新聞が政局報道に明け暮れる理由をTwitterに見た!新聞は言ったきりにして行ったきりのメディアだ!!

茂木健一郎は新聞やテレビの政治報道に遂に愛想をつかしたようである。今朝の連続ツイートにこんなくだりがあった。

たとえば、政策課題について一切論じないで、政局があると元気になる新聞の政治部(政局部)の人たちとか、本当に残念で、ごめん、もうどうでもいいんだよね。言及しなくなったのは、自分をデタッチしてしまったから。きっと、同じ思いの人は、世の中にたくさんいると思う。

確かに茂木の嘆く通りである。一切とは断定するつもりはないが、新聞やテレビといったマスメディアが政策課題を論じるよりも、政局報道に明け暮れていることに間違いはないだろう。小沢一郎なる政治家の裁判に新聞はもったいぶった社説を掲げるし、テレビではあの強面を流しっ放しにするし…では茂木ならずとも「もうどうでもいいんだよね」と言い放ちたくなるというものだ。
私はツイッターで次のようにプロフィールを書いている「@asahi_kantei 」こと「朝日新聞官邸クラブ」をフォローしている。

朝日新聞官邸クラブの取材班によるツイッター「チーム官邸のつぶやき」です。日々の政治取材の裏話や苦労話、心温まる話などなど・・・生き生きした現場の息づかいを、皆さんにお届けしたいです。つぶやくのは、キャップ以下総勢10数人の取材陣。それぞれが担当分野を持ち、取材対象の政治家を日々ウオッチしています。ヨロシクお願いします。

彼らのツイートを読んでいるとわかるのだが、彼らの仕事は言ってみれば野田総理の「追っかけ」にしか過ぎない。ともかくどこへでも金魚のフンのようについてまわる。野田総理伊勢神宮に参拝するとなれば同行するし、東日本大震災の被災地である福島、宮城、岩手を訪れるとなればそこにも同行する。朝、顔色の良い野田総理を見ては、「昨晩は酒量を控えて早く寝たのでは」と記者団の間で話題になるくらいだから、朝日新聞に限らず総理番の記者というのは筋金入りの「追っかけ」なのであろう。朝から晩まで、ひたすら野田総理をウォッチしている。そんな生活だから、次のように嘆くこともある。

ただ今新幹線の車内。野田首相伊勢神宮へ参拝に向かわれることに伴った出張です。車内を見渡せば、首相だけでなく閣僚の顔が多数見受けられます。同業他社の総理番含めて、つかの間の休息中。できればプライベートで詣でたいとは、みんなが思っていることでしょう。

彼らにプライベートで伊勢神宮に参拝する暇などないらしい。そのくらい一所懸命に野田総理を追いかけているということなのだろうが、果たしてそこまで「追っかけ」に熱中する必要があるのかどうか。次のようなツイートを読むと彼らが野田総理(及びその周辺の政治家)というフィルターを介してしか「世界」を見ていないし、そのようにしてしか「世界」を理解することもない。言ってみれば野田総理の視界が捉えた「世界」以外の「現実」に対して「直接性」を欠いているのだ。「視野狭窄」と言い換えても良いのかもしれない。何故なら彼らが知り得る被災地は野田総理が視察した場所に限定される。こんな具合に、である。

石巻の水産加工施設をまもなく野田首相が視察します。新しく建て替えたとみられる施設内では、20人以上の方々がタラの切り身の加工作業をしています。

「制度というより、会社の執念だ」。石巻の水産加工施設を視察した野田首相が漏らした言葉です。会社には、津波で工場の壁にぶつかった船や、壁が崩れ落ちている工場の様子をうつした写真がありました。

石巻市内の仮設住宅で、寒さ対策などについて入居されている方たちと意見交換した野田首相。「ここよりもっと困ってる人がいる」と言われたそうです。「寒さ対策は政府として被災者の声に応えたい」と記者団に語りました。

「総理番」の記者たちが、こうツイートした後で「ここよりももっと困っている人がいる」場所を訪問したかどうか私には知る由がない。彼らが野田総理と行きも帰りも一緒であったとすれば、行かなかった可能性が大であろう。それが新聞記者なのである。新聞記者の場合、「記者クラブ」を拠点とする以上、「総理番」であろうとなかろうと第一義的に「追っかけ」におけるプロフェッショナルなのである。そうであればこそ、彼らの能力が最も発揮されるのは「総理番」であれば野田佳彦なる政治家の属人性が露呈される「政局」という権力闘争を報道することにおいてである。「政策」など「政局」のきっかけにしか過ぎまい。
残念ながら彼らの耳に茂木健一郎に代表される「政局」は「もうどうでもいいんだよね」という読者の声は届くまい。新聞記者にとって、情報が購読者に対して一方的に発信されるという「言ったきりにして行ったきりのメディア」であることに疑いを差し挟む余地など微塵にもないのだ。「ただの人」の声に耳を傾けないし、「ただの人」の「ただの生活」を見ようともしないから、「政局」にウツツを抜かせるのだとも言えよう。
ちなみに「朝日新聞官邸クラブ」はTwitterでさえもソーシャルメディアではなく、マスメディアと同じ使い方をしているようだ。Twitterソーシャルメディアたる由縁は誰でも情報が発信できるということともに、自らが他者のツイートをフォローし、また他者からもフォローされるというリゾーム状の関係が成立することにあると思われるが、「朝日新聞官邸クラブ」はフォロワーが「31349」なのに対して、自らがフォローしているのは、たったひとつだけ、それも仲間内の「asahi_gaikou 」こと「朝日新聞霞クラブ」なる「朝日新聞の外交・防衛取材班」のツイートだけなのである。