【文徒】2014年(平成26)12月22日(第2巻240号・通巻442号)

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1)【記事】マガジンハウスがデジタル戦略で舵を切った?
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】マガジンハウスがデジタル戦略で舵を切った?

どちらかと言えば「反デジタル派」というイメージが強かったマガジンハウスである。これは悪い意味で言っているのではない。紙の雑誌における確固たる伝統芸を確立している出版社というニュアンスにおいて「反デジタル派」として私などは認識していた次第である。そんなマガジンハウスが創業70周年を前にして、デジタル戦略において舵を大きく切ろうとしているようだ。それを象徴するのが、一つはティー・ゲートと組んで、「コロカルツアーズ」のサービスを開始することであり、「anan」のニュース配信サイト「anan news」を立ち上げたことである。
マガジンハウスは2012年から地域発の情報を発信するWEBマガジン「colocal」の運営を開始していたが、予約型旅行サイト「旅の発見」で知られるティー・ゲートと連携して、ワンストップのトラベルサイト「コロカルツアーズ」を立ち上げたのである。サイトオープンにあたり、200以上の旅プランが用意された。マガジンハウスのクリエイティビティに立脚した「特別な旅」を用意できるかどうかが成功の鍵だろう。「普通の旅」であれば「コロカルツアーズ」である必要はないということだ。旅の企画自体にマガジンハウスが関与すべきであり、もっと言えばマガジンハウスの擁する雑誌の特集に連動した旅を提供できるかどうかである。そうOtoOの実践である。「コロカルツアーズ」に求められるのは「数」ではなく「質」にほかなるまい。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/141217/prl1412171438094-n1.htm
http://tabihatsu.jp/colocal/
「anan news」は「anan」最新号の特集や連載をリソースにしたニュース記事に加え、「anan」スタッフ選りすぐりの女性に役立つ最新情報、独自取材したオリジナルニュースや注目のトピックスなどをデイリーで配信するという。はっきり言えば現状では情報の「量」が足りない。圧倒的な「量」を配信することで、「数」(ページビューやユニークユーザー)を実現することが問われているのだ。当たり前のことだが「ファッション」「エンターテイメント」「フード」「ショッピング」「ビューティ」「ラブ」の各ジャンルにおいて、新しい情報をデイリーで発信されなければならないはずだ。毎月200本を謳っているようだが、その程度の配信ではお話にならないと私は思う。更にいえばユーザー(=読者でもあるだろう)が関与できる仕組みも取り入れたいところだ。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1412/17/news029.html
http://anannews.jp/

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2)【本日の一行情報】

◎アマゾンジャパン代表取締役社長のジャスパー・チャン社長が「東洋経済オンライン」編集長の山田俊浩のインタビューに答えて、次のように言っている。
「…私たちの考えは読者と著者を重視しているということです。アマゾンを含めて、それ以外の者はすべてミドルマン(中間業者)にすぎません。もちろん出版社もミドルマンです」
http://toyokeizai.net/articles/-/56228
出版社は果たして中間業者にしか過ぎないのか?そうではないという確信を出版社は持てるのか。私は出版社の編集力を軽視すべきではないと考えているが、また過信すべきではないとも考えている。およそ編集力とは言い難い能力をもって編集力と胸を張っていては、アマゾンに隷属せざるを得まい。

◎米タイム社が、オンラインサービス「Coinbase」と提携し、ビットコインでの購読料の支払いを可能にした。
http://blogos.com/article/101567/
遠いアメリカでの出来事と見過ごすわけにはいくまい。ビットコインを提唱した中本哲史って、日本人なのかどうかもわからない「謎の人物」なんだよね。

連合赤軍の「あさま山荘事件」を題材にした「起て、飢えたる者よ」や大正天皇を扱った「治天ノ君」で知られる 「劇団チョコレートケーキ」が紀伊國屋演劇賞を獲得。
http://www.47news.jp/topics/prwire/2014/12/260349.html
駒澤大学OBを中心として結成された劇団である。

電子書籍検索サイトの運営および電子書籍検索用メタデータ・データベースの運用を手がけるhon.jpは、2014年12月時点で日本国内において配信が確認できる電子書籍・電子雑誌の総タイトル数は72万点、このうち書籍ISBNと関連づけられる、紙の書籍を電子化したものは約18万点と推計している。
http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=6104&

◎メディアドゥは、絵本専門の電子書籍ストアアプリ「Toyboo!(トイブー!)」をApp Storeで配信開始。1ヶ月500円、6ヶ月2,000円、1年3,000円の読み放題コースと単品販売の2種類のサービスを利用できる。電子絵本は、やり方によっては伸びると思う。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000009027.html

青森県書店商業組が池田大作に感謝状を贈った。活字文化への貢献を讃えてのことのようだが、残念ながら創価学会の外部の人間には、どのように貢献しているのか全く理解できない。
http://www.seikyoonline.jp/news/headline/2014/12/1215978_4448.html

◎「サライj.p」(小学館)の落語ページの更新について、ブログ「噺の話」が小言を述べている。
小学館のサイト管理体制は、いまだに問題がある。基本的に怠慢な姿勢はなおっていない。困ったものだ」
http://kogotokoubei.blog39.fc2.com/blog-entry-1364.html

電通は、電通ワークスが所有する固定資産4物件(電通築地ビル、電通築地第二ビル、電通築地第三ビル、電通恒産第2ビル)を、譲渡することを決めた。「当社グループ保有資産の圧縮による経営資源の有効活用および財務体質強化のため」だそうだ。連結(IFRS)ベースの固定資産譲渡益は約294億円。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/1218-003906.html

◎訪日外国人向けフリーマガジン「GOOD LUCK TRIP」を発行するダイヤモンド・ビッグ社と、インターネット広告代理店ブリンガー・ジャパンは、訪日外国人に日本の観光スポットや文化、トレンドを発信するアプリ版メディア「GOOD LUCK TRIP JAPAN App」の配信を開始した。2014年には1300万人も訪日している!
http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201412176372/

◎こういう開運商法の類に頼らなければならないほど、学研パブリッシングの企画力が劣化していると考えるべきなのだろう。学研パブリッシングが「松居一代の開運お財布ふとん」を発売。投資家としても30年の経歴を持つ松居一代は、金運アップのために心がけていることのひとつとして「お財布をおふとんで休ませること」だそうだ。そんな松居がプロデュースした財布用の敷きふとんと掛けふとんを「1833円(本体)+税」で売る。
http://www.sankei.com/economy/news/141218/prl1412180090-n1.html

学研教育出版から刊行された「スター・ウォーズ英和辞典 ジェダイ入門者編」は、「スター・ウォーズ」例文を収録した日本初かつ世界初の英和辞典。予約販売だけでAmazonベストセラーランキング1位となった。
http://www.work-master.net/201411157
松居一代の「お財布」枕よりも真っ当である。

白泉社から刊行されている清水玲子のミステリーコミック「秘密 THE TOP SECRET」が「るろうに剣心」シリーズを大ヒットさせた大友啓史監督により実写映画化されることになった。
http://www.hakusensha.co.jp/himitsu-eiga/

博報堂DYホールディングス傘下の出資目的子会社、AD plus VENTUREは、NESPA JAPANを設立し、ネットスーパーの比較ポータルサイト「NESPA(ネスパ)」β版の運用を開始した。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/19696

博報堂・大広・読売広告社の11月単体売上高。三社とも前年割れをしている。
http://www.nikkei.com/markets/ir/irftp/data/tdnr/tdnetg3/20141209/90twcm/140120141208090534.pdf

芥川賞直木賞の候補作が決定。
http://hon.bunshun.jp/articles/-/3083?fb
私が選考委員であったならば芥川賞小野正嗣「九年前の祈り」(群像9月号)か小谷野敦「ヌエのいた家」(文學界9月号)を推す。直木賞アベノミクス批判でもある青山文平「鬼はもとより」(徳間書店)か、超大作とでも形容したい西加奈子サラバ!」(小学館)を推す。

毎日新聞に1974年6月から40年以上にわたって連載のつづいた東海林さだおの「アサッテ君」が12月31日をもって連載を終了する。
http://mainichi.jp/shimen/news/20141219ddm001040183000c.html

◎LINEは、世界31カ国数百万人のリスナーに、モバイルに最適化された、世界最高のラジオ型音楽配信サービスを提供することで高く評価されている米マイクロソフトのラジオ型音楽配信サービス「MixRadio」事業を買収した。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2014/894

集英社は2015年1月1日にデジタル版「ウルトラジャンプ」の配信を開始する。
http://ultra.shueisha.co.jp/update/326/

◎12月29日に発売される「ロッキング・オン・ジャパン」 2015年2月号は買うよ。新世代アーティスト特集企画「JAPAN’S NEXT 2014 → 2015」の付録CDがお目当てである。
http://ro69.jp/news/detail/115537

朝日新聞北海道報道センター記者の関根和弘が次のようにツイートしている。
「話を北星学園大の件に戻します。この取材を通じて、植村さんとも何度も会いました。私は当初から、特集記事が出ても多くの批判、抗議、疑問が投げかけられている以上、朝日のしかるべき立場の人間同席で、植村さんがご自身の口で説明を尽くすのがいいのではないかと個人的に思っていました」
「そしてこの考えは、取材チームを通じて社内でも、また植村さんにも度々伝えました。秋以降、植村さんは小さな集会などに出て自ら説明したり、最近では植村さんは文藝春秋に手記を出されたりしています。ですが、集会に参加される方は基本的には多くが朝日『シンパ』の方々のようでした」
「植村さんの言葉を本当に届けるべきは、そうしたインナーサークル的な人たちではなく、別の人たちではないか、と個人的には思っています。たとえさらに批判されたり、納得を得られなかったとしても。記者会見を一記者の私がご本人や会社に『強要』できることではありませんし、そんな力もありません」
https://twitter.com/usausa_sekine/status/545453881560268801
https://twitter.com/usausa_sekine/status/545454747012968448
https://twitter.com/usausa_sekine/status/545455279102369792
関根は「プロメテウスの罠」で「漫画いちえふ」シリーズを担当した記者である。

ツイッターを舞台にした「百田尚樹VS盛田隆二」が面白い。まずは盛田のツイートを紹介しよう。
たかじん氏の遺言書に「2億円寄付」と明記されているにもかかわらず、さくら夫人が寄付先に2億円の放棄を要求。百田尚樹もその場に同席していたという。この男に今さら作家の矜持を問う気はないが、NHK経営委員としての服務規程違反は看過できない→
http://lite-ra.com/2014/12/post-713.html
…」
「『人が命がけでやったことを茶番とは何だ。左翼では民衆の心はつかめない』と20歳の見沢知廉は思い定めた。
国家との闘いは己との過酷な戦い。知廉は46歳で自死するが、『作家をやめたらヒマになるから、しばらくはへんずり三昧やな』と嘯く59歳の百田尚樹は、繰り返すが、何と戦ってるんだろう」
「同感。安倍晋三百田尚樹のように、おのれの『幼児的万能感』を恥じない人間が大手を振る日本。極めて剣呑と思います」
https://twitter.com/product1954/status/545040380018688000
https://twitter.com/product1954/status/545221932711288832
https://twitter.com/product1954/status/545236521016500225
一方、百田は、こうツイートしている。
「昔、盛田隆二とかいう作家(?)がやたらとからんできたんで『そんなことするヒマあるなら、売れる本書けよ』と言ってやった。以来、執拗に私の悪口をツイートしてるらしい。今度の『殉愛』騒動では『百田尚樹は終わりだ』とはしゃぎまわってるとのこと。本人は純文学を書いてるらしいが、精神が低俗」
盛田隆二は私の悪口を書いたときだけ、一桁違うくらいリツイートが増えるらしい です。もしかしたら、その快感があるのかも(^^)」
盛田隆二の執拗さには呆れる。今は百田は終わりだと大喜び。でも教えてやりたい。そうなっても、あんたの本が売れるわけやないと」
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/546229990279237633
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/546232969115865090
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/546238301133234176

オカヤドモンスター娘のいる日常」の公式サイトが4コマとイラストで二次創作を募集している。優秀作品は、「月刊COMICリュウ」(徳間書店)に掲載されるそうだ。
http://www.monmusu.jp/fanart/4koma/
ネットを介して、こういうコミュニケーションを現在、積極的に模索しているのはマンガだが、本当は女性誌にこそ必要なのではあるまいか。

◎chayがニューシングル「あなたに恋をしてみました」を2月18日にリリースするが、CDのみの通常盤に加えてファッション誌「CanCam」とのコラボレーションパッケージによる初回限定盤も2000個限定で発売する。この曲は1月から放映されるフジテレビのドラマ「デート〜恋とはどんなものかしら〜」の主題歌である。
http://natalie.mu/music/news/134340

◎東京・上野の森美術館で開催されている「進撃の巨人展」の入場者が10万人を突破した。大阪と大分でも開催されることが決まったそうだ。大分は諫山創の故郷である。
http://www.oricon.co.jp/news/2046178/full/

博報堂DYメディアパートナーズが発表した「アスリートイメージ評価調査」によれば、 2014年に活躍したアスリートは1位が錦織圭(テニス)、2位に羽生結弦フィギュアスケート)、3位が葛西紀明。女性アスリートは、1位が浅田真央フィギュアスケート)、2位が吉田沙保里レスリング)、3位が高梨沙羅(スキー<ジャンプ>)。
http://www.hakuhodody-media.co.jp/newsrelease/report/20141219_9182.html

◎「ヤングギター」(シンコーミュージック)2015年1月号の付録は、有名ギタリストの実寸大手形レプリカ。高崎晃ラウドネス)、ジョージ・リンチ(ドッケン、リンチ・モブなど)、ポール・ギルバート(MR.BIG)、スラッシュ(ガンズ・アンド・ローゼズヴェルヴェット・リヴォルヴァーなど)、スティーヴ・ヴァイ(アルカトラス、ホワイトスネイクなど)の全5種類のうち、1つがランダムで封入されている。1800円だが、一人で何冊か買ってしまうマニアもいるに違いない。
http://dmm-news.com/article/903938/

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3)【深夜の誌人語録】

改革は具体的でなければならない。意識改革などといっているうちは、何も変わらない。