【文徒】2015年(平成27)6月11日(第3巻108号・通巻553号)

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1)【記事】偏見を捨て去り常識を疑え
2)【記事】読売・吉野作造賞が決定
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】偏見を捨て去り常識を疑え

客 忙しくて最近、本を読む時間すらないと嘆いている出版社の社員っているよね。
主 困ったものだよ。出版社の営業マンがそんなことを言っているから、出版市場は縮小の一途を辿るんだ。だいいち忙しいのは出版社に限らないわけだよ。暇を持て余しているサラリーマンは少数派と言って良いんじゃないの。要するに出版社に勤務していながら、読書が好きじゃないんだよ。
客 電子書籍だと内容が頭に入って来ないと主張する出版社の社員もいる。
主 それも電子書籍を使いこなしてないというだけの話だと思うな。
客 でも君にしたって紙の書物ばかり読んでいるじゃないの?
主 それは紙の書物だと速読が可能だからだよ。じっくり読むのであれば電子書籍のほうが良いとオレは思っている。電子書籍よりも紙の書籍の方が頭に入るということはないと思うよ。
客 ネットに対する偏見も相変わらず蔓延っている。
主 でもマンガの世界はだいぶ変わってきていると思う。ラノベ系の小説もそうだよね。この流れは、やがて他の領域も飲み込んで行くはずだ。やがてと言ったけれど、そんなに先の話ではあるまい。むろん、メディアのあり方が変わるということは、編集のあり方が変わるということだし、広告ビジネスのあり方が変わるということだ。
客 販売のあり方だって変わるだろうね。ともかく偏見を取っ払って、これまでの常識を疑ってかかる必要がある。
主 つまり、今まで以上に経営力が問われる時代なんだよ。

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2)【記事】読売・吉野作造賞が決定

第16回読売・吉野作造賞は、福永文夫(独協大教授)の「日本占領史 1945-1952 東京・ワシントン・沖縄」(中央公論新社)と木村幹(神戸大大学院教授)の「日韓歴史認識問題とは何か 歴史教科書・『慰安婦』・ポピュリズム」(ミネルヴァ書房)に決定した。
http://mainichi.jp/select/news/20150609k0000m040137000c.html
福永の「占領下中道政権の形成と崩壊―GHQ民政局と日本社会党」はオススメだ。木村に関しては、2013年6月7日に「シノドス」で公開された「『ガラパゴス化』する慰安婦論争 ―― なぜに日本の議論は受入れられないか」から次のような箇所を引用しておこうか。
「当時の日本人がこの国を訪問する理由がドラマやアイドルの影響であるはずもなく、また90年代のようにグルメやショッピングでさえその目的ではなかった。彼らの最大の目的は「買春」であったのである。いわゆる、『キーセン観光』の時代である。
韓国の女性運動はこの『キーセン観光』に着目した。もちろん、それは売買春が女性の人権にかかわる問題であるからである。だが、この『買い手』が日本人であったことにより、彼女らの問題提起は、すぐに韓国のナショナリズムと結びついた。
かつて自らを支配した日本人が、自国の『邪悪な支配層』と結託して、朝鮮半島に大挙再上陸し、札束をちらつかせて韓国女性たちを食い物にする。彼女らによってそう理解された当時の現実は、容易に日韓間に存在する『過去』の問題と結びついた」
http://synodos.jp/politics/4347

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3)【本日の一行情報】

◎愛煙家のオレからすると泣くほど嬉しい写真だ。煙草を吸う木下恵介の前に並べられたのは灰皿のコレクション。「オール讀物昭和36年1月号に掲載された写真だそうである。
http://hon.bunshun.jp/articles/-/3746

学研教育出版は、累計発行数70万部を突破した「日本列島ジグソー」を、地図情報、デザイン、イラストなど全面改訂し、「New日本列島ジグソー」として発売した。800円(税別)。これも「紙」ならではの商材である。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000491.000002535.html

TOKYO FMは、同局で放送される150以上の番組からゲストのトークの一部やライフスタイル情報、トレンド動向などトピックを選び出し、ニュースとして配信する活字メディア「TOKYO FM+」を立ち上げた。
http://www.47news.jp/topics/entertainment/oricon/culture/174064.html

博報堂、大広、読売広告社の5月度単体売上高。三社とも雑誌が苦戦している。
http://www.hakuhodody-holdings.co.jp/ir/pdf/%E3%80%90%E5%8D%9A%E5%A0%B1%E5%A0%82DY%E3%80%912015%E5%B9%B45%E6%9C%88%E5%BA%A6%E6%9C%88%E6%AC%A1.pdf

KADOKAWA・DWANGOは6月23日付で川上量生会長が社長に就任する。佐藤辰男社長は代表権のある会長に就く。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1506/09/news155.html

◎神戸連続児童殺傷事件の、当時「酒鬼薔薇聖斗」を名乗った加害男性が「元少年A」の名で手記「絶歌」を太田出版から刊行した。「1500円+税」という定価設定からして版元は売る気満々である。初版は10万だそうだ。
http://www.ohtabooks.com/publish/2015/06/11095648.html

ツイッターで戦争を火事にたとえた国家安全保障担当内閣総理大臣補佐官礒崎陽輔が19歳の女性に論破されてしまったと話題になっている。
http://togetter.com/li/832564

共同通信が16年間(1998年〜2014年)にわたって配信しつづけた書評を1冊にまとめた「書評大全」(三省堂)。現物を神保町の三省堂書店で見て、これはあれば便利だなと思いながら、16,500円+税を払う勇気を持てないまま二か月が経過しようとしている。
http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/dicts/encyc/bookreview/

晶文社から「昭和を語る――鶴見俊輔座談」が刊行される。二年前に亡くなった中川六平の最後の企画だ。
「中川さん、ようやく完成です。この編集作業をしている間、メモを見ながら、中川さんと会話をしているような気分だったよ。中川さんが晶文社に残していった企画はこれで最後になるけど、中川さんが遺してくれた財産は今後も大切に引き継いでいきます。またね!」
https://twitter.com/noritakasaito
http://www.shobunsha.co.jp/wp/wp-content/uploads/ec962b227a63576e65965735e208c949.pdf

◎出版社で販売の仕事をしているのであれば、宇田智子の「本屋になりたい ─この島の本を売る」(ちくまプリマー新書)は必読の一冊である。絵は高野文子だ!
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480689399/
ジュンク堂池袋本店は、いたるところに置いていいるようだ。いいね!
「『本屋になりたい』
http://www.junkudo.co.jp/mj/products/detail.php?isbn=9784480689399
那覇の公設市場の向かいで小さな古本屋を営む女主人。かつては私たちの同僚だった彼女の、二冊目を彩る絵の描き手はなんと高野文子さん!池袋本店の至る所に在庫ございます!(た)」
https://twitter.com/junkuik_comic/status/607890393548464129

◎「週刊実話」認定の「エロかわ歌手」ナンバーワンは西内まりやだ。「ニコラ」「セブンティーン」の専属モデル出身の女優でシンガーである。
http://wjn.jp/article/detail/6873234/

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4)【深夜の誌人語録】

行動には覚悟、決断、総括が欠かせない。