KADOKAWAリストラ問題、会社側が遂に「退職強要」を開始!

『メディア クリティーク』1月31日号でもお伝えしたKADOKAWAの「300人リストラ問題」がここにきて急展開を見せている。さる2月19日、同社社内にある3労組の一つである「角川映画労働組合」(旧大映労組)の上部団体、映画演劇労働組合連合会(映演労連)の幹部より本誌(岩本太郎記者)あてに「とうとう会社が社員に退職強要を始めた!」との一報が寄せられたのだ。
その後2月24日、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が開催した春闘決起集会で、映演労連は「映演労連・臨時ニュース 2015.2.24」として「あのKADOKAWAで『4月以降にあなたの居場所はない』『リストラではない』と言いながら、悪質な退職強要相次ぐ!」というタイトルのビラを配布した。問題の発端からの流れも含めてわかりやすくまとめられた内容なので、以下に全文をそのまま引用しておこう。
《2013年10月に角川グループ10社が大合併して「株式会社KADOKAWA」が誕生しましたが、昨年10月にはさらにドワンゴ経営統合して「株式会社KADOKAWADWANGO」 ができました。その連結子会社となった株式会社KADOKAWA今年1月16日、「セカンドキャリア支援プログラム」と称する希望退職募集を一方的に発表しました。
対象者は41歳以上かつ勤続5年以上の正社員で、募集人員は300名、募集期間は平成27年3月2日〜3月20日、退職日は4月30日です。対象者は約900名ですから、募集人員300名というのは、その3分の1以上を解雇するという大規模リストラです。
昨年10月のドワンゴとの経営統合に際して株式会社KADOKAWAは、角川グループ労組と映演労連・角川映画労組、出版労連・SSCユニオンの三労組に対して「経営統合に伴うリストラ『合理化』は行わない」ことを覚書で確認しています。今回の大規模な希望退職募集は、この覚書にも違反しています。
角川映画労組は面談開始の条件として「面談の回数は2回までとする」「組合員の面談に際し、中央執行部の立会いを認めること」という要求をしましたが、会社は「本プログラムは、経営統合に伴うリストラ『合理化』にあたるものではない」として要求を拒否しました。しかし、当該労組以外の対象者に対しては希望退職の面談を開始し、「4月以降にあなたの居場所はない」「あなたに任せる仕事はない」などの退職勧奨言動を繰り返し行っています。これは悪質な退職強要です。
角川映画労組は会社に抗議するとともに、面談拒否の継続など退職強要を許さない闘いを開始しています。
私たち映演労連も角川映画労組の闘いを大きく支援していきます。皆さん、ぜひご協力ください!》
どこの世界に「4月以降にあなたの居場所はない」などと退職を強要される「希望退職」などがあるというのだ!
いや、最近はその種の手段に出るブラック企業も増えていることでもあろうが、仮にも東証一部上場企業傘下の主力企業にして、老舗・角川書店の流れを汲みつつ様々な会社を吸収合併のうえ生まれた出版業界最大手クラスの企業での話だぞ?
しかも上記の通り昨年10月には社内3労組との間で「経営統合に伴うリストラ『合理化』は行わないという覚書を交わしてから半年も経たない、舌の根も乾かぬうちの暴挙である。これを「リストラではない」といけしゃあしゃあと言い切る同社経営陣の神経も大したものだと呆れるのを通り越して感心すら覚えてしまうところだ。
とはいえ、気になるのは今後KADOKAWAの各組合そして社員たちがこれに対してどうするのかということだ。上記ビラにもある通り会社側は角川映画労組が要求した面談開始の条件を拒否しており、同労組側も会社側に既成事実を作らせないためにも先方からの申し出は突っぱねる方針であるようだ。
さすが往年の大映争議を戦ってきた労組だけに骨のあるところだが、反面、先の『メディア クリティーク』でも報じたように同社の場合は生い立ちのまったく異なる企業をどんどん吸収合併することで規模を拡大した結果、労働組合も一つの会社の中で生い立ち別に三つに分かれるという格好になっている。
3労組は今後も協調しながら会社側と争っていく姿勢だが、一方では角川映画労組以外の組合に所属の社員、あるいは組合員以外の社員に対しては既に上記のような退職強要が始まっているだけに、労組側としても今後の対応は悩ましいところだろう。そんなわけで、本誌としてもこの問題の推移については注視しつつ、引き続きレポートしていくこととしたい。(岩本太郎)