【文徒】2018年(平成30)1月17日(第6巻8号・通巻1182号)

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1)【記事】スキージヤーナルが元従業員らに破産を申し立てられ倒産――ネット上に惜別の投稿
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】スキージヤーナルが元従業員らに破産を申し立てられ倒産――ネット上に惜別の投稿(岩本太郎)

月刊『スキージャーナル』のほか月刊『剣道日本』などのスポーツ雑誌や書籍、映像制作物の版元だったスキージヤーナル(株)が9日、東京地裁に破産を申し立てられ、受理されたことが15日に一斉に報じられた。申し立てたのは同社の元従業員ら21人。『東京商工リサーチ』の同日付速報によると《負債総額は申立代理人の調査によると約8億3900万円だが、破産開始決定後の債権調査で変動する可能性がある》という。
《12月29日には経営悪化を理由に、月刊「スキージャーナル」と「剣道日本」の出版を30年1月号をもって休刊とすることを発表。以降は、実質的に事業を停止していたが、会社側による債務整理がなされず、資産が散逸する事を避けるために、賃金の未払い状態が続いていた元従業員らにより破産を申し立てられた》
http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20180115_02.html?s=rss
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180115/k10011289951000.html
http://www.sankei.com/sports/news/180115/spo1801150052-n1.html
スキージャーナル』は1966年に創刊された日本を代表するスキー雑誌だが、今日に至る沿革はかなり複雑なものであったようだ。『ITMediaビジネスオンライン』が次のようにまとめている。
1984年に、前身会社「スキージヤーナル」の事業多角化の一環で設立。その後、前身会社はスキー場開発・経営に、スキージャーナルは出版活動に特化する形で事業を行った。
主力の「月刊スキージャーナル」は、80年代に廃業した出版社「冬樹社」が66年に創刊し、スキージャーナルが承継した。当時としては画期的なスキー専門誌として人気を集め、一般・競技者を問わず幅広い購読者を獲得した。
このほか、剣道専門誌「月刊剣道日本」や、約100点のスポーツ関連の実用書なども発行。2004年5月期には約11億2300万円の売上高を計上した。
しかし、スキー・剣道の人気が落ち込んだほか、近年の出版不況によって業績が低迷。17年5月期の売上高は約4億4100万円に落ち込み、2期連続で最終赤字に転落。債務超過に陥り、金融機関から借入金の返済猶予などの措置を受けていたが、取引先への支払いや従業員への給与支給が遅延するなど、資金繰りは限界に達していた。
17年12月29日には、「月刊スキージャーナル」「月刊剣道日本」の休刊を発表。年明け以降は実質的な事務所閉鎖状態にあったという》
上記の記事では分社にあたっての会社名がわかりづらいが、「前身会社『スキージヤーナル』」とあるのは、「株式会社スキージヤーナル」で、今回倒産したのは「スキージヤーナル株式会社」ということだ。ちなみに雑誌は月刊『スキージャーナル』と「ャ」が小文字である。
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1801/15/news091.html
経営悪化の噂は年末には社員からの連絡を受けた関係者によってネット上にも流れていた。情報学者・文化研究者の山田奨治は12月29日にTwitterなどでこう綴っていた。
《今朝起きたらスキージャーナル社の社員ほぼ全員退職の一報が。ご好評いただいている『弓具の雑学事典』がどうなるのか、状況がわかったらお知らせします》
https://twitter.com/yamadashoji/status/946504053755908096
《12/28をもってほとんどの社員が退職(解雇)されたそうです。詳細はわかりませんが、ホームページも停止されており、経営上の深刻な問題が起きたのかもしれません。
わたしも執筆している『弓具の雑学事典』は類書がなく、おかげさまで刊行から7年を経てなお売れ行き好調だったのですが、当面は入手困難になりそうです。会社の倉庫にはまだ在庫があるものの、動かせない状況だとか》
http://www.yamadashoji.net/?p=327
同社は『Quadruple(クワドラプル)』というフィギュアスケート日本男子のファンブックも発行していただけに、倒産のニュースはそちらのファンにも衝撃をもって伝わったようだ。
《自主退社ではなく、解雇なのですね。在庫が動かせないのが、債権者に差し押さえられてるからか、社員がいなくなったからかわかりませんが、状況的にみて、これは倒産・・・と考えていいのかな?
クワドラプルの最新号は、アマゾンでも品切れ、スキージャーナルのHPでも買えなくなっています。
欲しい方は、最寄りの書店か、まだ在庫のあるネット書店をあたるしかないですね。
スキージャーナルの「フィギュアスケート日本男子ファンブック」シリーズは、ソチ五輪前からある数少ないスケート誌のひとつ。
正直、ソチ前の方が好きだったし、ソチ五輪以降はたくさんスケート誌が増えたので、買うことが少なくなったけど、まさか、平昌五輪直前にこんなことになるとは・・・残念ですね》
http://bltraveler.blog63.fc2.com/blog-entry-2463.html
カッティングエッジダイエックス出版倒産に伴ってスキージャーナル社が引き継いでそのまましばらく出版されて、その後クワドラプルとして創刊されたんだよねぇ
もし今後スキージャーナル社から出す事が出来なくなった場合、同じようになるかなぁ》
https://twitter.com/sky888888/status/947141542979911681
スキージャーナル』や『クワドラプル』、さらには『剣道日本』のような数少ない剣道専門誌も出してきた版元だっただけに、熱心なファンからの倒産を惜しむ声がネット上にはネット上には目立つ。
《注文したままだったクワドラプルの件、楽天のショップさんからキャンセルの連絡がきた。出版社倒産のため取り寄せ不可能だそう。スキージャーナルさん本当に倒産しちゃったのね。きちんと選手ご本人にインタビューをしての誠実な記事がありがたかったのに残念》
https://twitter.com/coconut_tarte/status/951072812764024834
スキージャーナル倒産。剣道日本も出していた出版社、息子の先輩が勤めていて先週「年間購読してくれていた人がいたら本当に申し訳ない」と剣道部に来て頭を下げていたとのこと。倒産の報道の前に来られたんだな。どういう気持ちで母校に立ち寄ったんだろう。これから先の良い道が見つかりますように》
https://twitter.com/snow_branch/status/952809262215868416
スキージャーナル廃刊はおろか倒産(破産)ってほんと時代の流れだなぁ、と。後輩がスノボで転倒後亡くなった事故が記事として掲載されたこともあった。技術を追うこともなくなって、全然見なくなってたけど、やっぱ寂しいね。勝手言ってんのわかってるけど》
https://twitter.com/sindi_twit/status/952830566344179712
《月刊誌スキージャーナル発行元であり、日本スキー教程等の発行元でもあったの株式会社スキージヤーナル、倒産。
スキー業界の分岐点に来たのかな。
日本のスキー業界って、アルペンやフリー、ノルディック以外に「基礎スキー」なんていう異質の文化があるんだよな》
https://twitter.com/vw6naee/status/952836606813126656
年間購読者だったという人物が《再開に向けて過去51年ぶんを当社にて電子版で復活できないでしょうか?》とブログにて公開で申し出ているのも見つけた。
https://15243252.net/%e3%82%b9%e3%82%ad%e3%83%bc%e3%82%b8%e3%83%a3%e3%83%bc%e3%83%8a%e3%83%ab/

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

幻冬舎は15日、公式サイト「幻冬舎plus」において第三者による不正アクセスがあり、会員情報の一部が流出した可能性があることを発表。流出した可能性があるのは2013年11月12日から昨年2017年8月18日までに登録された同サイト会員最大9万3014人のメールアドレス、ユーザーID、名前。パスワードや生年月日、クレジットカード情報などは含まれておらず、また同社が運営する他のWebサイト、サービス、アンケート、キャンペーンなどは別のシステムによる運営のため対象ではないとのこと。同社では昨年8月にサーバーへ大量のアクセスがあり、サイトが見づらくなるなどのトラブルがあったが、不正アクセスには気付かなかったという。
http://www.gentosha.co.jp/news/n446.html
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25698470V10C18A1TJ1000/
https://this.kiji.is/325579713958773857
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1801/15/news139.html

谷口ジローの「青の戦士」、かわぐちかいじの「ハード&ルーズ」、たなか亜希夫リバースエッジ 大川端探偵社」など様々な作家とのタッグで名作を多数輩出してきたマンガ原作者の狩撫麻礼が7日に死去。享年70。過去に『ビッグコミック』系で数多くの作品を掲載してきた小学館ウェブサイト「ビッグコミックBROS.NET」が14日付で訃報を伝えた。葬儀は既に近親者により営まれ、お別れ会については未定という。
http://goo.gl/vcxBZW
https://www.buzzfeed.com/jp/tatsunoritokushige/caribumarley?utm_term=.fagdgVA8v#.tkGkq67KY
https://natalie.mu/comic/news/265240

産経新聞日本郵便の「特別協力」を受けて全国の郵便局にて隔月刊で発売してきた女性誌『Kiite!(きいて)』が23日発売の2・3月号を最後に休刊。最終号の表紙は木村拓哉で、特集には吉永小百合堺雅人高橋一生、齊藤工などが登場するとのこと。
http://www.sankei.com/life/news/180115/lif1801150020-n1.html

◎都内歌舞伎町にある「ゲーム文化保存研究所」という、その名の通りの目的で2016年に設立された会社が、ゲーム産業の黎明期について考察することを目的とした電子書籍ビデオゲームアーカイブス』を15日に創刊したそうだ。
https://www.amazon.co.jp/dp/B078XRL1VF/ref=cm_sw_r_cp_ep_dp_gpUwAbPMQCAPG
http://www.4gamer.net/games/999/G999905/20180115086/
https://www.igcc.jp/

◎『嫌韓流』などの版元として名を馳せてきた一方、近年では女性誌LDK』やモノ情報誌の『MONOQLO』など雑誌が好調のほか商品テストサイト「360.life」でも注目を集める晋遊舎の社長・西尾崇彦が、2月8日に京都で開かれる「DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT」のセッションに出席。「広告非掲載 を貫く」、その出版ビジネス戦略について語るそうだ。
https://shar.es/1NhBx1

◎グノシーが15日に昨年6〜11月期の連結決算を発表。売上高は対前年同期比41%増の51億円、営業利益は同49%増の9億2500万円、純利益は同10%増の5億9600万円。アプリの利用者増加に伴い広告費も順調に伸びているようだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25697770V10C18A1DTA000/
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1544711

テレビ朝日の朝の情報番組「ワイド!スクランブル」で15日の10時25分からの放送の冒頭、2分余りにわたって音声が出ない状態が続くトラブルが発生。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180115/k10011289361000.html

◎マンガのタダ読みサイト問題について、著作権に詳しい弁護士の福井健策が『ハフポスト日本版』のインタビューに応え、「サイト管理者がマンガを公開している場合」「投稿者がマンガをアップロードする、投稿サイトの場合」などと具体的なケース別に分けつつ解説。対策の難しさについて以下のような見解も併せて述べている。
《既に指摘もあるところですが、海賊版のマンガを見る行為自体は通常は違法ではありません。見ることは、現状では「法律」ではなく「モラル」の問題なのです。》
《しかしだからこそ、鍵は読者たちの手に握られているとも言えます。「違法」であれば否も応もありません。国家が強制的に禁止する訳であり、それが嫌なら政府や国会を動かして法律を変えるほかない。しかし「モラル」に、そうした政府の強制力はありません。だから、漫画家や出版社に出来るのは、「クリエイターや創造活動を守るため、海賊版を読んだり人に勧めたりしないでください」と読者の自由な心に訴えることです。》
http://www.huffingtonpost.jp/2018/01/13/readers-can-save-manga_a_23332458/

◎東京都議の音喜多駿がブログサービスの「note」に書いた自身の記事で、ジャーナリストの有本香(DHCテレビ制作のネット番組「真相深入り!虎ノ門ニュース」コメンテーター)がTwitter上で昨年11月末に音喜多を批判する投稿をしていたことをめぐって「このB○Aーー!」などと反論(?)。今年に入って13日に有本がこの件を含めて再びTwitter上で批判したところ、音喜多は翌日に《不適切な表現を用いて非公開の場でコメントを致しましたこと、誠に申し訳ございません》などと謝罪。ご指摘の通り、極めて子どもじみた行動でした。本来であれば直接謝罪に伺うところでありますが、まずは取り急ぎこの場でお詫びをお伝えしたく存じます」と謝罪し、当該記事を削除した。
https://twitter.com/oznokakashi/status/952149701012291584
https://twitter.com/arimoto_kaori/status/952179887485288449
http://otokitashun.com/blog/daily/17047/
https://twitter.com/arimoto_kaori/status/952473260771311616

◎『campaign』日本版が年初から「広告界を焼き払え!」「広告代理店の『終焉』と、 変革の時代を生き抜く知恵」と、煽り立てるような見出しによる論考を掲載している。前者ではシンガポールのデジタルコンサルティング会社「アコースティック・グループ」のCEO、エリック・イングボルドスタッドが《広告界は世界で最も保守的な業界の1つであり、メディア消費やテクノロジー、消費者文化がこの10年間に大きく変化したにもかかわらず、目に見えるような変革を遂げることがなかった(略)広告界は崩壊一歩寸前の、最も「熟れきった」業界の1つと言える》と激。後者ではニューヨークで活躍するクリエイティブディレクターのレイ・イナモトが《僕がかつて働いていた代理店では、肩書きのレイヤーが19段にも分かれていた。困ったことに、これは代理店では珍しいことではないのだ》と、肥大化した代理店組織をスリム化することの必要性などを訴えている。
http://www.campaignjapan.com/article/%e5%ba%83%e5%91%8a%e7%95%8c%e3%82%92%e7%84%bc%e3%81%8d%e6%89%95%e3%81%88%ef%bc%81/442049
http://goo.gl/bfvL9E

◎映画化されて大ヒットした『この世界の片隅に』以前の2003年に、こうの史代が『漫画アクション』に掲載(後に双葉社より単行本化。同年の文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞)した『夕凪の街 桜の国』が、NHK総合で今年夏にドラマ化されることになった。2007年にも実写映画化されているほか、NHKでは2006年にラジオドラマ化されたこともあった。
https://mantan-web.jp/article/20180114dog00m200015000c.html
https://mantan-web.jp/article/20180114dog00m200015000c.html
http://eiga.com/movie/34088/
http://www.nhk.or.jp/audio/old/prog_fm_former2006.html

◎JR信越線での大雪被害について、当初マスメディアが「JR叩き」報道で先行したものの車内にいた乗客のツイートによって一転「JR擁護」「マスメディア批判」へと形勢が一転した件については岩上安身の『IWJ』が後からフォローしていた。
新潟の「中継市民」を務めている山田朋洋によると、当時の雪の降り方は、とてもマスメディアが無責任に「なぜ救出に向かわない!」などと言えるものではない、外に出るのも危険なほどのものだったらしい。
《今回の新潟の大雪は8年ぶりです。12日の通勤時間帯は朝夕ともに交通マヒ状態。主要道路は大渋滞で、車もほとんど動きません(略)自宅から職場まで約10キロを移動するのに、普段は車で15分程度ですが、この日は2時間かかりました。新潟市中心部の路面は、現在もアイスバーンでデコボコしていて滑ります》
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/409631

◎15日に亡くなられた井家上隆幸さん(文芸評論家・コラムニスト。月刊『出版人・広告人』連載筆者)の葬儀は「家族による密葬」とお伝えしたが、日程が以下の通り報じられた。
「お別れの儀」が明日18日(木)午前9時半より、品川区西五反田5の30の13「セレモニーホール大成五反田」で執り行われる。喪主は妻尚子(なおこ)さん。
https://mainichi.jp/articles/20180117/k00/00m/060/049000c