【文徒】2019年(令和元)6月25日(第7巻111号・通巻1531号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】白石あづさ「佐々井秀嶺、インドに笑う」(藝春秋)に注目!
2)【シリーズ】講談社広報室の劣化 #9  田中康夫に「ViVi」騒動の本質を見破られた!
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.6.25 Shuppanjin

1)【記事】白石あづさ「佐々井秀嶺、インドに笑う」(藝春秋)に注目!

山際素男の光社新書「破天」を読んでいたこともあって佐々井秀嶺という名前は知っていた。サブタイトルに「インド仏教の頂点に立つ日本人」とあるように佐々井秀嶺は、半世紀前までは数十万人しかいなかったマイノリティの仏教を一億五千万人にまで増やしたことでインドでは有名な日本人である。
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334034771
佐々井秀嶺自身も集英社新書から「必生 闘う仏教」を刊行している。
https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0561-c/
そんな佐々井秀嶺にヒツジの脳みそサンドイッチやアルパカのステーキやアルマジロのブラウンシチュー、イグアナのスパイス炒めなどを紹介した奇書にして快作「世界のへんな肉」(新潮社)の白石あづさが迫る「佐々井秀嶺、インドに笑う」藝春秋から刊行された。抱腹絶倒にして、重量級のノンフィクションが現れた。
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163910369
HONZ」では塩田春香が取り上げている。
《佐々井さんの登場で、カースト制度から離れるために仏教に改宗する人たちが飛躍的に増えた。佐々井さんの助言で貧しくとも子供を進学させ、卒業した子供は仕事を選べるようになり、収入が増え、治安もよくなり、街に希望が生まれる――。
こうして、人間扱いされてこなかった人たちが、「同じ人間なのになぜ差別されるのか?」と疑問を抱き、自ら考え、主張できるようになった。まさにこれは3000年間変えられたなったことを変えた、革命的なことだった。》
https://honz.jp/articles/-/45251
「グローバルニュースアジア」は次のように書いている。
《インド政府による核実験への抗議運動や、仏教の聖地・ブッダヤの奪還闘争のため国会前で座り込みを決行する姿などは「闘う仏僧」と名高い佐々井の真骨頂である。現代の日本人には想像も及ばない規格外の僧侶の姿をこれでもかと見せつけられ、あっけにとられるばかりである。
84歳の老体に鞭を打って、困っている人々のために身を賭して闘う佐々井の姿は、現代のモーセか、はたまたインドの次郎長か。人々のために生きるとはどういうことか、考えさせられるだけでなく、生ける「伝説」と同時代に生きられることを幸福に思える一冊だ。》
http://www.globalnewsasia.com/article.php?id=5744&&country=3&&p=2
白石あづさが発売前に連続ツイートしている。
《その1 みなさま。白石の新刊のお知らせです。日本人僧、佐々井さんの半生と今を描いたノンフィクション「佐々井秀嶺、インドに笑う」藝春秋より、6月20日に発売となります 半世紀もの間に、数十万人の仏教を1億5千万人まで激増させた原動力となった方です。》
《その2 若い時は色情因縁に苦しみ自殺未遂をしたけど、インドに渡ってからは何度も暗殺されそうになりながらも、佐々井秀嶺さんは、たくさん貧しい人を救ってこられました。》
《その3 インドでの佐々井秀嶺さんの密着取材中も、暗殺騒動あり、悪魔祓いあり、秘密警察との対決ありで、毎日、生きた心地がしませんでしたが、佐々井さんの矜持やおもしろさを間近で見て書いて撮れたのは一生の宝物です。》
《その4 本書では、佐々井秀嶺さんの過激な日常に加え、半生もたっぷり250ページでお届けします。偉大な活動も書いたけど、タイでの美人の尼さんとキャリアウーマンとの恋の三角関係のドロドロや卵重箱を使った裏口入学など、本邦初公開?の人間くさい話も盛りだくさんです。》
《その5 仏教やインドや佐々井秀嶺さんのことを全く知らない人でも、おもしろいと思ってもらえるよう、ドトールで毎日、せっせと書きました。まだ表紙がアップされてないんですけど、というわけでAmazonの予約サイトに誘導しますので、よろしくお願いします。シェア歓迎です》
https://twitter.com/Azusa_Shiraishi/status/1133567538858586113
https://twitter.com/Azusa_Shiraishi/status/1133567926269648896
https://twitter.com/Azusa_Shiraishi/status/1133568145208176640
https://twitter.com/Azusa_Shiraishi/status/1133568324334305280
https://twitter.com/Azusa_Shiraishi/status/1133568689486221313
現在、佐々井は日本に帰国中だ。7月4日(木)には中野の驢馬駱駝で「佐々井秀嶺師と共に~歓喜の夕べ」が開催される。
https://www.nantenkai.org/2019/05/22/%E6%9D%A5%E6%97%A5%E4%B8%AD%E3%81%AB%E9%96%8B%E5%82%AC%E4%BA%88%E5%AE%9A%E3%81%AE%E8%AC%9B%E6%BC%94%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB/

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2)【シリーズ】講談社広報室の劣化 #9  田中康夫に「ViVi」騒動の本質を見破られた!

田中康夫が舌好調である。YouTubeの公式チャンネルで「ViVi」シリーズを三弾にわたって公開している。
第一弾は6月19日 に公開した《Vol.543 「このたびの自民党との『ViVi』広告企画に政治的な背景や意図はまったくございません。」(c)大日本雄辯會講談社 「おもしろくて、ためになる」錯乱コメントで炎上商法に参戦だぁw》であった。ここで田中康夫は、ここまで炎上してしまった理由を「政治的な背景や意図はまったくございません」という意味不明な錯乱コメントを出した「週刊現代」編集長の経験を持つ乾智之であるとはっきりと指摘している。そもそも乾や渡瀬昌彦常務には田中が言うところの「小さな声を聴く力」を決定的に欠如させてしまっているのだ。
第二弾は6月20日 に公開した《Vol.544 沈黙中の平野啓一郎中沢けい高橋源一郎内田樹・いとうせいこう・島田雅彦閣下の解説キボンヌw 幻冬舎『日本国記』では炎上を煽ったのに、講談社『ViVi』では鎮火に努め》であった。
田中が名前をあげている学者や評論家は幻冬舎の「日本国紀」問題では見城徹に批判的なツイートを投稿していたが、「ViVi」問題では一切沈黙してしまっている。田中によれば高橋は「群像新人賞」の選考委員をつとめており、中沢は群像新人賞を受賞しており、いとうは講談社の社員だったし、島田は野間芸新人賞を受賞していることが彼らの「忖度」の背景にあると喝破している。平野は講談社現代新書から7月に「『カッコいい』とは何か」を刊行するそうだ。中上健次が生きていたならば激高していたとは、田中ならずとも思うところだ。
第三弾は6月22日 に公開した《Vol.545 電通ガー!自民ガー!と昂奮気味な皆さまに告ぐ 問われるべきはチキンだった大日本雄辯會講談社「傾営患部」! 法律でなく道義で捉えられない「斜怪学捨」西田亮介閣下の転向w》である。
ここでも田中は乾広報室長の「出たがり」体質を揶揄している。また、本田靖春を担当していた渡瀬昌彦常務の「転向」にも触れているではないか。「異議なし!」である。今や講談社の「傾営患部」を代表するのが渡瀬昌彦常務なのである。そう乾広報室長が「政治的な背景や意図はまったくございません」と取材に対して答えたのは田中が指摘するように後ろめたかったからにほかならないのである。むろん、田中も渡瀬昌彦が渡瀬夏彦と兄弟であることも、しっかりと触れていた。
https://youtu.be/p6xN7T72M5Y
https://youtu.be/z-SQDFldMKs
https://youtu.be/Nyj9o7fN9ZI
講談社OBの元「週刊現代」編集長の元木昌彦も、この問題に触れて、こう書いている。
女性誌ViViのネット版で、自民党とのタイアップ広告を出したことにも批判が巻き起こっている。春はこれを取り上げ、自民党の知的財産戦略調査会の甘利明と親しい広告担当がいて、甘利から打診されて飛びついたと報じている。広告料は400万円だったそうだ。
 講談社は昨秋、甘利の政策本を出しているという。この時期に、あからさまな自民党の広告を出すなど、私には理解不能だが、批判に対する講談社広報のいい分が火に油を注いだ。
「政治的な背景や意図は全くございません」というのだ。これではダメだ。広報の責任者は乾、編集の最高責任者は渡瀬という。ともに一緒に仕事をした仲間である。乾はフライデー時代、数々のスクープをものにした。私に対しても、悪いものは悪いと直言する硬骨の編集者だった。
渡瀬も、本田靖春をはじめ、ノンフィクション・ライターたちの信頼の厚い、人柄のいい編集者であった。役職が人を変えたのだろうか。心配である。》
https://www.j-cast.com/tv/2019/06/21360677.html?p=3
私は乾にしても渡瀬にしても「役職が人を変えた」のだとは思っていない。恐らく「地」が出ただけなのである。

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3)本日の一行情報

◎「withnews」が朝日新聞編集委員・北野隆一による「部落・在日コリアン…差別がよみがえった 20年取材した記者の驚き」を発表している。
《ネットに詳しいジャーナリストの津田大介さんは、「差別されている少数者を攻撃する記事に人気が集まると、ネット媒体の運営者が広告によって利益を得る構造がある」と説明します。対抗手段として津田さんは、差別的記事に広告を出すことに対する企業イメージ悪化を指摘し、広告主に広告引き揚げを促すよう説きました。》
https://withnews.jp/article/f0190621000qq000000000000000W0c910101qq000019144A

◎「ニューズウィーク日本版」は、編集記者・編集者を募集している。契約社員だ。
https://www.newsweekjapan.jp/newsroom/2019/06/post-286.php

◎「Forbes JAPAN」が「電通も出資、小学館xDeNAの新生『MERY』のメディアを超えた可能性」を公開している。
MERYは広告メディアとしてのチャレンジも目立つ。アプリ上ではバナーなどのディスプレイ広告を廃し、コンテンツ形式の企業とのタイアップ広告を主軸にしている。コンテンツマーケティングが盛り上がる中、電通としても期待している分野だという。》
https://forbesjapan.com/articles/detail/27847/1/1/1
MERYの月間ユニークユーザーは440万、アプリとウェブサイトを合わせて月間1億4440万PVだそうだ。

小学館集英社プロダクションは、幼児から小学生まで一貫した新しい教材「まなびwith」の夏休み企画として、6月26日(水)より、テレビ東京の子供向けバラエティ番組「おはスタ」収録見学参加者を募集している。
https://www.atpress.ne.jp/news/186687

USEN-NEXT GROUPの 動画配信サービス「U-NEXT」は、5月度のマンガランキングTOP30を発表した。
1.キングダム(原泰久集英社
2.ガイシューイッショク!(色白好/小学館
3.鬼滅の刃吾峠呼世晴集英社
4.進撃の巨人諫山創講談社
5.ワンパンマン(ONE/集英社
6.五等分の花嫁(春場ねぎ/講談社
7.約束のネバーランド出水ぽすか集英社
8.終末のハーレム セミカラー版(LINK/集英社
9.僕のヒーローアカデミア堀越耕平集英社
10.BUNGO―ブンゴ―(二宮裕次/集英社
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000188.000031998.html

朝日新聞デジタルの6月21日付「『アイコス』違法表示 期間限定割引のはずが2年超継続」は書いている。消費者庁が措置命令を出した。
《発表によると、同社は加熱式たばこと充電器などをセットにした「アイコスキット」について、2015年9月から割引キャンペーンを実施。割引は18年5月まで絶え間なく続いていたのに、広告上では1~5カ月間の期間限定のように表示し、期間内に購入しないと割引を受けられないと消費者に誤解させていた。》
https://www.asahi.com/articles/ASM6P56DQM6PUTIL03B.html
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/release/2019/pdf/fair_labeling_190621_0001.pdf

売野雅勇が自らの半生をひもとく「砂の果実 80年代歌謡曲黄金時代疾走の日々」(朝日新聞出版)。売野は80年代を代表する作詞家である。チェッカーズの「涙のリクエスト」をはじめとした数々の名曲は売野の仕事である。中森明菜少女A」、郷ひろみ2億4千万の瞳」、吉川晃司「ラ・ヴィアンローズ」も売野の作詞である。しかし、チェッカーズの「裏どおりの天使たち」の作詞がパンタであったことを、沢田研二の「月の刃」の作詞作曲がパンタであることを私たちは忘れてはならないはずだ。
https://allreviews.jp/review/3400

◎「月刊ComicREX」(一迅社刊)に連載されている安藤正基の「八十亀ちゃんかんさつにっき」は電子含め累計40万部を突破しているが、売り上げの約70%を東海地方が占めるという局地的大ヒットとなっている。TVアニメの2期製作が決定したそうだ
https://otakei.otakuma.net/archives/2019062106.html

◎この和田政宗という議員は元NHKアナウンサーである。「週刊春デジタル」が6月20日午前5時より、和田の発言の音声データを一部公開していたところ、和田は自身のブログで次のように反論した。
《週刊春の、私の発言が「公選法違反『疑惑』」だとする記事。 
週刊春デジタルに公開された録音を確認しましたが、切り貼りされたものでした。 
なお、私の政治活動は、法令を遵守して行っていますし、行っていきます。》
https://ameblo.jp/wada-masamune/entry-12483577539.html
この反論を受け、「週刊春」編集部は「春オンライン」で、「埼玉合同安全衛生推進大会」での発言の音声データをノーカット版で無料公開した。
https://bunshun.jp/articles/-/12459
「紙」と「ネット」の連動によって雑誌ジャーナリズムは新しい可能性を手にしようとしているのである。

平凡社から刊行された吉玉サキの「山小屋ガールの癒やされない日々」は「note」が主催した「第二回cakesクリエイターコンテスト」で入賞し、「cakes」で連載している「小屋ガール通信」を再編集し、書き下ろしも加えたものである。
https://www.atpress.ne.jp/news/186906

◎宝島社が電子書籍を解禁した。
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1906/21/news108.html

茨城県行方市は、観光資源を新たな視点で発信することを目的に、観光情報誌「行方Walker~サイクリングMAP~/行方バサー」を発行した。
https://www.walkerplus.com/article/194441/

◎2017年からファッション誌「CanCam」(小学館)の専属モデルとして活躍する女優でモデルの石川恋が「CanCamと連動した3年ぶりとなる水着写真集をデジタル版でリリースする
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000317.000013640.html
男の子も買うんだろうな…。

小学館から刊行された坂東眞理子の「70歳のたしなみ」は「女性セブン」の企画だ。「女性の品格」(PHP新書)以来のメガヒットを狙っているのだろう。「たしなみ」という言葉がタイトルに入るのは新鮮である。書店でも売れ始めている。
https://www.sankei.com/life/news/190622/lif1906220020-n1.html

三枝成彰が「日刊ゲンダイDIGITAL」で山本おさむの「赤狩り」(小学館)を取り上げている。
《漫画「赤狩り」でも、多くの脚本家、俳優、女優が弾圧に屈していく中、表現の自由を守るために苦闘するトランボの姿が描かれている。これが今の日本で発表されているのは、当時の米国と似た雰囲気が醸成されていることへの危機感があるからだろう。》
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/256666
山本の「赤狩り」は紛れもない傑作である。山本も「赤狩り」のなかで紹介しているドルトン・トランボ脚本の「拳銃魔」はコスミック出版から刊行されているDVD集「〈サスペンス映画コレクション〉名優が演じる非情な世界」に収められている。ここにはハリウッドテンの一人としてトランボ同様に投獄されながらも、出所後に転向してしまうエドワード・ドミトリクの「十字砲火」も収められている。
山本の作品にはまだ登場してこないがエリア・カザンにアカデミー名誉賞が与えられた際に、会場の外で抗議デモを行ったエイブラハム・ポロンスキーの「悪の力」も、やはりコスミック出版から刊行されている「〈サスペンス映画コレクション〉名優が演じる暗黒の世界 裏切りと陰謀が渦巻く悪の世界の傑作選」に収められている。
https://www.cosmicpub.com/products/detail.php?product_id=7481
https://www.cosmicpub.com/products/detail.php?product_id=7442
講談社の渡瀬昌彦常務や乾智之広報室長は、こうしたマンガも、こうした映画も見たことはないのだろうな。このあたりの「知」を備えていれば、例えば私たちに対する対応も全く別のものになっていたはずだ。

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4)【深夜の誌人語録】

リーダーが決断できない組織は腐る。