【文徒】2015年(平成27)8月5日(第3巻146号・通巻591号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】ジャーナリスト安田純平がシリアで消息不明?
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】ジャーナリスト安田純平がシリアで消息不明?

CNNは7月17日の時点で「ジャーナリスト安田純平氏、シリアで消息不明か」と書いている。
http://www.cnn.co.jp/world/35067556.html
ワシントンポストニューヨークタイムズの報道からすれば、ISに拘束されている可能性もあるようだ。
http://www.nytimes.com/aponline/2015/07/22/world/middleeast/ap-ml-syria.html
https://www.washingtonpost.com/world/middle_east/worries-grow-about-freelance-japanese-journalist-in-syria/2015/07/22/a8b5d010-3031-11e5-a879-213078d03dd3_story.html
近藤雄生は次のようにツイートしている。
「しかし今だに安田純平さん行方不明の件をテレビでも新聞でも一切見かけないのは異常だと感じる。明らかに行方がわからなくなってるのに、政府が発表してないから報じないっていうのは、安保法制反対とかいくら熱くやってても、全てが政府の手のひらの上って感じで虚しくなるなあ。。」
https://twitter.com/ykoncanberra/status/626062254853591041
一切報道されていないわけではない。産経は7月18日付で「シリアで邦人ジャーナリストの安否懸念 CNN報道」という小さな記事を発表している。
http://www.sankei.com/world/news/150718/wor1507180018-n1.html
佐々木伸 (星槎大学客員教授)も「日本人ジャーナリストら4人が不明 シリアで誘拐か、と米有力紙 ニューヨークタイムズ安田純平さんの名前が・・・」という文章を7月25日に発表している。佐々木によれば、この件に関して政府の会見などの場でも質問も出ているという。
http://blogos.com/article/124590/
しかし、大手メディアは全く報道していない。朝日新聞も、毎日新聞も、東京新聞でさえも。田中稔は8月3日次のようにツイートしている。
「シリア入りして消息が分からなくなっているジャーナリストの安田純平さんについて、首相官邸が主要メディアの幹部に対して『報じてほしくない』と自粛要請の圧力をかけている。そのため、国内マスコミは一部を除き一切報じない。異常だ。後藤健二さん殺害事件と同じ轍を踏もうとしている」
https://twitter.com/minorucchu/status/628372507574210561
果たして本当にそうなのだろうか。産経にしてもそうだが、CNNの記事を踏まえての報道であって独自の取材に基づくものではない。全国紙にしても、海外に独自の情報源を持っていないから、何らかの確証があるまで書けない。そう考えることもできるはずだ。
まして日本政府が何らかの積極的な動きをする可能性がまったくないのは常識だ。安田の周辺にいるひとたちは、普段は発信することに積極的な(商売である)連中であるが、安田を心配して不用意な発信を控えているのだ。安田は船戸与一が知れば惚れるであろう種類の男である。
政府および官邸が云々という書き方には、NYT(The New York Times)に代表されるGS(GHQ民政局)の植民官的な意識を曳きつぐ外国人記者クラブの連中の上から目線にそのまま乗っている軽薄を感じる。
安田純平が6月20日に次のようにツイートしてから既に45日が経っている。
「これまでの取材では場所は伏せつつ現場からブログやツイッターで現状を書いていたが、取材への妨害が本当に洒落にならないレベルになってきているので、今後は難しいかなと思っている。期間限定の会員制で取材経過までほぼリアルタイムで現場報告することも考えてたが、危険すぎてやっぱり無理そう」
https://twitter.com/YASUDAjumpei/status/612382136348332032

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2)【本日の一行情報】

講談社アメリカでの電子コミックの配信を9月からデジタルガレージと共同で設立したKodansha Advanced Mediaに切り替える。
http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=6706

◎ネットから生まれたマンガがTVアニメ化されることになった。「少年ジャンプ+」(集英社)の「とんかつDJアゲ太郎」がそうだ。
http://mantan-web.jp/2015/08/03/20150802dog00m200017000c.html

◎「集英社女性誌eBOOKS」は夏の半額キャンペーンを実施している。有元葉子の「ようこそ、私のキッチンへ」の電子書籍版は分冊化されていたり、「橘さくらの『運命日』占い決定版2015」の電子書籍版は、自分の星座の分冊だけを買うこともできるという電子書籍ならではの工夫がみられる。この点は好感が持てる。
http://ebooks.shueisha.co.jp/campaign2015/
上記URLのサイトはプロモーションHPであるという理由で、ここから直接買えないのだが、ここでも買えるようにするのが「ユーザーファースト」というものなのではないだろうか。これは別に集英社に限った問題ではないのだが、出版社はここら辺をどう考えているのだろうか知りたいものだ。

講談社のウエブマガジン「ゲキサカ」の石井健太編集長が「電通報」に登場。こう語っている。
「雑誌が全盛だった頃は、読者のためにとにかく面白いものを作って、それに世の中がついてくる時代だったと思うんです。つまり、コンテンツそのものへの課金で勝負できたのですが、ウェブメディアが伸びてきた今は、時代が変わってきてますよね。ウェブの世界では、販売収入で勝負するのが難しくなっている。それは良い悪いの問題でなく、そうなると、違うところ、つまり広告でお金を生んでいかないと厳しいと感じます」
http://dentsu-ho.com/articles/2855
石井編集長の言うように「ウェブの世界では、販売収入で勝負する」のは難しい。しかし、だからといって課金モデルを諦めてはなるまい。もちろん、紙に比べれば微々たる金額にとどまるのかもしれないが、プレミアム会員制を導入したり、コンテンツの紙の書籍化、電子書籍化も考えても良いはずだ。
更に言えばサッカーという専門性に依拠したECだって考えられないことはないし、シニアを対象にしたサッカーイベントを企画することも可能だろう。出版社にとってデジタルシフトとは「塵も積もれば山となる」ビジネスを創出できるかどうかである。「ゲキサカ」には、そうした潜在能力があると私は考えている。

◎お笑いコンビ・磁石の永沢がサイコロジカル・スリラー小説「メビウスの環」を電子書籍としてブックウォーカーから刊行することになった。
http://natalie.mu/owarai/news/155781

博報堂DYメディアパートナーズは昨年スタートさせたスマートテレビのホーム画面上で動画広告を配信・掲載するサービス「スマートTVAD」のネットワークを5,300万台のテレビ受信機に対応している「アクトビラ」にも拡大した。
http://www.hakuhodody-media.co.jp/newsrelease/service/20150731_10535.html

凸版印刷は、京都駅ビルデジタルサイネージによるクーポンなどの情報を配信するO2O2Oサービスの実証実験を8月3日(月)から30日(日)まで実施している。
http://www.toppan.co.jp/news/2015/08/newsrelease150803.html

◎岸本斉士のマンガ「NARUTO」(集英社)が、ハリウッドで実写映画化されるそうだ。
https://gunosy.com/articles/am0lC

◎マンガ家・赤松健GYAOがJコミックテラスを設立し、「マンガ図書館Z」を立ち上げたことは昨日も報告したが、8月3日に開催された説明会の模様を鷹野凌が報告している。鷹野の「プロ・アマチュアを問わず」とは?という質問に赤松は次のように答えている。
「出版社が新人を育てない。佐渡島さん(編集者)もそう言ってた。だから、新人の作品も扱うことにしました。誰でも投稿できるようになります。『comico』のチャレンジ作品と同様です。新人の作品にも広告付けます。収益は100%、投稿者に還元されます。もちろんプロも、雑誌に載らなかったような作品を掲載することが可能。『出版社に見捨てられたような作品は全てウチが拾い上げます!』」
http://www.wildhawkfield.com/2015/08/blog-post.html

◎映画「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」が全国427スクリーンで公開されたが、土日2日間で動員46万6,953人、興行収入6億346万6,200円を記録した。
http://www.cinematoday.jp/page/N0075371

内田裕也が次のようにツイートしている。
「3年半寄稿しているローリングストーンマガジン、今月号は『沖縄』について語った! 突然のメール。なんと、KKさんがキャンプシュワブ前のテントに突然現れたと言う。(続)」
https://twitter.com/UCHIDAYUYA/status/627808596684767234
「ナ、ナ、ナニ〜!? 確固たる政治的ポリシーを持っていればいいが、また、余計な事を言ったのか_ しばらくして、テレビのドキュメンタリー番組で訪れたとの事。(続)」
https://twitter.com/UCHIDAYUYA/status/627809488964206592
「オキナワの多大な犠牲に今の日本はある!ロックバンドは独特の個性を持った連中がいた。『紫』 『喜納昌吉』 『ビギン』達。米軍キャンプでステージに立っていた。『紫』はとてもインターナショナルだった!(続)」
https://twitter.com/UCHIDAYUYA/status/627810861957033985
「オキナワの基地問題は本当に難しい!『安保条約』によって、米銀基地によって、日本は守られてきた。KKさん、軽々しい発言はヤメロー!JOKEではすまされない。祈る 正論!ROCK'N ROLL! 内田裕也」(原文ママ
https://twitter.com/UCHIDAYUYA/status/627812582477271040
内田のいう「KKさん」とは樹木希林のこと。「リテラ」によれば東海テレビ制作のドキュメンタリー番組の収録のために「樹木は7月30日に辺野古の新基地建設を反対する人びとが集うキャンプ・シュワブのゲート前に現れ、大きなニュースになったばかり。このことに対して、夫・内田裕也は反応したのだろう」ということだ。
http://lite-ra.com/2015/08/post-1349.html

紀伊國屋書店2015年上半期分野別ベストセラー。
「文庫」は
1位「64上」(文藝春秋)
2位「舟を編む」(光文社)
3位「その女アレックス」(文藝春秋)
4位「64下」(文藝春秋)
5位「虚像の道化師」(文藝春秋)
6位「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(KADOKAWA)
7位「禁断の魔術」(文藝春秋)
8位「イニシエーション・ラブ」(文藝春秋)
9位「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(宝島社)
10位「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」(KADOKAWA)
https://www.kinokuniya.co.jp/c/20150728100607.html
「新書」は
1位「家族という病」(幻冬舎)
2位「新・戦争論」(文藝春秋)
3位「世界の極意」(NHK出版)
4位「男性漂流」(講談社)
5位「イスラーム国の衝撃」(文藝春秋)
https://www.kinokuniya.co.jp/c/20150728101100.html
「経済」の1位は「21世紀の資本」(みすず書房
「絵本」の1位は「いないいないばあ」(童心社)
「辞書」の1位「ジーニアス英和辞典」(大修館書店)
「辞書」2位「例解学習国語辞典」(小学館)
「児童書」の1位「マップス 新・世界図絵」(徳間書店)
https://www.kinokuniya.co.jp/c/20150728103456.html

◎「浪速のエリカ様」と言われている衆院議員の上西小百合のフォト自叙伝「小百合」が双葉社より刊行されるが、セクシーショットも収められているらしく発売前から重版がかかりそうなほど話題になり始めているそうだ。「週刊大衆」のグラビアも飾ってもらいたいところだ。
http://www.news-postseven.com/archives/20150803_339685.html
いずれ衆議院議員がAVに出演するような時代が来るかもしれない。

梶井基次郎の「檸檬」の舞台となった「丸善 京都本店」が8月21日にオープンするのを記念してhontoの電子書籍ストアは「檸檬」を無料でダウンロードできるキャンペーンを8月31日(月)まで実施する。まあ「檸檬」は青空文庫でいつでも無料で読めるんだけどね。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000009424.html

産経新聞のインタビューに朝日新聞元記者の植村隆が応じている。
http://www.sankei.com/politics/news/150803/plt1508030036-n1.html
http://www.sankei.com/affairs/news/150804/afr1508040012-n1.html

出口裕弘が亡くなった。私にとっては「天使扼殺者」の出口裕弘である。
http://www.asahi.com/articles/ASH836RDKH83UCLV00M.html
マガジンハウスの雑誌を支えたデザイナーの堀内誠一と親交があった。
http://www.heibonsha.co.jp/book/b159675.html

文藝春秋又吉直樹「火花」の40万部の大幅増刷(18刷)を決定。累計発行部数は209万部とダブルミリオンを達成した。芥川賞受賞作としても、同社発行の日本人作家としても最多部数である。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150804/k10010177921000.html

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3)【深夜の誌人語録】

みんなが良いと思うプランはつまらない結果を導き出すだけである。