【文徒】2018年(平成30)10月4日(第6巻186号・通巻1360号)


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1)【記事】新潮社は小川榮太郎に汚された「学」を背負えるのか?!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
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1)【記事】新潮社は小川榮太郎に汚された「学」を背負えるのか?!

10月2日付の朝日新聞の「耕論」に登場したLGBTの当事者でもある松浦大悟が「LGBTを含む性的少数者の多くは、新潮45たたきを白けて見ていたのではないでしょうか」と語っていることについてLGBT政策情報センター代表理事であり、衆議院議員でもある尾辻かな子は「松浦さんが白けたのはそうなんでしょうが、多くと言っていいのか」と疑問を投げかけていたが、その通りであろう。
https://twitter.com/otsujikanako/status/1047060120306376706
昨日は触れなかったが、朝日新聞が耕論に稲田朋美松浦大悟、小林よしのりの三人を並べたことについて能川元一は「朝日は右派の差別ロンダリングに手を貸すつもりなのか」と指摘していることも忘れてはなるまい。
https://twitter.com/nogawam/status/1046935151324753920
「市井に生きるセクシュアル・マイノリティと友人たちの生活感覚と存在を、社会的に可視化して行く目的」で活動しているレインボー・アクションが「『新潮45休刊について」を発表した。至極もっともな要求だと思う。商業出版とはいえ学やジャーナリズムを飯のタネにしている新潮社なればこそ真摯に対応すべきである。新潮社に「逃げ」は許されまい。
「2018年9月25日発の新潮社による『お知らせ』及びプレスリリースによると、新潮社は創刊33年目の月刊誌『新潮45の休刊を決断したとのことです。
2018年9月21日発の社長声明に書かれた、10月号の特別企画『そんなにおかしいか『杉田水脈』論』の『ある部分』の表現について、これを出版したことの反省に基づくもの、とのことでした。
反省をしたこと、『お詫び』をしたこと自体については一定の評価をしますが、その結果が雑誌の突然の休刊であるというのは承服できません。
この章の結びにある『信頼に値する出版活動をしていく所存』という決意が事実であるならば、新潮社は最低限、次の3点についての記事を、何らかの媒体(本来ならば『新潮45』11月号、あるいは増刊号)によって発表するべきであると考えます。
1.『新潮45』編集部がいかなる意図で10月号の特別企画を掲載したのかについての釈明
2.どの記事のどの部分がどう問題だったのかについて、新潮社自身による説明と、外部による検証
3.特別企画の社内での扱い(特に校了の経緯について)の開示と、経営陣・役員による出版可否の判断の有無の明示
2の外部による検証については、既にいくつかウェブ上に良質な記事が書かれておりますので、それらを採録することも推奨します。
以上のとおり、私たちは対話を重ねて要求します」
http://rainbowaction.blog.fc2.com/blog-entry-292.html
内田樹のツイート。ある意味、新潮社は執筆者からも逃げたのである。
東京新聞から『新潮45』休刊についての電話取材。『政治的に正しくない』言説を意図的に差し出した以上、その意図について公的な場で説明責任を果たし、辞表を懐にしてでも、執筆者とともに戦うのが編集者の筋目ではないかとお答えしました」
https://twitter.com/levinassien/status/1047120048580513796
もしかすると、編集者は小川榮太郎を守るに値しないとでも思っているのだろうか。小川の論を載せれば、「宗教右派」の読者を取り込めるとでも判断したのだろうか。
「最後のジャーリズム」なるブログが「謎の団体『創誠天志塾』に韓国系カルト宗教の影」なる章をエントリしている。小川が立ち上げた創誠天志塾は、生長の家出身の日本会議事務総長の椛島有三日本政策研究センター伊藤哲夫はもちろんのこと、統一教会シンクタンク世界戦略総合研究所の事務局次長を務める人物や世界日報の関係者、汝矣島純福音教会の信者と交流があることがわかる
http://saigonojournalist.blogspot.com/2014/06/blog-post_8.html
東京新聞では10月3日付「こちら特報部」が「『休刊で解決しない』 『新潮45』問題 LGBT当事者ら幕引きに危機感」を掲載している。内田樹は、この記事でこうも言っている。
「出版社の社会的責任の希薄さを感じる」
そんな版元に日本学を預けていて良いのかという疑問が湧いてくるのは当然であろう。むろん、私はパオロ・マッツァリーノが「反社会学講座ブログ」に「私と『新潮45』」をエントリし、次のように指摘していることは承知している。
「…新潮を責めるひとたちからは、理由や経緯の検証をせずに休刊したのは無責任だ、みたいな批判も相次いでますが、『説明責任を果たせ』ってのもまた、紋切り型の批判なんですよね。新潮45』が載せていた杉田水脈さんとその仲間たちの章は、論にも満たないたわごとです。読むだけでも不愉快なのに、そんなもんの理由や説明をあらためて聞きたいのですか?」
先に紹介したレインボー・アクションにしても「説明責任を果たせ」と紋切型の批判をしているわけではい。まずは、新潮社の「紋切型」の声明を前にして、何が「言論以下の偏見、たわごと」であったかを具体的に明らかにせよと要求しているのである。また、パオロ・マッツァリーノがこう言う心情もわかりはするし、実際、そうだろう。
「根拠と論理があるものを『言論』といいます。根拠と論理があるからこそ、『議論』ができるんです。根拠も論理もない個人の感情論や偏見、悪口は、議論の対象になりません。それこそまさに、なんの生産性もない偏見に反論して論破したところで、こちらが得るものはなにもないのだから、むなしくなるだけ」
しかし、得るものはにもなくとも、またむなしくなるだけであっても、「なんの生産性もない偏見」に落とし前をつけない限り「差別」は野放しにされたままである。
http://pmazzarino.blog.fc2.com/blog-entry-301.html
適菜収は「BEST TIMES」に「『新潮45』廃刊の真相と小川榮太郎氏の正体とは(後編)」を発表している。「しかし、出版業界は今回の『新潮45』の廃刊で気付いたのではないか?
便所の落書きを放置しておくと、自分たちのクビを絞める結果になると。
小川及びその周辺にいるいかがわしい連中に対し、出版業界は毅然とした対応をとるべきだ。今、日本にとって一番大切なことは、小川を逃げ切らせないことである。そして、あの手の連中の所業をすべて暴き出すことだ」
http://best-times.jp/articles/-/9681
そう、蓑田胸喜の「歴史」を忘れるなということである。「WiLL」は小川榮太郎を切ったということなのだろう。
「『週刊春』(10/11)も指摘していますが、小川榮太郎の論が『新潮45』の休刊を招いたことはご承知の通りです。弊誌は、現編集体制に移行した2016年4月以降、小川氏を起用しておりません。論壇誌として『本件につきコメントを』と取材依頼がございますが、受ける立場にないことを申し上げます
https://twitter.com/WiLL_edit/status/1047409021483802625
「週刊春」10月11号も取材しているかと思うが、「一般社団法人放送法遵守を求める視聴者の会」はホームページに「会員のみなさま及び当会ご関係者様へのお知らせ」を発表し、すぎやまこういちと小川榮太郎の間に金銭トラブルがあることを認めた。
「椙山氏(すぎやまこういち氏)と小川氏(小川榮太郎氏)の間で、運営に関するトラブルがあったことは事実であり、理事及び現事務局も認識しております。見返りなしで多額の資金を提供した椙山氏が、小川氏の使途に疑惑と不満を抱き、代表を辞任するまでに至りました。また、このトラブルをきっかけに、小川氏も事務局長を退任しております」
加えて上念司は杉田水脈小川榮太郎を次のように切って捨てている。
「そもそも発端となった杉田氏の論は誤解と偏見に基づく非常に雑な論考だと思います。小川氏の論説をそれを擁護するために書かれたようですが、問題を却って炎上させてしまった点では失敗だったと言えるでしょう。もちろん、私は杉田氏を批判している立場なので、この件について小川氏の論考を支持することはできません」
http://housouhou.com/2018/10/03/

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2)【本日の一行情報】

◎光社の女性ファッション誌「bis」の中郡暖菜編集長が全体ディレクションを担当し、カットソーからニット、アウターまでリアルなストリートのトレンドアイテムが揃う新ブランド「Social Apartment by the Press」が、ポップアップストアをホテル コエ トーキョーに10月6日から8日までの期間限定でオープンする。
https://www.fashionsnap.com/article/2018-09-30/socialapartment-hotelkoe/
ホテル コエ トーキョーって良いよ。
http://hotelkoe.com/

◎「2018サントリー ザ・カクテルアワード」は銀座・BAR エルロンの澁谷暁典の「紫翠」(シスイ)に決まった。「紫翠」は、ジャパニーズクラフトジン「ROKU」に、マスカットリキュール「ミスティア」、抹茶リキュール「ジャポネ」、モンジュースと「わつなぎ生姜」をあわせた一杯だという。これは飲んでみたい。
https://www.ssnp.co.jp/news/liquor/2018/10/2018-1001-1136-14.html
エルロンには何度か行ったことがある。ここ。
http://www.ginzanoyoru.com/shopinfo/35714031/35714031.html

朝日新聞誤報。読売は「正解」を報道していた。
朝日新聞内閣改造人事を報じた記事で、片山さつき氏が厚生労働相になると報じましたが、根本匠氏の誤りでした。片山氏の厚労相起用が検討された事実はなく、取材の過程で、他の閣僚候補が就くポストと取り違えました。確認も不十分でした。おわびして訂正します」
https://www.asahi.com/articles/ASLB20PWCLB1UTFK01Q.html

◎「作家・町田康のパンクな学論 ~古典はこう読め~」が10月8日にNHKラジオ第1で放送される。
https://www.cinra.net/news/20181001-machidako
町田康がバンド「汝、我が民に非ズ」を結成してファーストアルバム「つらい思いを抱きしめて」をリリースした。町田は全11曲の作詞を手がけている。
https://www.barks.jp/news/?id=1000159996
好きだった人は泥沼に沈むんだぜ、ベイビー!
https://www.youtube.com/watch?v=OSaia9jHIMs
町田パンクは死なず。

プチバトースタジオジブリがコラボした。
https://madamefigaro.jp/fashion/news/181001-news-petit-bateau.html

Mリーグ機構は、大和証券と、2018年シーズンから2020年シーズンの3シーズンにおいて、レギュラーシーズンスポンサー契約を結ぶことが決定した。これにより10月1日(月)に開幕するリーグ名称は、「大和証券Mリーグ」2018となる。Mリーグ機構の代表理事はサイバーエージェントの藤田晋。理事には電通執行役員の石川豊、博報堂DYメディアパートナーズ取締役常務執行役員の五十嵐真人も名前を連ねている。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000035640.html
Mってマージャンのことだからね。

日本電子図書館サービスが提供する電子図書館サービス「LibrariE」(ライブラリエ)の導入館が9月末日現在72館となった。内訳は、大学図書館24館、学校図書館19館、公共図書館28館(TRC-DL館へのコンテンツ供給館を含む)、その他1館。取扱いコンテンツ数は4万2,000点。取引出版社は90社。
https://www.jdls.co.jp/news/2018/10/%e9%9b%bb%e5%ad%90%e5%9b%b3%e6%9b%b8%e9%a4%a8%e3%82%b7%e3%82%b9%e3%83%86%e3%83%a0%e3%80%8clibrarie%e3%80%8d%e5%b0%8e%e5%85%a5%e9%a4%a8%e3%81%8c70%e9%a4%a8%e3%81%ab%e5%88%b0%e9%81%94%e3%80%82%e3%82%b3/

藝春秋OBの半藤一利は元気だなあ。田中健五と社長を争った世代だぜ。半藤は大和書房から「語り継ぐこの国のかたち」を上梓する。帯はスタジオジブリ宮崎駿が書いている。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000055.000033602.html
http://www.daiwashobo.co.jp/book/b375009.html
田中と半藤は実際、対立していたと思う。田中が「春秋」の人であったとするならば、半藤は「藝」の人であったと私などは理解している。しかし、対立点よりも共通項のほうが多いんだよね。田中であっても、半藤であっても小川榮太郎は絶対に起用しないだろう。

◎「JILL STUARTコラボの三つ折り財布」という付録効果で集英社の女性誌「MORE」11月号が売れている。ネイビーとピンクの二種類用意されたが、ネイビーは完売なんじゃないの。
https://more.hpplus.jp/morehapi/article/hitomi/f-news/42064/4/

ブリヂストンサイクルは光社の女性誌誌「STORY」と商品開発を共同で行った電動アシスト自転車「il mio」(イルミオ)」を限定1000台のみ光社公式通販サイkokode.jpと一部店舗にて先行展示販売する。価格は13万9800円(税抜)。
https://www.cyclesports.jp/depot/detail/103672

本庶佑ノーベル生理学・医学賞を受賞。講談社にはブルーバックスに「遺伝子が語る生命像 動く遺伝子をさぐる」があり、岩波書店には「いのちとは何か?幸福・ゲノム・病」がある。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000138461
https://www.iwanami.co.jp/book/b263183.html
三省堂書店神保町本店(東京・千代田)の理学書の担当者は『特設コーナーで本庶さんの著書などを販売したいが、在庫がない』。受賞の一報をニュースで聞き、すぐシステムで確認したが、在庫切れだったという」(10月2日付日経「書店、本庶さんの著書の在庫確認など対応追われる」)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36000330S8A001C1CC0000/

◎ママ向け動画メディア「mama+」(ママタス)を運営するC Channelとマガジンハウスが発刊する「Hanakoママ」は企業の「ママ向け広告キャンペーン施策」の受け皿として共同セールス商品を発表した。お洒落な誌面が人気の「Hanakoママ」の世界観をそのままに「mama+」が動画化するというわけだ。ネイティブアド動画はSNS上で全国のママに、タイアップ誌面広告は「Hanakoママ」誌面を通して保育園ママにリーチできる商品設計となっている。
既にクラシエフーズとの「知育菓子 親子体験企画シリーズ」で取り組まれている。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000129.000025680.html
https://www.mamatas.net/mag/436/

◎毎日庫「あなたが消えた夜に」の刊行を記念し、中村則と又吉直樹の対談イベントが11月16日(金)19時から紀伊國屋ールで開催される。「あなたが消えた夜に」は中村にとって初の新聞小説で、毎日新聞に連載された。又吉も現在、毎日新聞で初の新聞小説「人間」を連載中である。対談のテーマは「小説を書く人間」。「あなたが消えた夜に」書籍代込みで2500円である。
https://www.atpress.ne.jp/news/167327

◎日経が10月3日付で「電子書籍への軽減税率で合意、EU財務相」を掲載している。
EU指令(法)では、域内の付加価値税の足並みをそろえるため、加盟国に標準税率を15%以上とするよう義務づけている。紙の書籍や新聞、雑誌などには軽減税率の導入を認めているが、これま電子書籍は対象に入っていなかった。今回の指令改正で、加盟国の判断で軽減税率(最低税率5%)やゼロ税率を導入できるようになる」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36057560T01C18A0EAF000/
日本でも要求していないわけではい。
「出版界としては、電子書籍への軽減税率の適用も要望していますが、強いて優先順位をつけるのであれば、紙の出版物についてのみでも、ぜひとも軽減税率を認めてほしいと主張しています」(出版広報センター)
https://shuppankoho.jp/faq/taxrate_qa.html

KADOKAWAは、400万部を突破するベストセラーとなった角川まんが学習シリーズ「日本の歴史」を庫化し、10月24日(水)より「漫画版 日本の歴史」全 15 巻を3か月連続で刊行する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000005056.000007006.html

◎水道橋の「庭のホテル 東京」は現在、「秋の夜長の読書プラン」を販売している。読書の秋にちなんだ特別宿泊プランとして毎年販売しているそうだ。チェックインの際に庫の「選択の科学」(シーナ・アイエンガー)、「酔って候」(司馬遼太郎)、「宇喜多の捨て嫁」(木下昌輝)、「ニューヨークの魔法のかかり方」(岡田光世)、「コルシア書店の仲間たち」(須賀敦子)の5冊の中から1冊を選び秋の夜長を楽しもうというものだ。
https://kanda.keizai.biz/headline/595/
こういう企画は何も秋に限定せず、一年を通じたサービスとして確立できるのではないだろうか。広告会社の出番じゃないの。

京極夏彦庫版 ルー=ガルー 忌避すべき狼」(講談社庫)と高田祟史「古事記異聞 オロチの郷、奥出雲」(講談社ノベルス)の刊行を記念し、京極と高田によるトークイベントが10月28日(日)に東京ミッドタウン日比谷 カンファレンスROOM2で開催される。参加費 4320円(税込)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001884.000001719.html

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3)【深夜の誌人語録】

喋ったからといって他人に理解されることは殆んどないというぐらいに考えていた方が自由になれる。