【文徒】2015年(平成27)12月9日(第3巻225号・通巻675号)

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1)【記事】雑誌情況への提言 2016年のテーマは?
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】雑誌情況への提言 2016年のテーマは?

客 雑誌専門の広告代理店は、どこも経営が大変らしいね。
主 雑誌広告では「名門」と言って良い互栄社が廃業を決めたくらいだからね。営業力に依拠する雑誌広告代理店の経営は大変だろうね。際立った特色を打ち出せないと生き残りは難しい。互栄社の全盛期は、電通博報堂につづいて三幸社があり、コーセーやライオンを扱っていた告大社があり、松下電器花王を扱っていたタマルヤ広告があり…という時代だったわけだよね。飛び込み営業が功を奏していた時代と言っても良い。雑誌専門の広告代理店がナショナルクライアントを扱っていたのは、雑誌だけだったんじゃないのかな。
客 君は一昔前、生き残るのはメガ・エージェンシーとブティック・エージェンシーだと主張していたよね。
主 実際、そうなったよね。ブティック・エージェンシーの場合、メガ・エージェンシーなどの傘下に入って生き残ったところもある。紙の市場が縮小しているのだから、紙のビジネスにかかわるプレイヤーが減るのは仕方のないことだと思うよ。書店だって減るし、取次だって減るし、出版社だって減る。しかし、デジタル革命によって出版の概念が拡張され、新たな市場が生まれつつあるのも確かだ。そこには新たなプレイヤーも生まれている。
客 今年一年間にわたって君は「スマホを占拠せよ」とか「デジタルシフト」「編集力の解放」ってことを主張し続けて来た。
主 雑誌ビジネスで生き残りを図るには避けて通れないじゃん。来年は「社内プラットフォーム構築による縦割り組織の打破」とか、「プラットフォーム的メディアの創造」とか、「一人編集部の可能性」といったようなことを主張しようかと思っている。オレは「終わり」も「始まり」も見届けたいんだよ。

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2)【本日の一行情報】

◎ウエブメディアとして9年間運営して来た「MarkeZine」が年間定期購読料 48,600円(税込)の月刊誌を創刊することになった。ウエブから紙への進出は押久保剛編集長によれば「紙に逆行するという取り組み」だそうだ。紙専門の編集者がウエブメディアをローンチし、やがて紙のメディアを創刊した時に、こういう言い回しはできまい。「ようやく紙にたどり着きました」という感覚なのではあるまいか。だからダメなんだよ!紙のメディアにかかわるということは、掛け値なしに時代に逆行することなのである。
https://markezine.jp/article/detail/23543

◎「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載の「磯部磯兵衛物語」を原作とした30秒程度の“豆アニメ”が12日に動画配信サービス「GYAO!」「dTV」で配信される。
http://mantan-web.jp/2015/12/07/20151206dog00m200018000c.html

◎「週刊少年ジャンプ」(集英社)連載の「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が連載40周年を迎えるが、これを記念して10年ぶりに舞台化される。
http://natalie.mu/comic/news/168341

◎在京AMラジオ放送3社は「ワイドFM」を開局したが、90.0メガヘルツまでしか受信できないラジオでは聴くことができないそうだ。そこで新聞15段を使った「ラジオは、いま買え。」キャンペーンを展開している。
http://dentsu-ho.com/articles/3427

◎学研グループの全教研は、自社開発のプログラミング教育をマレーシアで本格的に展開するそうだ。
http://ict-enews.net/2015/12/7gakken/

◎飲食店ネット予約サービス「LINE グルメ予約」の対応店は12月1日時点で全国4万5000店。飲食店ネット予約サービスとして国内最大級だという。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/1175

電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」は、シンガポールと香港に展開し、BtoBソリューションを顧客企業に提供する広告会社「バンド社」の株式100%を取得することになった。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/1207-008568.html

電通 の11月度単体売上高。既存メディアで前年を上回っているのはテレビだけ。新聞、雑誌、ラジオとも前年の数字を下回っている。特に新聞と雑誌が。日本の広告費は2009年からネットが新聞を上回っているが、マスメディアで存在感を示す電通でも今年6月度にネット(インタラクティブメディア)がはじめて新聞を上回った。年間でもいずれそうなるのだろう。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2015137-1207.pdf

アサツー ディ・ケイの11月度 単体売上高。雑誌は対前年比103.3%。
https://www.adk.jp/wp/wp-content/uploads/2015/12/release_Billing201511j.pdf
電通は前年比106.4%で、アサツー ディ・ケイは前年比101.2%。

KADOKAWAの「ラーメンウォーカー東京23区2016」が売れている。重版したそうだ。
http://www.work-master.net/201549005

◎「週刊文春」は、異論の多い「新語・流行語大賞」に一石を投じるべく、緊急アンケートを実施している。
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/5691
http://getnews.jp/archives/1292040

◎小田原を本拠地とする伊勢治書店がダイナシティ店、ブックプラザ伊勢治、外商センターをトーハンに事業譲渡したそうだ。
http://www.shinbunka.co.jp/news2015/12/151207-02.htm
http://www.iseji.net/productsindex2.html
二大取次の「直営書店」は、まだまだ増えよう。二大取次に問われているのは、「直営書店」を不良債権化しないための戦略だ。トーハンセブン&アイとの繋がりをより強めることになるし、日販はCCCとの繋がりをより強めるということになるということだ。

NHK連続テレビ小説「あさが来た」は12月4日に平均視聴率27.2%を記録した。「花子とアン」「あまちゃん」の最高視聴率を上回る数字だ。
http://mantan-web.jp/2015/12/07/20151207dog00m200003000c.html

◎コンピュータ技術書籍の翻訳・企画出版で知られるオライリー・ジャパンが20周年を迎えたようだ。
http://takoratta.hatenablog.com/entry/2015/12/08/003018
http://www.oreilly.co.jp/index.shtml
こういう出版社が存在する限り、紙の書物は絶滅しまい。

京都市上京区に誠光社をオープンした堀部篤史は「小さくても新刊を取り扱う書店が開店できるというモデルになりたい」と毎日新聞に語っている。<誠光社の特徴は堀部さんの選書ばかりを置いていること。「大型書店と違い全ジャンルの本があるわけではありません。『これが欲しい』と来店しても99・9%その本は置いてません」と堀部さん。「ふらっと来店して棚を見てから『これは』と思った本を見つけてほしい」と語る。誠光社の本棚は「メディア」で堀部さんは「編集者」という捉え方だ>
http://mainichi.jp/articles/20151207/ddl/k26/020/277000c
人は書店に書物との出会いを求めて足を運ぶのである。

◎葬儀関連会社「みんれび」は一周忌などの法要の際に読経を行う僧侶の手配を3万5000円で受け付ける「お坊さん便」をアマゾンでスタートさせた。
http://www.sankei.com/economy/news/151207/ecn1512070010-n1.html

電通平凡社の共同プロジェクトとして2010年11月に発足した「うつくしいくらしかた研究所」は、インバウンド観光需要に対応する新たな事業コンテンツとして、季節に寄り添う日本の暮らしや旬を英語で楽しめる暦アプリケーション「72 Seasons 〜A year seen through the ancient Japanese calendar〜」をリリースした。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/1208-008583.html

凸版印刷とNTTデータは、次世代型決済サービスの開発で協業することで合意した。第1弾として、VISAやMasterCardなどの国際ブランド加盟店で利用できるサーバー管理型プリペイドカードを提供する「国際ブランドプリペイドカードASPサービス」について業務提携を行い、金融業界や流通業界向けに提供する。
http://www.toppan.co.jp/news/2015/12/newsrelease151207.html

幻冬舎は、エキサイトが運営し、月間3000万人が利用する「エキサイトブログ」と連携し、電子書籍レーベル「エキサイトeブックス」を立ち上げた。「エキサイトブログ」で人気のブロガーが、幻冬舎の運営するWebマガジン「幻冬舎plus」向けに新たに執筆した作品を同サイトで連載記事として掲載する。その後、加筆や書き下ろしコンテンツを加え再編集したものを、電子書籍レーベル「エキサイトeブックス」の作品として、幻冬舎より電子書籍でリリースするそうだ。
http://corp.excite.co.jp/press/exblog20151208/

◎12月8日付毎日新聞「不適切な土地購入計画 経営委に諮らず」は次のように書いている。
「NHKがグループ会社9社と土地の共同購入計画を進めている。子会社がすでに350億円で用地を落札していることが7日分かった。NHK執行部が9社社長を集め、計画への出資を求めるなど、NHKが主導する形だが、NHKの最高意思決定機関の経営委員会に、この計画は諮られていない」
http://mainichi.jp/articles/20151208/k00/00m/040/186000c

◎五輪エンブレムの選び直しに「前回に選考した際の104件を大きく上回る1万4599件の応募があった」そうだ。
http://this.kiji.is/46825196586255867

◎「神戸アニメストリート」の目玉形ロゴに対して村上隆が使用中止を求めていたそうだ。神戸新聞は次のように書いている。<村上さんの代理人は「著作権侵害に当たる。村上作品を知らないで今回のロゴが出来上がるのはあり得ない」と主張。同ストリート側は「ロゴはNPO法人『KOBE鉄人プロジェクト』のデザイナーに制作を依頼した。村上作品のまねではない」とするが、オープン1周年を機にロゴ変更の予定があったことや裁判への発展は避けたいことなどから中止を決めたという>
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201512/0008629297.shtml

文藝春秋の「文學界」は朝井リョウの「ままならないから私とあなた」300枚を一挙に掲載した。朝井は次のようにツイートしている。
「発売中『文學界』1月号に、新作300枚「ままならないから私とあなた」が掲載されています。"ある点"で対照的な女性2人の13年間を書きました。物語の構成や要素の組み立て方など、これまでとは少し違っています。初の純文学系媒体かつ長編一挙掲載です。何卒お手柔らかに宜しくお願い致します…」
https://twitter.com/asai__ryo/status/674068602731888640

主婦の友社は、279万部のミリオンセラーとなった「話を聞かない男、地図が読めない女」の新装版を紙と電子で発売する。「楽天スーパーSALE」の期間にあわせ、12月5日(土)19:00〜12月10日(木)1:59までの期間中、電子書店「楽天kobo」 から予約すると、何と100円(税込)で購入できるキャンペーンを実施する。発売日は12月11日(金)で、紙版の価格は1,300円(税別)、電子版は1,170円(税別)。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000470.000002372.html

KADOKAWAからオトメ系ノベル「ジュエル文庫」が創刊された。創刊ラインナップは、「覇王」(花衣沙久羅、イラスト/桐矢隆)、「国王陛下をたぶらかすつもりが(処女バレして)てのひらで転がされました。」(永谷圓さくら、イラスト/成瀬山吹)、「聖女受胎 騎士皇子に奪われて」(柚原テイル、イラスト/ゆえこ)。
http://ddnavi.com/news/271133/a/

◎「ウォールストリートジャーナル」によればP&Gは、北米の媒体買い付け・計画業務の大部分を広告業界大手オムニコム・グループ傘下のオムニコム・メディア・グループに委託することになった。これまではピュブリシス・グループ傘下のスターコム・メディアベスト・グループが委託されていた。
http://jp.wsj.com/articles/SB12270577396625053624104581402840004364006

◎徳力基彦は次のように指摘している。
「例えば、シニア層は引き続き、テレビを長時間見ている上に、消費の中心でもあります。一方、若い世代がソーシャルメディアを使いこなしていても、たいして消費に貢献していません。そうすると、日本企業は論理的には従来のマスマーケティングをこのまま続けていても短期的にそれほど問題はないということが言えてしまいます」
http://www.advertimes.com/20151208/article211990/

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3)【深夜の誌人語録】

原因は意外なところに隠れているものである。