【文徒】2015年(平成27)2月13日(第3巻28号・通巻473号)

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1)【記事】フィルホファー、植村隆、関根和弘、花田紀凱
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】フィルホファー、植村隆、関根和弘、花田紀凱

「ジャーナリスト(ハック=売文家の意味がある)とエンジニア(ハッカー)のネットワーク「ハックス・アンド・ハッカーズ」の共同創設者」であり、「ニューヨーク・タイムズの要、デジタル戦略担当編集局次長から英ガーディアンへの電撃移籍」し、現在、ガーディアンではデジタル担当編集主幹をつとめるアーロン・フィルホファーが手がけるオープン戦略について朝日新聞の平和博がレポートしている。フィルホファーは、次のような発言しているそうだ。
「様々なサイトが相次いでコメント欄を閉鎖し、読者コミュニティを置き去りするのを目にしているだろう。これは重大な誤りだ。他のサイトがコメント欄を閉鎖するということは、我々のようなサイトにとってはプラスになるが。読者の声は耳を傾けられるべきだし、それだけの価値がある。読者の声は、ジャーナリズムの核になるべきだ」
http://www.huffingtonpost.jp/kazuhiro-taira/the-guardian_b_6642848.html
ジャーナリストと自称したところで、所詮、売文稼業だと私は思っている。ところが大手メディアの記者ともなると随分偉そうなものだから、世間は大手メディアの、その「いい子」たらんとする姿勢に違和感を抱かざるを得ないのである。大阪日日新聞で金井啓子が次のように書いている。
「1991年6月に雲仙普賢岳が噴火し災害が発生した際、あるフリー記者が規制線を越えて危険地域に入ってルポを発表。その記事を読んだ大手メディアの記者が警察に密告するという出来事があった」
http://www.nnn.co.jp/dainichi/rensai/gendaikou/150210/20150210036.html
さて、朝日新聞記者といえば、大手メディアの典型であるが、元朝日新聞記者の植村隆は、櫻井よし子が「週刊新潮」「週刊ダイヤモンド」「WiLL」に発表した文章で、捏造とされ名誉を傷つけられたとして櫻井と新潮社、ダイヤモンド社、ワックの出版3社に1650万円の損害賠償と謝罪広告などを求める裁判を起こした。植村は自らの「抵抗の拠点」としてジャーナリズムではなく、裁判を選択したのだろう。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150210-OYT1T50115.html
現役の朝日新聞記者である関根和弘が昨年末、次のようにツイートしていたことが思い出される。
「話を北星学園大の件に戻します。この取材を通じて、植村さんとも何度も会いました。私は当初から、特集記事が出ても多くの批判、抗議、疑問が投げかけられている以上、朝日のしかるべき立場の人間同席で、植村さんがご自身の口で説明を尽くすのがいいのではないかと個人的に思っていました」
「そしてこの考えは、取材チームを通じて社内でも、また植村さんにも度々伝えました。秋以降、植村さんは小さな集会などに出て自ら説明したり、最近では植村さんは文藝春秋に手記を出されたりしています。ですが、集会に参加される方は基本的には多くが朝日『シンパ』の方々のようでした」
「植村さんの言葉を本当に届けるべきは、そうしたインナーサークル的な人たちではなく、別の人たちではないか、と個人的には思っています。たとえさらに批判されたり、納得を得られなかったとしても。記者会見を一記者の私がご本人や会社に『強要』できることではありませんし、そんな力もありません」
「とにかく事態を見守りつつ、私個人としては、一連のことを受けて自分が何ができるか、自分のこととして引き受けてやっていくしかないと思っています。以上、少しだけと前置きしつつ、長々となってしまい、失礼しました」
https://twitter.com/usausa_sekine/status/545453881560268801
https://twitter.com/usausa_sekine/status/545454747012968448
https://twitter.com/usausa_sekine/status/545455279102369792
https://twitter.com/usausa_sekine/status/545455637425963008
こうした後輩の声は植村に届いたのだろうか。関根は大阪社会部の出身である。私に言わせれば植村は自らの記事に関して「コメント欄」を閉鎖してしまったようなものである。植村と対照的なのが「WiLL」の花田紀凱編集長。元「週刊文春」編集長だ。花田は2月9日、東京・新宿ロフトプラスワンで開催された「『WiLL v.s. NOヘイト!』〜出版業界と『ヘイト本』ブーム〜」にパネラーとして登場し、「NOヘイト! 出版の製造者責任を考える」の版元である「ころから」代表の木瀬貴吉氏と議論を交わしている。
http://lite-ra.com/2015/02/post-858.html
花田のような潔さ(であり軽さ)が植村隆には欠如しているのではあるまいか。潔さや軽さを民衆との距離感といっても差し支えあるまい。関根が植村に問うているのは、この距離感の問題なのである。

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2)【本日の一行情報】

◎ネオマーケティングが、ここ3年間で電子書籍を利用した20代〜40代に調査したところ、電子書籍サイト・アプリの認知度は「Amazon Kindleストア」42.8%、「LINE マンガ」33.8%、「Renta!」32.3%という順位になったが、これは驚くべき結果ではないのか。最も認知度が高いキンドルでさえも、半数以上が知らないのだ。そのなかでRenta!が健闘しているのは、テレビCMを始めた成果とも言えよう。
当然、利用率もトップの「キンドル」でさえも、22.8%に過ぎず、次が「青空文庫」で18.3%、「Renta!」の14.3%、「めちゃコミック」の13.3%、「LINEマンガ」の12.7%とつづくが、どこも20%以下という結果になった。「めちゃコミック」がこんなに上位に来るのか!
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1502/10/news142.html#l_rmfig322-12.jpg
インフォコムのグループ会社であるアムタスの展開する電子書籍配信サービス「めちゃコミック」と「ekubostore(エクボストア)」の2015年3月期の売上高が2015年1月時点で100 億円を突破した。
http://www.atpress.ne.jp/view/57152

志村貴子のコミックスが2月から6月まで集英社講談社エンターブレイン太田出版リブレ出版の5社によって毎月、刊行される。そこで、この5社は出版社の垣根を越えて「志村貴子まつり2015」を開催する。新装版も含めて全8冊が刊行されるが、特設サイトもオープンし、各作品の巻末に全8冊でコンプリートするリレーマンガを収録するという。
http://www.ohtabooks.com/sp/shimura-takako-2015/
女性ファッション誌なども出版社の垣根を越えた取り組みをしたほうが良いんじゃないの。

◎毎週金曜日と月に一度の土曜日にリビングが書店に一変する。長岡市関原の絵本の店「little books」である。絵本には一冊ずつ絵本セラピストの資格を持つ店主のコメントが添えられている。こういう書店を見ていると、私も開業したくなってしまう。真剣に考えようかな。
http://www.gatapost.com/kurashi/%e8%87%aa%e5%ae%85%e3%81%8c%e6%9c%ac%e5%b1%8b%e3%81%95%e3%82%93%e3%80%80%e9%95%b7%e5%b2%a1%e5%b8%82%e3%81%ae%e5%b0%8f%e3%81%95%e3%81%aa%e7%b5%b5%e6%9c%ac%e3%81%ae%e5%ba%97/

◎お笑いコンビ・ピースの又吉直樹の「火花」が3月11日に文藝春秋より刊行されるが、何と初版15万部だそうである。文藝春秋、強気だ。これでもし8月に芥川賞でも獲得したら、どうなるんだろう。
http://www.oricon.co.jp/news/2048478/full/

電通、allfuz(オルファス)、インタースペースの3社は、アプリのダウンロードなどと引き換えに実店舗の商品を無料で獲得できるクーポンサービス「とくぞう」を開発し、提供を開始した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0210-003964.html

◎ロッテのチューインガム「Fit's」がアニメ「ドラゴンボール改」とコラボ。ガムの包み紙を利用し、4月公開の映画「ドラゴンボールZ 復活の『F』」と連動したアプリキャンペーン「出でよ!神龍」を展開する。ガムの包み紙には、星のマークがプリントされており、噛み終わったガムの包み紙でドラゴンボールが作れ、ドラゴンボールを集めると、 スマートフォンを使ってAR仕様の「神龍」(シェンロン) を出現させることができるそうだ。
http://www.lotte.co.jp/info/news/pdf/news1494.pdf

◎ベネッセは、進研ゼミ小学講座チャレンジタッチの受講者を対象に、オプションサービスとして「デジタル小学生新聞」の提供を開始する。利用料金は12か月分で6,480円(税込)。
http://resemom.jp/article/2015/02/10/22845.html

◎光文社が主催するグラビアモデルオーデション「ミスFLASH 2015」が発表された。
グランプリは3人。ひとり選べと言われれば、私は「あべみほ」かな。
http://www.oricon.co.jp/news/2048421/full/

◎日本最大級の読書会コミュニティとして知られる名古屋の「猫町倶楽部」に光文社古典新訳文庫の駒井稔編集長が登場。課題本はディストピア小説の傑作として「1984」と並び称されるオルダス ハクスリーの「すばらしい新世界」である。マルクスってのが主人公として出て来るやつだ。
http://www.nekomachi-club.com/schedule/18004
紀伊國屋書店KINOPPY&光文社古典新訳文庫読書会「リルケ『マルテの手記』の魅力を語る」というイベントも紀伊國屋書店新宿本店で開催される。
http://www.kotensinyaku.jp/archives/2015/02/006468.html

◎第三書館から刊行された「イスラム・ヘイトか、風刺か」。フランスの風刺週刊紙「シャルリエブド」の風刺画を転載したことで物議を醸しているが、トーハンは「書店側に迷惑がかかる可能性があるので配慮した」、日販は「書店との話し合いの中で判断した」と配本はせず注文にのみ対応する。紀伊國屋書店は「取次の配本がなく店頭には置かない」、三省堂書店は「要望があれば取り寄せるが、店には置かない」、丸善ジュンク堂書店は「選択肢を提供するのが書店の使命。販売自粛の指示はせず、各店舗の判断に任せる」、八重洲ブックセンターは注文販売もしない。アマゾンは取り扱う。
http://www.asahi.com/articles/ASH2B5J5TH2BUTIL02W.html
http://www.47news.jp/47topics/e/261934.php

◎米「ニューズウィーク」のツイッターアカウントが過激派「イスラム国」との関連を主張するハッカー集団「サイバー・カリフ」に一時乗っ取られたという。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK11H0B_R10C15A2000000/

◎寄稿者、イラスト、制作担当、編集、すべてが「Twitterでのつながり」によって編集された「くらいせる」の編集部は全員が大学生だそうだ。
http://www.value-press.com/pressrelease/137419
http://kreisel.in.net/

◎ハイブリッド書店サービス「honto」は中央公論新社と連携して「新書大賞2015」を発表した。
大賞:増田寛也「地方消滅」中公新書
2位:水野和夫「資本主義の終焉と歴史の危機」集英社新書
3位:矢野久美子「ハンナ・アーレント中公新書
4位:赤坂真理「愛と暴力の戦後とその後」講談社現代新書
5位:鈴木大介「最貧困女子」幻冬舎新書
6位:佐藤優創価学会と平和主義」朝日新書
7位:丸山宗利「昆虫はすごい」光文社新書
8位:春日太一「なぜ時代劇は滅びるのか」新潮新書
9位:古市憲寿「だから日本はズレている」新潮新書
10位:高田博行「ヒトラー演説 熱狂の真実」中公新書
10位:佐伯啓思西田幾多郎 無私の思想と日本人」新潮新書
                     *は電子書籍もあり
岩波新書から一冊も選ばれていない!新潮新書が3点も入っていることと対照的だ。
http://honto.jp/cp/ebook/2015/shinsho-taisho.html

◎マンガ「テラフォーマーズ」(集英社)のコミックス累計発行部数(1〜11巻)が1000万部を突破。実写映画化され、監督は三池崇史
http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0211/man_150211_1969473226.html
http://www.cinemacafe.net/article/2015/02/12/29332.html

◎オウンドメディア構築サービスを手がけてきたリボルバーがメディアビジネス事業に参入した。6つのWebマガジンを創刊。総編集長は林信行
http://web-tan.forum.impressrd.jp/n/2015/02/12/19303
http://internetcom.jp/busnews/20150210/revolver-starts-media-business.html

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3)【深夜の誌人語録】他人に引き回されるよりも、自らが引き回していかなければ、自分の仕事に色も香りもつくまい。