3月9日付東京新聞の「こちら特報部」はツイッターで過酷事故を起こした福島第一原発の復旧作業の現場から情報を発信し続ける地元出身の「TSさん」こと「@sunnysunnynismo」にインタビューをしている。ツイッターに「TSさん」のプロフィールはこうある。
福島第一原子力発電所で復旧活動に従事中です。 取材を受けた電子書籍「福島原発作業員のツイッター」が発売中です。
東京新聞の記事によれば電子書籍『福島原発作業員のツイッター』には昨年暮れまでのツイートがまとめられているという。「TSさん」のツイートは当たり前の話かもしれないが、原発事故と向き合って仕事をしているだけにマスメディアの原発報道と違って、ともかくリアルなのである。こんな具合、だ。
鈴木智彦氏が「福島第二は何かあるに違いない」なんて事言ってたけど、知り合いに確認したら何もないです。あちこちメチャクチャで全号基直すのは大変だけど冷温未臨界。安定してます。つまり、原発についてようわからんとおっかないわけだ。
今日の風の強さは凄まじかった。クレーン作業はこうゆう日は中止になる。日が出てても風の日、雪の日、寒い日、今年の冬はいつになく厳しい。でも、冬の寒さを知るからこそ、春の暖かさを感じるのだ。
私なんか排気塔登れば家が見えるくらいの住人だけど、今や毎日が冒険ですぞ。
一時間しか寝ていない(゜゜;)
福島第一原発の現場からツイートしているのは「TSさん」ばかりではない。まだ84ツイートしかないが、「作業員A」こと「@tepcofuck」もその一人である。「作業員A」はプロフィールに次のように書いている。
【拡散希望】事故当初、作業員に配分されていたレトルト食品や飲み物、今は電力社員のみに影で配分されてやがる。今朝J-villageを歩く電力社員のビニール袋から透けて見えた。どこまで自分達の事しか考えていないのか…ふざけんな!!!
東電広野単身寮の食堂、今日のお昼のメニューは親子丼 250円 塩ラーメン230円 カレー200円 ミニカレー90円。 そして俺は今日もカップ麺…(泣)
その寮の食堂、東電社員の入寮者以外に、寮の管理員、清掃のオバチャン、警備員、東電社員を送り迎えするバスの運転手は利用可能なのです。同じ協力企業作業員なのにこれはあきらかな差別だ。離れたところに寮があって見えないならまだしも、J-villageすぐ脇目でやられてるから余計に頭にく
やったった!!管理員の目を盗んで東電独身寮食堂で食ってきてやったぜ!!塩ラーメンとミニカレー♪これで合わせてお値段320円也。 http://pic.twitter.com/6nniyEzk
「まさひろ」こと「@masahiro3150」は「1F(福島第一原発)2F(福島第二原発) に行ったり来たりして働いている原発作業員」であり、「ビールと写真をこよなく愛する雑食系のおっさん」であり、ブログも書いている。ここは「まさひろblog」の次のような一文を紹介しておこう。
土日休んで今日から仕事。ファミちゃんどうしたかな?なんて思いながら、でも一応ゴハンとお水を持って出勤。ファミマまであと1㌔って所で車に轢かれて死んでたネコに出会う。車から降りて写真を撮り、恐る恐る近付いてみたけど、初めてみるニャンコ。悲しい。でももう涙も出ないよなんて思ってながら涙溢れたのでした。軍手をして冷たい雨に打たれる遺体をどけてあげようとしましたが、ひっきりなしに原発に向かう車の脇で、僕にその勇気はありませんでした。ごめんね。
「ハッピー」こと「@Happy20790」はツイッターのプロフィールには何も書き込んでいないが、次のようなツイートからして現場の人であることは間違いないだろう。
ただいまっ(^O^)今日も暖かかったけど風が強かったでし。現場は外回りの仕事のタンク増設、汚染水処理配管敷設、3号4号瓦礫撤去、多核種除去設備(アルプス)設置準備、廃スラッジ処理設備設置作業等々はコツコツと進んでるんだけど、肝心な原子炉建屋の中の作業に先行きが見えないでし。
続き1:今月下旬には二回目の2号機格納容器内のアクセスに挑戦するけど、前回同様やってみないとわからない。5号機でモックアップするはずなんだけど今回は追加項目あるし、かなりの時間かかるので作業の全体被曝量も多いと思うんだ。
続き2:年度末だし年度残線量も少ないから出来れば来月の方がいいんだけど…。東電はそんな企業の苦労はお構いなしだからなぁ。とにかく原子炉内の作業は色々技術開発が必要なんだよね先日は一般公募もしたからその中に画期的な技術があればいいんだけど…。難しいだろうなぁ。
「@Happy20790」の次のような指摘は重要だろう。
今までの自治体も独自で原発の勉強なんかしてないし危機意識だって持ってないんだ。電力会社や保安院が言ってる安全・安心をまともに受けてるだけで、自ら突っ込んだ指摘なんかしてないよね。自治体の中に原発対策部くらいあっても良さそうなのに。
ツイッターばかりではない。福島第一原発からの「リアル」は先に引用した「まさひろ」もそうだが、ブログからも発信されている。「津波被害と原発震災に立ち向かう人々とともに」というサブタイトルを持つ「福島 フクシマ FUKUSHIMA」は反貧困の社会運動に取り組んできた経歴を持ち、現在は「福島第一原発と第二原発の事故収束作業」に「放射線管理官」として「従事している」という「大西さん(仮名)」のロングインタビューをエントリしている。もともと「大西さん(仮名)」は反原発の運動にも取り組んでいたが、「3・11が起こって、『反対運動を継続してこなかった』という自己批判」から原発事故の現場で働くことを決意したという。そんな「大西さん(仮名)」であればこそ次のように言えるのだろう。
収束とか廃炉とかの作業を、原発労働者がやっているという感覚を運動の側が持っていない、身近なものとして感じていないという気がします。
「廃炉にしろ」と、東京の運動が盛り上がっているんですけど、語弊を恐れずいえば、特定の原発労働者、8万人弱の原発労働者に、「死ね、死ね」って言っているのと同じなんですよね。「高線量浴びて死ね」と。自分たちは安全な場所で「廃炉にしろ」と言っているわけですから。
原発労働者を犠牲に差し出すみたいな構造が、反原発運動に見られると思います。
そういう乖離した状況があるので、福島現地や原発労働者の人と、東京の人が同じ意識に立って反原発・脱原発の方向になることが簡単ではないと感じています。
ソーシャルメディアには「当事者」が溢れている。ソーシャルメディアにはいたるところに「生の現場」が転がっている。ソーシャルメディアは誰もが否応なくジャーナリズムを背負っているのかもしれない。翻ってマスメディアは?原発作業員のアカウントのフォロワーになることしか能がないのだろうか。福島第一原発の過酷事故に関する「報道」ではプロフェッショナルを自称する新聞やテレビの記者たちは「生の現場」から逃げ「当事者」に接触することなく、福島第一原発から遠く離れて、「最悪の事態」に恐れおののくだけではなかったのか。あれから1年。マスメディアは何の自己批判もなしに今日に至る。