【文徒】2020年(令和2)8月11日(第8巻146号・通巻1803号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】49日ぶりの首相記者会見で「事件」は起きた
1.たった15分のプロパガンダ記者会見に異議が出た!
2.戦後民主主義の終焉
3.田中康夫曰く「議長席に詰め寄る野党の爪の垢でも煎じて呑めよ」
4.かくして事実は有耶無耶に お盆休みに突入
5.長崎の会見では18分間
2)【記事】イソジン推奨!大阪府知事の本業は…テレビタレント
3)【記事】Twitter日本法人社長の説明に山崎雅弘が怒っている!
4)【記事】新聞社説が論じる「NHK経営計画案」
5)【記事】ツイッターの可能性?NHK企画「1945ひろしまタイムライン」の試み
6)【本日の一行情報】
7)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2020.8.11 Shuppanjin

1)【記事】49日ぶりの首相記者会見で「事件」は起きた

1.たった15分のプロパガンダ記者会見に異議が出た!

毎日新聞が8月6日付で掲載している「安倍首相1カ月半ぶりに会見 追加質問認めず 広島・平和記念式典後」(畠山嵩)は、こう書き出されている。
安倍晋三首相の記者会見が6日、通常国会閉会翌日の6月18日以来、約1カ月半ぶりに開かれた。広島市での平和記念式典への出席後に行う毎年恒例のもので、広島市内のホテルで行った。しかし質問は、内閣記者会と広島市記者クラブの幹事社が事前に通告した計4問に限られ、追加質問は認められないまま約15分で打ち切られた。》
https://mainichi.jp/articles/20200806/k00/00m/010/150000c
朝日新聞記者の三浦英之は、この記事を次のようにまとめている。
《記者の質問から逃げ回る首相。自ら立案・判断していないから、突然の質問には答えられない。7年半、ずっと「紙」を読み続けてきた。有事においても、その態度は変わらない。悲しいと言うよりも、個人的には情けなく感じる》
《この毎日新聞の記事は有事における民主主義国家の異常な状況を詳述している。①首相の記者会見が約1カ月半ぶりに開かれた。②しかし質問は内閣記者会と広島市記者クラブの幹事社が事前に通告した計4問に限られ、追加質問は認められないまま約15分で打ち切られた》
《③記者席から「まだ質問があります。国民の不安が高まっている中で、なぜ50日間も正式な会見を開かないのか」との声が飛んだ④しかし司会者が「予定時間を過ぎているので、これにて代表質問を終了させていただきます」と打ち切った:自由質問を認めない、民主主義国家としてあるまじき姿だと思う》
https://twitter.com/miura_hideyuki/status/1291301269173239808
https://twitter.com/miura_hideyuki/status/1291303131146379264
https://twitter.com/miura_hideyuki/status/1291303546063736834
しかも、記者席から「まだ質問があります。国民の不安が高まっている中で、なぜ50日間も正式な会見を開かないのか」との声があがり、記者側から質問が飛んだが、官邸職員は、記者の腕を掴み質問を制したのである。もしかすると、これは戦後民主主義が壊れた瞬間であったのかもしれない。大神ひろしのツイート。
《記者「総理、質問があります!」
司会「予定の時間は過ぎています」
記者「コロナ感染拡大の中、何で50日近く十分に時間を設定した会見を開かないんですか?」
司会「これにて質問を終了します」
あまりにも酷い流れ。
質問に制限時間を設けない台湾と大違い。》
https://twitter.com/ppsh41_1945/status/1292033189918076928
テレビ東京出身の青木俊がこれを引用ツイートしている。
《この記者の必死のシャウトを、大人顔してせせら笑う市民がいたら、そのツケは子や孫に及ぶだろう》
https://twitter.com/AokiTonko/status/1292126981593563136
沖縄タイムスの阿部岳がツイートしている。
《首相会見で記者が質問しようとしただけで、政府職員が腕をつかんで妨害する。
ここは本当に民主主義国家ですか。》
https://twitter.com/ABETakashiOki/status/1291311985007587328
ここは民主主義の後進国なのである。阿部はツイートをつづける。
《CNNのアコスタ記者がトランプ大統領会見でマイクを奪われ、一時記者証まで奪われた時、ホワイトハウス記者協会、そしてライバル各社が一緒に抗議した。
きょう、朝日新聞の記者が腕をつかまれ首相への質問を封じられた
日本のメディア各社が一斉に抗議する時だ。》
https://twitter.com/ABETakashiOki/status/1291333966834745346
これまたテレビ東京出身の青木俊が引用ツイートしている。
《他社が抗議しないのが日本のメディア。それどころか、「敵失」と笑い喜ぶ。》
https://twitter.com/AokiTonko/status/1291445719497236480
毎日新聞統合デジタル取材センターデスクの鵜塚健のツイート。
原爆忌の広島で起きた意味は重い。現場はもっと怒るべきだ。》
https://twitter.com/kkuzuka/status/1291530969036464128

2.戦後民主主義の終焉

官邸サイドは記者クラブ加盟各社がまとまらないように「分断工作」もしているのではないだろうか。「アエラドット」は8月6日付で「産経新聞32回、NHK22回に朝日新聞は3回…官邸が進める露骨な『メディア選別』の弊害」を発表しているが、これは南彰の「政治部不信 権力とメディアの関係を問い直す」(朝日新書)からの抜粋だ。南は、こう書いている。
《第2次安倍政権が発足してから、20年5月17日までに行われた首相単独インタビューの回数だ。
1.産経新聞夕刊フジ含む) 32回
2.NHK 22回
3.日本テレビ読売テレビ含む) 11回
4.日本経済新聞 8回
5.読売新聞 7回
6.毎日新聞、TBS、山口新聞 5回
9.月刊Hanada、テレビ東京テレビ朝日(BS含む)、共同通信、ウォール・ストリート・ジャーナル 4回
産経新聞系が突出している。ちなみに朝日新聞は3回だ。》
https://dot.asahi.com/dot/2020073100012.html?page=1
産経新聞が8月8日付で掲載している産経抄は官邸サイドに助太刀している。
朝日新聞は6日、安倍晋三首相の広島市内での記者会見で、朝日記者の腕を首相官邸報道室の職員がつかみ制止したとして報道室に抗議した。これだけ聞くと、官邸側が高圧的に都合の悪い質問をやめさせたような印象を受けるが、実際はどうだったか。》
https://special.sankei.com/f/sankeisyo/article/20200808/0001.html
江川紹子がツイートしている。
《官邸報道室からの「質問は4問だけ」との指示に従順に従い、しかもその質問をすべて事前提出し、官僚が整えた答えを首相が読むだけでよい、とする人が、新聞の1面コラムを書いている、というのは驚き、というほかない。そんな章をそのまんま載せるなんて、本当に新聞ですか、と問いたくなるレベル。》
https://twitter.com/amneris84/status/1292005185506570240
内閣記者会が要請した官邸での囲み取材で「政府としての見解を国民に示すためにも、国会や会見を開いて総理自ら説明すべきではないか」と8月4日に質問した毎日新聞の宮原健太についても産経抄は批判した。
毎日新聞は8月9日付で「安倍首相は誰に向けて語っていたのだろうか わずか16分間の会見を考える」(山口朋辰、坂井隆之)を掲載している。
《首相に対して記者がしつこく質問することを「失礼だ」「高圧的だ」といった批判はある。また、大手新聞の中でもスタンスは異なる。産経新聞は8日付朝刊1面コラム「産経抄」で4日の宮原記者の声かけと、それを自身のツイッターで言及したことについて「まるで手柄誇りするように名乗りを上げる始末」「底が浅すぎて、下心が丸見え」と批判した。これに対し、宮原記者はツイッターで「産経にも良き先輩が多くいるので言いたくないが、本日の産経抄ひどい。総理が現在のコロナ下で官邸会見も国会も開かず、閉会中審査にも出ないことは脇に、私の総理追及を『底が浅すぎて、下心が丸見え』と。産経こそ安倍政権に気に入られたい下心が丸見えだ」と反論した。
宮原記者は言う。「答弁をはぐらかす傾向が顕著な安倍首相の記者会見で、再質問ができないということは致命傷ではないかと思う。何より、現在のような新型コロナの状況でも、政府がセレモニー的な会見のみをしていて済むと思っていたら、それは大間違いです。総理に質問して、答えを引き出すことができるのは、首相番を含む記者しかいない。私たち記者は総理への声かけ、再質問を積極的にやっていく必要がある」》
https://mainichi.jp/articles/20200809/k00/00m/010/055000c
朝日新聞デジタルは8月6日付で「官邸職員、朝日新聞記者の腕つかむ 首相会見の質問制止」を掲載している。
《6日の広島市内での安倍晋三首相の記者会見で、質問を続けてい朝日新聞記者の腕を、首相官邸報道室の男性職員が「だめだよもう。終わり、終わり」と制止しながらつかんだ。朝日新聞社は「質問機会を奪う行為につながりかねず、容認できません」と報道室に抗議し、再発防止を求めた。》
https://www.asahi.com/articles/ASN867FBHN86UTFK01S.html?iref=pc_ss_date
戦後民主主義に終止符を打たれてしまったのかもしれない。そんな場所に私たちは辿り着いてしまった。讀賣新聞NHKの記者を経験している島契嗣がツイートしている。
《“よりによって”原爆の日の広島で、この事件が起きたことに、強烈な皮肉を感じるよ。戦後75年、こんなところにたどり着いてしまったんだ。もちろん僕はメディアがみずからこうした状況を招いた(許してきた)責任も大いにあると思ってるよ。》
https://twitter.com/shima_keishi/status/1291407249923923968
島は、こうもツイートしている。
《まだ質問があるのに立ち去ったり会見終了したりするのは、国民から見た絵面は印象が悪い。逃げてるように“見える”から。パブリック・リレーションズや危機管理広報の観点でも話題になるやつ江川紹子さんの一件とかね。官邸職員としてはそういう「印象」は避けたいのは痛いほどよくわかる。》
https://twitter.com/shima_keishi/status/1291410703052468224
島は今回の事件を、一線を越えたものと評価している。何の一線かといえば戦後民主主義のそれだろう。
《何がその職員をそうさせたのか。そこが問題の本質やね。さすが朝日新聞の記者も腕をつかまれてないのにつかまれたとは言わないだろう。公開の場での出来事。意図的に記者の挙手の手に(妨害する意思を持って)触っただけでも「事件」だと思うけどね。とにかく今回の件は一線を越えたように、僕は思う》
https://twitter.com/shima_keishi/status/1291412084538740737
富永健嗣報道室長は「広島空港への移動時間が迫り、速やかな移動を促すべく職員が注意喚起を行ったが、腕をつかむことはしていない」とコメントを発表した。今回もまた「ご飯論法」を駆使する。島契嗣は呟く。
《官邸職員は朝日新聞記者の「腕をつかむことはしていない」と。なるほど。そっちのパターンね。》
https://twitter.com/shima_keishi/status/1291429669107978240
島は、こうもツイートしている。
《これどっちを味方するとかではなく(民主主義の味方です!笑)報道室が「腕をつかむことはしていない」とコメント発表したのは“正解”なんですよね。警察庁出身者もいるので今後の対応含め色々シミュレーションしたはず。本件とは関係ないけど札幌のヤジ強制排除のロジックも“見事”だった。マジック。》
https://twitter.com/shima_keishi/status/1291430994025672704

3.田中康夫曰く「議長席に詰め寄る野党の爪の垢でも煎じて呑めよ」

限界マスコミの片隅に生息している「限界マスコミのアライさん」が富永健嗣についてツイートしている。
桜を見る会の名簿シュレッダーして着任半年で更迭された富永健嗣公書管理課長、官邸報道室長に出世してたのだ。8月1日付らしいのだ。頑張ったのだ?》
https://twitter.com/arai3media/status/1291501969559846912
安倍政権は官僚の「忖度」に対して「昇進」をもって応じているということか。スポーツニッポンは8月7日付で「安倍首相、49日ぶり会見も質問限定 国民に判断丸投げ お盆の帰省『十分注意してほしい』のみ」を掲載している。
《政府の観光支援事業「Go To トラベル」は続き、国や各地方自治体のメッセージも食い違う。帰省は国民一人一人の判断に丸投げされた形だ。》
https://www.sponichi.co.jp/society/news/2020/08/07/kiji/20200807s00042000025000c.html
東京新聞労働組合スポニチの見出しを褒めている。
《いい見出しですね、スポニチさん。/首相の何が問題なのか、よくわかる。》
https://twitter.com/danketsu_rentai/status/1291492302024609792
自己責任論と言えば聞こえが良いのかもしれないが、大概の場合、その本質は「丸投げ」であると理解して良かろう。逃げようとする首相に詰め寄らないのも、「丸投げ」の変種ではないかと私などは思ってしまう。田中康夫が皮肉っている。
《「今回もコロナに関し(7分間)割と時間を割いて話した 節目節目に会見をさせて頂きたい」#令和のルイ16世
今は平時じゃないんだよ 節目節目って節穴かよ
しかも会見たった15分間
誤送船団・記者クラブQ&A予定調和やってる感
議長席に詰め寄る野党の爪の垢でも煎じて呑めよ》
https://twitter.com/loveyassy/status/1291309499240706050
首相官邸報道室の男性職員に制された記者は、次のようなツイートからすれば総理番の記者ではなく、地方の記者であったようだ。
朝日新聞社広島記者の質問を応援します。首相番記者の馴れ合い質問と比べて光っています。
抗議に加えて世論に訴える行動提起をしてこそ、社の本気が見えるのでは。SNS、号外発行、街頭宣伝やデモ呼びかけなど。
ポーターからレポーターへの育成は社の姿勢。》
https://twitter.com/DwRmJKBZOQxoTyJ/status/1291449131190247424
山崎雅弘がツイートする。
朝日新聞も、川崎支局や大阪支局、その他の地方支局は「ジャーナリズム」の仕事をしてきたと思いますが、築地の東京本社はまるで役所のように「自分より偉いとされる相手」には屈従の姿勢。友人の朝日地方記者は、東京本社、とりわけ政治部の裏切りに忸怩たる思いの様子です。》
https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1291606271297064963
記者クラブはそもそも戦後民主主義とは無縁であった。山崎は三浦英之が《自由質問を認めない、民主主義国家としてあるまじき姿だと思う》と書いたことにツイッターで、こう応じている。
《この状況を、権力サイドの強圧ではなく「大手メディア各社の政治部記者が自発的に」創り出している事実が異様です。自分たちの本来の仕事が何なのか理解しない記者だけが、政治報道の最前列を独占している。》
https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1291344019675439104
鈴木耕のツイート。
《安倍首相が歩きながら記者の質問にちょっとだけ答えるいわゆる「ぶら下がり」。実はその質問も事前に官邸に内容を通知しているって知ってました? たった1問でさえ事前通知。それがなければ答えられない首相と、それで納得してしまっている記者クラブ。世界のどこにこんな国がある?》
https://twitter.com/kou_1970/status/1291303253808803840

4.かくして事実は有耶無耶に お盆休みに突入

朝日新聞デジタルは8月7日付で「菅氏『腕つかんでいないと報告』 首相会見の質問制止」を掲載している。
広島市で6日にあった安倍晋三首相の記者会見で、質問を続けていた朝日新聞記者の腕を首相官邸報道室の男性職員が制止しながらつかんだことについて、菅義偉官房長官は7日午前の記者会見で「(首相の)広島空港への移動時刻が迫っていた中での出来事で、速やかな移動を促すべく職員が注意喚起を行ったが、腕をつかむことはしていないとの報告を受けている」と述べた。》
https://www.asahi.com/articles/ASN874FD0N87UTFK006.html
望月優大が引用ツイート。
《「腕をつかむことはしていないとの報告を受けている」
「身体に触れてもいないのか」
「腕をつかむことはしていないと報告を受けている」
すごいやりとりだな。》
https://twitter.com/hirokim21/status/1291674053711785986
朝日新聞SF支局長の尾形聡彦が官房長官記者会見についてツイートしている。
《安倍首相会見で官邸職員が記者をつかんだ問題。長官会見で朝日、北海道、毎日・秋山記者が連鎖追及(9:53~)。「体に触れたのか」「触ったりしたのか」と聞かれても、菅氏は「腕をつかむことはしていない」といらだったように繰り返し、何らかの力の行使の存在を伺わせました》
《安倍首相会見で官邸職員が記者をつかんだ問題。長官会見で朝日に加え、北海道、毎日の記者も追及し、東京の記者も首相会見を開かないのか質問。連鎖的な質疑はWHでは日常的で、迫力が増します。2018年のCNN記者の問題の際にはFox Newsも記者を支持しました。日本の記者の良心が問われていると思います》
https://twitter.com/ToshihikoOgata/status/1291629896138027008
https://twitter.com/ToshihikoOgata/status/1291633880236056576
8月7日付で紹介したフリーランス・畠山理仁のツイート、続き。鋭い。
《「代表撮影」のカメラマンであれば、もちろん記者の腕を官邸報道室の職員が掴んだ瞬間も撮っているはず。公開が待たれる。》
《権力と報道の根幹に関わる話。代表撮影素材の提供を受けられる社は必ず報じるべき。この映像を出せなければ、ますます読者や視聴者からの信頼を失うと思う。権力側から「流すな」という圧力があるのかないのかも含めて報じた方がいいと思いますよ。》
《普通に考えて代表取材のカメラマンが記者と官邸職員がモメる様子を撮っていないはずがない。素人じゃない。プロですよ。撮っているはず。万が一、「会見が終了後の揉め事だから」というつまらない理由で公開をためらっているのだとしたら、メディアとして終わる。早く公開してほしい。》
https://twitter.com/hatakezo/status/1291317466904162304
https://twitter.com/hatakezo/status/1291355716255535107
https://twitter.com/hatakezo/status/1291390539351207937
新聞労連中央執行委員長・南彰名義で声明「首相官邸の質問妨害に抗議する」を8月7日付で発表している。
《官邸側は今回の事件について、「速やかな移動を促すべく職員が注意喚起を行ったが、腕をつかむことはしていない。今後とも、記者会見の円滑な運営を心掛ける所存」と妨害行為を正当化しています。驚くべきことです。自らの行為を真摯に反省し、オープンで公正な記者会見の運営に見直すよう求めます。また、再質問も行える十分な質疑時間を確保し、フリージャーナリストも含めた質問権を保障した首相記者会見を行うよう改めて求めます。》
http://shimbunroren.or.jp/200807statement/
「何から何まで真っ暗闇よ 筋の通らぬことばかり 右を向いても左を見てもばかと阿呆のからみあい」とは、われらが同志・鶴田浩二の「傷だらけの人生」の一節である。

5.長崎の会見では18分間

毎日新聞は8月9日付で「『核なき世界へ力尽くす』 首相あいさつ全 長崎平和祈念式典」を掲載している。
https://mainichi.jp/articles/20200809/k00/00m/040/053000c
東京新聞労働組合が首相あいさつを批判している。
《長崎での平和祈念式典の生中継。/首相あいさつ。/言葉に、気持ちが入ってないから/読み間違える。/「乗り越えられない試練はない」/との言葉にも、強い違和感を禁じえない。》
反戦平和、核廃絶の祈りの場で/「乗り越えられない試練はない」って/被爆地の苦しみと悲しみに/けんかでも売るつもりなのか。/大勢の人たちがすでに命を奪われた。/いまも苦しんでる人たちがいる。》
《「乗り越えられない試練はない」/この一言をもっても/首相を絶対やらせちゃいけない人だ。/戦争に突き進み、核爆弾を落とされた街で/大勢の犠牲者と子や孫に向かって/為政者が、どこの高みから言ってるのか。/今後も試練を乗り越えろというのか?》
https://twitter.com/danketsu_rentai/status/1292288433742725121
https://twitter.com/danketsu_rentai/status/1292301182568787968
https://twitter.com/danketsu_rentai/status/1292317477003616256
東京新聞労働組合は広島でのあいさつを聞いていないのだうか。岩ありさの次のようなツイートを読んで愕然とする。
《安倍首相の長崎での式典でのあいさつが広島でのあいさつと地名以外まったく同じです。コピーアンドペーストです。》
https://twitter.com/Iwakawa_Arisa/status/1292289928122912768
翌、8月10日になって東京新聞労働組合も気がつく。
《「何のために被爆地まで来たのか。/ばかにしている」/面酷似、コピペであしらう首相あいさつに/被爆者たちから怒りの声が上がった。》
https://twitter.com/danketsu_rentai/status/1292554309041676290
スポーツニッポンは8月10日付で「安倍首相『広島』『長崎』式典あいさつ酷似…“使い回し”に被爆者怒り『やる気ないなら辞めろ』」を掲載している。
《非常に重いはずの政治家の言葉。しかも唯一の被爆国として、国内だけでなく、世界に発信する場でのあいさつならなおさらだ。その責任すら果たさないのか。》
https://www.sponichi.co.jp/society/news/2020/08/10/kiji/20200810s00042000093000c.html
共同通信は8月9日付で「首相記者会見、2問で終了 複数の追加質問受け付けず」を配信している。
安倍晋三首相が9日に長崎市で行った記者会見は質問2問で終了した。地元記者と同行記者から1問ずつ質問を受ける予定通りとなった。会場から「まだ質問があります」との声が複数上がったが、追加は受け付けず、首相はそのまま立ち去った。》
https://this.kiji.is/665085556839433313
清水潔が引用ツイートを投稿している。
《広島で逃げて、長崎でも逃げる。戦後最悪の渦中で逃げまくる首相。》
https://twitter.com/NOSUKE0607/status/1292456877092044800
それでいて18分も時間を費やしている。広島の16分よりも長い
原発のコスト」(岩波新書)の大島堅一は長崎での首相会見に呆れている。
《長崎での首相会見、ネットでみました。あらかじめ送っておいた内容を質問者が読み、あらかじめ用意しておいた答を読む会でした。それなら事前に質問回答を書面で配っておき、会見ではそれを前提に質疑応答してはどうでしょうか。首相がこちらにカンペを見せてくれたので構図がはっきりわかりました。》
https://twitter.com/kenichioshima/status/1292420976127303688
これを「ありふれた光景」として了解してはなるまい。朝日新聞尾形聡彦がこの日の記者会見の様子を次のようにツイートしている
《安倍首相会見。事前通告の2問に首相がメモを読むだけの内容は会見の「ふり」でしかなく、米国など他の主要国では考えられません。主催者の記者クラブ側の責任は重大で即座に改善すべきです。この時代に人々からどう見られているかを記者たちは真剣に考えるべきだと思います》
《安倍首相会見。集中力を欠いている首相の様子も印象に残りました。冒頭の10秒すぎには記者の質問中にややつらそうに目をつぶり、6分すぎの質問中にも、ぼーっと1点だけを見つめる普段は見られない仕草。質問の事前通告が緊張感欠如の一因でしょうが、疲労もあるのでしょうか》
https://twitter.com/ToshihikoOgata/status/1292417460700721152
https://twitter.com/ToshihikoOgata/status/1292417461673799680
東京新聞の望月衣塑子は首相の体調に問題があるのではないかと推測している。
《批判を受けても変わらず。追加の質問対応できないほど、体調が悪いということか。
首相記者会見、2問で終了 複数の追加質問受け付けず
首相が長崎市で行った会見は質問2問で終了。会場から「まだ質問があります」との声が複数上がったが、首相はそのまま立ち去った。》
https://twitter.com/ISOKO_MOCHIZUKI/status/1292397537412800512
五月書房新社で編集委員会委員長をつとめる佐藤章はツイッター首相に引導を渡す。
《安倍はもう素直に辞任した方がいい。会見もろくにできない首相は国民にとって不幸。長崎空港の時刻表では2時間後にもJAL便があった。やる気と能力のある首相ならまだ余裕で質疑を続けられたはず。医療も経済も未曾有の国難時にほとんど発信力のない首相は不用。》
https://twitter.com/bSM2TC2coIKWrlM/status/1292416239529160704

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2)【記事】イソジン推奨!大阪府知事の本業は…テレビタレント

「日刊サイゾー」は8月5日付で「大阪・吉村府知事の”イソジン発言”放送した『ミヤネ屋』の罪──『薬機法違反』を指摘する声も」を発表している。テレビの情報番組は「報道」とは縁もゆかりもないバラエティ番組である。「情報ライブ ミヤネ屋」も然り。政治家は芸人の本性を露わにする。
大阪府の吉村洋府知事と大阪市松井一郎市長は、4日に大阪府庁で行われた記者会見において、「ポビドンヨード」を含むうがい薬に新型コロナウイルスに対する”効果”が確認されたと発表した。
この会見を在阪局・読売テレビが制作する『情報ライブ ミヤネ屋』は『速報 大阪共同会見“コロナ治療”「効果期待の薬」注目発表』とキャプションをつけた上で生放送。2時間後には薬局の店頭からイソジンなどのポビドンヨードを含むうがい薬が売り切れ状態になり、メルカリなどのフリマアプリ等で転売が始まっている。》
https://www.cyzo.com/2020/08/post_248972_entry.html
J-CAST会社ウォッチ」は8月7日付で「世界中で嘲笑?! メディアに『眉つばモノ』『押し売り』と評された『イソジン吉村』知事の残念すぎる海外デビュー」を公開している。
《Too Good to Be True? Osaka Says Gargling Formula Can Beat Virus
(話がうますぎる? 大阪府は、うがいがコロナウイルスをやっつける処方薬だと発表した:ブルームバーグ通信)
gargling:うがい
真っ先に報じたのが、米国のブルームバーグ通信でした。この記事、何と言っても「Too Good to Be True?」という見出しが秀逸です。直訳すると「good」すぎて「本当かどうか疑わしい」という意味ですが、「できすぎた話」「眉つばモノ」とも訳されます。
「そんなうまい話があるのか?(あるわけないだろう)」といったところでしょうか。》
《Japan governor touts gargling product for virus.
(日本の政治家が、コロナウイルス対策としてうがい薬を押し売りしている:米ワシントンポスト紙)
tout:押し売りする、しつこく売り込む
「tout」は「うるさく勧誘する」という動詞で、「ダフ屋をやる」とか「転売する」という意味もあるそうです。
 記事では「日本の政治家が、コロナ対策にうがい薬を『押し売り』して疑わしいという批判を招いている」と伝えています。政治家が、特に医療に関わる分野で特定の商品(や薬)の使用を推奨することの違和感をハッキリと伝えていて、その危険さを想定させる内容です。》
https://www.j-cast.com/kaisha/2020/08/07391725.html?p=all
大阪府知事に対して批判意識を放棄してしまった「ナニワの人民日報」(田中康夫)とは大違いである。「ナニワの人民日報」とは、そう朝日新聞大阪本社にほかならない。化けの皮が剥がれたのは朝日新聞も、なのだ。日刊ゲンダイDIGITALは8月7日付で「抗議殺到!イソジン吉村と大阪モデルの化けの皮が剥がれる」を掲載している。
《府健康医療部の担当者に聞くと「苦情? 結構入ってますというか、かなりというか、そればっかりです」とこう続ける。
府民に限らず、よその県の方も含めてですね。『あらかじめ品薄になるのが分かっとったのに、何でそんなことを言うてくれたんや』といった内容から、さまざまなご意見を頂戴しています。知事の姿勢について『混乱を招いたのだから謝罪すべきだ』とか、『開き直っているのか』といったものもありました。何件苦情があったかは集計していませんが、私が1日で受けたのは7、8件です」》
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/277014
毎日新聞は8月7日付で「『うがい薬発言で現場混乱』 大阪府歯科保険医協会が吉村知事に抗議」(石川将来)を掲載している。
大阪府内の歯科医師ら約4200人で構成する府歯科保険医協会(小澤力理事長)は6日、新型コロナウイルスの感染対策として、吉村洋知事が消毒効果のある「ポビドンヨード」を含むうがい薬の使用を府民に呼びかけたことへの抗議を発表した。「瞬く間にうがい薬が市場から消え、最も多く使用している歯科医療機関でさえ手に入らなくなっている」とし、吉村知事に慎重な発言を求めた。》
https://mainichi.jp/articles/20200807/k00/00m/040/078000c
太融寺町谷口医院院長の谷口恭は8月6日付毎日新聞の「医療プレミア」に「新型コロナ 『うがい薬推奨』は問題」を掲載している。
《大阪はびきの医療センターの研究は、ポビドンヨードが新型コロナウイルス感染の予防や治療に役立つことを示したものではなく、感染者の唾液のウイルスがどれだけ減少するかを調べたものにすぎません。実際に吉村知事も、5日の記者会見で「(ポビドンヨードは)予防薬でも治療薬でもない」と発言しました。
にもかかわらず知事は、新型コロナに感染していない府民に対し、8月20日まではポビドンヨードを使ってほしいと呼びかけています。この行為はもはや単なる勇み足では済まされず、犯罪といってもいいのではないかと私には思えます。》
https://mainichi.jp/premier/health/articles/20200806/med/00m/100/015000c
ぜんじろうのツイート。そうか知事の本業はタレントか!
《吉村知事は「ぼくが感じたことをしゃべり『それは間違いだ』と言われたら、ぼく自身、言いたいことが言えなくなる」。ご自身が感じたことは「絶対」のようです。でもそんな独りよがり、政治家としてだけでなく、"本業の"タレントとしても黙ってたほうが良いと思います(笑)》
https://twitter.com/zenzenjiro/status/1292020754586824704
朝日新聞は8月8日付で社説「うがい薬騒動 根拠を明示して政策を」を掲載している。
《科学的な裏付けが十分でない段階での政策発信は、勇み足とのそしりを免れない。
新型コロナウイルスには、殺ウイルス効果があるポビドンヨード含むうがい薬が有効なようだ――。大阪府の吉村洋知事がそんな研究成果を披露し、発熱した人がいる家庭など、府民にうがい薬の使用を呼びかけたことが波紋を呼んでいる。
新型コロナ禍への対応で注目度を高めた知事の発言だけに、直後から各地の店舗で当該製品の売り切れが続出。ネットでは高額での転売も見られた。会見の翌日、知事は「誤解がある。うがい薬は予防薬や治療薬にはならない」と再び説明したが、「現時点では証拠が不足している」(日本医師会といった指摘が相次いだ。》
https://www.asahi.com/articles/DA3S14579768.html?iref=pc_rensai_long_16_article
この社説は朝日新聞のアリバイ工作なのではないかと私などは思わざるを得ないのである。

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