【文徒】2014年(平成26)2月14日(第2巻28号・通巻230号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】雑誌の面白さを伝える工夫が必要だ
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2014.2.14 Shuppanjin

1)【記事】雑誌の面白さを伝える工夫が必要だ

一昔前であれば、電車に乗れば中吊り広告が、新聞を開けば半5段広告や全5段広告が、雑誌の内容や面白さを私たち読者に伝えてくれた。
しかし、雑誌を取り巻く経済的環境が厳しくなるに連れて、コストカットの余波を受けて、雑誌の内容や面白さは読者に伝わり難くなったといってよいだろう。
おまけにコンビニでは「緊縛」雑誌が主流になり、立ち読みで雑誌の面白さを知る機会も減った。
もちろん、出版社にとって広告費を安易に増やすことはできないのは承知しているが、このままでは雑誌は「縮小の連鎖」に巻き込まれるのみである。
内容さえ良ければ読者は雑誌を買ってくれると考えるのは出版社サイドの勝手な妄想にしか過ぎまい。その面白さがが読者に伝わらなければ、どんなに内容が良くても読者は雑誌を買うまい。何らかのカタチで雑誌の面白さを伝える工夫を考える必要があるはずだ。
現実は出版社が考えるほど甘くはないのである。先日、複数の大学生と話をする機会があったが、そのうちの何人かは雑誌を一度も買ったことがないと言っていた。
間違いなく雑誌に何の関心も抱かない若者が学生であれ、サラリーマンであれ、OLであれ、増えているのだ。彼、彼女らは立ち読みすらしないそうだ。こうした事態は雑誌に関心を持たない若者の責任だろうか。雑誌の面白さを伝える工夫を怠ってきた出版社の責任ではないのか。
もちろん、昔のように新聞広告や中吊り広告を派手に打てないことはわかっている。だからといって今の情況に傍観を決め込んで良いというわけではあるまい。編集も、営業も頭と足を使うことはできるはずだ。座していてはダメなのだ。コンビニや書店の店頭を利用して何かできないものなのか。テレビの情報番組で雑誌を話題にするようなアプローチは行っているのだろうか。
雑誌の面白さを伝える工夫が必要だ。

                                                                                                                        • -

2)【本日の一行情報】

◎アップルは今年中にウェアラブルバイス「iWatch」を市場デビューさせようとしているらしい。
「iWatchはiPhoneと連携して動作するシンプルな機能の周辺機器と位置付けられており、200人以上の大規模な体制で開発中とのことです。iWatchとHealthbookは、医療・フィットネス関連の市場を大きく拡大すると見られます」
http://iphone-mania.jp/news-20633/

リクルートが「銀たま」なる言葉を流行させようとしている。「銀たま」とは「銀のたまご」であり、「金のたまご」が若者を指すのに対し、「いぶし銀」のスキルを身につけた40代、50代を指す。
http://news.ameba.jp/20140212-134/
雑誌も時代の空気や気分を刻印した「言葉」を創造する努力を惜しんではならないはずだ。

◎ネットニュース編集者の中川淳一郎が2月11日付朝日新聞で「とにかく根拠も薄い『証拠』を積み重ねて、フジテレビの罪だとか、朝日新聞の悪だとかの陰謀論を信じているのがネトウヨの特徴です。とにかく結論ありきなんですよ、彼らは」と発言。
http://www.asahi.com/articles/ASG2C04SMG2BUTFK12B.html
予想通りネトウヨ筋から槍玉にあがっている。
http://fxya.blog129.fc2.com/blog-entry-12759.html
彼らは何故、根拠の薄い結論ありきの陰謀論を信じてしまうのか。その責任の一端は彼らの言葉を使うのであれば「マスゴミ」たる「マスコミ」の側にもあるはずだ。

◎「さるすべりまだまだあかくまなじりを決することもなし六十歳代」「妻と子は小さな闇を分かちおりわれひとり寝ぬる場所をのこして」
といった歌が頭をよぎる。歌人小高賢が亡くなった。講談社で取締役までつとめた鷲尾賢也にとっての思想的アイドルは丸山真男であったはずだ。平和とは「まなじりを決する」ことなく老いてゆけることである。そのためには「まだまだあかく」いたい。
http://mainichi.jp/select/news/20140212k0000m040019000c.html

◎「国内において、KoboKindleに勝っている点がたった一つだけあります。それは『パソコンで本が読める』ということ」という現状ではアマゾンに軍配が上がるというものだ。
http://news.ameba.jp/20140212-148/
もしキンドルアメリカ同様にパソコンでも本を読めるようにしたならば、アマゾンの圧勝であろう。

◎韓国で日本文化専門誌「BOON」が隔月刊で創刊された。
「創刊号にはアニメーションの巨匠、宮崎駿監督や韓国でも人気の推理小説作家、東野圭吾さんの作品世界、作家の樋口有介さんの作品などを紹介している」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/02/05/2014020501911.html

スマホ用ゲームアプリ「ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト」で返金騒動が起きていたのか!記事の中で「家庭用ゲーム系経営幹部」が次のように語っている。
「やはり、家庭用とソーシャルゲームのお客さんは違うということがはっきりした。ドラクエクラスの有名家庭用ゲームはアイテム課金システムを安易に組み込めませんね。(中略)『ドラクエ』のお客さんは、日本の家庭用ゲームのお客様そのもので、アイテム課金にそもそもなじみがないでしょうし、ドラクエのガチャでアイテム1個に対する課金が5000円越えは許しがたい設定なんでしょうね」
http://diamond.jp/articles/-/48566

◎「紀伊國屋書店 Kinoppy」にクラウド本棚機能が追加された。
http://www.forest.impress.co.jp/docs/news/20140212_634757.html
紀伊國屋書店電子書籍に前向きなのは良いが、バーンズ&ノーブルのようにならなければ良いのだけれど。私が紀伊國屋書店の経営者であれば電子書籍には手を出さないことだろう。

◎新潮社と徳間書店が合同フェアを開催している。「月刊コミック@バンチ」と「月刊コミックゼノン」による合同フェア「おもしろいのは、どっち!?」である。
http://natalie.mu/comic/news/109642
版元の垣根をこえたフェアはコミックだけではなく、他のジャンルでも積極的に企画すべきなのではないだろうか。

アルファロメオが日本市場においてLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)と呼ばれる性的少数派をターゲットにマーケティングを展開しているとは知らなかった。スポンサードしたイベントで配布したというブランドロゴ入りの赤いコンドームを見てみたい。
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/140212/cpd1402120504008-n1.htm

トヨタが「プリウス」190万台をリコールすることになった。絶好調が伝えられるトヨタだが、トヨタの名前を背負う豊田章社長だが、「豊田家の御曹司である豊田氏は周囲をイエスマンで固め、苦言を呈する骨のある役員は経営陣に一人もいなくなった」という見方もあるようだ。トヨタを正面から批判する気概をもった雑誌はないのだろうか。
http://biz-journal.jp/2014/02/post_4123.html

平凡社から刊行された「やくざ・右翼取材事始め」は、「日本で唯一の日本人の手によるやくざ通史」(松岡正剛)たる「やくざと日本人」の著者として知られる猪野健治の、いわば回顧録だ。編集者やジャーナリストを稼業とする者にとって必読の書である。
http://www.heibonsha.co.jp/book/b165235.html
猪野は野村秋介について本書で次のように書いている。
「徹底的に見事だったのは、やはりその最期だった。平成五(1993)年、自らが率いて横山やすしらも参加した『風の会』が週刊誌で揶揄されたことに抗議するため朝日新聞社役員応接室へ乗り込んだ野村さんは、居並ぶ役員の目前で銃弾三発をみずからに放ち自決した。まさに朝日新聞社と刺し違えたのだ。のちに野村さんと交際のあったやくざの親分が私に言ったのだが、よほどの覚悟がなければ拳銃三発は撃てるものでない。それも流れ弾で周囲の人間をまったく傷つけないよう細心の注意を払って諫死してみせたのだ」
私がソーリであったならば猪野健治NHKの経営委員に推薦したい。

◎インターネット広告の側からすれば現状に不満なのである。
「ナショナルクライアントをはじめとした多くの広告主、そのAEである広告会社がインターネット広告を媒体として認識しているとして、重点的に予算配分する理由が無いという仮説を私は持っています」
http://www.advertimes.com/adobata/article/20731/www.d2c-smile.com/201402121625/
雑誌広告も攻めの姿勢を顕わにする必要があるのではないか。むろん、情況を正面から受け止めない限り、攻めの姿勢に立つことはできないはずだ。

◎日販が発表による1月の雑誌・書籍売上動向は前年同月比1.7%減、その内訳は、雑誌1.4%増、書籍4.9%減。コミックが好調だったようだが、ともかく雑誌が5ヶ月ぶりにプラスに転じたのは嬉しい限りである。
http://ryutsuu.biz/sales/g021204.html

◎「電子書店パピレス」による電子専用コミック「ReComic」はコマやセリフが自動表示する「ストーリー体感型感じる電子コミック」として2013年6月にリリースされたが、ユーザーの反響をもとに大幅に改善し、「コミックシアター」として生まれ変わった。
http://renta.papy.co.jp/renta/sc/frm/page/topics/n_release.htm

◎この記事の筆者は私の記憶に間違いなければ、元中核派である。
http://www.asahi.com/and_M/interest/TKY201402100061.html?iref=com_fbox_u02

Amazon Publishingはアマゾンの出版子会社。
Amazon Publishingでは、作品ごとにKindleユーザーの閲覧スピードやレビュー評価を元に有望な個人作家を絞り出し、編集者が紙書籍として販売するかどうか最終選定するワークフローを採用しているという」
要するにビッグデータを活用するということだ。
http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=5235

◎「国境なき記者団」による報道の自由度ランキング。日本は順位を53位から59位に落としてしまった。韓国は57位。台湾は50位。
http://www.huffingtonpost.jp/2014/02/11/world-press-freedom-index-2014_n_4771424.html

                                                                                                                        • -

3)【深夜の誌人語録】

事をなし遂げるためには、諦めが悪ければ悪いほど良い。