【文徒】2018年(平成30)10月1日(第6巻183号・通巻1357号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】「新潮45」休刊は最悪の選択ではなかったのか?
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
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1)【記事】「新潮45」休刊は最悪の選択ではなかったのか?

原子力都市」や「3.12の思想」で知られる矢部史郎はブログ原子力都市と海賊」に「『新潮45』誌、休刊(笑)」をエントリしている。矢部によれば「現在の『右翼論壇』を支えている読者層は、所得水準が高く、かつ、知的水準が低い人々」ということになる。これに対立するのが「所得水準が低くかつ知的水準の高いグループである。これは、主要には女性たちである」。なるほど。矢部はピエール・ブルデューを念頭に置いている。
矢部に従えば「WiLL」「正論」や「月刊Hanada」は明らかに「所得水準が高く、かつ、知的水準が低い人々」をターゲットにして経済的地盤を固めている。論の内容はわかりやすく単純な「政権擁護」であり、章は歯切れがよく、韜晦さは微塵もないのが、この手のオピニオン誌の特徴である。ちなみに「所得水準が低くかつ知的水準の高いグループ」をターゲットにしては雑誌はビジネスとして成立しない。
断るまでもなかろうが「新潮45」がリベラルと親和性が高い編集方針を掲げていたことは一度としてあるまい。そうは言っても、ここまで物議を醸すほど「右」エッジを極端に利かせていたわけでもなかった。その手のウルトラなオピニオン誌に比べて「新潮45」は事件や犯罪を得意にしていたノンフィクション誌の側面もあった。しかし、そうした編集方針では部数減に歯止めをかけることはできなかった。
https://piratecom.blogspot.com/2018/09/blog-post_27.html?spref=fb
「WEZZY」の「『新潮45』の暴走を招いた『出版不況』と、過激な右派論壇のニーズ」には次のような記述があった。
「『新潮45』はもともと、犯罪や事件のドキュメントで読者を惹き付けていた雑誌。特に、死刑判決を受けていた元暴力団員が表沙汰になっていなかった3件の殺人事件を告白した手記(2005年11月号掲載)は多くのメディアも後追いし、山田孝之が主演した映画『凶悪』のモデルともなった(映画内の雑誌名は「明朝24」となっている)」
https://wezz-y.com/archives/59121
「WiLL」や「月刊Hanada」と同じ方向に思い切って方向転換を試みたのは、ごく最近の話である。「『新潮45が残念な末路に至るまでの、ここ3年の特集を振り返ったらますます寂しくなった話」(幻冬舎plus)で泉美木蘭は、急激に舵を切ったのは今年に入ってからのことだとみている。
「この3年ほどの『新潮45』の特集をふりかえると、特に2018年に入ってから急激に『安倍政権寄り』『野党・リベラル叩き』朝日新聞叩き』に舵を切ったことが見てとれる」
http://www.gentosha.jp/articles/-/11264
デイリースポーツが「元『新潮45』編集長・中瀬ゆかり氏 少数者に寄り添ってきた…悔しさをテレビで」を掲載している。出版部長の中瀬はTOKYO MXの「5時に夢中!」に出演し、「言論の自由は大切に守らなければいけないが何でも言っていいということとはもちろん違う」と語っている。これは中瀬の個人的見解というよりも、出版部はそう考えていたということなのだろう。新潮社において「芸」と「春秋」(=ジャーナリズム)の対立が露見し、「新潮45休刊という決着を見たと、一連の騒動を見なすことができるのかもしれない。新潮社は佐藤隆信社長以下、「内」が大事なのであって「外」などどうでも良いと思っていると私などは邪推を働かせたくなりもする。
https://www.daily.co.jp/gossip/2018/09/27/0011680471.shtml
多くの新聞が既に紹介しているものも含めて、この問題を社説で取り上げている。
北海道新聞は9月27日付で社説「『新潮45』休刊 検証と説明を求めたい」を掲載している。
「編集者は、他者の尊厳を傷つける考え方や侮辱的な表現について、執筆者に行き過ぎを指摘しなかったのだろうか。
30年以上の歴史を持つ同誌が、一連の問題に対する責任者の詳しい総括もなく、いきなり休刊とされたことにも違和感が残る。
LGBTの権利尊重の特集をするなど、言論の場として別の対応もあったのではないか」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/232143
北海道新聞も私がそうであるようにいきなり休刊したことに違和感を抱いているのだ。高知新聞の9月28日付社説「【『新潮45休刊】『言論』の信用おとしめる」も「いきなり休刊」という表現を使っている。
「そのためか同社は『あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現が見受けられた』とする社長談話を公表した。ただ、謝罪の言はなく、具体的な措置も示さず、批判や不信をむしろ増幅させた。
 『常識を逸脱』した経過をまず具体的につまびらかにするのが筋だろう。批判への反論の特集からまだ1週間、社長談話からわずか4日でいきなり休刊方針を公表した経緯も全く不透明だ。
 休刊とする理由を同社は『十分な編集体制を整備しないまま刊行を続けたことに深い反省の思いを込めて決断した』とする。どの段階で、何が不十分だったのか分からない。休刊の『理由』と『反省』の真意を疑われても仕方ない」
https://www.kochinews.co.jp/article/219168/
新潮社は、騒動の肝心な部分は具体的には何も説明していないのである。問題の核心は隠蔽されたままなのである。東京新聞は9月29日付社説「『新潮45』休刊 老舗の名を泣かせるな」で、こう書く。
「<ここ数年、部数低迷に直面し、試行錯誤の過程において編集上の無理が生じ、企画の厳密な吟味や十分な原稿チェックがおろそかになっていた>
新潮社側はそう説明する。確かに一九八五年の創刊からピーク時十万部あった部数は今や二万部を切る状態である。だが、『編集上の無理』とは具体的に何なのか。それが『企画の吟味や原稿チェックがおろそかになった』ことと、どうつながるのか。ヘイト化した実態がつかめない」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018092902000145.html
こうしたことが明らかにならなければ歴史を教訓として未来に生かすこともできまい。「現代ビジネス」の掲載した「『新潮45』休刊…あるライターがみた『その時までに起こったこと』」で「新潮45」に寄稿もするなどライターの仕事を請け負っていた伊藤達也は次のように書いている。
「本稿のこれまでの議論で言えば、この『試行錯誤』とは『読者が求めるものの追求』を指すでしょう。また『厳密な吟味や十分な原稿チェックがおろそかになっていた』というのは、差別表現について、編集部だけでなく、法務・校閲を含めた出版社としてのチェック機能が働かなかったという意味でしょう。一般論として、法務担当者や校閲者による指摘の最終的な採否を決めるのは編集部であり、担当編集者や編集長がそれを容れなければ、記事はそのまま世に出てしまいます」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57719
小説家の瀬川深は呟く。
杉田水脈は今に至るまでなんの釈明もしていなければ議員も辞めておらず、小川榮太郎もなんら悪びれず、そして新潮45は反論するなり謝罪するなりして雑誌を続ける道はいくらでもあったわけで、誰一人『息の根を止められて』などいないんじゃないですかね」
https://twitter.com/segawashin/status/1045436985551269888
東洋経済オンライン」に仲俣暁生は「『新潮45』休刊決定でもモヤモヤ感が残る理由」を発表している。 
「この二つのケースと比べて、今回の『新潮45』の休刊が異なるのは、まずなにより休刊の原因となった記事がどれであるかが特定されていないことだ。ネットや他のメディアで批判的に言及されたのは8月号掲載の杉田水脈氏の寄稿と10月号掲載の小川榮太郎の寄稿だが、新潮社はこのどちらに対しても具体的に名を挙げて謝罪したわけではない。
あくまで『会社として十分な編集体制を整備しないまま「新潮45」の刊行を続けてきた』ことへの反省を述べたのみである。これでは発行元としての責任をとったことには到底ならないだろう」
「この二つのケース」とは、「マルコポーロ」と「DAYS JAPAN」を指す。仲俣ははっきりと言っている。
「このような曖昧なかたちで、公共な議論の場となりえたはずの雑誌を休刊してしまった新潮社の責任は、きわめて重いといわざるをえない」
https://toyokeizai.net/articles/-/239862
「曖昧なかたち」で「新潮45」が休刊してしまったから、「人の生き方を踏みにじるような」言論は、無反省に温存されてしまうことになる。「奈良日日新聞」のようにいくら許せないといきりたってみても、小川榮太郎もなんら悪びれることはないのである。
奈良日日新聞の9月28日付社説「新潮45寄稿問題 誰も置き去りにしない」は、こう書いている。
「月刊誌として社会の事象に一石を投じるのは大賛成だが、人の生き方を踏みにじるような寄稿を載せるのは同じメディアとして許せない」
http://editorial.x-winz.net/ed-102770
少なくとも新潮社の佐藤隆信社長が「『常識を逸脱した偏見と認識不足』と指摘した表現が、特集の、誰のどの表記に問題があったのか」は謝罪をするのであれば明らかにするべきだったのである。
産経新聞の9月28日付社説「新潮45の休刊 『言論の場』を閉ざすのか」は書いている。
「『生産性がない』とした杉田氏の表現は、いかにも品がなく配慮を欠いた。だが、社長談話が『常識を逸脱した偏見と認識不足』と指摘した表現が、特集の、誰のどの表記に問題があったのか、明らかにされていない。
 中には冷静な論考もあり、一切をなかったことにするかのごとき突然の休刊は、今後の冷静でまっとうな議論も封印しかねない」
http://editorial.x-winz.net/ed-102736
産経系のオピニオンサイト「iRONNA」が「LGBT特集『新潮45』休刊は度が過ぎる」をドーンと企画できるのも、新潮社が新潮45」を「曖昧なかたち」で休刊してしまったからだ。「iRONNA」の特集は次のようなメニューを取り揃えている。
小川榮太郎手記「私を非難した新潮社とリベラル諸氏へ」
藤岡信勝手記「言論圧力に屈した新潮社よ、恥を知れ」
「『新潮45』が『真っ当な論壇誌』として生まれ変わることを望む」井戸まさえ
「部数はミニコミ誌以下『新潮45』は遅かれ早かれ命脈尽きた」山田順
「『新潮45』休刊は、言論の自由を装う『最後の悪あがき』に過ぎない」松竹伸幸
https://ironna.jp/theme/967
このなかでも、やはり異彩を放っているのは小川榮太郎の手記である。小川は「新潮45」の休刊を説明するに際して「陰謀論」を持ち出しているのだ!むろん自己の言論については、さしたる根拠も示さず「無謬性の原則」に胡坐をかいている。
「この社長声明そのものも尋常ではない。社内論議なしに、執筆者であるわれわれ7人に断りもなしに、著者全員を侮辱する一方的な断罪を掲載誌の社長が出している。発行からたった3日だ。そんな事があり得るのか」
「この異例づくめの実質廃刊につき、社長の記者会見もなく、論執筆者、読者にも何も説明なく、次号発売もないという。特集の妥当性や私の章の評価とは別に、この過程そのものが、事あるごとに政治、企業、著名人に説明責任を求め、声高に世に警鐘を鳴らしてきた新潮社のあまりにも恥ずかしい姿と言える」
「では、日本社会、読者層全てから、私の章は人非人の犯罪的章だと難じられたのだろうか。どうもそうではないらしい」
「それにしても、なぜここまで事は急激に運ばれたのか。拙が普及してからでは廃刊クーデターが展開しにくくなるからではないか
https://ironna.jp/article/10798?p=1
私などは小川の次のような認識も信じ難い。小川はフェイスブックで次のように書いているのだが、小川は「部落差別」をどのように考えているのだろうか。
「が、元々強烈な人種差別や性差別、政敵少数者差別等々を近年まで抱えてきた欧米と日本では、社会意識そのものもそうした主題への知識社会のとってきた対応や言説化も、大きく異なる。マイノリティーイデオロギー化も日本では独自の工夫が必要だ」
https://www.facebook.com/eitaro.ogawa/posts/2055868244505986
9月27日付沖縄タイムスの「大弦小弦」で次のように書いていたが、既に書き手たちは別の媒体で憎悪をまきちらしているのである
「▼新潮社は『部数低迷』からの『試行錯誤』で『編集上の無理が生じた』と釈明した。老舗出版社が少数者を傷つける差別表現を商売にした理由として納得できるはずもない
▼社長も企画に「偏見」があったと認めたが、どの部分かは明かしていない。当事者への謝罪もなかった
▼一連の論には弱者、少数者の権利保障への強い嫌悪感が漂う。違う価値観を理解しようとする姿勢もない。書き手たちが今後、別の媒体で憎悪をまき散らし続けるなら、何も解決しない」
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/320879
「Buzzap」の「新潮45LGBTを徹底的に叩いた芸評論家・小川榮太郎氏、代表作のはずの『論がわずか1ページだった」は次のように書いている。
「つまり小川氏は大学生のレポートよりも短い1ページの章を『』と言い切り、代表作に据えることで、芸評論家を名乗っていたことになります」
https://buzzap.jp/news/20180927-ogawaeitaro-paper-missing/
いずれにしても「新潮45」の休刊は新潮社の責任を回避するためのものであって、何かを解決するためのものではなかったのである。「AbemaTIMES」が「『休刊するのは逃げ』『新潮45』に寄稿した松浦大悟氏がLGBT当事者として感じるディスコミュニケーション」を掲載しているが、松浦の言う通り「休刊するのは逃げ」なのである。
「自身もゲイであることをカミングアウトしている松浦氏は、事実上の"廃刊"とみられる今回の判断について『残念だ。LGBTら抗議を受けたからといって休刊するのは逃げだと思う。蓋をして終わりにして、差別の解消になると言えるのだろうか。やはり言論には言論で、正面から議論すべきだったと思う』と話す」
https://abematimes.com/posts/4938036
「日本型ヘイトスピーチとは何か――社会を破壊するレイシズム登場」の梁英聖は次のようにツイートしている。
「『新潮45』休刊で明らかになったのは、言論の自由を守るためにこそ、実効的な差別禁止ルールが必要だ、ということでは?
出版界で差別禁止を業界ルールにできていたら『新潮45』は(1)事実と経緯解明(2)何がルール違反か確定(3)それに応じた補償(4)再発防止措置を取れたはず。
休刊は充分避けられた」
https://twitter.com/rysyrys/status/1045330103243223040
氏家法雄は「『新潮45』は休刊では済まされない。」を発表している。新潮社の問題は新潮社に限った問題ではないのである。
「端的に言えば、新潮社は自社の雑誌がグロテスクな差別を掲載した責任に向き合った結果ではなく、編集部のチェックミスによる軽挙妄動の『末』という『ストーリー』に着地させたのである。
要するに、これが新潮社(をはじめとする日本の「大出版社」の宿痾的)な体質ということである。そして実は、ここに、新潮社(をはじめとする日本の「大出版社」の宿痾的)な、反人間主義的体質があるのだ」
https://stapo.info/2002/
池田信夫は「JBpress」に「『新潮45』騒動の示す保守の衰退」を寄稿している。
芸出版社は、著者の圧力に弱い。『週刊新潮』や『週刊春』に作家のスキャンダルが出ないのは、執筆拒否が恐いからだ。今回も何人かの著者が、新潮社の本のボイコットを表明したことが、社長の謝罪や休刊という過剰反応の一つの原因になったと思われる」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54243
小田嶋隆は「『編集』が消えていく世界に」(「日経ビジネスオンライン」)次のように述べている。
「…休刊は、言ってみれば『説明をしないための手段』であり、責任ある立場の人間が事態に直面しないための強制終了措置であったに過ぎない。
(中略)
とはいえ、そう思う一方で、私は、今回の「休刊」という関係者にとって極めて重い選択が、結果として無責任な野次馬を黙らせる結果をもたらすだろうとも思っている。
つまり、「休刊」は、問題の解決には貢献しないものの、事態の沈静化には寄与するわけだ」
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/092700160/
「ハフポスト日本版」の「『新潮45』の休刊よりも、新潮社がやるべきだったこと。『保毛尾田保毛男』騒動でフジテレビは何をしたのか?」においてNPO法人「虹色ダイバーシティ」理事長の村木真紀は次のように発言している。
「…『国会議員による特定の少数者への無理解とヘイト行為、加えて出版社が差別的言論に加担したという事実に対して、あまりにも軽い対応に感じます』と指摘する。
無理解による溝を埋めるためにも、『それぞれ(自民党と新潮社)、当事者団体としっかり時間をかけて対話する機会を設けて欲しいと思います』とコメントした」
https://www.huffingtonpost.jp/2018/09/26/shincho45_a_23543070/
そう、そもそも問題の発火点となった章を「新潮45」に発表し杉田水脈が一切口をつぐんでいるのである。これは江川紹子のツイート。
杉田水脈議員は、SNSで脅迫言があったとかで、自身の寄稿が端緒となった『新潮45』“休刊”問題にも『関知しない』とかでダンマリだが、その程度のことで喋らないなら、最初からなにも言うな、と思う。こんな覚悟のない者が言論人とか国会議員とか、ちゃんちゃらおかしく、へそが茶を沸かすレベル」
https://twitter.com/amneris84/status/1045690907431858176
本屋プラグの嶋田詔太は「note」に「今後の新潮社書籍の販売再開について」を発表している。
「先だって発表された佐藤隆信社長の声明にも、今回の休刊に関するお知らせにも、新潮社として、自社の発行物に対し責任を負う姿勢がまったく感じられませんでした。
佐藤社長は、『あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現が見受けられました』としていますが、『見受ける』というのは、あくまでも受け手の立場であり、送り手の立場から発せられる表現ではありません。
また、今回のような寄稿が掲載された理由も、『企画の厳密な吟味や十分な原稿チェックがおろそかになっていた』ためとしており、解釈のしようでは、新潮社も被害者であるという釈明にも捉えられます。
『あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現』の送り手は、あくまでも新潮社社外にあり、新潮社としては、その送り手に抗議や反論を行うこともなく、ただ屈服するというのであれば、自社の言論メディアとしての存在価値を自ら全否定することに他なりません。偏見と認識不足に満ちた表現は、今後も他のメディアを通じて、繰り返されることになるでしょう。
新潮社には『間違った物事を、正しい方向へ是正すること』、それを行う力も、また責任もあるものと考えていましたが、その両方を放棄されたことは、到底納得できません」
https://note.mu/booksplug/n/na65d7896ec29
山陰中央新報佐賀新聞が掲載した9月29日付社説「新潮45刊/編集過程の検証が必要」は共同通信の小山鉄郎によるものだ。
「10月号の発売から、わずか1週間で休刊となった今回の『新潮45』の問題は、別な角度から見ると、インターネット社会の反映を強く感じさせる。作家ら書き手たちも雑誌などに頼らなくてもネット上に自分個人の考えを発信できる。出版社の社員も、書店の人も同様である。それが次々に広がり、非常に速く伝わっていく。新潮社の対応が、そのスピードに押しまくられているように感じられる」
https://www.sanin-chuo.co.jp/www/contents/1538185987707/index.html
確かに小山の書くようにインターネット社会のスピードに押しまくられたという側面はあったろう。それでも休刊以外の選択肢は新潮社に間違いなくあったはずである。芸誌の「新潮」高橋源一郎の「『藝評論家』小川榮太郎氏の全著作を読んでおれは泣いた」を発表するようだ。高橋はツイッターにこう投稿しているのだ。
「『新潮45』問題について、来月7日発売の『新潮』に書いた『藝評論家」小川榮太郎氏の全著作を読んでおれは泣いた』が校了した。約六千字である。奇しくも、これを校閲したのは、問題の小川論校閲された方だった。作家になって初めておれは校閲チェックの章に泣かされた。泣いてばかりだ」
https://twitter.com/takagengen/status/1045829985036947456
新潮45」の休刊で終わりにはしないという「新潮」編集部の姿勢の現れであろう。
韓国の中央日報が「【グローバルアイ】日本の月刊誌『新潮45休刊が他人事ではない理由」を掲載していた。
https://japanese.joins.com/article/561/245561.html?servcode=100&sectcode=140

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2)【本日の一行情報】

帝国データバンクが出版取次・書店経営業者の経営実態調査を発表した。これによれば売上規模別でみると、「1億円未満」が1071社(構成比49.3%)と全体の約半数を占めた。出版取次、書店経営のいずれの業種も売上高10億円未満の業者が全体の約9割。
業歴でみると、「50~100年未満」が1159社(構成比45.9%)で最多。新規参入する会社が少なく、歴史のある会社が多いということだ。
従業員別では「1~10人未満」が1632社(構成比77.9%)でダントツ。
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p180905.pdf

◎「FEEL YOUNG」(祥伝社)で連載中のかわかみじゅんこが女教師と中学生の禁断の恋を描く「中学聖日記」が実写ドラマ化され、TBS系で放映される。テレビ放映に先立ちスピンオフムービー「聖ちゃんと会う前の僕たち」がYouTubeで公開された。
https://news.merumo.ne.jp/article/genre/7886090
https://www.youtube.com/watch?v=7IhzAsKkepo
このドラマ、話題になるだろうな。だって、オレが見たいんだもの

熊本日日新聞社は、違法な残業と残業代の未払いがあったとして、熊本労働基準監督署から是正勧告を受けたそうだ。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20180926-OYT1T50095.html

日本テレビテレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビジョンという在京民放5社は、「TVer」において、各局の地上波放送番組をインターネット同時配信する技術実証を実施する。配信実験番組と配信日時は次の通り。
日本テレビレスリン全日本選手権」 12/23 放送、テレビ朝日女子サッカーなでしこジャパン国際親善試合」 11/11 放送、TBSテレビ「2018 世界バレー女子大会」 9/29~10/20 放送(予定)、テレビ東京ワールドビジネスサテライト」「青春高校3年C組」2019/1/21~2/1 放送分(予定)、フジテレビ「みんなの KEIBA」 11/25、12/23 放送。
実証実験は6~7月の「2018 FIFA ワールドカップロシア」に続き2回目となる。
https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1144812.html

集英社女性誌「モア」11月号の付録は「ジルスチュアートの三つ折り財布。色がピンクとネイビーの二種類ある。
https://more.hpplus.jp/fashion/news/41832/2/
講談社女性誌「with」11月号の付録は「ミラ オーウェン」のコラボバッグ。色がベージュとレッドの二種類ある
https://bg-mania.jp/2018/09/28263671.html
当然、二冊買いする読者も出て来よう。その分、部数が増えたからと言って、断るまでもなく広告媒体価値が上がるというわけではない。

Facebookストーリーズ広告は日本でも提供開始された。
https://digiday.jp/platforms/facebook_stories_ad_start/

◎LINE独自の仮想通貨である「LINK(海外向け)」が、10月16日(火)に、グローバルの仮想通貨交換所「BITBOX」において、取扱を開始した。LINEは「LINE Token Economy」構想を掲げている。
「LINE Token Economy」は、LINEが独自に開発したブロックチェーンネットワーク「LINK Chain」を基盤(メインネット)として「LINKエコシステム」を構築し、サービス提供者とユーザーの関係をよりフラットにし、ともに成長していくことができる共創関係を目指すトークンエコノミー構想だそうだ。
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2018/2395

◎GGメディアは、男性誌「GG」の岸田一郎編集長が退任し、後任に荻山尚副編集長が就任したと発表した。岸田は退任後もイベントやECサイト運営など新規事業の責任者として「GG」にかかわる。
https://www.wwdjapan.com/706206

◎元衆議院議員の宮崎謙介と妻の金子恵美が28日放送のTBS「今夜解禁!ザ・因縁」に出演し、宮崎の不倫をスクープした週刊春の記者と対面したそうだ。ここまでやらないと「週刊春」といえども、生き残れない時代なのだろう。
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2018/09/28/kiji/20180926s00041000246000c.html
編集者や記者をキャラクター化するビジネスの可能性を考えたい。

小林よしのりから「極左・岩井克己は『男系派』で皇統断絶を支援」と切って捨てられたことがある岩井克己は1994年から2012年5月まで朝日新聞編集委員をつとめ、現在は朝日新聞特別嘱託、朝日が誇る最強の皇室記者である。その岩井の仕事のある意味、集大成ともいえる「皇室の風 宮中取材余話」(講談社)の評判が良いようだ。平山周吉こと細井秀雄が「週刊ポスト」で絶賛している。「昭和天皇の『ネエー』『ソーカイ』『ナンダイ』『ダッテー』といった口吻から御機嫌を察していた「内舎人」という下働きの人々のメモも紹介される。
武蔵野陵に棺と共に収められた昭和天皇の副葬品の詳細も出てくる。未公表のこの一覧表からは、人間天皇が愛したものがよくわかる。古代の天皇陵の副葬品と比較すると、『戦前の「大元帥」の影を極力消し去っていった』昭和天皇像もまた見えてくる」
https://www.news-postseven.com/archives/20180927_767932.html
私は、この書評を読み終えると同時に書店へ走ったのは言うまでもない。細井は「諸君!」「學界」の元編集長である。細井秀雄は小津安二郎の「東京物語」が好きなんだろうね。

講談社から「美少女戦士セーラームーン 武内直子庫コレクション」1、2巻が発売された。
https://natalie.mu/comic/news/301490

◎戸塚啓の「日本サッカー代表監督総論」が双葉社から刊行された
https://www.soccer-king.jp/news/japan/national/20180928/839412.html?cx_top=newarrival
オレ、サッカーを論じるのが好きなんだよね。

大日本印刷がグループの書店及び株式会社トゥ・ディファクトと共同で運営するハイブリッド型総合書店「honto」(https://honto.jp/)は、「読みたい本がもらえるかも?!ほしい本登録キャンペーン」を10月1日(月)から10月31日(水)まで実施する。キャンペーンページでエントリーのうえ、hontoサイトまたはスマートフォンアプリ「honto with」から「ほしい本」に読みたい本を3冊以上登録すると、抽選で100名に登録した本のいずれか1冊がプレゼントされる。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000257.000009424.html

KADOKAWAは9月28日から10月1日まで、さまざまな電子書籍ストアでン「ニコニコカドカワ祭り2018」を実施する
http://ascii.jp/elem/000/001/748/1748205/
ブックウォーカーでは購入したときにポイントが通常の50倍もらえるコインUPキャンペーンを展開している。またジャンル別売上ランキングTOP100作品はポイント60倍で購入できる。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000942.000001227.html

◎「J-CASTニュース」の「『金曜日』新社長、植村氏が早くも新潮、産経記者と火花」は、こう書いている。
産経新聞は、1991年12月7日土曜日付の紙面(大阪本社版)で、元慰安婦の金学順(キム・ハクスン)さん(1997年死去)の講演会の様子を報じる際、『金さんは17歳の時、日本軍に強制的に連行され、中国の前線で、軍人の相手をする慰安婦として働かされた』と、地ので『強制的に連行』という言を使っている。植村氏はこのことを指摘しながら、産経新聞の報道姿勢を非難した」
https://www.j-cast.com/2018/09/28339877.html?p=all
産経ニュースも「『週刊金曜日』発行の『金曜日』社長に植村隆」を掲載している。大人しい記事だ。
https://www.sankei.com/life/news/180926/lif1809260030-n1.html

◎「東洋経済オンライン」が「出版不況に爆伸び、レタスクラブ『神会議』」を掲載している。松田紀子編集長はコミックエッセイという新ジャンルの生みの親である。そんな松田は「レタスクラブ」の編集長に就任すると編集会議に企画書の持ち込みを禁じたそうだ。そうすることで「会議」を活性化させていったのである。
「1号当たりの平均販売部数も、2016年下期(7~12月)に15万3500部だったところから、2017年下期には21万9800部へと大幅に回復し、往年のライバルである『オレンジページ』の平均部数を初めて抜いた」
https://toyokeizai.net/articles/-/239156

◎学研プラスは「学研の図鑑 for Kids・入学準備の図鑑」を発売した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001836.000002535.html

◎光社キャラ庫が創刊。光社が本格的にラノベに参入する。
https://yomeba-web.jp/special/chara_bunko/

電通は、南米サッカー連盟CONMEBOL)が主催する南米の国別代表選手権「コパ・アメリカ2019」のグローバル商業権の販売権を独占取得した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2018094-0928.pdf

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3)【深夜の誌人語録】

失敗に甘えるな!