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1)【記事】読者の声をどう聞き届けるか
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
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- 2016.3.8.Shuppanjin
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1)【記事】読者の声をどう聞き届けるか(田辺英彦)
3月6日に第6回Twitter文学賞が発表された。
国内編の1位は舞城王太郎の「淵の王」(新潮社)で、海外編はケン・リュウの「紙の動物園」(早川書房)が選ばれた。以下、5位までは国内編が柴崎友香「パノララ」(講談社)、深緑野分「戦場のコックたち」(東京創元社)、長嶋有「愛のようだ」(リトル・モア)、東山彰良「流」(講談社)と続く。
海外編は、呉明益「歩道橋の魔術師(エクス・リブリス)」(白水社)、レアード・ハント「優しい鬼」(朝日新聞出版)、リチャード・パワーズ「オルフェオ」(新潮社)、セサル・アイラ「文学会議」(新潮社)となった。
今回は下北沢の本屋B&Bで、発表の瞬間をUstream中継と連動して、石井千湖、大森望、佐々木敦、杉江松恋、豊崎由美が参加して行われた。
http://matome.naver.jp/odai/2145699913509202601
http://matome.naver.jp/odai/2145643940898704601
「Twitter文学賞」は、1年間に出た新刊小説の中でおもしろかった本を、国内と海外からそれぞれ1作品だけツイートで投票する文学賞だ。Twitterのアカウントを持っている人なら誰でも参加できる。立ち上げた書評家の豊崎由美は「投票による民主的なランクづけには元々懐疑派でした。
というのも、本屋大賞に顕著なのですが、そこそこ本を読んでいる人たちによる人気投票は、とんでもなくだめな作品はランクインできないという見識の高さを示すと同時に、しかし、先鋭的な作品もはじいてしまうという無難なつまらなさを露呈してしまうからです。
ところが(中略)Twitterで『今年読んで面白かったガイブン(=海外文学/引用者註)』の投票を募ったところ、『このミステリーがすごい!』や『週刊文春ベストミステリー』よりもずっと刺激的な結果が出たんです。これはおそらく、わたしをフォローしてくださってる約1万人の方が、『そこそこ本を読む人』ではなく『すごく本が好き』な方だったからではないか。だとしたら、その皆さんを中心にして投票を募ったら、もしかすると『このミス』や『文春』や『本屋大賞』とは違う結果が生まれるかもしれない。そう思って、『Twitter文学賞』を立ち上げてみようと思ったんです」と、その動機を語っている。
そのため、投票を一人1作に限るルールを設けている。つまり、複数挙げると、思い入れの強さよりも無難な作品が上位にランクしがちだからだ。
http://tbookaward.blogspot.jp/2012/01/twitter_10.html
ちなみに、これまでの1位を見てみると、第1回(2010年)盛田隆二 「二人静」、ミランダ・ジュライ「いちばんここに似合う人」、第2回(2011年)津原泰水 「11 eleven」、ジュノ・ディアス「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」、第3回(2012年)小田雅久仁「本にだって雄と雌があります」、ウラジーミル・ソローキン「青い脂」、第4回(2013年)松田青子 「スタッキング可能」、ローラン・ビネ「HHhH――プラハ、1942年」、第5回(2014年)木下古栗 「金を払うから素手で殴らせてくれないか?」、閻連科「愉楽」となっている。
http://prizesworld.com/prizes/novel/twtr.htm
今回の国内編の10位以内(同票があるので13作品になるが)では講談社が最多の4冊ランクインしている。海外編の場合(こちらも計13作品だが)、早川書房が3冊、白水社、新潮社、河出書房新社、文藝春秋が各2冊と分散している。
早速、反響があったようで、国内編1位の舞城王太郎「淵の王」も売れているようだ。
「Twitter文学賞発表後、舞城王太郎『淵の王』がamazonで入荷待ち(2-4週間以内に発送)となってしまい、本当に申し訳ありません…!」
https://twitter.com/Shincho_Bungei/status/706779091198808064
新潮社出版部文芸のアカウントを通じて舞城王太郎もコメントを寄せている。
「ここ数年、Twitterは最も素早く読者の方々の反応をいただく場所の一つであり、それが肯定的ならもちろんのこと、否定的なものであってもありがたく拝読させてもらっています。」
https://twitter.com/Shincho_Bungei/status/706797100013527040
「そして作家は何の反応がなくとも小説を書き続け物語を作り続けますが、作家を勇気づけ、励まし、自分という箱の外から考えてみることを思いつくのは、他の方々からのご感想やご意見から以外にありません。」
https://twitter.com/Shincho_Bungei/status/706797325360898048
確かに、既存の賞に比べると「Twitter文学賞」は差異が表れている。しかし、視点を変えれば、SNSを利用した人気投票も、結局は閉じたサークルの中でしか機能しておらず、結果に対して「さすが」だとか「趣味がいい」だとか評するのは、所詮、自家撞着の域を出ないのかもしれない。
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2)【本日の一行情報】(田辺英彦)
◎日経新聞によると、イタリアの有力紙「スタンパ」を発行する、フィアット・クライスラー・オートモービルズの子会社イテディと、左派系主要紙「レプブリカ」や総合週刊誌「レスプレッソ」を発行するグルッポ・エディトリアーレ・レスプレッソが統合する。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM03H4U_T00C16A3FF2000/
民放3大ネットワークを所有する「メディア王」でもあるイタリアのベルルスコーニ元首相にメディア側が萎縮する中で、スキャンダル追及の中心となったのが「レプブリカ」と「レスプレッソ」だった。
◎3月4日の「雑誌の日」を記念した、日本雑誌協会、富士山マガジンサービス、マガジンサミットが実行委員会を務めるカバーガール大賞は、2年連続で石原さとみに決定した。以下、2位 有村架純、3位 土屋太鳳、4位 広瀬すず、5位 桐谷美玲。
http://magazinesummit.jp/covergirl/
◎伊坂幸太郎の長編小説「ガソリン生活」(朝日新聞出版)の文庫版が、3月7日に発売されたが、初版限定でカバー裏面に本作の番外編となる書き下ろし掌編小説「ガソリンスタンド」が印刷されている。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000064.000004702.html
◎スイッチ・パブリッシングの 新井敏記社長による「スイッチ」30周年記念トークショーが3月24日(木)に二子玉川 蔦屋家電2階E-room2で開催される。
http://top.tsite.jp/news/lifetrend/campaign/28024658/?sc_int=tcore_news_lifestyle
◎生誕85周年、没後5年企画として電子書籍化された小松左京のSF長編「首都消失」(徳間書店)は、電子オリジナル特典として「生頼範義・カバー原画」「劇場版『首都消失』ポスター」「小松左京直筆原稿」「小松左京ライブラリによる解説」が付く。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000016935.html
◎2月29日号の「AERA」で、ボイジャーによる片岡義男の全著作の電子化を取り上げ、以下のように述べている。
「湾岸戦争や日本語について考察した批評の大冊『日本語の外へ』(97年、現在品切れ)を契機に再評価の機運が高まった。これまで氏がテーマとしてきたアメリカ文化やサーフィンなどが、英語と日本語のバイリンガルで育ったことに由来する鋭い文化批評に基づいたものであったことが理解され、以来写真家、翻訳家としての再評価も始まった。……最近刊行された小説は、簡潔なスタイルの中に日本語を異化するような自在さがあり、作家として新たな黄金期に入っているといえる」
「デジタルは現在、あるいは未来のものだと思われていますが、そうではなく過去なんです。アーカイブなんて過去そのものですから。過去にはいろいろな過去があるでしょう。過去にはアクセスしたほうがいいですね」
http://dot.asahi.com/aera/2016030300311.html
http://kataokayoshio.com/news/160222aera/
◎第50回吉川英治文学賞は赤川次郎の「東京零年」(集英社)、第37回吉川英治文学新人賞は薬丸岳「Aではない君と」(講談社)に決まった。また今回創設された第1回吉川英治文庫賞には、畠中恵の「しゃばけ」シリーズ(新潮文庫)が選ばれた。
http://mainichi.jp/articles/20160304/k00/00m/040/050000c
http://subaru.shueisha.co.jp/books/1509_1.html
http://www.shinchosha.co.jp/news/blog/2016/03/03.html
◎講談社は、中国において製造小売業、サービス業を展開する達芙■國際控股有限公司(ダフネインターナショナル、■は女偏に尼)と包括的業務提携契約を締結した。2001年より中国で「ViVi」中国語版を刊行してきたが、今後は中国版雑誌出版に関連するWEB・SNS展開、雑誌公式の掲載商品販売、イベント、専属モデル発掘、雑誌ブランドを活用した商品開発(被服・靴・雑貨・化粧品等)を両者が連携して行うことになる。
http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/20160307daphne.pdf
◎とりわけ若い女性に人気のInstagramだが、タイムラインから写真集が作れるWebサービス「Instantbook」なるプリントブックがあったのか。「あの時あの瞬間の想いや記憶を“本”というカタチにして残し」たいという要望に応え、コンテンツワークスが昨年はじめた。WEB雑誌に限らず、デジタルから紙へという需要は、少なからずあるようだ。
https://www.instantbook.jp/
サイズは144mm×96mm×12mm(専用ブックケース付き)、122ページ・写真点数60枚で972円(税込)は手頃な値段といえるだろう。
◎文化庁のデータベースサイト「メディア芸術データベース(開発版)」に、新たにメディアアート分野の催事・イベント情報が検索可能となるデータベースが公開された。
http://www.toppan.co.jp/news/2016/02/newsrelease160229.html
http://mediaarts-db.jp/
◎丸尾末広の漫画「少女椿」(青林工藝舎)の実写映画化が伝えられていたが、ついに5月下旬よりシネマート新宿ほか全国の劇場にて順次上映される。江戸川乱歩や夢野久作などの影響が色濃いエログロで幻想的、怪奇的な作風がどう映像化されたのか、興味深い。
http://natalie.mu/comic/news/178709
夢野久作の原作を松本俊夫が映像化した「ドグラ・マグラ」も4月にDVDが再発される。販売元のディメンションは小川紳介のドキュメンタリー映画もDVD化している。
http://www.dig-mov.com/
◎50万部を突破した坂木司の人気ミステリー小説「和菓子のアン」(光文社)。その続編「アンと青春」の刊行を記念して、2月26日、光文社にてオリジナル和菓子の試食会が開催された。
http://ddnavi.com/news/290202/a/
https://twitter.com/dorobohitori/status/703152892757213186
https://twitter.com/bungeitosyo/status/704250979428884480
光文社の会議室で行った書店向けの懇親会のようだが、こうしたイベントを読者に向けて行えないものか。費用対効果を考えると労力や金額の面で難しいのだろうが、協賛を取り付けるなどして、小中規模でいいから文芸分野でももっと開かれたイベントがあってもいいと思うのだが。
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3)【深夜の誌人語録】(田辺英彦)
「蛍雪の功」は成るものだ。それを実感したのは遠い昔。「蛍雪」をなくしてしまったのは、なにも電力のせいだけではない。