秋田書店に「大衆」は見えないのか?

別に秋田書店に限ったことではないのだろうが、秋田書店の売上高は激減している。2008年には180億円あった売上高が2012年には115億円になってしまった。5年間で約4割も落としてしまっている。しかも、秋田書店は広告収入依存型の雑誌を擁している出版社ではなく、マンガの専門出版社である。かつて「週刊少年チャンピオン」は「がきデカ」「ブラックジャック」「マカロニほうれん荘」などが誌面を飾っていた時代には週刊少年マンガ誌で1位、2位の座を争っていたこともあったくらいだ。
つまり秋田書店の売上高縮小は「週刊少年チャンピオン」の凋落と軌を一にするといって良いだろう。「週刊少年チャンピオン」の凋落は、コミックスの凋落も同時に意味する。「週刊少年チャンピオン」が莫大な利益を会社にもたらしていた頃であれば、他のマンガ誌の赤字も充分に吸収できたことだろうが、そんな甘いことなど言っていられないほど売上高が減少してしまっているのである。消息筋によれば秋田書店のマンガ家に対する印税は新人レベルだと7〜8%に抑えられていたという。これでは有望な新人を発掘するのは難しいだろうし、競合誌との差は開くばかりであったろう。当然、「週刊少年チャンピオン」以外のマンガ誌に対するコストコトロールは、より厳しくなっていたはずだ。かくして、会社ぐるみで「懸賞サギ」という読者に対する背信行為を行ってしまったということになるのだろう。
次のような文章をお読みいただきたい。
「ぼくの名前には『ひろく平和に』との親の祈りがこめられている。まだ戦争状態にあった昭和20年5月、もしかしたら、こんな名前は役所で受理されないかもしれないと思いつつ届けを出しにいったと親父から聞かされたことがある。(中略)わが子たちが平和な中で生きてほしいという親の切なる願いは、完全平和が果たされていないいまも不滅のはずである。だからこそなおさらに長崎を、そして、広島を忘れないでいたい」
秋田書店には社長の秋田貞美のほか、三人の取締役がいるが、その一人がフェイスブックに書いた美しい文章である。
「若い者の無垢の信念は崇高だ。『熱情は砂をも溶かす』という吉田一穂の言葉を思い出す」
という一行を書いたこともある人物である。
そうした人物がたとえ経営状態が苦境に置かれているとはいえ、「懸賞サギ」を是としていることが私には信じられない。秋田書店の経営陣が誰も、何の責任も取らず、心のまるでこもっていない「お詫び」を出して、それで総てをなかったことにしようとしていることが私には信じ難い。そうした「インチキ」を罷り通させては「平和」が危機に陥るとは思わないのだろうか。
秋田書店フェースブックなどで使っているサムネを裏返してみると、読者に向かって「アカンベー」をしている図になるそうだ。それが秋田書店の真意なのだと。そんな書き込みをインターネットで発見した。