【文徒】2021年(令和3)3月1日(第9巻37号・通巻1934号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】官邸広報の沈黙 東北新社は社長交代を発表 菅正剛の役職解任
2)【記事】オーストラリアの決定!記事使用料をめぐるプラットフォームとVSメディア
3)【記事】朝日新聞にも吹き荒れるリストラとコスト削減の嵐
4)【本日の一行情報】
5)【深夜の誌人語録】
6)【お知らせ】 
----------------------------------------2021.3.1 Shuppanjin

1)【記事】官邸広報の沈黙 東北新社は社長交代を発表 菅正剛の役職解任

毎日新聞は2月25日付で「首相長男同席『大きな事実ではない』 山田内閣広報官の主張とは」を掲載している。
立憲民主党今井雅人氏が25日の衆院予算委員会で追及すると、山田氏は「私自身、どういった方のご子息かはお付き合いに関係がないと思っている」と述べ、正剛氏が同席したことについて「私にとって大きな事実だったかというと、必ずしもそうではない」と少し笑いながら話した。》
江川紹子もコメントを寄せているが、そのなかで次のように指摘している。
《接待の目的を明らかにしなくてはいけないが、この問題の根本には行政と権力者の関係のゆがみがある。権力の側とうまくやってさえいれば大丈夫という考えがあったのではないか。お茶1杯でも倫理規程に違反しないか気にしていたかつての緊張感がない。接待も録音されるくらいだから個室ではない。「やっぱりまずいよね」という認識すらないことに驚く。権力の目は気にしても国民の目は気にしなくなってしまった。》
https://mainichi.jp/articles/20210225/k00/00m/010/253000c
毎日新聞は2月26日付で「首相長男と会食 接待『素性知らず着席』 内閣広報官、辞任否定」を掲載している。
《立憲の今井雅人氏に会食時、正剛氏が同席していることを認識していたかと問われると、「交流はほとんどない状況だったので事前に認識してはいなかったのではないか。会食していた時点では認識していたのかなと思う」と言葉を濁し、「(席が)横並びでお話もしていないので、どういう方がいたか、にわかに思い出せなかった」と述べた。》
https://mainichi.jp/articles/20210226/ddn/001/010/026000c
「はりぼて」の監督・五百旗頭幸男がツイートでこう指摘している。実は、山田の驕りが透けて見える発言なのだ。
《首相長男の接待同席を「横並びだったと思うのでにわかに思い出せなかった」と釈明した山田真貴子氏。接待だろうが割り勘だろうが、社外の人と食事をした翌日にはお礼のメールをするのが社会常識だ。釈明が本当なら、この国はそんな常識や礼節をわきまえない人間に首相会見を仕切らせていることになる。》
https://twitter.com/yukioiokibe/status/1364967662518951938
朝日新聞は2月26日付で社説「総務官僚接待 首相の政治責任は重い」を掲載し、次のように書いている。
《さらに驚くのは、総務審議官時代に1回で7万4千円超の接待を受けていた山田真貴子・内閣広報官の続投を、首相があっさり認めたことだ。山田氏は衆院予算委員会に出席し、「心の緩みがあった」と陳謝したが、国民感覚とかけ離れた高額接待の当事者に、国民との接点に立つ政府広報のトップが務まるのか甚だ疑問である。》
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14813178.html?iref=comtop_Opinion_05
東京新聞は2月26日付で社説「総務官僚の接待 処分で幕引き許さない」を掲載し、次のように書いている。
《総務審議官当時に接待を受けた山田真貴子内閣広報官は、すでに同省を退職しているため処分対象とならず、加藤勝信官房長官による厳重注意にとどまった。山田氏は給与の十分の六に相当する七十万五千円を自主返納するという。
ただ、七万円超の高額接待を受け、利害関係者との認識もなく、申告もしなかった山田氏は、内閣と国民とを結ぶ広報を担う責任者として適任なのだろうか。公務員への信頼を損ねた責任は重い。野党の辞任要求は当然だ。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/88233?rct=editorial
産経新聞は山田の辞任を要求していないが、それでも2月26日付の主張「接待官僚の処分 『国民の奉仕者』胸に刻め」で、こう書いている。
《25日の国会で野党から追及を受けた山田氏は、東北新社側から高額な接待を受けたことを謝罪した。事業に関する働きかけは否定したが、これで国民の納得が得られたとは思えない。》
https://www.sankei.com/column/news/210226/clm2102260002-n1.html
山田を辞任させず、記者会見は開けるのかという心配は無用のようだ。記者会見の見送りを決めてしまったのだ。朝日新聞デジタル2月25日付で「菅首相、急きょ会見見送りへ 山田広報官の問題も影響か」を掲載している。
《政府・与党内では会見見送りの背景に、首相の長男が勤める放送関連会社「東北新社」から高額接待を受けた山田真貴子・内閣広報官が会見の司会進行役を務める影響を指摘する声がある。コロナ対応を担う政府関係者は「会見をしない理由は広報官だろう」。別の関係者は「山田氏をめぐって官邸内で意見が割れ、やらないことになったようだ」と話した。》
https://digital.asahi.com/articles/ASP2T71V2P2TUTFK023.html
日本経済新聞の2月26日付「春秋」が光っている。この日付なればこそ噛み締めたい名である。
《▼戦後、滝川は京大に復職し総長に就く。54年の卒業式の式辞が廉直なこの人らしい。「私は諸君に対して、他人からただの酒をごちそうになることを自ら戒めることを希望します」「酒を飲むのはよろしい。しかしそれは、自分の銭で飲むことが絶対の条件」。当時、政官界を揺るがせた造船疑獄を念頭に、節度を説いた。
▼1人7万4千円のごちそうを胃袋におさめた者もいた。総務省農林水産省の幹部が、利害関係者から接待を受けた醜聞の闇は深そうである。そう言えば……。日本学術会議が推薦した新会員候補6人を首相が任命しなかった問題を巡る国会審議で、「滝川事件に似ている」と指摘した議員もいた。泉下の学者は何を思う。》
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFE2579G0V20C21A2000000/?unlock=1
歴史は繰り返そうとしているのだろうか。毎日新聞は2月26日付で「宣言一部解除記者会見開かず 『山田氏隠し』批判に菅氏反論」を掲載している。
《記者会見は首相の長男正剛氏らから高額接待を受けた山田真貴子・内閣広報官が司会を務めており、「山田氏隠し」との批判が出ていることについては「全く関係ない。現に山田氏は国会で答弁している」と強調した。》
https://mainichi.jp/articles/20210226/k00/00m/010/246000c
毎日新聞編集編成局次長兼写真・映像報道センター長の斎藤信宏がツイートしている。
《仕切り役の内閣広報官がいないぶら下がり取材。記者会見よりずっと緊迫感があって見応えがありました。》
https://twitter.com/nobusaitoh/status/1365251650244386816
毎日新聞は2月26日付で「菅首相いら立ち『同じような質問ばっかり』 一問一答詳報」を掲載している。
《記者 総理、北海道新聞の鈴木です。経済支援……。
首相 (自ら)他の方よろしいですか。
記者 順番に……。
首相 いや2回目だから。》
首相が食い下がる記者に苛立っている様子がありありとうかがえる。記者が「広報」から解放されて自由になったのかもしれない。
《記者 今度の会見では最後まで質問打ち切りなくお答えいただけるのか。
首相 いやあの、私も時間がありますから。でも大体皆さん出尽くしているんじゃないでしょうか。先ほどから同じような質問ばっかりじゃないでしょうか。よろしいですか。》
https://mainichi.jp/articles/20210226/k00/00m/010/319000c
朝日新聞でサンフランシスコ支局長をつとめている尾形聡彦も「ぶら下がり」取材を評価している。
菅首相が記者会見を拒否して行ったぶら下がり。首相が一番激昂したのは、解除の判断を巡り、記者に“諮問委で専門家から相当強い懸念が出た”と質問されたときでした。菅氏は「ですから基準を決めてるわけですから」といらだった様子。専門家の意見に耳を貸さぬ独善的姿勢が如実で、判断に不安を感じます》
https://twitter.com/ToshihikoOgata/status/1365259928013692930
東京新聞は2月27日付で「菅首相、まさかの『ぶら下がり』対応 緊急宣言一部解除でも会見なし 司会の山田広報官隠し?」を掲載している。
《会見見送りには、山田広報官の接待問題が影響しているとの見方がくすぶる。首相は山田氏との関連は「全くない」と全面否定したが、立民の辻元清美副代表は記者団に「山田氏隠しのためだ」と批判。自民党からも「逃げているように見える」(ベテラン議員)との声が上がる。
官邸側は当初、記者会見の準備を進めていたが、方針を切り替えた。内閣記者会の幹事社による会見の申し入れも拒否。幹事社は宣言以外の諸問題も問いたいと伝えたが「官房長官や各閣僚の会見などを通じ説明してきている」とした。
立民の小川淳也氏は26日の衆院議運委で主張した。「(山田氏を)続投させた誤った判断が会見の差し障りになっている。本末転倒だ。更迭すべきだ」》https://www.tokyo-np.co.jp/article/88410
首相の「ぶら下がり」では次のようなやりとりもあった。
《記者 本日先ほど東北新社が処分を発表。首相の長男も役職を解任されて人事部付となった。
首相 私は承知してません。会社としてのけじめだと思います。》
そう東北新社で動きがあったのである。東北新社は2月26日付で二宮清隆が経営責任を痛感し、代表取締役社長を辞任した。取締役副社長である中島信也が新たに代表取締役社長に選任された。えぇっ!中島はCMディレクターとして、日清食品カップヌードル「hungry?」、サントリー伊右衛門」、資生堂あたらしい私になって」、TOTOネオレスト「菌の兄弟」、AirPAY「オダギリジョーシリーズ」などのCM演出を手がけている。「hungry?」では日本人として初のカンヌ国際広告祭グランプリを受賞している。映画「ウルトラマンゼアス」では監督もつとめている。
https://www.tfc.co.jp/news/2021/02/1657.html
森喜朗と記者会見で渡り合ったTBSラジオの澤田大樹が驚く。
広告学校元生からすると、後任社長が中島信也さんというのが、衝撃だったり。》
https://twitter.com/nankuru_akabeko/status/1365304068248199173
東北新社は2月26日付で総務省職員との会食問題に関する関係者の処分を次のように発表している。
《(1) 木田執行役員 弊社執行役員を解任。
また、株式会社スター・チャンネル監査役、株式会社ファミリー劇場の取締役および株式会社東北新社メディアサービスの代表取締役社長・取締役を辞任。
(2) 三上取締役執行役員 弊社執行役員を解任(弊社取締役は辞任)。
また、株式会社スター・チャンネルの取締役、株式会社囲碁将棋チャンネルの取締役、株式会社スーパーネットワークの取締役および株式会社ザ・シネマの代表取締役社長・取締役を辞任。
(3) 菅統括部長   就業規則に基づき懲戒処分を行い、メディア事業部趣味・エンタメ
コミュニティ統括部長の任を解き、人事部付とする。
また、株式会社囲碁将棋チャンネルの取締役を辞任。》
https://www.tfc.co.jp/news/2021/02/1659.html
東北新社は変わろうとしている。しかし、総務省は?政権は?
2月26日付毎日新聞が掲載している「高額接待の言い訳 総務官僚のお手本は安倍氏? 古賀茂明さん」(金志尚)で、元経済産業省官僚の古賀は内閣広報官・山田真貴子について次のように述べている。
《山田氏は夫も総務省の官僚です。2人の年収を合わせれば4000万~5000万円ほどになるはずです。それで月額の一部を返納すると言っても、痛くもかゆくもないでしょう。それよりも内閣広報官を即刻辞めるべきだと私は思います。総務審議官だった時に接待を受けていたことの責任に加え、内閣の顔や女性活躍のシンボルとして彼女を置くべきではないからです。
山田氏については、「飲み会は断らない」という時代錯誤の発言を若い世代に伝えていたことが明らかになっています。夜の会食や宴席じゃないと話ができない、というのはあまりにも古い体質です。そういう化に順応することが出世の道だと公言しているようなもので、セクハラ、パワハラ助長発言と言われても仕方ありません。
(中略)
つまり、日本社会の最も悪い化にどっぷりつかり、それによってのし上がってきた人を起用し続けるのは、内外にマイナスのイメージを発信することにしかなりません。私は、山田氏は結局辞めざるを得なくなると思います。(東京オリンピック・パラリンピック組織委会長だった)森喜朗氏が最後は辞任を余儀なくされたのと同じ。世論が許さないと思うからです。》
https://mainichi.jp/articles/20210226/k00/00m/010/104000c
これも毎日新聞だが、2月27日付で掲載された「かつては『生活者目線』強調 山田広報官はどこで変わったのか」(野村房代)は次のように書いている。
《山田氏の古巣である総務省統計局の家計調査によると、2人以上の家庭で1カ月にかかる食費は7万6440円(2020年の平均)。これとほぼ同額の接待を受けることに何の疑問も持たなかったのだろうか。》
https://mainichi.jp/articles/20210226/k00/00m/040/186000c

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2)【記事】オーストラリアの決定!記事使用料をめぐるプラットフォームとVSメディア

日本経済新聞は2月26日付で「IT大手・豪メディア、交渉本格化」(シドニー=松本史)を掲載している。
オーストラリア連邦議会は25日、IT(情報技術)大手が表示するニュース記事の利用料について、報道機関への支払いを義務付ける法案を可決した。IT大手と豪メディアの交渉が本格化しそうだ。》
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO69436610V20C21A2FF1000/
ロイターは2月26日付で「米フェイスブック、豪メディア企業3社と提携で基本合意」を配信している。
《米フェイスブックは26日、オーストラリアのメディア企業3社と提携に関する基本合意書を結んだと明らかにした。豪議会は前日、フェイスブックなどに国内報道機関へのニュース記事使用料の支払いを義務付ける法案を可決している。》
https://jp.reuters.com/article/australia-media-facebook-idJPL4N2KW04X?il=0
朝日新聞デジタルは2月26日付で「米フェイスブック、豪州でのニュースの閲覧制限を解除」(シドニー=小暮哲夫)を掲載している。
《米フェイスブックは26日朝、オーストラリアで地元メディアなどのニュースの閲覧やシェアをできなくする制限を解除した。ニュース表示の対価支払いを義務づける法案に反発して18日から制限していたが、23日、政府との間で法案の修正で合意し、「数日内に解除する」としていた。》
https://digital.asahi.com/articles/ASP2V2RL4P2VUHBI00B.html
東京新聞が2月26日付で掲載した「<メディアと世界>オーストラリアで記事使用料の支払い義務付け IT企業対象 世界初、他国に波及か」(ワシントン・白石亘)は次のように書いている。
《今回の法律は、巨大IT企業とメディアとの交渉力の差を埋めるのが目的だ。両者にニュース使用料の交渉を求め、合意できなければ、独立した仲裁者が法的な拘束力のある使用料を決める。背景にはIT企業がニュースに「タダ乗り」し報道機関から広告収入を吸い上げたとの不満がある。
グーグルは当初反対だったが、法案可決が避けられなくなると妥協に動き、豪大手メディアに対価を払い、記事提供を受ける契約を相次いで結んだ。だがフェイスブック(FB)は「メディアは白紙の小切手を要求できる」(幹部)と反発。豪州でニュース閲覧を禁止し、訪問者が2割減ったニュースサイトもあった。
この結果、豪政府は修正に応じた。IT企業がメディアと個別に支払い契約を結び、ニュース業界に「大きく貢献した」と政府が判断すれば、法律の適用対象から除外される。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/88112
「BUSINESS INSIDER JAPAN」は2月26日付で「マイクロソフトEUで『豪州式』を推進…フェイスブックとグーグルに記事使用料の支払いを義務付け」を公開して次のように書いている。
フェイスブックFacebook)とグーグル(Google)がオーストラリアのニュース・パブリッシャーに金を払い始める準備をしている中、ライバルのマイクロソフトMicrosoft)がその国際的な優位性を強調している。
マイクロソフトは2月22日、ヨーロッパの主要な4つのニュース・パブリッシャー関連のロビー活動グループと提携し、「オーストラリア式の仲裁メカニズム」を推進すると発表した。
「ヨーロッパのニュース・パブリッシャーとマイクロソフトは、市場を支配する力を持つ『門番』からコンテンツ使用料を受け取るために協力することで合意した」とマイクロソフトはブログ記事で述べている。》
https://www.businessinsider.jp/post-230176
「WIRED」は2月24日付で「ニュース記事を巡るフェイスブックとオーストラリアのメディア業界との闘いは、そもそも争点が間違っている」を発表していたことを忘れてはなるまい。
ルパート・マードックは、この数百万ドルを喜んで受け取るだろう。だが、デジタル界の巨人からのおこぼれをあてにするというのでは、競争に生き残るために新しいアイデアが必要なニュース業界にとってはお粗末なビジネスモデルだ。グーグルやフェイスブックと大きな取引を成立させる交渉力をもたない小規模なメディア企業の状況は、さらに悲惨である。
そこでわたしは、別のアプローチを提案したい。広告モデルに焦点を合わせるのだ。
結局のところ、そこが実際の問題点である。プラットフォームが個人データをすくい上げてターゲット広告に利用できるかを、ユーザーが選べるようにする必要がある。そして、標準での設定は「使用できない」とすべきだ。そうすれば、蝕まれたユーザーのプライヴァシーを回復できるだけでなく、ニュース企業が失った広告費の一部を回収できる機会を提供することになる。
奇妙なことに、こうしたことを実現するための現時点で最も本格的な取り組みは、アップルによるものだ。》
https://wired.jp/2021/02/24/plaintext-australia-facebook-google/
毎日新聞は2月26日付で経済プレミア「海外特派員リポート『アップルVSフェイスブック』個人情報取得で論争激化」を掲載している。
《ティム・クックCEOは1月のオンライン講演で、FBの名指しは避けつつも「利用者を顧客ではなく、広告主に販売する商品として扱っている」とFBなどの行き過ぎた情報収集を痛烈に批判した
さらに「もしユーザーを誤解させたり、データを搾取したりし、全く選択肢のない選択の上に成り立っているのであれば、ビジネスモデルを改革する必要がある」と訴えた。》
《アップルの新規則は、企業による個人情報の収集・利用に「事前同意」を求めるという踏み込んだものだ。膨大な個人データを利活用することで成長してきたオンライン業界の将来像に大きな影響を与えかねず、アップルとFBの対立の行方に注目が集まっている。
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20210225/biz/00m/020/010000c

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3)【記事】朝日新聞にも吹き荒れるリストラとコスト削減の嵐

東洋経済新報社の井上昌也が自らの記事を引用ツイートしている。
《業界の顔とも言える朝日新聞。そんな同社の驚きのコスト削減策が取材でわかりました。
それは今までは無料だった社員への朝日新聞購読の有料化。社員からは驚きと不安の声が聞こえてきました。
また、希望退職や記者職からビジネス職への異動など朝日の改革が始まります。》
https://twitter.com/inomasa_com/status/1365084380343934981
これがそう。「東洋経済オンライン」は2月26日付で掲載している「朝日新聞が赤字で『社員の購読を自腹化』の衝撃 部数減で苦肉の策、社員から不安や憤りの声も」だ。井上は次のように書いている。
朝日新聞社が社員に対する自社の新聞購読料の補助を廃止することが、東洋経済の取材で明らかになった。
同社ではこれまで、社員による朝日新聞の購読で発生する料金を、福利厚生の一環として会社が負担してきた。しかし、この制度が2021年4月以降のどこかで廃止される見込みだ。》
朝日新聞社によれば、今後は社員の給与から新聞購読料を天引きする方向で労働組合と調整している。自腹での購読継続に強制性はないが、購読を停止する社員はその旨を、会社側に伝える必要がある。》
https://toyokeizai.net/articles/-/412872
元記者の紀谷理馬が呟く。
《社員の自腹購読ねえ。それはもはや購読部数の水増しでは?広告も自分たちでかさ増しクリックとかさせてそうですね。》
朝日新聞の新聞購読自己負担は、組合が強いので給与減などには踏み込めずに削りやすい手当から削っているわけですね。どの新聞社も給与には見えてこない様々な手当や福利厚生が減らされています。黄金期と比べてそれだけでも月間10万円くらい減っているケースもあると思います。》
https://twitter.com/motokisha/status/1365087173653852164
https://twitter.com/motokisha/status/1365101501148880905
窓際三等兵がツイート。
朝日新聞の社員向け講読料補助の打ち切りが話題ですが、世知辛いですのう。数年前にOB向けの無料購読を打ち切った時、「俺たちに図書館で新聞を読めってことか!」とキレたお爺ちゃん達が相次いだと聞いて爆笑した記憶があるが。いやお前そこは自腹で購読しろよと。》
https://twitter.com/nekogal21/status/1365134290296729603
産経新聞OBの三枝玄太郎からすれば、そんなことは産経にあっては常識である。
《新聞を自腹で購入することが衝撃だったら、産経は入社したときから衝撃の連続ですよ(笑) 産経は1ルーム、朝日は2LDK、産経はフィット、朝日は…みたいな感じ。周囲を見ていると、朝日が産経を20年遅れで追いかけているように見える。》
https://twitter.com/SaigusaGentaro/status/1365559226815287297
「棒社営業担当」の呟く通りだと思うけれど。
《「これでは(自社製品を買い取らせる)自爆営業と同じではないか」
→自分が買いたくないものを人に売るんじゃないよ。》
https://twitter.com/CRnTNMTsXO19Lkh/status/1365321865653145601
読売新聞OBの新田哲史が呟く。
《これはホントに衝撃だな。しかし削るところ間違えて社員のモチベーションを落とす典型例になりそうな…。》
https://twitter.com/TetsuNitta/status/1365074970578100224
朝日新聞ではリストラも進行中だ。朝日新聞経済部記者・小森敦司は5月末に退社を決めたとツイートしている。小森は「原発時代の終焉 東京電力福島第一原発事故10年の帰結」の著者である。
《5月末、静かに退社します。ご厚情、ありがとうございました。最新刊「原発時代の終焉」をよろしくお願いいたします。。あー、頑張ったなー。。こもりくん、えらいぞ。。》
https://twitter.com/komoriku_n/status/1365706297522360324
鮫島浩も朝日新聞を退社する。
《退職届を出しました。50歳を迎える本年、#新聞記者やめます。27年間、多くの方にお世話になりました。多謝いたします。退社は5月末。その後は白紙です。ジャーナリストとして発信を続けつつ、それ以外にも活動を広げたいと思います。皆様のお声に耳を傾けながら進路を決めます。まずはご報告まで。》
https://twitter.com/SamejimaH/status/1364833138954752001
早速、鮫島は自らのホームページ「SAMEJIMA TIMES」を開設した。退社前からやる気満々である。
《新聞社退職に向けHPを自力で開設しました。https://samejimahiroshi.comです。ネットの匿名諸氏に教わりました。まだ仮設ですが週末から連載「#新聞記者やめます」を始めます。お問い合わせフォームは完成しました。「私の今後」についてご提案をお待ちしています!》
https://twitter.com/SamejimaH/status/1365257901141491713
早速、2月25日には「連載『新聞記者やめます』予告編 退職まであと94日!」をエントリ。こう書いている。
《退職届は出した。さて、どこへ向かおうか。
ただいま49歳。新聞記者歴27年。コロナ禍での独立。今後はまったくの白紙。
特技は取材すること。章を書くこと。人前で話すこと。そのくらい。
さて、仕事あるかな。
WEBで「お仕事募集」するために、まずは自力でホームページを立ち上げた。お力をお貸しいただいた皆様、ほんとうにありがとうございます。無事にここまでたどりつけました。》
https://samejimahiroshi.com/coming-soon/
2月28日には「『新聞記者やめます』序章【私は会社の誘いに乗った】」をエントリしている。
《会社は、われわれ社員の間に年齢や役職で線を引いて、「必要」のカテゴリーからはみ出した者に辞めてほしいと願っている。退職金を積み増ししてまで会社を去ってほしいのである。その誘いに乗って手を上げるのはまことに癪である。
でも、私に辞めてほしい会社と、にらめっこしながらこのまま居座っても、はたして幸せだろうか。》
https://samejimahiroshi.com/%e3%80%8c%e6%96%b0%e8%81%9e%e8%a8%98%e8%80%85%e3%82%84%e3%82%81%e3%81%be%e3%81%99%e3%80%8d%e5%ba%8f%e7%ab%a0%e3%80%90%e7%a7%81%e3%81%af%e4%bc%9a%e7%a4%be%e3%81%ae%e8%aa%98%e3%81%84%e3%81%ab%e4%b9%97/
三枝玄太が鮫島をリツイートしていた。
《退社して、とんでも発言に磨きがかかるかも。朝日の割り増し退職金は産経の比ではないでしょうから、ゆっくりされたら。それより、鮫島氏が僕より年下だということが、本当に驚いた(笑)》
https://twitter.com/SaigusaGentaro/status/1365117977931051010

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4)【本日の一行情報】

◎大変なのは朝日新聞ばかりではない。もっと大変な新聞社もある。というよりも、朝日はマシなのである。「元記者の紀谷理馬」のツイート。
《今月・来月で古巣新聞の知ってる後輩が2名また退職する。春は別れの季節。若手の離脱は中年層との給与がひっくり返るようなことがない限り止まらないでしょう。転職をすれば、視野は広がり、年収は上がり、自由な時間も増える。さらに古巣のことをグチグチツイートする陰湿な時間も増やせます》
https://twitter.com/motokisha/status/1365179456399106050
天北威子がリツイートしている。
《小川顧問が豪語してる新卒採用の多さ(特に女子)って要するにそういうことですよね》
https://twitter.com/takekotempoku/status/1365180446049378311

朝日新聞デジタルは2月25日付で「マンガ市場、6千億円で過去最高 巣ごもり・鬼滅効果」(滝沢那)を掲載している。
《紙と電子を合わせて6126億円で、前年比23%増。1978年に統計を始め、これまでは、95年の5864億円が最大だった
電子コミック市場は、31・9%増と大幅に伸びて、3420億円。前年より827億円を上乗せした。》
《一方で、かつて出版市場を支えたコミック誌は厳しい。ピークだった95年は、コミック市場の5864億円のうち、コミック誌3357億円と6割近くを占めていた。》
《しかし、96年以降は減少が止まらず、20年は前年比13・2%減の627億円まで落ち込んだ。》
https://digital.asahi.com/articles/ASP2T6RV2P2TUCVL013.html
出版を支えている漫画ビジネスにおいても雑誌が不要になりつつあるという現実は直視されなければなるまい。漫画でさえ雑誌離れが加速しているということだ。そうしたなか現段階で時代の最先端を走っているのは「ジャンプルーキー!」ということになろうか。
https://storymaker.click/%E6%BC%AB%E7%94%BB/5363/

◎光社も漫画で商売しようという魂胆なのだろう。「J-CASTニュース」は2月25日付で「大河ドラマ『青天を衝け』主人公渋沢栄一の著作を漫画化 『まんが 超訳論語と算盤」』増刷」を公開している。光社は「まんが 超訳論語と算盤』」を刊行し、しかも増刷になったというのだ。
https://books.j-cast.com/topics/2021/02/25014494.html
出版業界は漫画業界として生き残ろうとしている。皮肉でも何でもなくビジネスとしていえば、そうなる。

◎実用書も漫画だ。主婦の友社は「マンガで読む ぐっすり眠る赤ちゃんの寝かせ方」を発売した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001541.000002372.html

◎新潮社は三本阪奈の「ご成長ありがとうございます~三本家ダイアリー~」につづくコミックエッセイ第二弾「ご成長ありがとうございます のびざかり編」を発売した。三本阪奈はフォロワー38万8千人の人気インスタグラマーである。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000151.000047877.html
芸部門では講談社から敏腕編集者二名を引っこ抜かれた新潮社にしても、漫画に賭けているのかもしれない。漫画の講談社に入れば芸の新潮社の二倍近い年収を手にできるのだ。講談社にしても新潮社の買収は荷が重たかろうが、人材を引っこ抜くぶんには問題はあるまい。結局、商業出版でモノをいうのは、カネなんだろうね。

◎目のつけどころが「いいね!」という企画だ。朝の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系 毎週月~金 あさ8時放送)のお天気キャスター・片岡信和による「かたおか気象予報士の毎朝10秒! 楽しく『お天気ストレッチ』」が3月17日に発売される。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000577.000007254.html
羽鳥慎一モーニングショー」はワイドショーのあり方を変えた番組だ。

毎日新聞は2月25日付で「『根室新聞』が3月末で休刊 記者確保困難、74年余の歴史に幕」(本間浩昭)を掲載している
《日本最東端の地方新聞「根室新聞」(本社・北海道根室市、従業員数11人)が3月末で休刊することが明らかになった。根室新聞社によると、取材記者の確保が難しくなったうえ、漁業衰退による人口減で部数が減り、新型コロナウイルス感染拡大の影響で広告収入も減ったことから無期限の休刊を決めたという。事実上の廃刊で、74年余りの歴史に幕を下ろす。》
https://mainichi.jp/articles/20210225/k00/00m/040/302000c
北海道は「面積が広大で、地域性の違いが顕著な」こともあって、かつては「日本新聞協会に加盟していない地方紙やコミュニティー紙が数多く発行され」ていたが、今や休刊が相次いでいる。

◎加谷珪一は2月25日付「PRESIDENT Online」に発表した「『過去最大の赤字よりマズい』電通五輪中止より恐れている"最悪のシナリオ"」で次のように指摘している。
《社会や経済のグローバル化やIT化が進むと市場はオープンになり、国家権力を背景とした独占あるいは寡占構造は徐々に崩壊していく。電通もまさに同じ脈で捉えることができる企業であり、今後は純粋に民間企業としての収益力が問われることになる。
同社にとって最悪のシナリオとは、今回の業績悪化でもオリンピックの中止でもなく、急ピッチで進むデジタル化の流れに取り残されることであり、それを回避できるかどうかは、同社の中長期的な経営戦略にかかっている。》
https://president.jp/articles/-/43627
デジタル化とグローバル化を等号で捉えてはなるまい。その「差異」を見誤ってしまうことが「最悪のシナリオ」なのである。私見過ぎないが電通が選択すべきは「国内回帰」と「アジア強化」なのではあるまいか。

電通は「2020年 日本の広告費」を発表した。通年で6兆1,594億円(前年比88.8%)となり、東日本大震災のあった2011年以来、9年ぶりのマイナス成長。リーマン・ショックの影響を受けた2009年(同88.5%)に次ぐ下げ幅となった。
マスコミ四媒体広告費は2兆2,536億円(前年比86.4%)で、6年連続の減少となった。「新聞広告費」「雑誌広告費」「ラジオ広告費」「テレビメディア広告費」はすべて大きく前年割れした。新聞広告費は3,688億円(前年比81.1%)、雑誌広告費は1,223億円(前年比73.0%)、ラジオ広告費は1,066億円(前年比84.6%)、  テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連)は1兆6,559億円(前年比89.0%)。
インターネット広告媒体費は1兆7,567億円(前年比105.6%)。注目すべきはインターネット広告媒体費のほんの一部に過ぎなくとも、マスコミ四媒体由来のデジタル広告費 が803億円(前年比112.3%)と伸びていることだ。わけても雑誌デジタル は446億円 (前年比110.1%)と、新聞デジタルの173億円(前年比118.5%)、テレビメディアデジタル の173億円(前年比112.3%)を凌駕していることだ。
日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」は 1,321億円(同124.2%)と大きく伸長している。
https://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2021012-0225.pdf

◎世界化リテイリングが運営する、通販事業「家庭画報ショッピングサロン」は、料理研究家・宮澤奈々とコラボした新作キッチングッズカタログ「素敵な暮らしのプレゼンテーションアイテム」を配布、受注を開始した。 
https://shop.sekaibunka.com/shop/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001056.000009728.html

◎「家庭画報」(世界化社)は、世界的なデザイナー髙田賢三と日本が世界に誇る「香川漆芸」のコラボを企画、4月号(3月1日発売)誌上で、髙田賢三の最後の作品ともなる、漆重箱と漆プレート4枚セットを発表、販売する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001050.000009728.html

◎宇佐見りんの芥川賞受賞作「推し、燃ゆ」(河出書房新社)が47万部を突破した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000337.000012754.html

独立行政法人日本貿易振興機構ジェトロイノベーション・知的財産部スタートアップ支援課では、小学館 コミックス企画室と連携し、「Make my dreams come true~私たちが未来をつくる~」と題して学習まんがを企画し、第一話(全3話)を公開した。
https://sho.jp/manga/ale/60165
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000071241.html

◎「ダイヤモンド・オンライン」は2月25日付で「クラブハウスなど『音声メディア』人気が急拡大、アマゾンやツイッターも参入する理由」を発表しているが、BOOK代表の樋口聖典は次のように語っている。
《「音声コンテンツは作業時や運転中の暇な耳、言うなれば『可処分聴覚』を使えます。その需要を示すように、当初YouTubeにアップしていた『コテンラジオ』ですが、ポッドキャストで配信したところ、視聴数や人気が跳ね上がったんです。Amazonどさまざまな企業がポッドキャストに参戦し始めたことからも、音声コンテンツの人気は世界的な大きな流れになっていると言えます」》
https://diamond.jp/articles/-/262888

◎「週刊ポスト」2月26日・3月5日号の書評で与那原恵が瀬戸正人の「深瀬昌久伝」(日本カメラ社)を取り上げていて、何だか嬉しくなってしまった。
《深瀬が生前最後にシャッターを切った北海道のさびしい港町にたどり着いた瀬戸は、〈深瀬写真の揺るぎのないリアリティ〉を網膜に刻み、師の姿も影もない、未知なる領域の先へと踏み出していく。》
https://www.news-postseven.com/archives/20210225_1636034.html?DETAIL
瀬戸正人について解説しておこうか。東京都写真美術館は「瀬戸正人 記憶の地図」を昨年12月から今年1月まで開催していたが、ホームページで瀬戸を次のように紹介していた。
《瀬戸正人(1953-)はタイ国ウドーンタニ市に、日本人の父ベトナム人の母の元に生まれ、61年に父の故郷である福島県移り住みました。東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ卒業後、 1981年よりフリーランスの写真家として活動を始め、96年には、特異な視点で都会に生きる人々を捉えた〈Silent Mode〉、〈Living Room, Tokyo 1989-1994〉で第21回木村伊兵衛写真賞を受賞、日本を代表する写真家の一人として高い評価を得ています。
タイと日本を往還しながら、半世紀以上にわたりアジア各地の人々の暮らしや表情、風土や自然、また社会にレンズを向けてきた瀬戸は、「写真は『記録』であると同時に『記憶』でもある」と語ります。本展で紹介する作品群は、瀬戸自身の記憶とともに、何層にも折りたたまれた「記憶の地図」となって、見る者の前に鮮やかに浮かび上がらせることでしょう。》
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3842.html
深瀬昌久も凄いが、瀬戸正人も凄いのである。

東京新聞は2月28日付の書評で福島泰樹の「『恋と革命』の死 岸上大作」(皓星社)を取り上げている。
《この書では、岸上大作が父をマラリアの戦病死で失ってからの母の愛と母の苦しみを切実に描いていて、その自死に至る闘いと恋の交叉と切断を、ノンフィクションを遥かに越える情と切なるで叙述している。評者だけでなく読者は、ぐすーんとなるはず。戦禍は甘くはなく、コロナ禍どころではないのである。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/88472
短歌の持つ、私の言葉でいえば「過情」に支えられた評伝だ。むろん、岸上の「美しき誤算のひとつわれのみが昂ぶりて逢い重ねしこ