【文徒】2017年(平成29)12月4日(第5巻227号・通巻1156号)

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1)【記事】ニコニコ「く」発表での大失敗は動画サービス”世代交代”の表れか
2)【本日の一行情報】
3)【人事】講談社 12月1日付機構改編および人事異動

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1)【記事】ニコニコ「く」発表での大失敗は動画サービス”世代交代”の表れか(岩本太郎)

ドワンゴが11月28日に行った動画サービス「niconico」の新バージョン 「niconico(く)」(クレッシェンド)のお披露目は”大失敗”だったとの評がネット上に溢れ返っている。同日に「ニコファーレ」で開催された発表会は当然ニコニコ生放送で中継されたが、登壇した川上量生が動画の遅延対策などについて説明を始めると、中継画面は炎上。来場者からも否定的な声が上がったそうだ。翌29日には『ねとらぼ』がその”永遠とも思える2時間”についての記者レポートをアップした。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1711/29/news097.html
川上は「今回は全ての質問に答えよう」と質疑応答の時間を予定よりも延長し、会場から手が挙がらなくなるまで質問に答え続けたという。さらに2日後の30日には「niconicoサービスの基本機能の見直しと今後に関して」と題した声明文をニコニコインフォ上に発表。「く」の開発の遅れ(当初は10月には提供開始の予定だった)や、発表会で基本性能についての具体的な施策を提示できなかったことを謝罪すると共に《新サービスの発表以前にサービスの根幹となる部分における見直しをしなければいけないという事を身をもって体感いたしました》と吐露。さらに12月3日に予定していた「nicocas体験会」を中止とすることを発表した。
http://blog.nicovideo.jp/niconews/53475.html
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1711/30/news153.html
http://news.nicovideo.jp/watch/nw3113234
無論、それらを伝えるネットニュースの記事も普段通り「ニコニコニュース」でも配信されるところはご愛敬なのだが、ダダ洩れで一世を風靡したニコニコ自身が新サービスをめぐる不始末や対応に慌てふためく様子をユーザーたちの前にさらけ出してしまったあたりに、”一つの時代の終わり”を感じた向きも多かったのではないか。
近年の「ニコニコ動画」がスマホ対応に遅れていることなどを以前から指摘していた山本一郎も、発表会翌日にさっそく「『ニコニコ動画』の低迷はサービス競争以前の、単なる体力負けなのではないか』」との論考で、今やニコニコが《コンセプトの陳腐化とともに話題の波及効果としてはSNS広告に負け、アニメファンやゲーム好きにはAbemaTVやYoutube、Twitchなど他の動画サービスに負けるという傾向が顕著になってきました》と指摘している。
《AbemaTVを手がけるサイバーエージェント藤田晋社長が「動画コンテンツ確保のために年間200億円の赤字を覚悟する」とぶち上げ、元SMAP三人組を連れてきて番組を展開する、というような多くの一般層にウケる企画はニコニコ動画では予算的にも顧客属性的にもできません。一方、Youtubeもその他動画サイトも動画サイトのサービス単体での投資額は1,000億円レベルのオーダーであり、10年前のサブスクリプションサービスの水準では第一人者であったニコニコ動画もワールドワイドの競争では日本ドメスティックの中堅事業者にすぎません》
《川上さんの周辺にいる人は、少なくとも角川グループやドワンゴの投資余力ではワールドワイドに勝ち抜く動画サイトを構築できる資金が用意できないことを把握して、早めにニコニコ動画をサービス子会社として分離独立させて外部資本を入れるなどの施策を打たせるべきですが、事業の退潮で人が去っていっているのか川上さんだけが目立っているのは決してよろしくない状況なのではないかとすら思います》
カドカワが頼むべきはNTTドコモぐらいしか見当たらなくなっているのが現状なのではあるまいか。
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20171129-00078709/
元「2ちゃんねる」管理人で、かつてドワンゴの子会社ニワンゴで役員を務める(2013年退任)などかかわりの深かった西村博之ひろゆき)も、今や川上ほかの経営陣に「現場目線」がなく、利用者の乖離が生じてしまったことを1日付のブログで指摘した。
ニコニコ動画が始まったタイミングで、外部の人であるおいらと川上さんと夏野(剛)さんが最終決定権を持ってるという謎の状況が続いていました。
物事を進めるときには、社内事情というのがあるのですが、社内事情をまったくわかってないおいらが、「サービスとしてはこっちのほうが面白い!」とか好き勝手なことを言っていて、そちらに進むとなれば川上さんが社内事情を無理やりなんとかするという荒業をやってたりしました。
そんなこんなでニコニコ動画の現在なんですが、「ユーザーが喜ぶもの」という当たり前の企画をあまり出してないように見えるんですよね。(略)んで、ユーザーの気持ちのわからない経営陣が判断権限を持ってると、ユーザーが喜ぶ企画を選ぶことが出来ないので、いくらいい企画が社内から上がったとしても、サービスとして世に出なかったりします》
http://hiro.asks.jp/99419.html
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/408/408138/
東洋経済オンライン』も《ニコ動が崖っ縁、「独りよがり」新機能で炎上 会長が自ら謝罪、古参動画サービスの危機》との見出しで同様の指摘を行っている。
http://toyokeizai.net/articles/-/199717
一方、上記の通り『72時間ホンネテレビ』で盛り上がった「AbemaTV」は意気軒高。編成制作局長の谷口達彦が『ORICON NEWS』のインタビューに応え、《スマートフォンが生活の中心にあるような若い方に、AbemaTVを見てほしいと思っています。(略)「TVじゃ出来ない」というよりは、地上波よりも多少ターゲットが狭まっても、“誰かにとって熱狂的に見たくなる”コンテンツを作りたい》などと抱負を語っている。
https://www.oricon.co.jp/special/50489/
AbemaTVはついに通販への参入も表明した。サイバーエージェントテレビ朝日とロッピングライフとの共同出資によるネットテレビショッピング会社「売れるAbemaTV社」を1日付で設立。通販番組をAbemaTVで放送しながら商品の販売事業を行っていくという。
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=21075
http://jp.techcrunch.com/2017/12/01/abematv-commerce/

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎そのAbemaTV「72時間ホンネテレビ」について、ビデオリサーチが自社公式サイトに掲載していたプレスリリースを30日付で取り下げたことを発表。
《11月28日(火)に掲載させていただきました「72時間ホンネテレビ」のプレスリリースにおいて、特定条件下における推計を行ったため、AbemaTVの視聴人数を適切に表現する上で不十分と判断し、当該リリースの掲載を控えさせていただきました。関係者の皆様にはご迷惑をおかけしました事を深くお詫び申し上げます。》
https://www.videor.co.jp/index.htm
『ORICON NEWS』が削除されたリリースの内容を伝えている。
《同社は28日の同社のリリースで、11月2日午後9時から72時間にわたってAbemaTVで生放送され「総視聴数7400万」と発表された同番組について、テレビとネットの関係性を把握する独自の測定で「総視聴“人数”」が約207万人だったと推計。
また、AbemaTVを見る人ほどテレビを良く見ているデータがあり、普段からテレビをよく見る人がAbemaTVで3人の動向をチェックしたことから、「“テレビ離れ”とは異なる“テレビの拡がり、新しい楽しみ方”が伺える」と結論づけていた。》
https://www.oricon.co.jp/news/2101541/full/

トーハンの2017年「年間ベストセラー」は1日に発表。総合第1位とe-hon調べ第1位は共に『九十歳。何がめでたい』で、昨年の発売以来、実に63週連続でランクイン中。総合の6位に『日本一楽しい漢字ドリル うんこ漢字ドリル』、同7位に『騎士団長殺し』が入った。文庫では『君の膵臓をたべたい』が総合で第1位。
http://www.tohan.jp/topics/20171201_1111.html
http://www.tohan.jp/topics/upload_pdf/171201bestseller_2017y.pdf.pdf

オリコンの2017年「年間本ランキング」は2日に発表。「BOOK総合部門」で年間1位となったのは『九十歳。何がめでたい』。シリーズ合計220万部に達した『日本一楽しい漢字ドリル うんこ漢字ドリル』は同2位に入ったほか各部門で上位にランキング入り。「文芸・小説部門」では『騎士団長殺し』で村上春樹が同一作家では最多となる4度目の1位を獲得。写真集部門では講談社白石麻衣写真集『パスポート』が1位。
https://www.oricon.co.jp/special/50490/

◎その白石麻衣写真集の担当編集者・講談社の谷口晴紀がインタビューに応え、大ヒットの裏側にあったウェブ活用などの戦略について語っている。
https://www.oricon.co.jp/special/50494/

文藝春秋が2017年の電子書籍ダウンロード数ベスト10を発表。1?3位は『火花』『コンビニ人間』『生涯投資家』。高田かやの『さよなら、カルト村。思春期から村を出るまで』が、横田増生の『「ユニクロ帝国の光と影」著者の渾身レポート ユニクロ潜入一年』を1つ上回って8位。トランプ政権発足を予言したとして話題になった小松左京アメリカの壁』が10位に入っている。
https://www.atpress.ne.jp/news/144467

毎日小学生新聞編集部が、文庫本を出版する主な出版社5社(岩波書店講談社集英社、新潮社、文藝春秋)の社長を対象に「子どもに薦めたい文庫本」のアンケート調査を実施し、結果を公表。『やかまし村の子どもたち』(岩波少年文庫)と『ぼくらの七日間戦争』(角川つばさ文庫)『蠅の王』(新潮文庫)を推した文藝春秋・松井清人社長以外はいずれも自社発行の文庫に収録されている作品を推薦。
https://mainichi.jp/articles/20171130/mog/00m/040/001000c

◎理工学専門書の版元として知られるオーム社が、電子書籍ストアの「オーム社eBook Store」を来年2月28日で終了すると発表。ただ、同ストアはDRMフリー方式で購入できることが特徴で、既にダウンロード済みの電子書籍はサービスの終了後も手元に残る。
https://estore.ohmsha.co.jp/
http://ohmshaebookstore.hatenablog.com/entry/2017/11/30/105016
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1712/01/news067.html
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1712/02/news007.html

◎「マルちゃん生ラーメン」シリーズの東洋水産が、白泉社とコラボのうえオウンドメディアの『花とどんぶりCOMICS 生ラーメン少女漫画』を1日に創刊。「Wジュリエット」「S・A」「パタリロ!」の人気少女漫画3タイトルのエピソードとマルちゃん生ラーメンのレシピとを融合させたストーリーが展開されるという。期間限定パッケージの裏面にあるレシピコードを入力することでウェブサイトから読むことが可能。
http://www.maruchan.co.jp/namaramen/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000022319.html

マンガ雑誌が発売されない日(および、普段と違う曜日に発売される日)をプッシュ通知で告知する”漫画雑誌休刊情報通知アプリ”「漫画ウォッチャー」を、アプリパブリッシング事業を展開する「Cane.asia」(渋谷区)が12月1日付で開発者の坂本達夫(元Google)より事業譲受したと発表。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000028730.html

三栄書房の『vikka(ヴィカ)』が11月12日発売の12月号で休刊。2012年3月に創刊後、月刊誌としての発行を目指して不定期刊(近年は隔月刊)で発行されていたが、継続の基盤が整わなかったという。
https://www.wwdjapan.com/516343
http://www.sun-a.com/magazine/detail.php?pid=9875

南海電鉄和歌山市駅に建設される新駅ビルへ2019年に移転を予定している和歌山市民図書館について、和歌山市は指定管理者としてCCCを候補者に選んだことを発表。開会中の12月定例市議会で提案する。中核市では初めての”ツタヤ図書館”になる。
http://www.sankei.com/west/news/171201/wst1712010034-n1.html

千代田区立図書館の公式サイトが11月8日から1カ月近く閲覧できない状態が続いている。前日の夕刻にサイトの不具合が生じ、後に外部からの不正アクセスによるウイルスをウェブサーバが検知。正常に機能しなくなったため公開を停止したという。サイトを構築したのが10年前であることなどから対応に時間がかかっている模様。
https://www.library.chiyoda.tokyo.jp/
https://www.j-cast.com/2017/11/28315085.html

◎拙宅(岩本)に近い旧あおい書店中野店の改装工事が終わり、11月21日からBOOK1st.中野店としてリニューアルオープン。広々とした店内は以前と同じ(もちろん棚配置などは大幅に変更)だが、2階には新たにカフェが開店した。ただし開店時間は夜21時までなので、23時の閉店近くに行くことが多い私はまだ利用する機会がない。
https://www.instagram.com/p/BcFIax6lHir/
ちなみにここはあおい書店時代からすぐ隣にカフェ・ベローチェがあり、店内も広く、23時まで営業していることから書店利用者にも愛用されているようだ。ベローチェといえば同じシャノアールの子会社だったあゆみBOOKSと共同で1996年に「ブック&カフェ」の第1号店を横浜の綱島にオープンするなどカフェ併設型書店の草分け的な存在だったが、あゆみは一昨年に日販傘下に移り、綱島の店も今年2月に閉店した。
http://hiyosi.net/2017/01/12/ayumi_books/

◎神戸市東灘区にある児童書専門店「ひつじ書房」が3日に閉店。図書館司書だった店主の平松二三代(86歳)が42年前に夫と共に始めた店だが、高齢を理由に閉店を決めたらしい。
https://www.kobe-np.co.jp/news/kobe/201712/0010778821.shtml

◎この盛岡市さわや書店フェザン店の軒先に手作りで置かれたPOP類は相変らずすごい。こうした工夫の成果というべきか、同店の2017年の文庫売上ランキングでは今のところ『君の膵臓を食べたい』を3位に押しのける形で清水潔『殺人犯はそこにいる』(新潮文庫)が1位、野矢茂樹の『はじめて考えるときのように』(PHP文庫)が2位に入るといった状況になっている。同店の長江貴士が「売りにくいモノを売るPOPの発想法」を『JB PRESS』で綴っている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51709

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3)【人事】講談社 12月1日付機構改編および人事異動

〈機構改編および職務掌程の一部改変〉
(1)第一事業局第一事業広告部をコミュニケーション事業第一部と改称する。
(2)第二事業局第二事業広告部をコミュニケーション事業第二部と改称する。
(3)第二事業局女性コンテンツ第一部の業務を女性コンテンツ第二部に移管する。
(4)第二事業局女性コンテンツ第二部の業務の一部を女性コンテンツ第一部に移管する。
(5)第二事業局女性コンテンツ第三部を解消し、その業務を局に移管する。
(6)第二事業局女性コンテンツ第四部を解消し、その業務を局およびコミュニケーション事業第二部に分掌する。

〈異動(部長以上)〉
柿島 一暢
旧:第一事業局次長兼企画部長兼広報室次長
新:第一事業局長

長崎 亘宏
旧:第一事業局次長兼ライツ・メディアビジネス局次長兼メディアビジネス部担当部長
新:第一事業局次長兼ライツ・メディアビジネス局次長兼メディアビジネス部担当部長兼広報室次長

加藤 孝広
旧:第一事業局企画部担当部長(部長待遇)
新:企画部長

瀬尾 傑
旧:第一事業局第一事業広告部長
新:コミュニケーション事業第一部長

藤枝 幹治
旧:第二事業局女性コンテンツ第四部長
新:第二事業局部長

石井 亜樹
旧:第二事業局女性コンテンツ第二部長
新:女性コンテンツ第一部長

鴉田 久美子
旧:第二事業局女性コンテンツ第一部長
新:女性コンテンツ第二部長

佐藤 栄
旧:第二事業局第二事業広告部長
新:コミュニケーション事業第二部長

佐々木 健夫
旧:第六事業局第二出版部長
新:第六事業局第二出版部長兼第六事業局担当部長

鶴見 直子
旧:販売局第六事業販売部長
新:販売局第六事業販売部長兼第六事業局担当部長