【文徒】2017年(平成29)年5月18日(第5巻91号・通巻1020号)

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1)【記事】「バカ化」の進行が止まらない女性ファッション誌について
2)【記事】「週刊新潮」が「週刊文春」にケンカを売った!
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                                • 2017.5.18 Shuppanjin

1)【記事】「バカ化」の進行が止まらない女性ファッション誌について

朝日新聞1面のコラム「折々のことば」の連載が3年目を迎えた鷲田清一が次のように語っている。
「このところよく『ポスト真実の時代』だと言われます。真実が通用しなくなった、という意味で言われているのでしょうが、そもそも『真実の時代』などあったためしがあるでしょうか。同時代の社会をとらえるというのは、目の前にあるさまざまな出来事や徴候のなかから、意味あるものをつかみだし、再構成することです。そこには一定の視点があります。『事実』は『解釈』でもあるのです」
http://www.asahi.com/articles/ASK525VCNK52UCVL036.html
「徴候的読解」(アルチュセール)という言い方がある。
http://www.jimbunshoin.co.jp/book/b66270.html?=kinokuniya
鷲田が広く知られるようになったのは、「モードの迷宮」による。女性ファッション誌「マリクレール日本版」の連載をまとめたものであり、サントリー学芸賞を獲得している。「マリクレール日本版」の連載は1987年7月から1988年11月までつづき、中央公論社で単行本にまとめられたのは1989年のことであった。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480082442/
現在、女性ファッション誌で話題になることと言えば、アイドルグループ・HKT48STU48指原莉乃が表紙を飾るといった程度のことである。
https://mdpr.jp/news/detail/1687032
シャネル日本法人社長で、日本在住歴が40年にもなるフランス人のリシャール・コラスは築地の豊洲移転に反対している。
「銀座のアイデンティティはまさしく築地のような場所と、シャネルのビルや、歌舞伎座のような場所との間にある『緊張関係』によって生まれているのです。築地のように、銀座を銀座たらしめている場所がなくなってしまったら、どうなってしまうでしょうか」
http://toyokeizai.net/articles/-/171868
わが国の女性ファッション誌はシャネルの広告を獲得することには熱心だが、その日本法人の社長が、こうした考えを持っていることを誌面で紹介することは絶対にない。わが国の女性ファッション誌にジャーナリズムはあるだろうか、文学はあるだろうかと改めて問いかけてみたい。

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2)【記事】「週刊新潮」が「週刊文春」にケンカを売った!

朝毎読日経産経ともに取り上げている。
「新潮の中づり広告、競合の文春に渡す 出版取次トーハン」(朝日新聞)
〈出版取次会社「トーハン」(東京)が、週刊新潮(新潮社)の中づり広告をライバル誌である週刊文春文芸春秋)側に渡していたことが、トーハンへの取材でわかった〉
http://www.asahi.com/articles/ASK5J6427K5JULZU00P.html
「新潮スクープ 文春が拝借 中づり事前入手し後追い?」(毎日新聞)
〈週刊誌「週刊新潮」が18日発売(九州、北海道などは19日)の5月25日号で、「週刊文春」側が「不正」な手段で新潮のスクープを事前に把握していたとする記事を掲載することが関係者への取材で分かった〉
https://mainichi.jp/articles/20170517/ddm/041/040/083000c
「「週刊新潮」の中づり広告、文芸春秋が盗み見か」(読売新聞)
〈「週刊文春」を発行する文芸春秋(東京)の営業担当者が、ライバル誌「週刊新潮」の中づり広告を出版取次会社「トーハン」(同)から事前に入手し、コピーして文春編集部に渡していた疑いがあるとして、週刊新潮を発行する新潮社(同)が調査していることが分かった〉
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170517-OYT1T50057.html
「文春、中づり広告入手して取材? 新潮が週刊誌で指摘」(日経)
〈18日発行の週刊誌「週刊新潮」が、電車などに掲示する中づり広告をライバル誌「週刊文春」側が事前に入手し、週刊新潮のスクープ内容を把握していたという記事を掲載することが17日、わかった。書籍取次会社が新潮社から受け取った中づり広告を文芸春秋の社員に貸していたという〉
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG17H2C_X10C17A5CC0000/
週刊文春、ライバル誌『盗み見』の疑い 週刊新潮の中づり広告を業者から事前入手か 新潮側『スクープつぶされたことも』」(産経)
〈「週刊文春」を発行する文芸春秋の営業担当者が、同日発売のライバル誌「週刊新潮」(新潮社)の中づり広告を出版流通業者から事前に入手してコピーし、文春編集部に渡していた疑いがあるとする記事が、18日発売の週刊新潮(5月25日号)に掲載されることが16日、分かった〉
http://www.sankei.com/affairs/news/170517/afr1705170002-n1.html
週刊新潮」の中吊り広告を文藝春秋の営業担当者がトーハンから事前に入手していたことを「週刊新潮」が記事で告発したわけだが、「週刊新潮」が記事にしていることに朝日新聞の記事は一切触れていない。そこが私にすれば異様だ。
ご丁寧にも「週刊新潮」は「出版取次会社」としか書いていないのに、わざわざトーハンであることを暴露しながらも、「週刊新潮」発のスクープであることは意図的に伏せているのだ。こうした異様さから朝日新聞の「政治的無意識」が読み取れるのが、まあ「徴候的読解」ということになるのだろう。
いずれにしても「週刊新潮」が「週刊文春」にケンカを売ったことに間違いはあるまい。「週刊文春」に「報復」を期待している読者は多いだろうなあ。オレもそのひとりである。週刊誌の読者を動かすのは今も昔も品性とはあまり関係ない下世話な好奇心にほかならない。民衆の品性とはあまり関係ない下世話な好奇心と朝日新聞の「政治的無意識」は決して相いれないことも付記しておこう。

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3)【本日の一行情報】

日本雑誌協会は1〜3月の平均印刷部数を5月16日に公表したが、「ITmediaビジネスONLINE」が「最盛期から3分の1以下に:『週刊少年ジャンプ』、200万部割れ」を掲載した。ちなみに「週刊少年マガジン」(講談社)は100万部を割り、「週刊少年サンデー」(小学館)は31万9667部と辛うじて30万部台を守った。「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)は印刷部数を公にできないほど売れていないということなのだろう。「週刊少年サンデー」の半分として15万部ということになるが、もしかすると、もっと悪い数字かもしれない。
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1705/16/news106.html
http://www.j-magazine.or.jp/magadata/index.php?module=list&action=list&cat1cd=1&cat3cd=14&period_cd=36

学研ホールディングスの2017年9月期第2四半期連結業績は、売上高が前年同期比4.3%増の549.80億円、営業利益が同14.9%増の30.91億円、経常利益が同15.8%増の31.59億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同54.2%増の25.33億円。
http://file.swcms.net/file/gakken/ir/news/auto_20170512150700_S100A7MS/pdfFile.pdf
http://www.47news.jp/keizai/news_report/2017/05/430580.html

大日本印刷は、2017年3月期(2016年4月1日〜2017年3月31日)の連結業績を公表した。
売上高   :1兆4101億7200万円(前年比 3.1%減)
営業利益  :314億1000万円( 同 30.9%減)
経常利益  :367億4000万円( 同 30.2%減)
当期純利益 :252億2600万円( 同 24.9%減)
http://www.dnp.co.jp/ir/pdf/fin201705.pdf

◎メディアドゥはインターネット総合研究所、及び同社の子会社でAIベンチャーのエーアイスクエアとの2社と資本業務提携契約することになった。このことを踏まえて日経は「電子書籍取次大手のメディアドゥは人工知能(AI)が電子書籍の内容を要約し紹介するサービスを始める。年内にもインターネット上に販売サイトを立ち上げ、ビジネス書などを中心に取り扱う」と書いたわけである。
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1475436
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO16488430W7A510C1TI1000/

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4)【深夜の誌人語録】

笑いを忘れてはならない。笑いは元気の素であり、かつ武器である。