【文徒】2015年(平成27)10月2日(第3巻185号・通巻630号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】アクセル・シュプリンガーがビジネス・インサイダーを買収
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
4)【人事】ハースト婦人画報社 10月1日付人事
5)【人事】講談社 10月1日付人事異動

                                                                            • 2015.10.2 Shuppanjin

1)【記事】アクセル・シュプリンガーがビジネス・インサイダーを買収

230以上の新聞・雑誌を発行し、ドイツ最大の新聞・雑誌・出版コングロマリットであるアクセル・シュプリンガーは、米インターネットメディアのビジネス・インサイダーを買収することになった。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NVFRRP6JTSEN01.html
アクセル・シュプリンガーは英フィナンシャル・タイムズ(FT)買収では有力視されていたが、周知のように日本経済新聞にさらわれてしまった。アクセル・シュプリンガーはドイツの新聞を代表するタブロイド紙「ビルト」を擁している。小林恭子は「東洋経済オンライン」でアクセル・シュプリンガーについて次のように書いている。
「現在のアクセル・シュプリンガー社の従業員は約1万3000人(2013年。前年より約8%増)。世界40カ国でビジネスを展開する。収入の43%がドイツ国外で生じたものだ」
http://toyokeizai.net/articles/-/78254
http://toyokeizai.net/articles/-/78254?page=3
アクセル・シュプリンガーはドイツ本国のほかにハンガリーポーランドチェコ、フランス、ロシア、スペイン、スイスなどを活動拠点としている。「ローリングストーンズ日本版」やクオリティペーパー「ウェルト」も手がけている。
ちなみにハインリヒ・ベルの小説を原作とするフォルカー・シューレンドルフ監督の映画「カタリーナ・ブルームの失われた名誉」で主人公の人生を破滅に追い込む新聞のモデルは「ビルト」であった。ドイツの1968年において「ビルト」は右翼を煽動したこともあり、学生たちから敵視され、ジャーナリスト出身のウルリケ・マインホフとアンドレアス・バーダー率いるドイツ赤軍の爆弾テロに2度も遭遇している。「カタリーナ・ブルームの失われた名誉」の脚本はシューレンドルフと「ハンナ・アーレント」を監督したマルガレーテ・フォン・トロッタによるものである。
https://www.youtube.com/watch?v=YdZ93YLzra8
http://eiga.com/movie/43353/
こうして書くとアクセル・シュプリンガーは旧来型のメディア企業のように思われるかもしれないが、さにあらず。物凄いスピードでデジタルシフトを進めていることでも知られている。
小林は、「東洋経済オンライン」でこうも書いている。
「(アクセル・シュプリンガーは)デジタル収入の割合を増やし、完全なデジタル企業になるために、欧州のいくつものデジタル企業(求人サイト、物々交換のサイト、デジタル広告企業など)を買収してきた。2014年第1四半期にデジタル収入の割合が初めて50%を超えた。年間収入は約30億ユーロだ。
会社全体をデジタル企業化させることを目標にし、その中に新聞業を位置付ける。未来の新聞業がほぼデジタル一辺倒になることを見越し、経営陣トップがこの目標を公言しながら、着々と準備を進めてきた」
ドイツの市町村向けポータルサイトのマイネシュタット・デ、ステップストーンを始め複数の求人情報サイトを擁しているし、自動車専門広告サイトのオートハウス24デ、不動産サイトのインモネント・デ、書籍書籍サイトのブエシェル・デ、金融情報サイトのフィナンゼン・ネットなどを傘下に収めているのだ。
こうしたラインナップにアメリカのビジネス・インサイダーが新たに加わることになったのである。
ところでアマゾンのジェフ・ベゾスもビジネス・インサイダーに出資しているが、どうするのだろうか。

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2)【本日の一行情報】

日本経済新聞社は、インターネット上に文書や写真などを保存・共有するサービスを提供するエバーノートとの連携を拡大した。日経BP社の「日経ビジネスオンライン」、「ITpro」(IT関連ニュース)、「日経テクノロジーオンライン」(製造業を中心とした技術情報)、「ケンプラッツ」(建築・不動産情報)という四つのサイトのコンテンツをエバーノート上で、キーワードや文脈に沿って表示できるようし、また「日本経済新聞 電子版」アプリでも連携機能が利用できるようにした。日経は、自社のメディアを「仕事に使える」ツールとして進化させようとしているようだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000011115.html

日経BP社のムック「データプレゼンテーションの教科書」で盗用が発覚。出荷を停止し、「ネット書店の在庫を買い取るなどの対応をとり、担当編集者ら3人を懲戒処分にした」そうだ。この記事は9月30日付だ。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG29H67_Z20C15A9CR8000/
10月1日午前11時現在、日経BP書店では、「この商品は完売いたしました」とあるものの、商品情報は削除されず、「掲載記事についてのお詫びと訂正」と「正誤表」へのリンクを載せることで対応している。
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/237170.html
http://business.nikkeibp.co.jp/bigdata/info/082800002/
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/contents/mgpdf/p_237170.pdf

◎宝島社の女性ファッション誌「sweet」(スウィート)は、日本水産とコラボし、健康食品「EPA+(エパプラス)」オリジナルパッケージを開発、数量限定で、全国のコンビニ、ドラッグストアで発売している。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000221.000005069.html

橋下徹大阪市長が新潮社に勝訴。橋下市長は府知事時代の2011年に「新潮45」11月号に掲載された野田正彰の記事「大阪府知事は『病気』である」に名誉を傷つけられたとして、発行元の新潮社に1100万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は110万円の支払いを新潮社に命じた。
http://www.asahi.com/articles/ASH9Y4FPZH9YPTIL00J.html

エドワード・スノーデンツイッターを開始した。
http://www.gizmodo.jp/2015/09/snowden_twitter.html

ツイッターが140字制限を撤廃する製品を開発しているらしい。
http://japan.cnet.com/news/service/35071203/

サイバーエージェントはアドテクノロジー分野におけるサービスの開発を行うアドテクスタジオを介して、情報キュレーションアプリ「グノシー」と広告事業で業務提携することになった。
https://www.cyberagent.co.jp/news/press/detail/id=11111&season=2015&category=ad

集英社の女性ファッション誌「BAILA」では着回し特集の「ストーリー」を「ナイルパーチの女子会」や「本屋さんのダイアナ」で直木賞候補となった作家の柚木麻子に依頼しているのか。
http://getnews.jp/archives/1168199

◎マガジンハウスが「オリーブ」のBOXセットを発売した。「ポータブル・オリーブBOX」は、「いっしょに持ち歩けるオリーブ」をキーワードに、(1)ポケッタブルのトートバッグ、(2)バンダナ、(3)ノート、(4)ミニブック「Messages from Olive」から構成されている。
http://magazineworld.jp/books/paper/5037/

文藝春秋は「週刊文春」電子版を楽天Koboでも配信を開始した。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/150930/prl1509301400079-n1.htm

書泉ブックマートの閉店で同店の往時を「本屋之雑談帖―神田神保町書泉ブックマートの閉店」は次のように懐かしんでいる。
「当時は三省堂書店の本店も、今の様な立派な建物ではなくて(確か大学に受かった翌年に、それ迄の建物を取り壊して現在のビルが建った様に記憶しています)、古色蒼然とした建物でありました。そんな関係で余り三省堂にはわたくしの好みにあう本が見付からず、専ら書泉グランデブックマートの二店に通ったものでした。この両店で本を買うと、中々凝ったデザインのブックカバーと、これまた凝った栞を付けてくれるので(時々三枚繋げると、一つのイラストに仕上がる栞を付けてくれました)、わたくしがそれが楽しみでこの両店には当時足繁く通ったものです」
http://open.mixi.jp/user/5087127/diary/1946549834
この気持ち、よ〜くわかります。

◎東京の書店でも時給はなかなか1000円を超えない。910円がスタンダードのようである。
http://kot-book.com/bookshop-hourly-wage/

山口組分裂で「週刊大衆」(双葉社)、「週刊アサヒ芸能」(徳間書店)、「週刊実話」(日本ジャーナル出版)の3誌が売行き好調のようだ。
http://otapol.jp/2015/10/post-4112.html
やくざ記事のみならず、例えば「週刊実話」の「黒字の介護事業を売却! ドロ沼ワタミいまわの際…」といった経済記事も実は読み応えがある。
「買い手の最終候補として、すでに損保ジャパン日本興亜ホールディングスと調整に入り、詳しい条件を詰めた上で10月上旬の基本合意を目指しているという。しかし、たとえワタミの希望通り高値売却にこぎ着けたとしても、ドロ船と化した同社の前途は多難である」
http://wjn.jp/article/detail/9400311/

◎CCCとTRCが共同で指定管理者となった海老名市立中央図書館がオープン。画像120枚が「ハフィントンポスト」にアップされている。
「1階は蔦屋書店では雑誌600タイトルや雑貨を販売、2階には「食」を中心とした『ライフスタイルライブラリー』を展開している。3階には、100席の学習室を設置、閉架書庫だった地下1階は『大人の隠れ家』として、読書スペースを設けている。
大きな特徴は、プラネタリウムだった4階を『キッズライブラリー』にしたこと。1階から直通エレベーターを設置し、大人のフロアを通ることなく、子どもがアクセスできるようにした。キッズライブラリーでは、授乳室や遊具のあるテラスも設けられた」
http://www.huffingtonpost.jp/2015/09/30/ebinshi-sokuho_n_8218716.html
「大人の隠れ家」も結構だが、図書館が民衆にとっての「知のインフラ」であるということを忘れてもらっては困る。一度、ニューヨーク市立図書館にでも見学に行ってみるべきだろう。

◎「2015 55th ACC CM FESTIVAL」のグランプリに東海テレビの「自社広告」が選ばれた。「戦争を、考えつづける」がそうだ。ネトウヨやシリアで戦争に参加した若者などが取り上げられている。大胆にもジャーナリズムの手法を「広告」に取り入れている。
http://www.acc-cm.or.jp/festival/2015fes_result/film-a.html
https://acc-festival.com/H9999.aspx?entryId=F1502474
クリエイティブ・ディレクターは都築徹。これまた東海テレビの「自社広告」だが、「自殺と向き合う」も都築の作品だ。
https://www.youtube.com/watch?v=IClvBTCqRDg&feature=youtu.be
死者をして語らしめる「イズモ葬祭」のCMもそう。
https://www.youtube.com/watch?v=_GTQi7MVDAo
https://www.youtube.com/watch?v=R_C2qeRFqyI

講談社の「小説現代」が電子版の配信を開始した。
http://www.sankei.com/economy/news/151001/prl1510010071-n1.html
文芸誌はやがて電子版のみとなるのではないだろうか。

紀伊國屋書店カドカワは「ニコニコカドカワ祭り2015」で展開される電子書籍の各種フェアで連携するそうだ。
https://www.kinokuniya.co.jp/c/company/pressrelease/20151001120456.html

◎「アイドルの私服」に特化したSTREET SNAP誌「idp magazine」が、10月16日に季刊を目指して創刊。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000157.000009612.html

◎マンガ賞「コミックナタリー大賞」2015年度の第1位は九井諒子の「ダンジョン飯」(カドカワ)に決定した。
http://comic-award.natalie.mu/2015/

◎マガジンハウスは「クウネル」11月売の発行をせず、来年1月にリニューアルすることになった。編集を藤本やすしのキャップに委託、OBの淀川美代子が編集長に就任する。
http://www.cap3hats.co.jp/

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3)【深夜の誌人語録】

忘れるべきことは綺麗さっぱりと忘れなければならない。でなければ後悔に苛まれることになる。

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4)【人事】ハースト婦人画報社 10月1日付人事

■斉賀 明宏
新:役員参謀室 室長
旧:広告本部 本部長(兼)
インターナショナルマガジンディビジョン ビジネスディレクター(兼)コーポレートセールス部 部長
■山口 大介
新:広告本部 本部長(兼)インターナショナルマガジンディビジョン ビジネスディレクター(兼)ラグジュアリーマガジンディビジョン ビジネスディレクター(兼)コーポレートセールス部 部長
旧:広告本部 副本部長(兼)ラグジュアリーマガジンディビジョン ビジネスディレクター

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