【文徒】2014年(平成26)12月24日(第2巻241号・通巻443号)

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1)【記事】「朝日新聞社慰安婦報道に関する第三者委員会の報告書」について
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「朝日新聞社慰安婦報道に関する第三者委員会の報告書」について

朝日新聞社慰安婦報道に関する第三者委員会の報告書」が発表された。
http://www.asahi.com/shimbun/3rd/2014122201.pdf
8月の検証記事で謝罪をしないことを決定したのは、木村伊量・前社長ら経営幹部であり、謝罪しなかったことを批判した池上彰のコラムを掲載しなかったのも木村伊量・前社長が難色を示し、これに対して編集部門が抗しきれなかったからだ。
「今回の判断の多くは、編集に経営が過剰に介入し、読者のための紙面ではなく、朝日新聞の防衛のために紙面を作ったことに主な原因がある」
検証記事は「報道」ではなく、「政治」であったということである。何しろ「広報」までが関与していたのだ。
「経営幹部において、この検証は、日常扱う記事とは異なり、多分に危機管理に属する案件であるとし、経営幹部がその内容に関与することとして、広報担当執行役員の喜園尚史にも検証を行う方針が知らされた」
福島第一原発の「吉田調書」報道でも、一部を取り上げて、それを全体化し、本来、取り上げるべき「全体」を矮小化する手口を使っている。要するに経営も、現場も「政治」が大好きなのである。毎日新聞小川一ツイッターでの次のような発言は示唆的である。
「昨日の対談で江川紹子さんと全く同意見だったのは、朝日の失敗は特捜検察の失敗とそっくりだということ。過剰な正義感と独善。それは朝日だけでなく新聞全体の問題でもある。自省する」
https://twitter.com/pinpinkiri/status/547157553734377473
委員をつとめた保阪正康が次のように述べているのが印象に残った。
「今回の慰安婦問題は、その管理に軍がどういう形で関与したか、慰安婦募集に強制があったかなかったか、さらにそこに植民地政策に伴う暴力性があったか否かなどの検証であったが、あえて言えば一連の慰安婦問題は全体の枠組みの中の一部でしかない。一部の事実を取り上げて全体化する、いわば一面突破全面展開の論争でしかなく、私は委員の一人として極めて冷めた目で検証にあたったことを隠すつもりはない」
「委員会のこの検証は、『軍隊と性』というテーマを具体的に確かめていくわけではなく、いわば1980年代、90年代の朝日報道を検証するだけであった。そのことは、戦後日本の『戦争報道』は、ある部分に執拗にこだわり、それが国際社会の作り出している潮流と結びついていたことを教えている。同時に、朝日報道への批判の中に、むしろ歴史修正主義の息づかいを感じて、不快であったことを付記しておきたい。
慰安婦問題は、もっと根源的、多角的に考えることにより、日本社会の歴史検証能力は国際社会の中に独自の立場を保ち得るはずである」
本来であれば検証と謝罪を8月の紙面で済まし、保阪の指摘するような視点から「慰安婦問題」を「政治」から遠く離れて徹底的に取材する連載を開始すべきだったはずだ。来年はちょうど戦後70年。朝日新聞は厳しい自己批判が求められることになっても、今一度、慰安婦問題に正面から向き合うべきだ。その結果、産経・読売を激怒させようとも、韓国を激怒させようとも、である。
付記。江川紹子ツイッターで次のような指摘をしている。
朝日新聞慰安婦問題についての第三者委員会の報告書。池上コラムの事実経過が、杉浦元編担らの説明と異なる。何らかの証拠や証言があるなら、その旨を書くだろうに、報告書には事実認定が変わった根拠について何の記載もない。会見で記者が質問しても答えなかったようだ。ほわ〜い?釈然としない」
https://twitter.com/amneris84/status/547046884477394944
これも朝日新聞の「政治」を反映してのことだろう。

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2)【本日の一行情報】

◎テレビ番組で言い放ったこのホリエモンの「楽天の箱は開けづらい」という指摘、当たっているよ。アマゾンと楽天の決定的な差は何かといえば、楽天はアマゾンほどユーザーファーストに徹しきれないところだ。
「これ、笑いごとじゃなくて。(楽天は)ガムテープでぐるぐる巻きになってくるでしょ。あれ、開けるの大変じゃない。アマゾンの箱って大体ビリビリって開けられるから。最近ZOZO TOWNもそうなったの」
http://news.livedoor.com/article/detail/9598260/

◎LINE乗っ取り詐欺の5月〜10月の被害総額が1億円を超したという。それだけLINEが人々の生活に浸透してしまったということである。
http://www.asahi.com/articles/ASGDC419BGDCTIPE00C.html

石原慎太郎の「エゴの力」(幻冬舎新書)が「10月末の発売で、現在3刷3万3000部」だそうだ。「完全な遊戯」のような危ない小説は好きだが、この手の石原本は苦手である。
http://www.sankei.com/life/news/141220/lif1412200013-n1.html

ディスカヴァー・トゥエンティワンライトノベルに参入する。キャラクター小説レーベル「NOVELiDOL(ノベライドル)」を5月に創刊するという。何と!アイドルで作家という異色設定のキャラクター(=ノベライドル)の「文野はじめ」が実際に作品を執筆し、書店で書籍を発売する、というレーベルだそうだ。
このようにして「作者の死」がやって来ようとは思いもしなかった。ロラン・バルトが生きていたら、何と言ったろうか。
http://www.d21.co.jp/company/press_release/20141219-1

文藝春秋から森欣史の「相続百人一首」が刊行される。
http://ameblo.jp/souzoku100/
主婦の友社の「親の家を片づける」シリーズも好調なんだよね。
http://shufunotomo.hondana.jp/book/b141961.html
http://shufunotomo.hondana.jp/book/b165250.html
http://shufunotomo.hondana.jp/book/b166555.html
http://shufunotomo.hondana.jp/book/b182561.html

◎岸田一郎の女性スキャンダル問題は、ネットからなかなか消えない。「DMM NEWS」は「東証1部上場企業の関連グループ役員という肩書もある」「雑誌『MADURO』発行人のO氏」の存在を強調している。Oがセブン&アイ出版大久保清彦であることは誰の眼にも明らかなことである。
http://dmm-news.com/article/904025/

◎「LARME」(徳間書店)の中郡暖菜の映像を発見。
https://www.youtube.com/watch?v=7HyF6fhK2vE

◎「今でも雑誌好きな人々にdマガジンはかなりのオススメのサービス」というタイトルが気になる。今や雑誌好きは珍しい存在ということか。
http://blogos.com/article/101743/

◎「映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!」が公開されたが、興収50億円突破確実のスタートを切った。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141220-00000001-piaeiga-movi

◎ハヤカワSF大賞を「ニルヤの島」で獲得した柴田勝家!その風貌からして戦国武将だ。話題になりそうな才能だ。
http://www.yomiuri.co.jp/culture/news/20141209-OYT8T50240.html

ソニーのテレビ「BRAVIA」はツイッター連携機能が売りだ。そこまでツイッターは無視できないソーシャルメディァとなったということだろう。
http://www.soccer-king.jp/sk_column/article/260011.html
雑誌も、書籍もツイッターをどう使いこなすかが問われているのだ。ありきたりのツイートでは埋没してしまうということも忘れずに!

山本一郎の次のような指摘は当たっている。
「…老人の集まりでまるでお通夜のような某社編集部忘年会と、若手ライターが食事に群がり人を掻き分けるようにして移動し大声でないと声が通らない活気に満ちたネット系メディア忘年会のコントラストが目に沁みました」
しかし、ネット系メディアのライターの待遇は、出版社に比べてどうなのだろうか。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20141221-00041685/

KADOKAWAは、無料小説投稿サイト「小説家になろう」の完全ガイドブック「この『小説家になろう』がアツイ!」を刊行した。
http://www.j-cast.com/trend/2014/12/21223744.html
小説の投稿サイトには様々な出版社が群がっている。

◎「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の岩崎夏海も、「永遠の0」「殉愛」の百田尚樹もともに放送作家の出身である。「東洋経済オンライン」で岩崎が「ベストセラーの副作用」を公開している。
「取材記者に対しては、面白い見出しになりそうな、なるべく突拍子もないことを言った方がいい」
http://toyokeizai.net/articles/-/56117
補足するのであれば時代の主流派イデオロギーに依拠したうえでエッジを効かせた発言をしたほうが良いということである。

◎「ONE PIECE」が市川猿之助によって「スーパー歌舞伎」化され、新橋演舞場で上演されることになった。集英社の目の付けどころは、さすがというべきだろう。
http://www.oricon.co.jp/news/2046183/full/

◎どんなに売れても百田尚樹は小説家として二流だし、盛田隆二とのツイッターでのやりとりをみていると、文学的センスも永遠に0だと私などは思ってしまう。
http://togetter.com/li/759863

電通ゼンリンデータコムは、「全国避難所データベース」の提供を開始。電通は企画および仕様策定の役割を担い、ゼンリンデータコムは運用および営業窓口となる。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/1222-003907.html

電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」は、カナダのデジタルエージェンシー「The SPOKE Agency Ltd」の株式100%を取得することで合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/1222-003908.html

主婦の友社は「乃木坂46 白石麻衣1stフォトブック MAI STYLE」の刊行を記念して、「Ray」女性読者限定の出版記念イベント「まいやんと一緒に女子会!」を開催する。白石は「Ray」の専属モデルだ。
http://ray.shufunotomo.co.jp/news/?p=11847

◎こういうことがあるのか。作家・翻訳家の風見潤が亡くなっていたらしい。北原尚彦が次のようにツイートしている。
「翻訳家・作家の風見潤さんが、お亡くなりになっていることが『ほぼ確実』であると判明しましたのでお知らせします。階段から落ちて亡くなられたらしいです。ただ、結構月日が経ってからの調査で判明したことのため『絶対』ではありません」
「発端は一年半前、某版元が風見潤さんに本を送ったら『その方はもう亡くなっており、今はもう別な人が住んでいるから以後送らないで欲しい』と大家さんから来た連絡です。それを北原が編集氏から聞いたので、同じく青学推理研OBの日暮雅通氏に相談しました」
日暮雅通さんと、それとは別に戸川安宣さんがそれぞれ調査を開始。詳細は略しますが風見氏事故死の件が発覚。身寄りがなかったため近所の方達で葬儀を出したとか。但し日暮氏も戸川氏も、親族でも弁護士でもないため、最終的な公的確認が取れていません」
http://togetter.com/li/759769
ここに出て来る「某版元」の「編集氏」は1年半前の時点で、動かなかったということだ。

NHKが報道した東京駅で発生したSuica発売騒動の映像で、涙を流す女性は、報道番組の「常連出演者」であるようだ。「やらせ」の可能性も否定できまい。
http://hamusoku.com/archives/8652179.html
TV局のスタッフがエキストラを仕込むことで日常的に行っている「やらせ行為」の実例集である。
http://netgeek.biz/archives/16874

◎学研グループのブックビヨンドは、キングジムから、2015年2月1日付けで電子書籍出版・書店開設サービス「wook(ウック)」の運営事業を譲り受けることになった。「wook」は、「誰でも簡単に電子書店を開設できる」をコンセプトにした電子書籍・出版ソリューション。誰でもインターネット上に独自の電子書店を低コストで開設でき、簡単な操作で電子書籍の作成や販売が可能となる。
http://bookbeyond.co.jp/news/201412/20141219_2.html

◎「電撃文庫」(KADOKAWA)の「ソードアート・オンライン」シリーズ(著/川原 礫、イラスト/abec)は、中国、台湾、韓国、タイ、アメリカ、カナダ、イギリスでも刊行されていて、日本を含めた全世界累計発行部数が1670万部に達したという。ベトナム、ドイツ、イタリア、フランス、ポーランドでも翻訳されるそうだ。
http://asciimw.jp/info/release/pdf/20141222.pdf

◎「美ST」(光文社)が主催する「第5回国民的美魔女コンテスト」最終選考会が開かれ、グランプリが決定。美魔女と友だちになりたい!
http://news.mynavi.jp/news/2014/12/22/078/

◎水野和夫「資本主義の終焉と歴史の危機」(集英社新書)が「週刊ダイヤモンド」2014年のベスト経済書の第1位に選ばれた。「週刊ダイヤモンド」的なリベラリズムによる、とても良い選択だ。
http://shinsho.shueisha.co.jp/mizuno/

押切もえが本格的に小説家としての活動を開始した。「小説新潮」1月号に「抱擁とハンカチーフ」80枚を発表。スポーツニッポンによれば、「夢と現実の間で葛藤する女性に寄り添う」ことをテーマにした連作小説を同誌で発表していくそうだ。「AneCan」で長編を連載する日は近い?
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2014/12/22/kiji/K20141222009502820.html

ディアゴスティーニパートワークなんざ、これまで一度も買ったことのない私だが、これは全巻を揃えたい。「東映任侠映画傑作DVDコレクション」が隔週刊で創刊される。自宅が昭和館になる!当初、1月6日を創刊日に予定していたが、12月26日に繰り上がった。私にとってローアングルといえば小津安二郎ではなく加藤泰であった。
http://deagostini.jp/tnd/

◎「週刊大衆」1月5・12日号が「日経新聞Gカップ記者『ラスト全裸』」だ。
http://www.futabasha.co.jp/magazine/taishu.html#

◎ナンバーMVPは羽生結弦選手に決定した。
http://blog.livedoor.jp/happy10dayo-sanpo12/archives/1016142262.html

◎68万部を売るロングセラーとなった「ザ・ゴール」(エリヤフ・ゴールドラット)がダイヤモンド社によってマンガ化された。これも売れそうだ。
http://diamond.jp/articles/-/64093

ハンギョレ新聞のインタビューに元朝日新聞記者で、慰安婦報道で渦中の人となった植村隆が答えている。
「私は日本を愛する愛国者だ。日本がアジアで尊敬される国になることを願っている。 そうなるためには、私たちが周辺国に謝罪することがあるなら謝罪し、直すべき点があるなら直すべきだと考える。 過去の問題をきちんと解決しなければ、アジアの中で日本は尊敬や信頼を勝ち取れない」
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/19119.html

◎LINEの森川亮代表取締役社長が退任を発表!
http://moriaki.blog.jp/archives/2018035.html

◎ろくでなし子の「意見陳述書」。大人のおもちゃ屋に行けば、男性性器は堂々と売られている。つまり、女性性器のみが猥褻だということなのだろうか?
http://www.bengo4.com/topics/2464/

ボイジャーは毛丹青の「にっぽん虫の眼紀行 中国人青年の見た日本」を電子書籍としてリリースした。電子版を購入すると、法蔵館より刊行された上製本がプレゼントされるという。
http://binb-store.com/index.php?main_page=product_info&products_id=16639
毛丹青はボイジャーが進めていますマンガ海外展開事業の中国語翻訳のリーダーでもある。

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3)【深夜の誌人語録】

友情は大切にすべきだが、癒着は禁物である。傷を舐めあうのは友情のゆえでなく、癒着によって生じる堕落である。