【文徒】2014年(平成26)6月13日(第2巻109号・通巻311号)

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1)【記事】言論には言論の原則を放棄した朝日新聞
2)【記事】生き残る雑誌の条件
3)【記事】マンガ家もつらいよ
4)【本日の一行情報】
5)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2014.6.13 Shuppanjin

1)【記事】言論には言論の原則を放棄した朝日新聞

朝日新聞社は「週刊ポスト」に続き光文社の「FLASH」にも「訂正と謝罪の記事の掲載を求める文書を送った」そうだ。問題としている記事は6月24日号の「『東電フクシマ所員9割逃亡』朝日新聞1面スクープのウソ」である。
http://www.asahi.com/articles/ASG6B4TZ6G6BUUPI001.html
FLASH」のこの記事も「週刊ポスト」6月20日号に掲載した「朝日新聞『吉田調書スクープ』は『従軍慰安婦虚報』と同じだ」同様に門田隆将に依拠しているものだ。
http://www.news-postseven.com/archives/20140609_259996.html
門田を作家として好きか嫌いかと問われれば、私にとって門田は、どちらかといえば嫌いな部類に入るのだが、今回の件でいえば私は門田の言論に加担したい。門田は自身のブログで次のように書いている。
朝日新聞は、その福島第一の現場から『9割の人間が所長命令に違反して撤退した』と書いている。吉田さんが政府事故調の聴取に応じたいわゆる『吉田調書』にそう書いている、というのだ。
だが、根拠とされる『吉田調書』には、そんな部分はない。朝日で紹介された吉田調書の中の証言を素直に読めば、一糸乱れず福島第二に行ってくれた部下たちのことを、吉田氏は含羞をこめた彼独特の言いまわしで、むしろ『自慢』しているのである」
私が朝日新聞をジャーナリズムとして許し難く思うのは、紙面を通じて門田に反論するのではなく、「法的措置」をチラつかせながら、いきなり「謝罪と訂正」を求めてきたところである。朝日新聞はハナから「言論には言論」の原則を放棄してしまっているのだ。
http://www.kadotaryusho.com/blog/index.html
ちなみに門田と私は同時期に同じ大学にいたんだよなあ。

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2)【記事】生き残る雑誌の条件

アメリカのインテリア雑誌「Domino」が「紙の雑誌+ECサイト」で復活を果たした。「ダイヤモンドオンライン」が「消費インサイド」で取り上げている。
「…『Domino』が昨秋、季刊誌に装いを変えて復刊した。全132ページ中、広告はわずか4ページほど。その代わりとなる収入の柱は、本誌と連動するECサイトだ。本誌で紹介したものをサイトで直接買ってもらう。この新たなビジネスモデルは、未来の雑誌のあり方を示唆するものなのだろうか?」
http://diamond.jp/articles/-/54498
雑誌が生き残るためには三つの「C」をウエブと連動させることが大切だと私も考えている。三つの「C」とは「コンテンツ」「コミュニティ」「コマース」。しかし、だからといって「Domino」のように広告を切り捨てる必要はまるでないのである。雑誌は広告も収入として確保すべきだし、更にいえば、三つの「C」をウエブのみならず、リアル(=イベント)と連動させることも重要である。雑誌をブランドとして多角化・多面化し(バーチャルとリアルを繋ぐのが紙の雑誌であるという位置づけだ)、重層的なビジネスモデルを構築して、初めて雑誌は生き残れるのではあるまいか。

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3)【記事】マンガ家もつらいよ

講談社の「別冊少年マガジン」で「新世界より」の連載を終了したばかりのマンガ家・及川徹が投稿したツイートが話題になっている。マンガ家はつらいよ、か。否、マンガ家もつらいよ、だな。「新世界より」は貴志祐介の同名小説を原作としている。
「担当さんに原稿料上げて下さい、描けば描くほど金が無くなっていきますって泣きついたら、理解したくないってバッサリ切られてしまった。悲しいわぁノ今日は泣きながら徹夜で原稿がんばろうノ」
マンガは一人で描けない。アシスタントを使わなければ、雑誌での連載は無理なのである。
「原稿料について編集長と話した結果、交渉の余地は無い確定です。アシスタント代を減らし、高品質を諦めるが正解! 初連載を目指す方の参考に、新世界よりレベルの仕上げにはページ毎印税除いて5〜6000円の赤字でした。 若い編集は金の話に疎いので、班長クラスにちゃんと伺いましょう!」
マンガ家は雑誌では儲からず、コミックスで儲けることになる。
「宣伝!今日発売の別冊マガジンにて新世界より最終回! 最終回はなんとカラー12p!! 来月単行本最終巻が発売されますが、カラーはグレーになってしまいますので、単行本派の方もとりあえず今月号を買って来月を待つなど、グレイトな楽しみ方もご検討頂ければ及川 徹感謝の極みでございます」
https://twitter.com/oikawatoru
例外はあるにせよ、マンガ家は小説家より恵まれていて、小説家はノンフィクション作家より恵まれているとは言えそうである。

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4)【本日の一行情報】

電通は、広島テレビが行う日本初の地上波放送と連動したクラウドファンディング・プラットフォーム事業「てれび de ふぁんでぃんぐ ひろしま」を支援することになった。_「てれび de ふぁんでぃんぐ ひろしま」はモール型クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING(グリーンファンディング)」内に開設され、同サイトを運営するワンモアとも連携し、クラウドファンディングを活用した番組やイベント、楽曲などさまざまなコンテンツを視聴者と一緒に育てていく事業に乗り出す。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/0611-003750.html

電通デジタル・ホールディングスは電通デジタル・ファンドを通じてIT総合ニュースサイト「RBB TODAY」などを展開するイードに出資した。
http://www.iid.co.jp/news/detail/2014/0610.html

◎元講談社経営総合研究所副代表の伊藤友八郎が亡くなった。喪主をつとめた双子の姉妹の長女は銀座の「クラブ由美」のママでもある。講談社的に言えば、奈良原敦子第4編集局長の高校の同級生である。
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/m20140611ddlk13060259000c.html

◎ワールドカップを仕切るFIFAのメディアパートナーである日本経済新聞がブラジル大会の専用アプリをリリースした。
http://news.mynavi.jp/news/2014/06/10/373/

「ムー」(学研)の三上丈晴編集長は「筑波大学素粒子理論物理学の研究室にいた経験もあるほどの理系編集者」なんだそうだ。
http://piyosokublog.blog.fc2.com/blog-entry-605.html

安倍晋三首相が公明党太田昭宏国土交通相と会食したんだって。
http://www.asahi.com/articles/ASG6B6GTYG6BUTFK00M.html
その昔、竹中労とも「聞書・庶民列伝 牧口常三郎とその時代」に収められているけれど対談しているんだよなあ。こんな感じ。
http://2006530.blog69.fc2.com/blog-entry-529.html
太田に昔の面影はない。

池井戸潤半沢直樹シリーズ最新作「銀翼のイカロス」が8月1日にダイヤモンド社から刊行される。「ロスジェネの逆襲」はミリオンとなったが、「銀翼のイカロス」もスケール感からいって、ミリオンを記録しそうだ。誰が読んだってJALがモデルだってわかるし、話題性抜群だもの。
http://www.47news.jp/topics/entertainment/oricon/culture/147887.html

囲碁将棋チャンネルジュピターテレコム(J:COM)、日本将棋連盟は「3月のライオン」(白泉社)とコラボして、小・中学生を対象に「第3回 J:COM3月のライオン子ども将棋大会」を開催する。
http://release.itmedia.co.jp/release/lifestyle/2014/06/10/11db1f33856b02ba31f7356e0ae4ebc7.html

◎栃木女児殺害事件で逮捕された勝又拓也容疑者のツイッターが話題になっている。
http://news.livedoor.com/article/detail/8925177/
「実装はよ!!スク水+ランドセル、この組み合わせか出来るなら明日から本気を出す!!」は昨年の7月30日に投稿されたツイートである。
https://twitter.com/takuyaToT

niconicoも不正ログインされた。
「調査の結果、niconicoのサービス上におけるメールアドレスやパスワード等の情報流出ではありませんでした。_各ユーザーが他サービスで利用されているメールアドレスやパスワード等と同じものをniconicoでも使用されており、その情報を流用された可能性が高いと考えられます」
http://notice.nicovideo.jp/ni046768.html
ネットに一切関わりを持たなければ、ユーザーは不正ログインに遭遇しないのだろうが、ユーザーは一度手にしてしまった「快楽」を手放すことはできないんだよね。

ANAの機長がJALの「Facebook」に、「倒産して税金でやってる会社…調子乗ってんじゃねえよ!」と投稿したそうだ。
http://getnews.jp/archives/595789
この機長の発言は「正論」のような気がする。

深田恭子が主演するフジテレビのスペシャルドラマ「キャビンアテンダント(仮)」に、小学館の女性ファッション誌「Oggi」でモデルとして活躍する松島花佐々木希キャビンアテンダント(CA)役で出演する。
http://www.47news.jp/topics/entertainment/oricon/culture/147882.html

◎それは怒りますよ。イースト・コミュニケーションズ社は事の重大さを認識しているとは「Free&Easy」7月号に掲載された「お詫び」を読む限り思えない。
イースト・コミュニケーションズ社(東京)が発行する男性向けファッション雑誌「フリー&イージー」6月号に、作家で画家の赤瀬川原平氏らの名前で架空の記事が掲載された問題で、日本文芸家協会(篠弘理事長)は10日、同社への抗議声明を出すことや、著作者人格権に基づく法的措置の可能性について検討する方針を明らかにした」
イースト・コミュニケーションズは「未許諾および不適切な引用」としてしか認識していないが、「著作者人格権の激しい侵害」にほかならない。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201406/2014061000872&g=soc
イースト・コミュニケーションズは廃業すべきだとさえ私は思っている。むろん、「Free&Easy」は広告媒体として失格である。

◎「Domani」(小学館)の益田史子副編集長は「イメルダと呼ばれるぐらい靴が好き」なのだそうだ。
http://kirei.mainichi.jp/miura/news/20140611dog00m100053000c.html

アメリカでクリントン前米国務長官の回想録「困難な選択」が発売されたが、予約だけで100万部を突破しているというから凄い。
http://www.47news.jp/CN/201406/CN2014061101000902.html

◎アマゾンが今度はワーナー・ブラザースを締め上げているのか!「ウォール・ストリート・ジャーナル」はこう書いている。
「アマゾンは今回、ワーナー・ブラザーズの『レゴ・ムービー』『トランセンデンス』など一部映画ディスクの予約受け付けを停止している。この手法は米出版大手アシェット・ブック・グループに対して使ったものと似ている」
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702304826804579617843140594498
アマゾンが日本でも、もっと力をつければ同じようなことが起きるのだろう。

学研教育出版は、大学受験生向けオンライン学習サービス「大学合格スイッチ」で、「センター攻略ゼミ 国語」「センター攻略ゼミ 英語」の提供を開始した。価格はともに12960円(税込)。
http://gakken-ep.co.jp/news/201406/20140610.html

◎アプリ「週刊Dモーニング」に6月13日創刊の「ハツキス」から注目作の一部が読める「週刊Dモーニングとじこみ別冊 「ハツキス」お試し版」が同梱されている。
http://morning.moae.jp/news/1263

◎建物が国登録有形文化財でもある熊本市の長崎次郎書店が営業を再開する。創業140年の老舗だ。
http://mainichi.jp/area/kumamoto/news/m20140611ddlk43040504000c.html
まさに美しい書店である。
http://bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.do?heritageId=137761
http://yumeko2.otemo-yan.net/e377997.html
もともとは長崎次郎書店の支店で、親戚でもある長崎書店が運営する。建物の管理と2階のカフェは長崎次郎書店が担う。こういうニュースは本当に嬉しい。

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5)【深夜の誌人語録】

人生において喜劇の主人公であることを誇れないのであれば、人生は悲劇的にならざるを得ないはずである。