【文徒】2018年(平成30)10月3日(第6巻185号・通巻1359号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】その男 小川榮太郎につき…
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2018.10.3 Shuppanjin

1)【記事】その男 小川榮太郎につき…

産経新聞化部に属する桑原聡の「モンテーニュとの対話」。今回は「人間は平等を憎むのか 『新潮45』休刊について」と題されているのだが、私は次のよう言に?然とした。この後、どう理屈を捏ね回そうとも、私にとっては許しがたい物言いである。
「教養も才もない私が雑を書くにあたって武器にしているのは差別意識と偏見である」
https://www.sankei.com/life/news/180930/lif1809300002-n1.html
自らの差別意識と偏見を否認しないだけ小川榮太郎などよりはマシなのかもしれないと言って笑って済まされる章ではない。桑原の物言いは、言論が「凶器」であることにあまりにも無自覚ではあるまいか。こういう人物にはイデオロギーの左右に限らず新聞記者などという職業には本来就いてもらいたくないとさえ私は思う。ジャーナリズムは「凶器」を商売道具にしているとさえ言い得ると思っている。
桑原は例えば次のような藤田孝典(聖学院大学人間福祉学部客員准教授 反貧困ネットワーク玉代表)が2014年5月10日にツイッターに投稿した呟きをどう読むのだろうか。
「相手にするなと言われる方もいるが、僕は生涯片山さつき氏を許さない。生活保護バッシングのあとに、生活保護利用を恥じて自殺された方がいる。真に困窮されて必要があって保護を受けていた若者だ。彼女は間接的に殺人行為をしている。公共の福祉に反する政治家を許してはいけない」
https://twitter.com/fujitatakanori/status/465174212399734784
私は社会に実害をもたらし、被差別者に不利益を生じさせ、時として生命の危機をもたらす可能性のある言論を「凶器」と呼んでいるのである。
山田厚史(デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員)が「ダイヤモンドオンライン」に「右派論壇の一時の勢いに陰り、慰安婦訴訟で『訂正』相次ぐ」を発表している。
「最近では、力を増す差別的言論に便乗した『新潮45』が杉田水脈議員(自民党)を担いでLGBTに対する不条理な言説で世のひんしゅくを浴びた。
上滑り気味の右翼論壇の『やり過ぎ』に世論のバランス感覚が働いているようにも見える。時の勢いに乗った右翼の『歴史戦』もまた、押し戻されつつある」
https://diamond.jp/articles/-/180999
そうは言っても「新潮45」が休刊したのは片山杜秀が10月2日付読売新聞で指摘しているように「『公論の形成』という社会的使命を忘れ、極論で今日を凌ごうとしだしたから」であろう。「時の勢いに乗った右翼の『歴史戦』」は、そう簡単には押し戻されまい。
古谷経衡によれば沖縄県知事選に際して、一方の候補の支持者が他方の候補を批判するにあたって、「地元新聞・TVによる世論誘導選挙、中国の沖縄侵略隠しを訴える」という手法を駆使したようだ。「玉城デニーが知事になったら、沖縄は中国にのっとられます」「玉城デニーが知事になったら、中国の工作員が沖縄を破壊します」といった具合に。
https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20181001-00098867/
古谷は、これを「マトリックス史観」と呼んでいるが、「新潮45」に「政治は『生きづらさ』という主観を救えない」なる差別論を発表し、「新潮45」を休刊にまで追いつめた小川榮太郎も、自らの言論を自己批判するのではなく、「マトリックス史観」を持ち出して弁解を図っている。「在日特権」や「中国による沖縄侵略」というデマを流した連中と同じ類の物言いをして自らの加害責任を回避し、被害者ヅラをするのである。
「私の親友に洗脳、プロパガンダの専門家がいる。彼が電話をかけてきて、今回の件は明らかに変だぜ、と言う。新潮45が出た途端に加速する私への誹謗中傷のツィートが余りにも組織的だ。司令塔なしに不可能なレベルだとこの専門家は指摘する」
https://www.facebook.com/eitaro.ogawa/posts/2044429548983189
では司令塔の正体とは?これまでの小川榮太郎の発言から推測すると「朝日新聞反日野党」ということになりそうである。
「近畿財務局職員を自殺に追いやったのは朝日新聞反日野党だ」
https://www.facebook.com/eitaro.ogawa/posts/1762548563837957
これは適菜収のツイート。
「『新潮45』が廃刊になったのも朝日のせいなんだって。自分を批判する人達は、司令塔から指示を受けているんだって。病院に行ったほうがいいよね、この電波51歳は。。」
https://twitter.com/tekina_osamu/status/1046672290082041856
さすがに「陰謀論」もここまで来ると稲田朋美なども、もはやついていけないとなるようだ。10月2日付朝日新聞の「耕論」に登場するのは稲田朋美松浦大悟小林よしのりの三氏である。
https://www.asahi.com/articles/DA3S13704472.html
稲田朋美生長の家創始者である谷口雅春の熱烈なる崇拝者として知られ、父親の父親の椿原泰夫も政治活動家として知られている。その稲田が「新潮45の特集に寄稿した人の多くは今までお世話になったり、支援してくれたりした人で、みなさんまともな方です。ですがLGBTについては理解されていないな、というのが率直な感想です」と語り始めているのである。稲田からしても小川榮太郎LGBTを理解していないという評価になるようだ。稲田はこうも語っている。
「ただここ数年、『ヘイト本』と言われる差別的な出版物が売れる状況は、悲しいですね。右派論壇が先鋭化し、それが保守のイメージとなり、自分たちの首を絞めている。保守を自認している私としては心外です」
自らを保守だと自認している小林よしのりにしても小川榮太郎の言論には「驚愕」したようである。
「問題の特集で、小川榮太郎氏が、LGBTを『性的嗜好』と呼んで、『国家が反応すべき主題ではない』と書いているのには驚愕しました。あんな主張は保守でも何でもないですよ」
適菜収は「BEST TIMES」に「『新潮45』廃刊の真相と小川榮太郎氏の正体とは」を発表している。
「主張が正しいとか間違っているという以前に、事実関係も間違っているし、日本語も論理展開もおかしい。本には『LGBTという概念について私は詳細を知らないし、馬鹿らしくて詳細など知るつもりもないが、性の平等化を盾にとったポストマルクス主義の変種に違いあるまい』とあるが、要するに小川は詳細も知らず、調べもせずに原稿を書いたのだ。『詳細を知らない』のに『違いあるまい』って頭の中、どうなっているのか?」
http://best-times.jp/articles/-/9680
小川榮太郎は「藝評論家」を名乗っている。フェイスブックでは小林秀雄の後の二十一章」(幻冬舎)を掲げ、何の恥じらいもなく、こう書いてしまうのである。
「【自称藝評論家】小川榮太郎の代表作です。ぜひご購読ください。といふのも、最近色々な人が私を『自称』藝評論家と呼んでゐるのでね。せめて人を侮辱する時には、代表作位は読み、侮辱するに足るへぼな内容である事を示せるだけの中身とウィットある章で批判すべきでせう」
https://www.facebook.com/eitaro.ogawa/posts/2056236404469170
小林秀雄の後の二十一章」が小川の藝評論の代表作であるとしたら、本来、藝評論家などと恥ずかしくて名乗れないはずである。デビュー作が2012年9月に刊行した「約束の日 ―安倍晋三試論―」(幻冬舎)であったことを考えれば、政治評論家と自称するのであれば、まだわかる。小川がこれまでに刊行した出版物の大半は安倍礼賛本なのである。もちろん、デビュー作にしても売れたわけでも、評価が高かったわけでもあるまい。ただ相当数を買い取ってもらった痕跡が残っている。山崎雅弘がツイートしている。
小川榮太郎氏の安倍晋三ベタ褒め本『約束の日』については、自民党山口県第四選挙区支部がなぜか東京の紀伊國屋書店で2000冊、315万円で購入していたという。安倍晋三様の取り巻きが書いた本がなぜベストセラーになるかという仕掛けは興味深いが、『新潮45』最新号完売もこれと同じパターンだろうか」
https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1045919826542120960
仲俣暁生ではないが、もし福田恆存が生きていたら、小川榮太郎藝評論家なんて名乗れまい。もっとも福田恆存の孫の福田逸は、日本平和学研究所の理事をつとめている。現在、小川は日本平和学研究所の代表理事をつとめているのである。
もともと小川は日本経済人懇話会を母胎にして生まれた青年真志塾で幹事長をつとめていたようだ。青年真志塾の塾長は日本経済人懇話会の会長をつとめていた神谷光徳であり、神谷は生長の家監事であった。この青年真志塾が解散すると、「発展的解消の場として」、小川榮太郎を塾長とする創誠天志塾が結成され、日本平和学研究所に名称を変えてゆく。要するに叩き上げの右派活動家にほかならないのである。日本平和学研究所の発足時、理事には小川の師匠にあたる長谷川三千子宗教右派として知られている倫理研究所の丸山敏秋理事長も理事をつとめている。
https://www.facebook.com/tenshijyuku.jp/photos/a.141972822590020/520063908114241/?type=3&theater
http://poligion.wpblog.jp/shinshizyuku
http://poligion.wpblog.jp/archives/1856
https://psij.or.jp/
http://archive.fo/npyj3#selection-209.3-209.7
小川榮太郎はAbemaTVの「みのもんたのよるバズ!」に出演して怪気炎を上げている。
https://abematimes.com/posts/4961410
誰か小川に教えてやれよ!学には「含羞」が必要だって。

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2)【本日の一行情報】

小学館の漫画アプリ「サンデーうぇぶり」の「秋の大キャンペーン」がスタートした!第1弾として、「名探偵コナン青山剛昌が、少年剣士・刃の戦いの日々を描いた「YAIBAの全話イッキ読みを10月10日までの期間限定で実施している。10月に映像化される「からくりサーカス」「今日から俺は!!の24時間限定・全話無料開放や、イッキ読み第2弾「うしおととら」、第3弾「天使な小生意気」などが用意されている。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000130.000013640.html

◎森永製菓は集英社の「週刊少年ジャンプ」とコラボした「inゼリー×週刊少年ジャンプ パワーシーン100」キャンペーンを10月1日(月)よりスタートさせた。
https://www.morinaga.co.jp/in/specialcontents/powerscene/
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1810/01/news039.html

◎滅多に小説を読まない私だがロバート・ハリスの「JJ 横浜ダイアリーズ」(講談社)は読もうと思っている。ハリスの「青春」は私とは違って恵まれていたようだ。
「ははは。僕が実際に体験したのはもっとエグくて過激なんですよ
「優子はもっとSMがかっていて、ホントは僕は彼女の奴隷だったんですよ、1年間。それを書いちゃうと団鬼六になっちゃうんですよ。ふっふっふ(笑)」
「GQ」日本版の鈴木正編集長とロバート・ハリストークイベントが10月25日に代官山 蔦屋書店で開かれる。
https://gqjapan.jp/culture/bma/20180930/looking-back
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000313507
ロバート・ハリスは販促に熱心に取り組んでいる。
https://robertharris.jp/contents/11

◎「ヤングマガジン」(講談社)で連載中のラブコメ「なんでここに先生が!?」のTVアニメ化が決まった。
https://animeanime.jp/article/2018/10/01/40490.html

◎戸賀敬城はハースト婦人画報社でのメンズ メディア ブランド アンバサダーを10月をもって退任する。
「今後は、GDOの『ブルーダー』や、BRオンライン、富裕層向けブログサイト『ラグブロ。』学研のトガ本。シリーズ等のメディアには引き続き携わりつつ、新たなメディアを立ち上げたいと思っております」
https://ameblo.jp/togablo/day-20181001.html
私は、この戸賀という人物と会ったことがない。恐らく、今後とも会うことはないのではないか。こう言ったら良いだろうか。私は鈴木正の動向は気になって仕方ないけれど、戸賀敬城とか岸田一郎といった名前には不感症なのである。住んでいる惑星が違うというべきかもしれない。

◎日販が展開する、本のある空間づくりや選書などを行うブランド「YOURS BOOK STORE」(ユアーズブックストア)は、山口県で書店を営む榮堂と山口大学経済学部の学生とともに、「榮堂×山口大学 地方創生プロジェクト2018」を本日10月1日(月)から開始した。
https://www.nippan.co.jp/news/buneido_yamaguchidaigaku_2018/

◎光社の女性ファッション誌「bis」11月号がアイドルグループ「=LOVE」(イコールラブ)を特集している。
https://mdpr.jp/news/detail/1795845

大塚製薬の新ブランド飲料「ボディメンテ ドリンク」のCMに木村拓哉工藤静香夫妻の次女で、モデルのKoki,が出演している。
https://www.oricon.co.jp/news/2120569/full/

◎再生回数累計1億回超え、ボーカロイドとして初めてとなるNHK「みんなのうた」起用や自身のボーカロイド曲「トリコノシティ」が実写映画化されるなど、様々な分野で人気を博し大活躍中のボカロP・40mPが手掛ける書き下ろし小説「ナオハル はじまりの歌」が角川ビーン庫より発売された。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000005012.000007006.html

サイバーエージェントは、J2リーグクラブ「FC町田ゼルビア」を運営するゼルビアの株式の80%を約11億4800万円で取得した。残りの20%はFC町田ゼルビアをこれまで支えてきた株主が継続する。
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=22360

電通は、米国の投資会社Scrum Ventures LLC(スクラムベンチャーズ社)と共同で、世界中から募集したスポーツ系スタートアップの成長を支援し、企業にオープンイノベーションの場を提供する日本発アクセラレーション・プログラム「SPORTS TECH TOKYO」を2019年に日米で開催する。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2018095-1002.pdf
メディアにとってデジタルトランスフォーメーションの強化は欠かせない課題であるが、電通からすればメディアの進めるデジタルトランスフォーメーションに左右されないビジネスモデルを構築する必要があるだろう。その一つがスポーツであることは間違いあるまい。

電通は、海外本社「電通イージス・ネットワーク」を通じて、アジア・オセアニア地域においてライブイベントなどにより消費者との関係性を構築する体験マーケティングを手掛ける「Branded Ltd」(香港「ブランデッド社」)の株式過半を取得すること、および今後完全子会社化するオプションを電通グループが有することにつき合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2018096-1002.pdf
足し算をつづける限り足し算の問題は見えてこないのであれば、足し算をつづけるしか選択肢はないのである。掛け算と違って足し算は消耗戦でもある。

東京ニュース通信社は、「別冊TV Bros. TBSラジオ全力特集VOL.2」を10月11日(木)に発売する。テレビ情報誌が手がける「ラジオ大特集」である。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000553.000006568.html

◎U-NEXTと関西テレビは、宝島社の主催する第17回「このミステリーがすごい!」大賞において、ドラマ化を前提とした「U-NEXT・カンテレ賞」をサプライズで授賞することを決定した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000090.000031998.html

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3)【深夜の誌人語録】

涙は忘れて良いが笑顔を忘れないこと。