民間事故調の報告書で有名になった「ぞっとした発言」の当事者・下村健が真相を連続ツイート

民間事故調福島第一原発の事故についてまとめた「報告書」について新聞もテレビも大きく取り上げていたし、当然のごとく社説でも取り上げられた。民間事故調の正式名称は福島原発事故独立検証委員会と言い、朝日新聞主筆をつとめていた船橋洋一が理事長をつとめている一般財団法人日本再建イニシアティブを母胎に「オープンな事故検証」の一環として生まれたものである。もっとも民間といっても有識者委員会の顔ぶれを見ていると「民間」というよりも「官」に近い人選であることがわかる。委員長の北澤 宏一は前科学技術振興機構理事長であるし、委員の但木 敬一は検事総長の経験者だし、遠藤 哲也は元国際原子力機関理事会議長、藤井 眞理子は東京大学先端科学技術研究センター教授といっても、もともとは大蔵省の出身、山地 憲治も地球環境産業地術研究機構理事・研究所長だというが、もともとは(財)電力中央研究所の出身である。民間としてはグレイ色が色濃いと言わざるを得まい。そんな民間事故調にすら東京電力は協力しなかったというところに東京電力原子力かかわる企業としては失格であったことがうかがわれる。「公開」「民主」は原子力の平和利用に当たって大原則だったのだから。
この「報告書」で最も話題になったのは菅直人の一国の首相としての資質にかかわる問題であった。

〈泥縄的〉――歯に衣きぬ着せず、官邸の対応をこう断じた。福島原発事故に関する独立検証委員会(民間事故調)の報告書のこと◆「首相がそんな細かいことを聞くのは、どうなのかとゾッとした」などの証言もあるが、「ゾッと」はそれだけでない。政府の初動対応始め危機管理についての報告すべてにゾッとする 2月29日付「よみうり寸評」

福島第一原発に代替バッテリーが必要と判明した際、菅首相は自分の携帯電話で「必要なバッテリーの大きさは? 縦横何メートル? 重さは? ヘリコプターで運べるのか?」などと担当者に直接質問して熱心にメモをとった。同席者の一人は「首相がそんな細かいことを聞くというのは、国としてどうなのかとぞっとした」と述べた。 2月29日付朝日新聞

この「ぞっとした」発言に私もまたぞっとしたものだが、この発言の当事者は内閣審議官のTBS出身の下村健一であった。何故、私が知ったかというと、下村が3月4日に次のようなツイートをしたから、だ。

民間事故調/2】まず、大きく報道された、《電源喪失した原発にバッテリーを緊急搬送した際の総理の行動》の件。必要なバッテリーのサイズや重さまで一国の総理が自ら電話で問うている様子に、「国としてどうなのかとぞっとした」と証言した“同席者”とは、私。但し、意味が違って報じられている。

民間事故調/3】私は、そんな事まで自分でする菅直人に対し「ぞっとした」のではない。そんな事まで一国の総理がやらざるを得ないほど、この事態下に地蔵のように動かない居合わせた技術系トップ達の有様に、「国としてどうなのかとぞっとした」のが真相。総理を取り替えれば済む話、では全く無い。

民間事故調/4】実際、「これどうなってるの」と総理から何か質問されても、全く明確に答えられず目を逸らす首脳陣。「判らないなら調べて」と指示されても、「はい…」と返事するだけで部下に電話もせず固まったまま、という光景を何度も見た。これが日本の原子力のトップ達の姿か、と戦慄した。

つまり当事者の下村からすれば自らの「ぞっとした」発言は菅首相に向けられたものではなく、技術系トップ達の有様に向けられていたわけだが、その真意は民間事故調の報告書に間違ったニュアンスで記述され、マスメディアはそれをそのまま報じてしまったわけである。私などが信じられないのは新聞などソーシャルメディアとの「協働」を謳いながらも、ツイッター記者とやらは下村ツイートを無視していたし、紙面でも無視していた。私はこうしたマスメディアにもぞっとしないではいられない。