【文徒】2015年(平成27)3月3日(第3巻40号・通巻485号)

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1)【記事】雑誌、編集者に原点回帰を求めたい
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】雑誌、編集者に原点回帰を求めたい

当たり前のことから書きはじめよう。雑誌はメディアである。雑誌はコンテンツではない。雑誌はコンテンツを収容するメディアである。雑誌はコンテンツを創造する才能を広く求めてきた、プラットフォーム的なメディアであり、様々なコンテンツ、様々な才能に最も開かれていたメディアであった。だから、雑誌は街の風景を一変させるような流行の震源地たり得たはずである。
しかし、最近の雑誌を見ていると、メディアでは辛うじてあるにしても、プラットフォーム的な色彩は弱まり、コンテンツ的な傾向を強めているように思えてならない。同じような顔ぶれによる、同じような企画が並んでいては、プラットフォームの役割を果たせないということだ。編集者が単なるクリエイターに成り下がってしまったというべきなのかもしれない。これではインターネットに誕生したメディア的なプラットフォームに「お株」を奪われても致し方あるまい。新しい才能は、新しいコンテンツはインターネットから生まれ、インターネットが街の風景を変えてしまう。
これまた言うまでもないことだが、編集者の仕事は「創造」にあるのではなく、編集者の仕事は「発見」「発掘」にあるのだ。コンテンツを「発見」し、才能を「発掘」するのが編集者の仕事である。多様なコンテンツ、多様な才能が集まる場を提供するのが編集者の仕事であって、中途半端なコンテンツを「創造」するのは編集者の仕事ではないはずだ。本来、編集者にとって紙かデジタルかなど関係ないことである。より優れたコンテンツや才能を「発見」「発掘」できれば良いのである。
雑誌はプラットフォーム的な要素を早急に取り戻すべきである。プラットフォーム的なメディアとして原点回帰を果たすべきである。幸いにして編集者が関与できるフィールドは今や「紙」だけではない。インターネットも駆使できるのだ。プラットフォーム的なメディアであれば、それは雑誌にほかならないのである。このように考えられないのであれば、そのような編集者を擁する雑誌は滅びるだけだ。

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2)【本日の一行情報】

◎降旗学が「ダイヤモンドオンライン」で次のように書いている。
「わかりやすく言うと、ジャーナリズムはタフガイが描くもので、タフガイは絶対に泣かないのだ。怖れもしない。対して、ノンフィクションとは『五感で書くジャーナリズム』だから、もらい泣きもするし、ある人が飛び降り自殺を図った断崖に立ってみたら、あまりの高さに目がくらみ、恐怖で足が震えてしまった、と書く」
http://diamond.jp/articles/-/67652
ジャーナリズムがハメットで、ノンフィクションがチャンドラー?

KADOKAWAは小説初心者な女の子でも読める新レーベル「ビーズログ文庫アリス」を創刊する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001334.000007006.html
KADOKAWAは、ちょっと点数が増え過ぎてはいないだろうか。膨らんだ風船は破裂するということを忘れずにいてもらいたいものだ。

◎「comicスピカ」(幻冬舎コミックス)が、3月27日売で休刊。連載作品は4月30日発売号でリニューアルされる「月刊コミックバーズ」(幻冬舎コミックス)および、同日オープンを予定している新創刊のWEBマンガ誌で継続する。
http://natalie.mu/comic/news/139564

文藝春秋は、「CREA」と「CREATraveller」の電子版を3月1日からNTTドコモの電子雑誌読み放題サービス「dマガジン」に配信を開始した。
http://www.atpress.ne.jp/view/57976

◎ニュースキュレーションアプリ「グノシー」と集英社が提携する。3月から「週刊少年ジャンプ」とマンガアプリ「少年ジャンプ+」の連載作品を日替わりで配信する。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1502/27/news096.html

星海社で広報を担当する築地教介は凸版印刷の出身。社長・副社長以外のメンバーは、この築地も含めて全員フリーランス業務委託契約を結んでいる。
「編集者にはアシスタントエディター、エディター、シニアエディターという3ランクがあり、最初は概ねアシスタントエディターからスタートします。各自に、ペーパー、デジタル、イベントというすべての軸で企画を実現させなければいけないというハードルが課せられ、目標達成すればランクがひとつ上がっていきます」
http://news.ameba.jp/20150228-163/

◎「朝日新聞 日本型組織の崩壊」(文春新書)に掲載された過去10年間の同社の財務状況からすれば「日本の高齢化に合せて徐々に購読数が減るものの、採用を抑制したり、給与の見直しを行うことによって、当分の間、健全な経営が可能という判断」になるのは当然だろう。
http://thepage.jp/detail/20150227-00000011-wordleaf?pattern=1&utm_expid=90592221-29.uzRA2AXrScmfXlXFfeP6qg.1&utm_referrer=https%3A%2F%2Fwww.google.com%2F

◎日販は、書店店頭の客数・売上アップに向けた取り組み「祭」の2014年度第三弾企画「春祭」の共催企画として、「雑誌お取り置きで100ポイントプレゼントキャンペーン」を、2月28日(土)から4月26日(日)まで、Honya Club加盟書店をはじめとする全国の取引書店で開催する。
http://www.honyaclub.com/shop/pages/harumatsuri201502.aspx

◎「SAKI」(宝島社)は、福岡市の大名にある人気ヘアサロン「switch(スイッチ)」の受付でありながら、Instagramのフォロワー数は8万を超える、西本早希の初のパーソナルブックなんだそうだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000138.000005069.html
「周縁」から「中心」を撃とうというビジネスである。

◎フジテレビは、パソコンやスマホなどで最新のニュースが見られる24時間ニュース専門局「ホウドウキョク」を4月1日にスタートさせる。
まずスマホタブレット端末向け放送局「NOTTV」とフジの公式動画配信サービス「フジテレビオンデマンド」でのライブ配信を行い、今夏までに第二弾としてライブチャンネルや番組アーカイブを充実させたインターネット上でのオリジナルサイトの開設、第三弾としてスマートフォンタブレットに最適化されたネイティブアプリを展開の予定だ。
http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2015/s/150227-s009.html

読売広告社の都市生活研究所が実施した調査によれば、マンション購入者に注目している街を聞いたところ、「豊洲」12.3%と「山手線新駅」11.5%がトップ2。以下、「銀座」9.8%、「武蔵小杉」9.0%、「日本橋」8.8%、「晴海」8.7%が続く結果となった。
http://www.yomiko.co.jp/news/item/old/pdf/20150226.pdf

◎「STUDY」を創刊した長畑宏明の次のような発言が印象的だ。
「僕は『HUGE』という雑誌が好きでした。『HUGE』という雑誌はある時からずっとファンタジーだったと思うんです。自分の生活感覚とは程遠い服やカルチャーを取り上げていましたし、僕は『HUGE』に掲載されていた服を買ったこともありません。
それでも『HUGE』から教えてもらったスタイルは今の物選びに生きています。そういう意味で、ファンタジーが残る場所はもっとあってもいいんじゃないかと思います。僕が『STUDY』のファッションストーリーの撮影を鈴木親さんにお願いした理由は、いまの感覚でファンタジーを伝えたかったからです。ややこしい話ですが、僕にとってはそれがリアルなので」
http://top.tsite.jp/news/i/22024138/

主婦の友社から刊行された「キャベツピーラーつき せん切りキャベツでダイエット&医者いらず」1,700円(税込み)。このキャベツピーラーを使えば、軽い力で削るだけで、飲食店で出されるようなふわふわのキャベツのせん切りが簡単にできるそうだ。
http://www.fast-fasting.com/news_alNHMSaAcu.html

◎「お江戸ル」ちゅうのか。お江戸系アイドルの略称だそうだ。その「お江戸ル」ほーりーこと堀口茉純が「新選組グラフィティ 1834_1868」を実業之日本社から出版した。
http://www.47news.jp/CN/201502/CN2015022801001410.html
新撰組であれば神津陽の「新選組多摩党の虚実_土方歳三・日野宿・佐藤彦五郎」がオススメだ。
http://www.sairyusha.co.jp/bd/isbn978-4-88202-916-8.html

◎1971年の「少年ジャンプ」が話題になっている。巻頭の記事特集が「三里塚少年行動隊」!
「当時、ジャンプに限らず、サンデーでもマガジンでも、今よりはるかに自由な表現をしていたんじゃない?当時、リアルタイムで少年マンガを読んでいた我が世代にとっては、今の自己規制だらけの雑誌界の方が不思議」というツイートが耳に痛い。
http://togetter.com/li/789070

◎「25ans」の「エレdog」なんだけれど、こういうのを見ているとネットの使い方が上手だと思わざるを得ない。
http://www.25ans.jp/fashion/dogsnap/
「エレ女&エレdog おしゃれコンテスト」を4月18日(土)に六本木ヒルズアリーナで開催する。
http://www.25ans.jp/present/eredog15_0227/
少なくとも「紙とデジタルとイベント(リアル)」の三角形は必須だと思う。

◎米「Vogue」に掲載された「Apple Watch」の広告が話題になっている。
http://adgang.jp/2015/02/89279.html

文藝春秋は「羽生善治 闘う頭脳」の刊行を記念して、羽生善治VS阿川佐和子トークライブを4月14日に開催する。
http://www.bunshun.co.jp/info/150205/

◎次のような今野敏の発言に大賛成である。
「子どもたちが本を読まなくなったからといって、「あれを読め、これを読め」というのは意味がない。まずは、"読書本来の面白さ"に気づかせてあげることが大切です。無理やり読ませる課題図書や読書感想文は、なくてもいいかも」
代官山蔦屋書店文学担当の間室道子の「読書は究極のひとりぼっち」という指摘にも深く共感できる。蔦屋書店には「書店人」がいるんだよな。
http://news.biglobe.ne.jp/trend/0301/ddn_150301_2080755541.html

鳥取県は、「名探偵コナン」(小学館週刊少年サンデー」連載)の名前を冠した「鳥取砂丘コナン空港」を開港した。島根県には「米子鬼太郎空港」もある。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1503/01/news008.html

学研パブリッシング凸版印刷は、小学校低学年向けに誰でも無料で学べる新しい学習サービス「学びゲット!」を共同で開発、3月2日より本格的なサービス提供を開始した。何といっても「無料」であることが最大の武器となろう。何故、「無料」なのかといえば広告モデルに立脚しているからだ。協賛というカタチでクライアントのサービスや商品を使用したクイズ形式の問題を作成しているのだ。スタートに当たって協賛しているのは、象印マホービン東京急行電鉄日本ケンタッキー・フライド・チキンパシフィックリーグマーケティングホクレンミサワホーム
http://www.toppan.co.jp/news/2015/03/newsrelease150302_1.html

凸版印刷が運営する国内最大級の電子チラシサービス「Shufoo!」と凸版印刷の子会社で電子書籍事業を展開するBookLiveは、BookLiveの持つイラスト/コミック制作サービス「BookLive Artstudio」を活用し、主婦向けオリジナル4コマ漫画を電子チラシとして無料配信する新コンテンツ「Shufoo!マンガ」を共同で開始した。
http://www.toppan.co.jp/news/2015/03/newsrelease150302_2.html
これも「Shufoo!」の話題。「Shufoo!」と店舗のPOS情報を連携させることで、企業が電子チラシやクーポンの閲覧から購買までの効果を把握でき、またその結果に応じてキャンペーンを実施できる「レジ連携サービス」を開発したそうだ。
http://www.toppan.co.jp/news/2015/02/newsrelease150226_2.html

◎良文堂書店は「出版営業ガチンコ対決」と称して出版社に営業を競わせたり、出版社にPOPの出来を競わせたりしているようだが、このような「倒錯」がまかり通る現実が悲しい。こうまでして良文堂書店は出版社に対して偉そうにふるまいたいのだろうか。
しかし、店頭のPOPは書店にとって書店人の力量が試される「自由な表現」ではなかったのか。「街の書店」の頽廃も遂にここまで来たかと思わざるを得ないのだ。「書店人」たることを放棄しない限り、このような発想は生まれないことだろう。こういう企画に乗ってしまう出版社もむろん頽廃しているというべきだろう。
http://vote1.fc2.com/browse/16558544/6/

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3)【深夜の誌人語録】

楽観主義や悲観主義は常に安易なものであり、現実主義にとって最大の敵である。