【文徒】2015年(平成27)2月16日(第3巻29号・通巻474号)

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1)【記事】遠藤大介会長の主婦と生活社世界文化社と組んでF1イベントを開催
2)【記事】曽野綾子の産経コラムについて考える
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】遠藤大介会長の主婦と生活社世界文化社と組んでF1イベントを開催

主婦と生活社の男性ファッション誌「LEON」は、世界文化社の女性ファッション誌「GOLD」と共同で、ホンダF1参戦を祝して、3月5日(木) 19:00開場、19:30開宴の予定で前夜祭を開催することになった。両誌はそれぞれ読者各20組40名を招待するそうだ。
http://www.shufu.co.jp/leon-honda/
http://www.gold-web.jp/news/2015-02-05-6262.html
会場はColoR.TOKYO NIGHT CAFE。オレも何度か行ったことがある!
http://www.color-tokyo.com/
「LEON」も「GOLD」もラグジュアリーメディアを標榜しているのだろう。
だから「3月15日のオーストラリアでの開幕戦に先立ち、いち早くラグジュアリーなF1の世界へ」と謳って、わざわざ「Something レッド(赤いものを何かスタイリングに取り入れてください。女性は華やかな装いで、男性はジャケット着用)」というドレスコードを設けているわけだが、実は、それほどラグジュアリーな会場ではない。
一人3000円〜5000円で飲み放題のパーティが開催できるからね。まあ「ぐるなび」の料金表でも見て下さいな。
http://r.gnavi.co.jp/gcet900/menu1/
この程度の店にドレスコードまで設定し、読者を招待するにもかかわらず、ワンドリンクしかサービスされないパーティのどこがラグジュアリーなのか私には理解できない。
まあ、このイベントを誰よりも待ち焦がれているのは、読者ではなく主婦と生活社の「最高経営責任者」たる遠藤大介会長にほかなるまい。何しろ遠藤は出版よりもカーレースに熱中する経営者として出版業界では有名な存在だ。
このLEON RACING チームオーナーとしての雄姿を見よ!である。
http://as-web.jp/photonews/info.php?c_id=2&no=36762
http://autoc-one.jp/amg/sls-class/launch-1314945/photo/0027.html
ただし「クルマはプロでも出版はド素人」という声も社内外から聞こえてきたりもする。だから、会社案内には自分の名前を載せていないのだろう。
http://www.shufu.co.jp/company/
その一方で LEON RACING チームを運営する有限会社のケーツー・アール アンド デーではエントラント代表者として自らの名前を堂々と刻み込んでいる。
https://supergt.net/tandds/team/2014/39
遠藤は主婦と生活社の経営に口を出さない「社主」というわけでもない。
社長がヒラの取締役に降格するといった人事も総て遠藤会長の鶴の一声で決まったと言われているくらいである。LEON RACING チームのドライバーを「LEON」編集部に編集者として迎え入れたのも、遠藤人事であったことは間違いあるまい。
http://www.leon.jp/item/120522_kurosawa-club
遠藤人事を評して「公私混同」と批判する声も社内外にはあるようだ。ケーツー・アール アンド デーにしてもメインスポンサーが主婦と生活社で、スポンサーにピラミッドがいることからすれば、こんなところにも「公私混同」を垣間見る関係者もいることだろう。
最近、遠藤大介の酒にまつわるエピソードを聞く機会が多いが。なかには「アルコール中毒」を疑う声もあるが、さすがにそんなことはあるまい。出版に対して真摯な姿勢に欠けるがゆえに喧伝される「悪い噂」なのだろう。

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2)【記事】曽野綾子の産経コラムについて考える

曽野綾子が「産経新聞」2015年2月11日付朝刊7面に掲載したコラム「労働力不足と移民」は下手をすれば国際問題に発展しかねまい。
曽野は、高齢者介護を担う労働力不足を緩和するための移民受入れには賛成するが、「外国人を理解するために、居住を共にするということは至難の業」であり、「もう20〜30年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」と書いた。
日本財団での仕事を通じてアフリカ事情に詳しい曽野からすれば「南アフリカで人種差別が廃止されても生活習慣の違いから分かれて住むようになった例を挙げ、住まいは別にした方がいいとの考えを述べた」(産経)のだろうが、曽野及び産経は憲法22条に「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」とあることをお忘れか。
しかも20〜30年前の南アフリカ共和国の事例を持ち出すに至っては、アパルトヘイト賛美としてしか読めず、「レイシズム」と指弾されても仕方ないような書き方である。産経新聞までもが日本及び日本人を貶める「言論」に加担してしまったのだろうか。南アフリカ共和国の大使が産経新聞に抗議文を送ったそうだ。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/02/13/sono-ayako-column_n_6677760.html
http://www.sankei.com/life/news/150215/lif1502150017-n1.html
産経新聞が曽野のコラムを掲載したのは2月11日であったことも重要な意味を持つはずだ。2月11日は南アフリカ共和国ネルソン・マンデラが釈放された日なのである。1990年のこと。
産経の小林毅執行役員東京編集局長が「産経新聞は、一貫してアパルトヘイトはもとより、人種差別などあらゆる差別は許されるものではないとの考えです」というコメントを出すのであれば、そのくらいの知識があって当然であろう。このことを知って確信犯的に掲載していたのだとしたら…。
http://matome.naver.jp/odai/2142383676126851201
ただし、私は外電の尻馬には安易に乗りたくない。例えばアメリカを見よ。一部の金持ちたちがゲートシティと称し、高級住宅地を壁で囲って住んでいる。実態的に言えば、これは「逆アパルトヘイト」だろう。そして、金持ちが郊外に逃避した結果、大都市では何が起きているのか。「inner city」を辞書で引いてみると良いだろう。
http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2015/02/13/author-causes-row-with-remarks-on-immigration-segregation/
http://www.reuters.com/article/2015/02/13/us-japan-apartheid-idUSKBN0LH0M420150213
http://www.japantimes.co.jp/news/2015/02/12/national/author-sono-calls-racial-segregation-op-ed-piece/#.VOASkPmsWSo

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3)【本日の一行情報】

◎出版社の販売マンから1月の数字は悪かったとは聞かされていたけれど。日販が発表した1月の雑誌・書籍・コミック合計売上は前年同月比7.7%減。雑誌は6.4%減。書籍は7.9%減。コミックは2014年8月以来5か月ぶりにマイナスに転じ、9.3%減。
http://ryutsuu.biz/sales/h021201.html

◎シリア取材をしようとしたためパスポートを取り上げられてしまったカメラマンが日本外国特派員協会で会見をしたが、次のようなフランス人記者とイタリア人記者の質問を読んでいると、日本はヨーロッパ諸国と民主主義の価値観を共有しているとは、とても思えなくなる。
「イタリアでは返納はありえません。基本的には憲法の下、刑事事件で確定判決が出ていない限り、また、医学的に正常な判断ができないという限り、どの市民にもパスポート持つ権利がある」
「フランスでも、ISILに属して仕事をするなどしていたらもちろん取り上げられるかもしれないが、そうでなければ取り上げられるということはない。
私の理解する限り、日本人とパスポートの関係は、他の国とはちょっと違う気がする。つまり欧米では市民の権利だが、日本では、"政府が与えてあげる"という感覚があるのではないかという感じがする」
http://blogos.com/article/105428/
「ジャーナリズムには危険が伴う。リスクを完全に取り除く方法はなく、唯一の例外は沈黙だ。しかし、これは降伏だ。世界は何が起きているか伝えられることを必要としている。沈黙は独裁者や圧政者に力を与える」と語ったのはアメリカのケリー国務長官
「日本政府の3度の警告にも関わらず支配地域に入った。どんなに優しくて使命感が高かったとしても、真の勇気でなく『蛮勇』というべきものだった」と語ったのは自民党高村正彦副総裁。日本はアメリカとも価値観が相当、違っている。民主主義の価値観を日本と欧米で共有しているとは言い難いのではないだろうか。

中川淳一郎がネットメディアたる「NEWSポストセブン」成功の理由を「寄せ集めではあったが、向いている方向は同じだった」と喝破。本来、雑誌ってそういうものであったはずだ。いくら精鋭を集めても向いている方向がバラバラでは成功しまい。ネットメディアのほうが雑誌的であるということが多くなったような気がしてならない。
http://blogos.com/article/105491/

◎学研、大日本印刷カプコンは、絵本や図鑑など300冊を集めた「アナログえほんライブラリー」、タッチパネルに触りながら遊べる「デジタルえほんライブラリー」、抗菌の砂を用いた屋内砂場「キッズサンドパーク」や学研のニューブロックで創造性を育みながら遊べる「ブロックのおうち」からなる子ども向け教育エンターテインメント施設「あそび王国ぴぃかぁぶぅ」を共同で展開している。大分や出雲、羽生など、全国5カ所の大型ショッピングモールに設置されているそうだ。
https://www.hoiku-navi.com/column/nursery-news/kidscorner-capcom/

◎ちょっと古い首相動静だが、渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長が安倍首相を訪ねたのではなく、安部首相が渡辺の自宅近くの「ホテルグランドパレス」に出向き、日本料理店「千代田」で会食をしたのである。安倍政権と読売新聞との親密さを象徴するような会食である。
http://www.asahi.com/articles/ASH256D8NH25ULFA03G.html

◎一応、ブロック紙と呼ばれている中国新聞が夕刊を4月30日で休刊。その代わりに日刊紙「中国新聞SELECT」を5月1日に創刊し、朝刊とともに配達するという。朝刊と同じサイズ(ブランケット判)の16ページでフルカラー、火曜〜日曜の週6日発行。朝刊とのセット価格で4030円。朝刊のみの購読は3093円。広告が集まらなければ、夕刊と同じ運命を辿ることだろう。地方では新聞の夕刊は、消えてなくなる運命だろう。
http://www.chugoku-np.co.jp/news_flash/article/article.php?comment_id=129885&comment_sub_id=0&category_id=565

◎米OverDriveは、Barnes & Nobleと提携し、図書館へ電子雑誌の供給を開始したそうだ。
http://hon.jp/news/1.0/0/6233/

楽天Koboの登録ユーザー数は2014年12月時点で約2290万人。
http://japan.cnet.com/news/business/35060345/

◎アマゾンはKindle本をMac OS X上で読むことができるアプリ「Kindle for Mac」の提供を開始した。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1502/13/news074.html

◎紙の手帳が売れている。ネットの「ほぼ日」を支えているのは、紙の「ほぼ日手帳」(全76種)といえば理解しやすいだろう。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1502/13/news060.html

◎日販は、4月8日、書店、出版社の新入社員、新スタッフのために王子流通センターで出版流通学院(学院長:専務取締役 吉川 英作)の公開講座として「新スタッフセミナー」を開催する。
http://www.nippan.co.jp/wp-content/uploads/2015/02/newstaff_seminor_20150212.pdf

◎「シャルリーエブド」の記者ら12人が殺害された事件を受け、第三書館は同紙が掲載したイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を転載した小冊子「イスラム風刺か、ヘイトか」を発行したことに対し、在日パキスタン人の男性ら約30人が13日、第三書館近くの路上で抗議活動をした。
http://mainichi.jp/select/news/20150214k0000m040061000c.html
マーチン・スコセッシにキリストを描いた「最後の誘惑」という映画があったことを思い出す。

◎「世界報道の自由度ランキング」で日本は61位。上位5カ国はフィンランドノルウェーデンマーク、オランダ、スウェーデン
http://www.afpbb.com/articles/-/3039424?act=all

大日本印刷株式会社は、アイトラッキング技術とID-POSデータを活用したマーケティング支援サービスを開始した。実店舗の購買行動から課題を抽出し、マーケティング効果を検証するというもので、静岡鉄道の「しずてつカードLuLuCa」会員を対象に、同グループのスーパーマーケットチェーン「しずてつストア」の一部店舗と連携しての開始となった。
http://www.dnp.co.jp/news/10107029_2482.html

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4)【深夜の誌人語録】動機が不純だと詰めが甘くなるものだ。