【文徒】2015年(平成27)2月17日(第3巻30号・通巻475号)

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1)【記事】クックパッドに敗れた生活情報誌
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】クックパッドに敗れた生活情報誌

その文教堂書店ではクックパッドの料理レシピ本がズラリと面陳されていた。表紙には料理の際に被る帽子をあしらったブランドマークが印刷されているのは当然としても、表紙全体のデザインからしても同じ版元の出版物であったとしても少しも不思議ではない。しかし、タイトルからして似たようなものであっても版元は違った。
クックパッド関連のレシピ本を列挙してみることにしようか。
宝島社からは「クックパッドの大好評レシピ」「クックパッドの秋レシピ」「クックパッドの冬レシピ」などが刊行されている。主婦の友社からは「クックパッド みんなのおにぎらず」「クックパッド これおいしすぎっ! 人気レシピエールたちのご自慢レシピ108」が刊行されている。
扶桑社は「クックパッド これおいしすぎっ! 人気レシピエールたちのご自慢レシピ108」を刊行している。「108本」は一見するだけでは同じ版元であると誰もが思ってしまうことだろう。
オレンジページも独自色は出しているものの「cookpad_オレンジページ イチ押し!晩ごはん献立」を刊行したばかりだし、学研パブリッシングも「クックパッドコストコレシピ100」を刊行している。
あれは今から10年ほど前だったかと思うが角川SSCがクックパッドのレシピ本を刊行した頃、クックパッドというビジネスそのものに懐疑的だった出版関係者も多い。
クックパッドは一過性のブームだと思いますよ。パソコンの画面を見て、お料理を作るでしょうか。何よりも、あちらさんのレシピは素人のものでしょ。こちらはプロが精魂を込めて作ったレシピですから、競争にもならないと思いますよ」
それが今では競ってクックパッドのレシピ本を出している。
さらに出版社はプロの作ったレシピをクックパッドに提供してもいる。クックパッドの提携出版社はNHKエデュケーショナル、オレンジページ、KADOKAWA、柴田書店集英社主婦と生活社主婦の友社、新星出版社、セブン&アイ出版、宝島社、辰巳出版日東書院本社、扶桑社。
この10年でクックパッドと出版社の力関係は逆転してしまったのである。「オレンジページ」や「レタスクラブ」が束になってもクックパッドには敵わなくなってしまったのだ。ある意味で従来型の「編集力」がインターネットの「集合知」に敗北してしまったということでもあろう。これは何もレシピ本に限っての現象ではないのかもしれない。

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2)【本日の一行情報】

◎「街の書店」の配本状況は、こういうことなのだろう。言っては何だが日販のような巨大取次の帳合である限り、現状が改善されることはあるまい。
http://open.mixi.jp/user/56101789/diary/1938755820

学研ホールディングスの2014年10〜12月期の連結決算は、最終損益が9億3800万円の赤字(前年同期は12億円の赤字)。在庫整理により赤字が膨らんだ。ミリオン商品をだしてしまったツケを支払わされていると見るべきなのかもしれない。4割以上も伸びている高齢者福祉・子育て支援事業に人もカネも投下していくことになるのだろう。1割を超える減収となった出版事業もまた高齢者福祉・子育て支援事業やリアルな教室ビジネスにどういうカタチで関与できるかを模索する必要があるはずだ。
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXLASGD13H8K_13022015DTC000
学研パブリッシングは運動教室「リトルアスリートクラブ」を15年には関東一円で10教室程度を開く予定だという。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/150214/bsd1502140500012-n1.htm
「ベネッセ×カリモク家具」の学習机に対抗して、学研はコイズミファニテックがコラボした「毎日のデスク」を発売している。学研教育出版の「毎日のドリル」編集者のアイデアが生かされているようだ。
http://desk.shunoman.com/gakken_koizumi_mainichi_desk/
学研は「教育」「介護」「医療」の三分野に特化したほうが、企業として筋肉質になれるはずである。

◎「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」の原作者E.L.ジェイムズの発言。
「インターネットは大きな情報源で、様々なコンテンツが必要とされていますし、それを読んでくれる人がいれば本を出せ、本だけではなく、音楽の分野でもそれをきっかけにブレイクする人もいるし、映画でも可能性があります。色々な人が、インターネットさえあれば自分のやりたいことをやって、その発表の場があることは、本当にいいことだと思います」
http://www.moviecollection.jp/interview_new/detail.html?id=418
ネットに大量のコンテンツが流れるということは、ライターの原稿料はデフレ化するということでもある。

◎モデルの梨花が「GINZA」3月号の表紙を飾った。
http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0213/mod_150213_4686584100.html
http://magazineworld.jp/ginza/ginza-editors-213-2/
「MY NAME IS…RINKA AtoZ DICTIONARY」もマガジンハウスから発売される。
http://magazineworld.jp/books/paper/2739/
こういう雑誌と書籍の連携は大切だ。

◎「巨乳軍団」なんて呼ばれもした芸能プロダクション「イエローキャブ」が倒産。同じ住所にあるイエローキャブプラスは現在も通常通り営業している。両社に今は資本関係がないそうだ。
http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/4010.html
http://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/366892/

◎ネットフリックスが今秋、日本に上陸するようだ。
http://markethack.net/archives/51955604.html

◎LINEは、法人・個人問わず、あらゆるユーザーがコミュニケーションやビジネス用途において、月額無料で利用できる公開型アカウント「LINE@」の提供を開始した。家族や友だちなどクローズドな関係のなかで用いられる通常のLINEアカウントとは異なり、オープンな関係を構築することができるようになった。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/937
http://news.mynavi.jp/news/2015/02/15/022/

佐野眞一が唐牛健太郎の評伝を書くべく準備を進めているという。
http://www.news-postseven.com/archives/20150215_301818.html

◎カレンダー「まいにち、修造!」は、まだ売れているのか。版元のPHP研究所はウハウハである。「アサ芸+」が指摘するように今年末は「名言カレンダー」というジャンルが成立するに違いない。親分衆の「名言カレンダー」が出れば、売れるのではないだろうか。
http://www.asagei.com/32454
ツイッターには「ヤクザ語録BOT」なんてあるんだよ。
https://twitter.com/89356BOT

◎4月18日からはNHKでドラマ放送が開始されるという文春文庫の「64」(横山秀夫)は初版25万部でロケットスタートを切った。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167902926
ドラマの主演はピエール瀧なんだよね。
http://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/6000/203012.html

糸井重里の指摘するようにインターネットは「非面積」のメディアである。この「文徒」が成立するのもそのためである。
http://mainichi.jp/feature/interview/news/20150213mog00m040013000c.html
「リンク」「シェア」「フラット」がインターネットというメディアならではの特性であるとも糸井は指摘しているが、出版社のインターネット戦略において「フラット」に欠けているケースが多いと私などは思っている。

電通は特別早期退職優遇制度を実施し、300名を募集したが、応募は104名にとどまった。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0212-003969.html

電通イージス・ネットワークは、オーストラリアにおいてデジタル・クリエーティブ領域を担うエージェンシー「Soap Creative Pty Ltd」の株式51%を取得することで合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0216-003974.html

電通エンタテインメントUSAとテレビ東京は、米の大手玩具メーカーハスブロ」と提携し、「妖怪ウォッチ」の世界展開に乗り出すとロイターが報じている。
http://jp.reuters.com/article/entertainmentNews/idJPKBN0LK03B20150216

岩井俊二監督のアニメ映画「花とアリス殺人事件」の公開は2月20日だが、小学館は、乙一によってノベライズに取り組むばかりか、道満晴明によるそのマンガ版の連載をWEBサイト「やわらかスピリッツ」で開始し、更に「週刊ビッグコミックスピリッツ」では、「花とアリス殺人事件」の出張版を2号連続で掲載する。
http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784093864053
http://natalie.mu/comic/news/138629

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3)【深夜の誌人語録】いきがる必要など別にない。淡々と変化を受け入れれば良いのである。変化を受け入れることは信念を曲げたことにはならないのだから。