【文徒】2018年(平成30)10月2日(第6巻184号・通巻1358号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】「新潮45」休刊をまだまだ考える
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2018.10.2 Shuppanjin

1)【記事】「新潮45」休刊をまだまだ考える

荻窪の新刊書店であるTitleを経営する辻山良雄のツイート。
幻冬舎plusの連載も更新しました。第46回は『スピリットを奪うもの』。先日発売された『新潮45』を巡るニュースは、この時代に本を売ることの難しさも考えさせられましたが、本屋として改めて思ったことなど。よろしければご覧ください」
https://twitter.com/Title_books/status/1046538440211222535
早速、読んでみた。そこで辻山は次のように書いている。
「本を売ることはモノのやり取りであると同時に、モノに託された思いのやり取りでもあるので、店に並べられた本は書き手の思いとともに売り手の思いも伝えています。本を選ぶフィルターの基準はあれども、そこに売り手の思いとの矛盾があれば、売場は次第にちぐはぐなものとなり、長期的には店を続けるスピリットを奪っていくものだと思います。
『客』として『店』でものを買う行為には、『その店の姿勢に対して票を投じている』という意味が暗に含まれます。店は票を投じられる対象となっていることを意識しなければならないし、この度の騒動は、もはやそれが『品揃えや利便性だけ』という時代ではなくなっている現れでもあると思います」
http://www.gentosha.jp/articles/-/11269
芸術新潮」は似合っても、「新潮45」10月号は似合わないという書店を私は何店か知っている。両誌の距離は同じ「新潮」を共有できないほどまでに開いてしまったとは言えるだろう。ブランド戦略として破綻してしまったということである。
小雪との共著で「女どうしで子どもを産むことにしました」(メディアファクトリー)や「同棲婚のリアル」(ポプラ新書)などの著書がある増原裕子はブログ「LGBTダイバーシティと社会のこと」に「まずは言葉のナイフを鞘におさめてほしい。対話はそれからだ。」をエントリしている。
「細かなところ、たとえば『~~というのは誤読だ』とか、『全体を読めばわかる』とか、「『生産性』という言葉だけが切りとられて過剰にバッシングされている」などと言う意見(言い訳?)を目にします。
でも、もっとそれ以前の、前提として差別的な思想が章のはしばしからにじみ出ていることに、多くの人が――直接的に攻撃されたLGBTだけでなく、もっとずっとたくさんの人が――気がつき、傷つき、悲しみ、そして憤慨し、批判や抗議の声が集中したのだと思います」
https://masuhara-hiroko.hatenablog.com/entry/2018/09/30/192515
「この国から『LGBTへの差別』をなくすために必要な2つのこと」(「現代ビジネス」)で松岡宗嗣は小川榮太郎について次のように書いている。
「小川氏の本旨は『異性愛者の結婚は神聖なもので、それ以外の性のあり方は"嗜好"であるから、なんでもかんでも権利権利と政治に繋げずに、ひっそりと生きていなさい』という、異性愛の特権性を保つために、ある種今までも散々言われてきたことと同じではあった。
この考え方自体が差別にあたるのだが、しかし、今回はさらに、これが適切でない知識や憶測、侮蔑的な言葉で肉付けされていた。こうした不当に誰かを傷つけているものを私は言論とは呼ばないのではないかと感じた」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57649
言論は「凶器」にもなり得るのである。「新潮45」10月号は明らかに「凶器」となり得る論を掲載していた。こうも言える。ギリギリにある原稿を掲載するかどうかの判断ができるかどうかが編集者の仕事であるとするならば、編集者失格の原稿(=凶器)を掲載してしまったのである。市中にバラ撒いた「凶器」を回収するのが版元の責任であるとするならば、新潮社は版元失格である。
10月2日付産経の「『新潮45』休刊」。松浦大悟、清田義昭(出版ニュース社)、花田紀凱が談話を寄せている。
「問題の『新潮45』の誌面からは、過激な右路線や話題のLGBT問題を扱えば売れるという安直な発想が透けて見える。出版界の負のスパイラルを感じる出来事だ」(清田義昭)
「新潮社の社長がコメントを出したのも、休刊を決めたのも事を急ぎ過ぎの感が否めない」(花田紀凱)
https://www.sankei.com/life/news/181001/lif1810010017-n1.html
編集者は小川榮太郎の著書や雑の類をしっかりと読み込んだのだろうか。新潮社の編集者の「質」が問われているはずだ。小川榮太郎の「政治は『生きづらさ』という主観を救えない」なる章は安倍信者やネトウヨで構成される「閉ざされたネット村」でしか通用しないジャーゴンに過ぎないことを見破れないほど「新潮45の編集者はお粗末であったのである。
「昭和ちびっこ広告手帳」などの仕事で知られるほうとうひろしが新潮45」問題で次のような連続ツイートをしている。
「(1)高橋源一郎氏のツイートで『新潮45』が新潮社校閲部のチェックをちゃんと受けていたことがわかった。
つまり『新潮45』編集長は、“魂の赤字”を無視して杉田水脈小川榮太郎の原稿をそのまま印刷に回し、まともな読者たちから“再度のダメ出し”とも言える批判を浴び、その挙句に雑誌をつぶしたのだ」
「(2)そんな『新潮45』編集長に対して、『一献を傾けたい』と新潮社広報担当の伊藤幸人役員は、9月25日の深夜に及んだ謝罪会見で言ったのだ。
https://twitter.com/Mae_To_Ushiro/status/1044597385534402560
雑誌を潰し、会社の名誉や、多くの国民の尊厳を著しく傷つけた責任者を、その上役が労ってどうする? またそれを謝罪会見で言うか?」
「(3)高橋源一郎氏による『小川榮太郎全著作物批評五千字原稿』を《校閲したのは(新潮社校閲部内で)問題の小川論校閲された方…》。
その方は、約1ヶ月前に小川論に赤字を入れるに際し、相当数の関連書籍を小川榮太郎の何倍も精読した上で事に当たっていたはずで、その知識が早くも再活用された」
「(4)新潮社広報の伊藤幸人役員が、あえて《一献を傾け》るならば、それは『新潮45』元編集長・若杉良作ではなく、同誌に寄稿された杉田水脈をはじめとするヘイト原稿への校正を、ことごとく若杉に無視されてきたにも関わらず、プライドを課して手を抜かなかった(であろう)校閲部の方々に対してだろう」
https://twitter.com/HiroshiHootoo/status/1045975992899002368
https://twitter.com/HiroshiHootoo/status/1045982257863774208
https://twitter.com/HiroshiHootoo/status/1046021684568875010
https://twitter.com/HiroshiHootoo/status/1046025538517688320
新潮社はある意味で「世間知らず」であったのではないだろうか。そもそも佐藤隆信社長が経営者として「世間知らず」なのである。
「EBook2.0 Magazine」が「『炎上』するWebと『燃え落ちる』紙」を発表している。
「『新潮45』の休刊(廃刊)は、Webと活字の関係を考えさせる事件であった。活字出版社がWebというメディアの罠に落ちた
https://www.ebook2forum.com/members/2018/09/burning-web-and-burnt-paper-media/

------------------------------------------------------

2)【本日の一行情報】

◎10月14日より放送がスタートするTBS日曜劇場「下町ロケット」の原作となる池井戸潤の「下町ロケット ゴースト」が小学館から発売された。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000128.000013640.html

◎「CRファッションブック 日本版」(ハースト婦人画報社)が10月10日に創刊される。ローンチパーティ&サイン会がカリーヌ・ロワトフェルドを招いて、10月24日(水)にマーク ジェイコブスが手がける新感覚ブックストア「BOOKMARC」で開催される。
http://harpersbazaar.jp/news/cr-fashion-book-japan-launch-event-180928-hb

◎「楽天の広告事業戦略 "購買への貢献"軸に出稿可能、外部広告主の比率40%へ」(通販新聞)は次のように書いている。
「現在、楽天の広告取扱額は2018年で約600億円となる見込みだが、運営する仮想モール「楽天市場出店者向けが大半を占めている。今後は企業が楽天市場内にブランドサイトを設置できる広告商品などの販売を強化し、楽天市場出店者以外の外部広告主の広告出稿を増やす。2021年には2000億円の広告取扱額を見込んでいるが、このうち外部広告主の比率を約40%まで上げたい考えだ」
http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2018/09/40-5.html

◎角川庫70年の歴史でも最多の刊行点数を誇る赤川次郎の250作以上の中から「自殺行き往復切符」「夜」惡の華」「本日は悲劇なり」「恐怖の報酬」「今日の別れに」の6作を復刊した「今こそ読みたい 赤川裏名作フェア」が全国の書店で開催されている。
https://kadobun.jp/news/393/2396f647

◎8月20日でも紹介した「フライパンちぎりパン」だが、オレンジページは「ちぎりパン」レシピ集「フライパンで焼ける! 7つのちぎりパン」を発売した。
https://www.atpress.ne.jp/news/167112

◎10月5日から、東京・上野の森美術館で開催される「フェルメール展」の主催は産経新聞社、フジテレビジョン博報堂DYメディアパートナーズ、上野の森美術館。特別協賛は大和ハウス工業ノーリツ鋼機。協賛は第一生命グループ、リコー。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000440.000022608.html

楽天は、ヴィッセル神戸に所属するアンドレス・イニエスタ選手のオリジナル映像コンテンツを集約した「イニエスタTV」を、ユーザー・コミュニティ参加型の字幕付き動画配信サービス「Rakuten VIKI」において配信開始した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000797.000005889.html

◎わかさ出版は、禁煙・減煙をサポートするアイテムとして新開発された「酸素ミスト吸引スティック」を付録とした新刊ムック「電子タバコ式・酸素ミスト吸引スティックBOOK」を9月28日に書店で発売した。定価3,480円+税。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000022855.html

◎「東大教授がおしえる やばい日本史」(ダイヤモンド社)が発売二か月で11万部突破と売れている。これはタイトルが良い。
https://diamond.jp/articles/-/180900

◎「東洋経済ONLINE」が掲載した「あの情報誌『ぴあ』は、アプリで復活できるか」は日本クラシックソムリエ協会 代表理事の田中泰による。これが鋭いぞ。
「ここまで書いてきて、『ぴあ』の価値とは一体なにかをもう一度考えてみると、その最大の特徴は“エンタメ情報の網羅性と俯瞰性”にあるように思えてくる。
メジャーもマイナーもない、すべての情報をフラットに並べて俯瞰すること。そしてそこから生まれる“偶然の出会い”の創出。それこそが『ぴあ』の強みであり、専門分野に特化した現代のネット社会に欠けているものではないだろうか」
https://toyokeizai.net/articles/-/239382
「アプリ版ぴあ」は紙版「ぴあ」の完成形態である。

◎世界化社は、これからの時代を生きる“ジェントルウーマン”へ向けた女性誌「OWN〔オウン〕2018 AUTUMN & WINTER」 を 9月28日(金)に刊行した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000499.000009728.html

主婦の友社SNSで話題の「大人の動物占いPREMIUM」2019年版を発売した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000833.000002372.html

福本伸行の「賭博破戒録カイジ」からスピンオフし、「週刊ヤングマガジン」(講談社)で連載されている「1日外出録ハンチョウ」のTVアニメ化が決定した。放送中の『中間管理録トネガワ枠をジャックして放送される。
https://animeanime.jp/article/2018/09/28/40453.html

産経新聞社が主催し、フジテレビジョンニッポン放送、サンケイスポーツ、夕刊フジフジサンケイビジネスアイ、扶桑社が後援する「第23回約束(プロミス)エッセー大賞」にSMBCコンシューマーファイナンスが協賛する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000036.000017221.html

◎スポーツ報知によれば「Cygames」(サイゲームス)はJ鳥栖とのスポンサー契約を今季で満了し、来季以降は結ばない方針だそうだ。
「契約を更新しなかった背景には、同社の親会社にあたるIT大手サイバーエージェント』(東京・渋谷区)がJ2町田を買収することがある。Jリーグの規約では1つのオーナーが複数のJクラブの経営に大きな影響を持つことを禁止している」
https://www.hochi.co.jp/soccer/national/20180928-OHT1T50274.html

◎世界化社の女性誌「LaLa Begin』」の公式オンラインショップ「LaLaBegin DRY GOODS STORE (ララビギン ドライグッズストア) 」( https://market.e-begin.jp/lala_drygoodsstore )が9月12日からオープンしている。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000502.000009728.html

◎謎解きタウンを運営するDASが企画制作した「そうてつローゼン×サントリー×日清食品共同企画 そうてつローゼン商品券が当たるキャンペーン ちょっぴり楽しい3分謎解き 二人の時間、金の時間」が、そうてつローゼン対象店舗で開催されている。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000061.000010917.html

◎「週刊春」が森功の「西城秀樹と姐さん」の連載を開始した。四天王寺にある西城秀樹の墓の隣には「俗名 宅見勝」の墓がある。西城の姉の内縁の夫が山口組若頭であった宅見勝であったのだ。ちなみに西城が所属していた芸映の社長・青木伸樹も関東を代表するI会の出身である。
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/10218

小学館の「幼稚園」11月号の付録は、9月号「かいてんずしつかみゲーム」(くら寿司とコラボ)、10月号「仮面ライダージオウ ガシャポン」(バンダイとコラボ)につづく企業コラボ第3弾でピザーラとのコラボによる「どっかん!ピザづくりパズル」だ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000129.000013640.html

-----------------------------------------------------

3)【深夜の誌人語録】

厳しさこそ優しさを育むものである