【文徒】2017年(平成29)年5月22日(第5巻93号・通巻1022号)

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1)【記事】「週刊新潮」が告発した「週刊文春」不正疑惑記事の波紋
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「週刊新潮」が告発した「週刊文春」不正疑惑記事の波紋

産経抄」は判断停止に陥ったということである。
「ただ文春側は、不正疑惑を全面的に否定している。果たして、どちらの主張に理があるのか。ぜひとも月刊誌『Hanada』編集長、花田紀凱さんの審判を仰ぎたい。元週刊文春の編集長にして、現在は小紙で週刊誌批評を連載している。今週末の『週刊誌ウォッチング』が楽しみである」
http://www.sankei.com/affairs/news/170519/afr1705190004-n1.html
花田は「週刊新潮」のトップ記事であった「『警視庁刑事部長』が握り潰した『安倍総理』ベッタリ記者の『準強姦逮捕状』」に関して「週刊誌ウォッチング」で、こう書いている。
「この記事の一番の疑問は、彼女がなぜ、今になって2年前のことを告発したかという点だ。
小欄が取材したところでは、数カ月前から、左翼系の何人かの男たちが、この情報をメディアに売り込んでいたという」
http://www.sankei.com/premium/news/170514/prm1705140021-n2.html
週刊文春」は「文春オンライン」を通じて「『週刊新潮』の記事では、あたかも『週刊文春』が自らのスクープ記事を盗んでいるかのように書かれていますが、例として挙げられた記事においても、そうした事実は断じてありません」とした文章を新谷学編集長名義で発表したが、「週刊新潮」編集部は「AERA dot.」の取材に対し、次のように新谷の見解を一蹴している。
週刊文春編集長のコメントには、長年、文藝春秋社の営業担当者が出版取次会社から不正に週刊新潮の中吊りポスターを入手し、コピーしたうえで、文春編集部に届けている事実について、何ら釈明がありません。当然、これが正当な情報収集や『情報戦』に当たらないことは言うまでもなく、出版取次会社も『不適切だった』と漏洩の事実を認め、弊社に謝罪しております。にもかかわらず、潔く非を認めない週刊文春編集長の対応は、全く意外であり、驚きを禁じ得ません」
「アンフェアな編集姿勢を反省しようとせず、自浄作用が働かないことを露呈した言葉であり、残念というほかありません。同誌の編集部の中には、このような不正を働かなくても、週刊新潮と充分戦えると思っていた記者はたくさんいたはずであり、文春の記者の方々が気の毒でなりません」
https://dot.asahi.com/dot/2017051800098.html?page=1
TOKYO MX「5時に夢中!」(月〜金 夕方5時) で木曜レギュラーの中瀬ゆかり (新潮社出版部部長)は、番組内で見解を披歴した。
「…やっぱり情報合戦なんで、お互いいろんな手は使うんだけれども、“禁じ手”っていうのはあって。これはやっぱやっちゃいかんだろっていう一線を越えたんじゃないですかっていうお話なんですけれども。2誌だけの話じゃなくて…残念すぎるって感じです 」
http://www.sanspo.com/geino/news/20170518/sot17051818140006-n1.html
当然、「週刊現代」元編集長の元木昌彦もこの問題に触れている。「元木昌彦の深読み週刊誌」だ。
週刊新潮側の怒りはよく見て取れる。新聞もテレビも、平素週刊文春にしてやられているからか、大騒ぎしている。私はこの記事を2回読み直した。だが、識者といわれる大谷昭宏佐藤優中森明夫たちが、『ライバル誌の広告を抜く行為というのは、週刊誌という媒体にとって自殺行為』(大谷)などと非難しているのが、よくわからない」
梶山季之が書いた『黒の試走車』ではないが、ライバルが何をやっているのか、どんな情報を持っているのかを探ることは雑誌の浮沈、そこで生活しているフリーの記者、筆者たちの生存にかかわるのだから、あらゆる手を尽くして情報を取ることが一方的に悪いといえるのだろうか」
週刊文春のやり方に違和感があるのは、自分のところのスクープでもないものを、速報として流してしまうことだろう。それはやってはいけない」
https://www.j-cast.com/tv/2017/05/18298331.html
「フリー編集者」浅原裕久の次のようなツイートを発見した。
「『「文春砲」汚れた銃弾』で話題の週刊新潮の現編集長は宮本太一さんなんだね。『凶悪 ある死刑囚の告発』を書いた人で、白石和彌監督の映画『凶悪』では宮本さんの役を山田孝之が演じている。以前、『凶悪』のパンフレットを編集したとき、轟夕起夫さんに宮本さんをインタビューしてもらった」
https://twitter.com/asahara1966/status/865125272684642304
宮本は映画に対して次のように語っている。
「被害者がいるので不謹慎ですが、確かにこの取材を楽しいと感じている自分がいたなと思い起こされたわけですね。藤井の妻を演じる池脇千鶴さんが、"あなた、こんな狂った事件、追っかけて、楽しかったんでしょう?"と言うシーンがありますが、あれはまさしくスクリーンを通して僕に現実を突きつけていると思いました(笑)」
http://news.aol.jp/2013/10/03/kyoaku/
トーハンは「週刊新潮」に名指しされたわけではないが、「株式会社新潮社様の週刊新潮に係る中吊り広告取扱いについてのお詫び」を発表した。
週刊新潮に係る中吊り広告の取扱いについて、5月17日以降、新聞、テレビ及び週刊新潮に取り上げられており、当社の株主の方々や取引先様、関係先様に多大なるご心配をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。
当社が文藝春秋様に中吊り広告を貸し渡したことは不適切な取扱いであり、既に新潮社様に対して、取引者間の誠実義務に欠けていたことを認め、お詫びをしております。
引き続き、当社は、全容解明に向けて鋭意調査を継続してまいりますとともに、内部統制・管理体制の一層の強化、整備に努めてまいります。
以上でありますので、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます 」
http://www.tohan.jp/news/20170519_977.html
こういう文章をトーハンが正式に発表するとなると「週刊文春」サイドは、「週刊文春」がトーハンから「週刊新潮」の中吊り広告を受け取っていたことを単なる「情報戦」 と片づけるわけにはいかなくなるのではないだろうか。そのことを十分に認識したうえでトーハンは「お詫び」の公表に踏み切ったのかどうか。トーハンの発表した「お詫び」を踏まえた文章を「週刊文春」は発表しなければならなくなったのではないだろうか。

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2)【本日の一行情報】

◎AP通信では「he」(彼)、「she」(彼女)とは呼ばれたくない人を指すときに「they」を三人称単数で使うことを認めることになった。2015年には既に「ワシントン・ポスト」が採用している。日本語訳では「あの人」とか「この人」になるようだ。
https://mainichi.jp/articles/20170519/k00/00m/040/025000c?fm=mnm

◎版元は何と双葉社郷原宏の「乱歩と清張」が刊行された。高村光太郎の妻にして「智恵子抄」(未来社)のヒロインである智恵子の評伝である「詩人の妻」でサントリー学芸賞を受賞している、「執行猶予」の詩人の郷原宏は読売新聞の社会部記者を経て出版局でも仕事をしていた経歴を持つことで知られているが、ミステリーにも造詣が深く、「松本清張事典 決定版」では日本推理作家協会賞を評論部門で受賞している。
http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-31255-3.html

◎ぴあは「B.LEAGUE チケットサイト及びファンクラブ受付サイトにおける 個人情報流出事案に関する、その後のお詫びとご報告」 を公表した。これによれば流出した可能性のあるクレジットカード情報が新たに約6500件あり、これまで公表済みのものと合わせて、流出の恐れがあるのは計3万8695件に及ぶという。
http://corporate.pia.jp/news/files/security_incident20170518.pdf

◎日販が発表した4月の店頭売上によれば前年比4.0%減 。内訳は、雑誌5.7%減、書籍1.6%減、コミック8.2%減、開発品18.8%増 。
https://ryutsuu.biz/sales/j051909.html

◎既に目標金額の500万円を突破している。毎年2000万円近い赤字運営 がつづいている大宅壮一文庫 は運営資金 を調達するために「READYFOR 」を利用してクラウドファンディングを実施している。
https://readyfor.jp/projects/oya-bunko
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170519/k10010987881000.html
https://www.value-press.com/pressrelease/183286

◎メディアドゥは、NHN comicoが展開するマンガサービス「comico PLUS」(コミコ プラス)に対し、電子書籍コンテンツの取次と配信ソリューションの提供を開始した。
http://www.mediado.jp/service/1674/

◎アマゾンが提供する電子書籍読み放題サービス「キンドル アンリミテッド」(月額980円)をめぐり、作品を一方的に削除され損害を被ったとして、マンガ家の佐藤秀峰が今年1月、アマゾンに逸失利益約2億600万円の賠償 を求める訴えを東京地裁に起こしていた!
http://www.sankei.com/affairs/news/170519/afr1705190039-n1.html

亀和田武能條純一昭和天皇物語」(原作・半藤一利) 、伊藤潤二人間失格」(原作・太宰治)、山本おさむ赤狩り」と新連載攻勢のつづく「ビッグコミックオリジナル」を、いま最もラディカルな雑誌だと「週刊朝日」で絶賛している。
https://dot.asahi.com/wa/2017051700062.html

池波正太郎の「鬼平犯科帳」の誕生50周年を記念する「鬼平展」が 東京スカイツリータウン内の商業施設「東京ソラマチ」 で開催されている。
http://top.tsite.jp/news/anime-song/o/35582460/?sc_int=tcore_news_music

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3)【深夜の誌人語録】

頭を空腹にしておかないと良いアイデアは生まれない。