されることになった。
http://mainichi.jp/articles/20161225/dyo/00m/200/011000c

ソフトバンクが運営するスマートフォン向け総合エンタメアプリ「UULA(ウーラ)」が来年3月31日限りでサービスを終了すると発表。この分野ではNTTドコモのdtvに完敗した模様。
http://blog.uula.jp/?p=4104

◎上記のついでに紹介。NTT、KDDIソフトバンクの通信キャリア大手3社による携帯電話の変遷を、旧電電公社時代にまで遡って解説している『ミドルエッジ』の記事。こういうのは時折振り返っておさらいをするのに便利だ。
https://middle-edge.jp/articles/6eNdM

Android版の「LINE LIVE」に、音声だけをライブ配信するラジオ配信が追加された。LINEがラジオになっていこうとしているのか。
http://getnews.jp/archives/1575660

◎オーディオブックの市場が急拡大の兆しを見せている、と産経が報じている。アマゾン傘下で世界最大のオーディオブックサービスを手掛ける「オーディブル」の今年の利用時間は20億時間で2年前の2倍とか。同社は昨年7月に日本に進出して定額(月額1500円)での聞き放題配信サービスを展開中。9年前から日本でオーディオブックサービスを展開する「オトバンク」会長の上田渉は「アマゾンの参入は追い風。環境が整い、市場はようやく花開き出した」「現在約50億円の日本のオーディオブック市場は900億円に拡大する可能性がある」と記事中でコメント。 http://www.sankei.com/economy/news/161224/ecn1612240014-n1.html

◎地域にあった映画館、ミニシアターが消えていく中、インターネット配信技術を活用して街なかの空間を必要な時に「マイクロシアター」として上映会などに活用できるようにすることを目的としたプロジェクト「popcorn」が始まっている。
https://popcorn.theater

◎1986年まで開催され、中島みゆき世良公則クリスタルキングなどを輩出した「ポピュラーソングコンテスト」(通称ポプコン)の会場として知られた静岡県掛川市のリゾート施設「つま恋」が25日付で営業を終了し、1974年のオープン以来42年に及んだ歴史に幕。
http://www.asahi.com/articles/ASJDH66R0JDHUTPB018.html

ジョージ・ハリスンエリック・クラプトンの元妻で、クラプトンの名曲「いとしのレイラ」などのモデルにもなったパティ・ボイド(モデル・写真家)が、来春に東京で行われる彼女の写真展のために来日するそうだ。3月29日には学士会館で来日記念トークショーも行われるとのこと。
http://amass.jp/81723/

フリーランスのジャーナリストら約40名が原告(岩本もその1人である)となって2014年春から進めていた「秘密保護法違憲訴訟」だが、さる21日付で最高裁より原告側の上告を棄却する旨の決定が届き、終結した。23日には以前から予定されていた秘密保護法と共謀罪に関する市民集会が横浜市内で開催され、原告側の代理人弁護士である山下幸夫・堀敏明、原告の中心メンバーである寺澤有林克明らによる報告が行われた。当然、原告団としてはこのまま「はいそうですか」と終わらせるわけにもいかないので、来年以降さらなる活動に向けて目下検討中。なお、同様の訴訟は横浜、静岡、広島において現在もなお進行中だ。
http://app.f.m-cocolog.jp/t/typecast/2051410/2058623/110803363
https://twitter.com/iwamototaro/status/812244026552242176
(↑最高裁からの決定通知の写真)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161222/k10010816881000.html
(↑NHKでの報道)

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3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

「骨折り損のくたびれ儲け」の悔しさは、いずれ何十倍にもして取り返してやれ!