【文徒】2014年(平成26)10月20日(第2巻197号・通巻399号)

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1)【記事】「創」の原稿料未払い問題
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2014.10.20 Shuppanjin

1)【記事】「創」の原稿料未払い問題

「創」柳美里に原稿料を払っていなかったのか!
「『創』の連載エッセイ「今日のできごと」が休載されています。
今月発売号の編集後記に、休載の理由が一言も触れられていなかったので、ここに書きます。
現状では、柳美里が「落とした」のだと誤解されるから――。
実は、もう何年も稿料が支払われていないのです。
先月、意を決して、「稿料未払い分を計算して、振り込んでください。全額振り込まれるまで、次の原稿を書くことはできません」と篠田博之編集長にメールしました」
http://blog.goo.ne.jp/yu_miri/e/5d4d7a14d483a42ec4d3ec53a1f02cc5
http://blog.goo.ne.jp/yu_miri/e/c47bf56d87eff56a64dc6635e9cb1c81
http://blog.goo.ne.jp/yu_miri/e/70f7e961c1c5a8674cb2d77a04cee0bd
城戸朱理の10月18日付のブログによれば「柳さんは昨年から、支払いを求めるメールを送っていたが、納得できる回答がないままだったため、今回の告発に至ったようだ」とあるから、遂に堪忍袋の緒が切れたということなのだろう。
http://kidoshuri.seesaa.net/
「非」は「創」=篠田博之編集長にあることは明白である。篠田自身も認めている。
柳美里さんがご自身のブログに『創』の原稿料支払いが滞っていることを指摘する記述をしています。そこに書かれた柳さんの主張は正当です。『創』はこの何年か、赤字が累積して厳しい状況が続き、制作費がまかなえなくなっています。その雑誌の赤字を個人で補填してきたわけですが、私はもともと会社からは報酬を得ていないので、補填するにも限界があり、いろいろな人に迷惑をかけるようになってしまいました」
http://www.tsukuru.co.jp/tsukuru_blog/2014/10/post-190.html
「東京ブレイキングニュース」で久田将義は次のように書いている。
<去年、「原稿を書いてくれないか」と言われた時、「『君の著書「関東連合」の宣伝も兼ねて書いてよ』と付け加えた。「ああ、原稿料払わない気なんだな」とすぐ悟ったが、OKしてしまった。数年前から原稿料払わないという噂は耳にしていたし、「そういうキャラ」なんだなと一人で納得してしまっていたからだ。僕の場合は、悪い意味で「物分りが良すぎた」のだろう>
http://n-knuckles.com/serialization/hisada/news001756.html
岩本太郎も言いたいことが山ほどあるらしい。
「『読んだ感想は「結局彼はこうなんだよなあ、今でも」。
 怒るよりも情けなくて。
 だってフリーランスの物書きとして歩み出したばかりの私が、30代のほぼ10年間、メインステージとして結構自由に書かせてもらった一方で、当時の内情もよく見てきたから、『あの頃あの雑誌の舞台裏はどうだったから』はよく知っているし、そこから『あの雑誌がどうして凋落して行ったか』もよくわかるのだ」
http://air.ap.teacup.com/taroimo/
荒井カオルはツイッター「創」を「犯罪者の人権を全力で守りつつ、末端労働者にタダ働きさせるハイパー人権派雑誌」と評している。岩本同様に自らの経験がそう言わしめているのだろう。こんな逸話もツイートしている。
「2002年8月、国立競技場で格闘技の大祭典「Dynamite」が開かれた。イベント終了後、ターザン山本鈴木邦男さんに新宿へ来てもらい、真夜中まで格闘技対談を収録した。収録後、私は午前2時に会社へ帰り、徹夜で書いてお昼までに原稿を完成させた」
「対談を収録するための真夜中の個室なんて居酒屋くらいしかなく、新宿3丁目の東方見聞録を予約し、もちろん飲食代は社名で領収書を切った。国立競技場から新宿への移動、対談終了から自宅までのタクシー代については、領収書を送っていただき精算という約束にした」
「格闘技対談は盛り上がった。編集者になって3年目、オレはこういう仕事をしたかったんだと心から喜び、掲載誌を日本中の友人知人に送りまくった。それから数カ月後、さいたまアリーナで対談者のターザン山本にバッタリ会った。挨拶をすると開口一番、氏がキレた」
「PRIDEの観戦会場でバッタリ会ったターザン山本に対談原稿収録の御礼を言うと、氏がキレた。「僕はタクシー代の領収書をとっくに郵送した。なのに経費も謝礼も振り込まれてこない。シノダさんに必ず言っておけ! ギャラがまだ振り込まれてないんだよぉぉ!」
「せっかく徹夜しておもしろい対談を雑誌に載せられたのに、ギャラが振り込まれてねえと抗議され、完全にしょげた。翌日編集長にターザン山本の抗議を伝えると「えっ? ターザン山本とどっかで会ったの?」とすっとぼけられた。ともかくカネを払ってくれとお願いした」
https://twitter.com/araikaoru
柳同様に「創」に連載を持つ香山リカも連続ツイートしている。
「雑誌『創』の原稿料未払いが話題だ。まず、私も連載者で、柳美里さんの言い分を支持すると言っておきたい。でもそれと『創』の存在意義は別の話。とくに発言の場が縮小してるリベラル派の私には貴重なメディア。宮崎勤本、黒子のバスケ脅迫犯本などここじゃなければできなかった仕事も多数」
「もちろん経営能力に大きな問題があったのは事実だが、だからといって『売り上げ悪く原稿料払えないほど逼迫してるのはもう社会からニーズがないという意味なのだから、そんな雑誌は不必要なのだ』というのは、それこそ執筆陣の多くが批判してる新自由主義史観なんじゃなかろか」
「それに、ここぞとばかりに「昔『創』で仕事してこんなイヤな目にあった」みたいな思い出話(?)を語り出す人、篠田編集長を極悪人キャラにしたがる人、なんやねん。これじゃ「知り合いの朝日関係者がすごく生意気」と個人の印象を持ち出して朝日叩きしてる人たちと同じだ」
「いっそのこと『創』はしばらくは、資本主義システムの埒外の雑誌と宣言し、執筆希望者が審査受けて掲載料払ってスペースをもらう雑誌、とかにしてもいいんじゃないかな。で、売り上げが出たら配当もらえるようにして。それでも書きたい、という良質の書き手はいると思う」
「もちろん「原稿料未払いは困る」と執筆者が訴えるのは正当なことだけど、そこから『創』そのものや編集長を批判するのが『正義』となってる今の流れは違うなーと思ったので、ひとこと言いました。あ、だからといって私の未払いチャラにするわけじゃないですよ〜!(笑)おしまい」
https://twitter.com/rkayama
次のツイートは「対レイシスト行動集団C.R.A.C」の野間易通によるもの。野間にとって「創」はクオリティの低いメディアだという。
「弱小のオルタナティヴ・メディアは資金が大変だから……的な同情ツイートも見たけど、『創』はそもそもクオリティ低いのでそういう問題でもない」
https://twitter.com/kdxn/status/522623965915652097
噂の真相」に籍を置いていたこともある西岡研介のツイートも紹介しておこう。
「書き手に原稿料も払わんで平気でおれるような腐れ雑誌の編集長が、や。他のメディアのこと『批評』するんやから…お笑いやで…」
https://twitter.com/biriksk/status/522585690760949761
「僕の見た『大日本帝国』」の西牟田靖はブログ「表も裏も見渡したい」で自らの離婚経験と重ね合わせて次のように書いている。
「自分のことを棚に上げて言うのは気が引けるが、篠田さん、あなた甘い。甘すぎる!!! 柳美里さんの言うように篠田さんがギャラや経費を払わないことで、書き手の生活は圧迫されるのだ。離婚という『罰』を受け、再出発をはかっている僕のように、篠田さんも逃げずに『罰』を受け容れて、再出発をはかってほしい。タコが自分の足を食うようなやり方ではない、別の方法で仕切り直しをはかって欲しい」
http://nishimuta62.blog114.fc2.com/blog-entry-1558.html
菊池雅志のツイートによればウエブでは原稿料0円ということもあるようだ。
https://twitter.com/MasashiKikuchi/status/522533109955559424
池田信夫は、自分もせりか書房から1円も印税を貰っていないとツイート。池田は、せりか書房で「生命とはなにか…バクテリアから惑星まで」の翻訳を手がけている。
「神保町界隈の弱小出版社にはよくある話。私はせりか書房から、いまだに印税を1円ももらっていない」
https://twitter.com/ikedanob/status/522937268450103296
篠田は「創」編集部が主催の一角を担う、10月15日に開かれたシンポジウム「朝日バッシングとジャーナリズム の危機」の司会をつとめている。
http://www.labornetjp.org/news/2014/1015y

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2)【本日の一行情報】

◎読売新聞は「慰安婦問題」を商売に利用することは止めたようである。朝日新聞は「第67回新聞大会」を報じた記事のなかで次のように書く。
「新聞協会会長の白石興二郎読売新聞グループ本社社長は、新聞が朝日を批判する状況は『きわめて異例』としながらも、『慰安婦問題は国際的な影響が大きいことから、我々も紙面を通じて発信しようと考えている』とした。一方、読売の販売現場の一部で、朝日の慰安婦報道の特集直後、『千載一遇の好機』と檄(げき)を飛ばしていたとし、『報告を受け、即刻とりやめさせた』と明かした」
http://www.asahi.com/articles/ASGBH4Q9PGBHUTIL01L.html
大会では「信頼回復」をテーマに新聞5社の社長による座談会が開催されたが、朝日新聞は壇上ではなく客席から発言した産経新聞社長の発言は無視している。共同通信は次のように書いている。
産経新聞社の 熊坂隆光 (くまさか・たかみつ) 社長は会場から発言。「今日も朝日新聞社木村伊量 (きむら・ただかず) 社長は『吉田調書』のことだけで、慰安婦問題の『吉田証言』には具体的に触れていない。朝日の姿勢に疑問を感じざるを得ない」と述べた」
http://www.47news.jp/47topics/e/258398.php
朝日新聞産経新聞など歯牙にもかけていないということなのだろうか。

◎書きおろし文春文庫「壇蜜日記」の刊行を記念して紀伊國屋書店でサイン本お渡し会&握手会を実施。壇蜜は「よくも悪くも私生活の切り売り」と発言したようだ。この人、頭が良いよなあ。
http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/23197

◎昨年10月に土石流にのまれた伊豆・大島町中心部にあたる元町地区の成瀬書店は自宅は失ったものの店は被災して三日後に再開したという。産経新聞は次のように書いている。
「土石流は住み慣れたわが家だけでなく、なじみの客も奪った。高齢化と人口減が進む伊豆大島で商売を続けることには不安もある。それでも『閉店する店が増えれば町は寂れていく。活気を失わないためにも、できる限り店を開け続ける』。それが生まれ育った故郷への恩返しでもある」
http://www.sankei.com/life/news/141016/lif1410160002-n1.html

セルシスは、小学館が刊行したデジタルまんが制作入門書「めざせ!まんが家 PC でまんがを描こう!」にまんが制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT PRO」の6 か月版ライセンスを提供した。定価は1100円。
http://www.celsys.co.jp/pdf/company/press/2014/Celsys_News_2014_10_15.pdf

◎編集者を稼業とするのであれば、マーティン・スコセッシ監督のドキュメンタリー映画「ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス50年の挑戦」は見ておきたい。
http://www.cinemacafe.net/article/2014/10/15/26609.html

KADOKAWAは、10月15日にBL(ボーイズラブ)専門のマンガに特化したウェブマガジン「COMICフルール」を無料で創刊した。
http://animeanime.jp/article/2014/10/16/20512.html
なんと「美術手帖」12月号がBLを特集する!
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1410/16/news086.html

◎調査会社ICT総研は15日、電子書籍市場に関する調査によれば、最も利用率が高い電子書店はかったのは楽天コボで、6・6%。アマゾンのキンドルは6・5%だった。電子書店別の満足度では、eBookJapanがトップとなった。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1410/15/news109.html

◎「週刊文春」は乃木坂46松村沙友理集英社の編集者との密会スクープ第2弾を用意していた。「記事の真実性を裏付けるため、デート当日に撮影した動画と、飲食店店内での会話を記録したメモの一部を、『週刊文春デジタル』にて公開」している。「週刊文春」はネットの使い方が上手い。
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/4452
http://nogizaka46matomenoma.blog.jp/archives/14963700.html

KDDIは有力インターネットサービス企業11社と国内最大級の月間利用者数(4,100万以上) を誇る新たな連合体「Syn.alliance (シンドットアライアンス)」を設立した。AppBroadCast、ジョルテ、ナターシャ、nanapi、VASILY、ビットセラー、ルクサには出資する。他にアイスタイル、ウェザーニューズナビタイムジャパンはてなが加わっている。10月16日より、「Syn.alliance」メンバーが提供する13のサービス (アプリ・webサービス含む) に共通サイドメニューを設け、各サービス間のシームレスな行き来を実現する「Syn.menu (シンドットメニュー)」と、「Syn.menu」内に表示される新広告メニュー「Syn.ad (シンドットアド)」の提供を開始した。
http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2014/10/16/700.html
http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2014/10/16/701.html
このプロジェクトを進めた森岡康一はヤフー、Facebookを経て、昨年10月にKDDIに移籍した。広告媒体としても可能性は大だ。
http://k-tai.impress.co.jp/docs/interview/20141016_671553.html

祥伝社の「Boon」復刊が大成功。9日に発売された。「Boon 2014 秋冬号」は、週間1.0万部を売り上げ10/20付オリコン週間“本”ランキングのファッション部門で首位、BOOK(総合)部門でも11位。
http://www.asahi.com/and_w/interest/entertainment/CORI2043342.html?iref=andwtop_entalist

◎大阪屋に楽天が14億円、大日本印刷KADOKAWA講談社集英社小学館がそれぞれ4億6000万円を出資。楽天筆頭株主となる。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ1603K_W4A011C1TJ2000/
それにしても時間がかかった。出版業界に欠けているのはスピードであることを大阪屋問題は教えてくれる。

武田俊の連載が始まった。頑張って欲しい「才能」である。
http://dotplace.jp/archives/12868

リクルート上場。ブルームバーグは、こう書いている。
リクルートの公開価格ベースでの時価総額1兆7800億円は今年のIPO中最大で、昨年7月のサントリー食品インターナショナルや2010年4月の第一生命保険も上回る規模。16日終値ベースでの時価総額日本電産オリエンタルランドを上回り、ソニー伊藤忠商事を下回る」
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NCRAR36JTSEH01.html

青山商事は、「ザ・スーツカンパニー」で、世界文化社の「Begin」とのコラボ企画として、イタリアの高級生地「カルロ・バルベラ」を使用したスーツを、全国の「ザ・スーツカンパニー」および「ザ・スーツカンパニーオンラインショップで、10月16日(木)より発売している。
http://www.47news.jp/topics/prwire/2014/10/258387.html

小学館のマンガ誌「コロコロアニキ」の評判が良いぞ。
http://matome.naver.jp/odai/2141342877970056901

◎広告賞なのだが、これだけネットでも話題になっているにもかかわらず、肝心の広告については、殆んど報道されていない。
http://news.mynavi.jp/news/2014/10/17/152/
http://www.cinemacafe.net/article/2014/10/16/26663.html
http://www.asahi.com/and_w/interest/entertainment/CORI2043382.html
http://woman.infoseek.co.jp/news/entertainment/hwchannel_20141016_3328203
http://mainichi.jp/sponichi/news/20141017spn00m200013000c.html
http://okmusic.jp/#!/news/56773
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20141016-OHT1T50347.html
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2014101601001662.html
http://mantan-web.jp/2014/10/16/20141016dog00m200057000c.html
http://newslounge.net/archives/148090
http://irorio.jp/entame/20141017/170326/
http://www.daily.co.jp/newsflash/gossip/2014/10/16/0007423171.shtml
広告に焦点を当てた記事は「アドタイ」ぐらいという現実が悲しい。
http://www.advertimes.com/20141017/article172793/
投票権を行使したアドモニターにしても、大賞より綾野剛のほうが印象に残った模様である。
http://enfant.living.jp/enfant_mate/mateblog1/other_2014/mate_s_yoshida/188621/

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3)【深夜の誌人語録】

歩みを止めず続けることは才能である。