【文徒】2018年(平成30)5月11日(第6巻85号・通巻1259号)

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1)【記事】「少年マンガ」の未来について
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「少年マンガ」の未来について

週刊少年ジャンプ」(集英社)の未来について語り合うトークショー「ジャンプのミライ2018」で中野博之編集長は現在の「週刊少年ジャンプ」に足りないのは「NARUTO」「BLEACH」「ONE PIECE」につづく初版100万部の子供であれば誰もが知っているキャラを擁するヒット作品だと語ったそうだ。
週刊少年ジャンプ」にしても読者の年齢層が上がっているということなのだろう。「週刊少年マガジン」や「週刊少年サンデー」は、もはや少年誌とは言えず、昔で言えば「青年誌」の範疇に入っているのかもしれない。
https://mainichi.jp/articles/20180509/dyo/00m/200/026000c
中学3年生までの小遣い事情を考えた場合、この層を狙うにはインターネットを駆使することが最も有効な手立てであるのかもしれない。実際、子供たちが見ているのがYouTubeであるとするならば、問われているのは少年マンガの大胆なデジタルシフトだと言うこともできるのではないか。少年マンガのデジタルシフトにおいて避けては通れないのが縦スクロール作品の可能性である。
実際、「週刊少年ジャンプ」は、同誌で初となる縦スクロール限定の漫画賞「ジャンプ縦スクロール漫画賞」を創設し、「ジャンプルーキー!」で応募を開始した。大賞や準大賞作品はアプリ「少年ジャンプ+」での連載が確約される。ここから子供向けの大ヒット作が生まれる可能性は否定できまい。
https://www.47news.jp/culture/entertainment/oricon/2339018.html
縦スクロールのパイオニアは「comico」だが、私が期待していたほど成功はしていないのが現状だ。5月1日付で編集長に「うしおととら」の初代担当としても知られる元小学館のマンガ編集者・武者正昭を招いたのも、縦スクロール作品の充実を目指してのことであろう。
https://animeanime.jp/article/2018/05/08/37687.html
恐らく縦スクロールにしかできない表現があるはずだし、それこそ「鳥獣戯画」を思い起こすならば縦スクロールがマンガの原点回帰を促すやも知れないのである。
何しろ「皆が全く漫画を読まないわけではなくて、『漫画アプリ』の『縦スクロールのマンガ』(?)は結構読んでるかも」という呟きをツイッターに投稿する時代である。
https://twitter.com/Highschoolemerg/status/992692417554857984
こんなツイートも発見した。
「そういえば授業で、電子媒体の縦スクロールでしかマンガを読んだことがない人は、見開きのマンガの読み方がわからないって聞いて衝撃だった。でもそういうことは起こるよね。いつまでも昭和でも平成でもないんだし」
https://twitter.com/moimoi25391/status/993871354989457411
ゲームでも例えば「斑鳩」のように縦スクロール作品のリバイバルが大きく話題を呼んでいる。
http://switchsoku.com/soft/21147

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2)【本日の一行情報】

上毛新聞社創刊130周年記念事業の一環として昨年行われた「鶴舞う者たちプロジェクト」が、6月の「カンヌライオンズ」にエントリーしたそうだ。
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/51034

小学館集英社プロダクションは、小学館と協力して、5月22日より、「空母いぶき」シングルモルトウイスキー小学館通販サイト「大人の逸品」で販売する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000027035.html

◎創刊60周年を記念して東京創元社文庫は投票企画「読者が選ぶ文庫第1位」を実施している。
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/1120711.html
東京創元社文庫のエラリー・クイーンの何作かは詩人の鮎川信夫が翻訳している。
http://www.tsogen.co.jp/np/author/1099
というわけで「Yの悲劇」に一票!

カルチュア・コンビニエンス・クラブは「軽井沢書店」を5月18日、新軽井沢にオープンする。
https://www.karuizawa.co.jp/topics/2018/05/518-14.php
https://job.tsite.jp/detail/138611
カルチュア・コンビニエンス・クラブは書店の星野リゾート化に邁進していると言って良いだろう。

杉森昌武とは同時期に同じ大学に属していたことになる。その頃、私は「商業出版」をバカにしていた。新聞も「ブル新」と呼んで、やはりバカにしていた。私は杉森よりも年上だが、私のほうが世間知らずで幼かったのだろう。私は「中大パンチ」を見たこともなかった。
http://diamond.jp/articles/-/169220

◎「BuzzFeed News」が「集英社は『海賊版サイト』に対してなにをしてきたのか?」を掲載している。BuzzFeed Newsは講談社も取材するそうだ。
https://www.buzzfeed.com/jp/takumiharimaya/shueisha-blocking?utm_term=.qxKRw236DB#.ykLGB1oaJR

◎ぴあグループは2017年度3月期の決算を発表した。3期連続の増収となるも減益の決算であった。即ち音楽、スポーツ、演劇等の主要ジャンルを中心にチケット販売が好調に推移し、連結売上高は最高値を更新、前期比7%増の1,635億09百万円。
営業利益は前期比31.5%減の12億25百万円、経常利益は前期比30.1%減の11億73百万円、当期利益は前期比27.5%減の7億06百万円。
ぴあグループの課題は前年実績を下回ったメディア・コンテンツ事業である。グループの強みを生かし、様々なジャンルで主催興行を増やし、チケットサービスとメディアビジネスを融合させたり、イベント・興行と出版物を連動させたりしながら、メディアビジネスの拡大による収益の大幅な良化を目指したが、基盤整備に時間を要し、ダイナミックなビジネスモデルの創出には至らず、引き続きぴあならではのビジネスモデルの強化と多様化に取り組むことになる。
チケット流通事業を基軸としながら、主催興行ビジネスの一層の拡充を図り、会場運営事業の立ち上げを大胆に進め、これにメディアビジネスを深く関与させることで、ぴあならではのバリューチェーンの確立を図れるかどうかということである。
http://corporate.pia.jp/news/files/2017_tanshin.pdf
ぴあの歴史を振り返るのであればチケット事業はデジタルシフトに他ならなかった。そして、横浜みなとみらい21地区に収容客数 1 万人の大型音楽アリーナを開設するのは、ぴあのリアルシフトなのである。

◎「スーパーモーニング」のキャスターとして私などは記憶している大沼啓延が急死。訃報記事で大沼が現在、静岡朝日テレビ夕方情報番組「とびっきり!しずおか」のメインキャスターをつとめていることを知る。大沼はTBS映画社の出身というから、苦労人であったに違いない。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201805090000461.html

◎「キネマ旬報」による「映画本大賞」は「田中陽造著作集 人外魔境篇」(文遊社)に決まった。
https://www.cinematoday.jp/news/N0100615
鈴木清順を支えた脚本家集団「具流八郎」のひとりである。谷ナオミが圧倒的に美しい「生贄夫人」(小沼勝)、渡辺淳一の「失楽園」がお子ちゃまに見えてくる「マル秘 女郎責め地獄」(田中登)の脚本家である。
来年の「映画本大賞」は高崎俊夫の「祝祭の日々」かな。

◎「日刊サイゾー」がKADOKAWAの組織再編について書いている。
「今回の組織再編のもっとも大きな動きは、アスキー・メディアワークス事業局の解体だ。これまであった文芸・ノンフィクション局が文芸局に名称変更。アスキー・メディアワークス事業局は文芸局に吸収されることになった」
http://www.cyzo.com/2018/05/post_161065_entry.html
実態的にいえば「電撃文庫」を擁するアスキー・メディアワークス事業局が文芸局を呑み込んだと考えるべきではないのだろうか。

◎9月の本創刊を前に「cookpad plus」誕生号がセブン&アイ出版より5月18日に発売される。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000027849.html

文藝春秋は、4月10日に発売された「文藝春秋」5月号に掲載された元SMAP稲垣吾郎草なぎ剛香取慎吾の3人の座談会「僕たちの『新しい地図』を語ろう」を「文春e−Books」として6月9日まで無料配信する。
https://www.daily.co.jp/gossip/2018/05/10/0011241890.shtml

講談社は「週刊少年マガジン編集部から読者のみなさまへ」を発表した。
「いつも週刊少年マガジンをご愛読、ありがとうございます。先日、『愛と誠』(原作:梶原一騎 漫画:ながやす巧)の漫画原稿(いわゆる原画)がオークションに出品されるという出来事がありました。ご存知のかたも多いかと思いますが、『愛と誠』は 1970 年代に週刊少年マガジンで連載され、何度も映像化された大ヒット作品です。
ちなみに『愛と誠』の原画は、現在は、ながやす巧先生ご自身がすべて管理しております。しかしながら、連載当時に、編集部からやむをえず外部に貸し出しをする機会があり、その際ごくわずかですが行方のわからなくなった原画があります。編集部として当時の原画管理に関する意識の甘さを猛省しています。
読者のみなさまにお願いがあります。
ながやす巧先生は、連載当時から現在に至るまで、『愛と誠』の原画を外部の人に譲渡したり、売却したことは一切ありません。もし、さまざまなオークションや漫画専門店などの店頭で『愛と誠』の原画を目にされることがあったならば、それは紛失もしくは盗まれたものです。どうかそれらの原画を購入されることがないようお願い申し上げる次第です。
また、原画を発見された場合は、下記の連絡先までご一報いただけますとありがたく存じます。同様の主旨のお願いを、ながやす先生からも承っております。まことに勝手なお願いではありますが、どうぞよろしくお願いいたします」
http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/2018/180510_weeklymagazine_aitomakoto.pdf

セプテーニ・ホールディングスの子会社であるコミックスマートが運営するアプリ「GANMA!」のダウンロード数は1000万を超えているというが、洋介犬の「外れたみんなの頭のネジ」は「GANMA!」から生まれたヒット作で単行本は5巻まで発売され、計10万部を超えているそうだ。「東洋経済オンライン」が「Web漫画で花を開かせた男の諦めない生き方 洋介犬は20年かけてオンリーワンに到達した」を掲載している。
https://toyokeizai.net/articles/-/218304

小学館は「トキメキを忘れない 40代からの『ネオ・エイジング』マガジン」をキャッチフレーズに「美的GRAND(グラン)」を9月12日に刊行する。ミューズとして高垣麗子を起用する。「美的GRAND」は雑誌コード「7」で出版されるため、月刊誌に比べて自由度が高く、これまでの付録ルールや発売形態などの規定にとらわれない、新しい価値を創出できるという。
http://www.asahi.com/and_w/interest/entertainment/CORI2111187.html
http://adpocket.shogakukan.co.jp/adnews.html?317
大胆な付録で勝負!…だよね。

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3)【深夜の誌人語録】

可能性よりも不可避性に賭ける。