【文徒】2016年(平成28)7月7日(第4巻126号・通巻813号)

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Index--------------------------------------------------------
1)【記事】「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」が刊行された
2)【記事】小学館の女性ファッション誌「CanCam」のリアルシフト
3)【記事】「ビッグコミックスピリッツ」が付録を憲法にして話題に
4)【本日の一行情報】
5)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」が刊行された

7月22日(金)から、公開される映画「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」の原作本が刊行された。版元は筑摩書房でもなければ、boidでもない。驚くことなかれ、世界文化社だ!映画では描ききれなかった、幼少期から脚本家としての名声を得るまでの道のりも描かれているのだそうだ。買うべし。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000174.000009728.html
ダルトン・トランボは「赤狩り」(マッカーシズム)によってハリウッドを追われた脚本家である。非米活動委員会の標的となったハリウッドテンのひとりである。
1947年、その第一回公聴会に出席したトランボは共産主義者であるのか、また過去そうであったのかという質問に対してアメリカ合衆国憲法修正第一条「合衆国議会は、国教を制定する法律もしくは自由な宗教活動を禁止する法律、または言論・出版の自由もしくは人民が平穏に集会して不満の解消を求めて政府に請願する権利を奪う法律を制定してはならない」を盾に証言を拒否。すると議会侮辱罪に問われ、禁固刑の実刑判決を受ける。
ハリウッドを追放されたトランボは、メキシコに移住し、偽名を使って脚本を書き続けた。そのなかの一本「黒い牡牛」は何とアカデミー賞を獲得してしまう。また、これはトランボの死後のことになるが「ローマの休日」の脚本もトランボであることが判明する。つまり、トランボにとって「黒い牡牛」は二度目のアカデミー賞であったのだ。
トランボはキューブリックの「スパルタカス」をもってハリウッドに復帰する。そうそうロバート・アルドリッチギリシア悲劇的西部劇「ガン・ファイター」の脚本もトランボである。わが国でトランボの名前を一躍、有名にするのは、自らの小説を自ら脚本化し、なおかつ自らメガホンをとって監督までしてしまった「ジョニーは戦場へ行った」が1973年、東京では「みゆき座」で公開され、大ヒットしたことによる。
ただし、この映画に対する私の評価はそれほど高くはない。その情緒的すぎるタッチについていけなかった。もし監督がトランボではなく、昨晩も飲みながら話したことなのだが、ルイス・ブニュエルであったならばと思わずにいられなかったのである。
ダルトン・トランボは実際にアメリ共産党員であったのだが、アメリカにおける「イスラエル」のイメージを決定したといっても良い「栄光への脱出」の脚本家であったことも忘れてはなるまい。
実は、この3月、講談社を会場にして開催された「デジタルジャーナリズムフォーラム」で私はダルトン・トランボの義理の息子の講演を聴いている(ここに出席していた多くのジャーナリストがトランボに反応できなかった。その程度の感性しか持ち合わせていないジャーナリストに例えば蓮實重彦が「バカ」という言葉を投げかけたとしても、それは正当な権利の行使である)。
Google News担当責任者のリチャード・ギングラスがそうだ。ギングラスはトランボがアメリカ社会から追放されることになった「赤狩り」を念頭に置き、Google言論の自由にとって、重要な役割を果たし得ることを強調していた。それに比べ日本のIT起業家は金儲けのことしか考えていないような連中が圧倒的に多いような気がしてならない。それだけ雑誌のデジタルシフトはつけ入る隙があるのだけれど…。
蛇足ながら、トランボ同様にハリウッドテンに名前を連ねていた作家にエイブラハム・ポロンスキーがいる。私は「ジョニーは戦場へ行った」よりも、ポロンスキーがロバート・レッドフォード主演で撮った「夕日に向かって走れ」のほうが好きだ。「夕日に向かって走れ」の「暗さ」は決して赤狩りと無縁ではないのである。
http://d.hatena.ne.jp/teru0702/20160411/1460336459

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2)【記事】小学館の女性ファッション誌「CanCam」のリアルシフト

小学館の女性ファッション誌「CanCam」と品川プリンスホテルがこの夏タッグを組み、夏の新定番スポット「CanCam×Shinagawa Prince Hotel Night Pool」を7月16日(土)〜9月19日(月・祝)の期間限定でオープンする。プールサイドのデザインは「CanCam」編集部が監修し、敷地内では限定グッズを販売する。また、オープン期間中、品川プリンスホテル イーストタワー1F「カフェレストラン24」(24時間営業)では、 「CanCam」が考案したオリジナルメニューが登場する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000020066.html
雑誌のこうしたリアルシフトは重要だ。私が雑誌のデジタルシフトが必要だというとき、それは同時にリアルシフトの必然性も意味する。雑誌にとってデジタルシフトとリアルシフトは表裏の関係にあるのだ。だから、この場合、問われるべきは、こうしたリアルシフトにデジタルシフトがいかに連動しているかという点に尽きよう。
デジタルシフトも、リアルシフトも、書店にオーディエンスがやって来るのを漫然と待っているのではなく、こちらからオーディエンスのもとに出かけるということにほかならない。むろん、オーディエンスはオーディエンスにとどまらない。オーディエンスは生活者であり、消費者でもある。ここにブランドシフトという課題が生まれる。
わが国の雑誌はデジタルシフト(やリアルシフト)を後回しにして、ブランド戦略を構築してしまったため、逆にデジタルシフト(やリアルシフト)に後れを取ってしまったのである。

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3)【記事】「ビッグコミックスピリッツ」が付録を憲法にして話題に

日本国憲法」は島本脩二の手によりベストセラーとなって以来、小学館にとってキラーコンテンツのひとつであるようだ。日本国憲法を付録とした「ビッグコミックスピリッツ」が話題になっている。7月6日付東京新聞が「こちら特報部」で取り上げている。親会社の中日新聞では「中日春秋」で取り上げている。
「おととい発売されたコミック誌『週刊ビッグコミックスピリッツ』最新号には、異色の付録がついている。日本国憲法だ。とじ込みの冊子に、前文から一〇三条までの全文と漫画家たちが「今の日本」をイメージしたイラストが並んでいる
岩手県出身の吉田戦車さんのイラストは、東日本大震災で大津波に破壊された海辺の町。かさ上げ工事が進む被災地の一画に『見晴らし台』が築かれた情景を描き、『将来どんな町ができるのか、まだ誰にもわからない』と記した」
http://www.chunichi.co.jp/article/column/syunju/CK2016070602000113.html
NHKもニュースで紹介した。
「アイドルの1人は『表現することは自由で憲法に守られているのは心強い』と記しています。別のアイドルは『憲法23条で学問の自由が保障されていることで当たり前のように学校に通えることに気付いた』などと語っています」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160704/k10010582781000.html
共同通信も配信しているし、朝日も毎日も紹介している。
http://this.kiji.is/121200059661631494?c=39546741839462401
http://mainichi.jp/articles/20160702/ddm/041/040/068000c?platform=hootsuite
http://www.asahi.com/articles/ASJ6Y5D4WJ6YUCVL025.html
町山智浩のツイートも紹介しておこう。
ビッグコミックスピリッツとSAPIOの編集者は近所の飲み屋で出会って殴り合いとかしないのかな。てか、しろ!」
https://twitter.com/TomoMachi/status/750173792689745920

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4)【本日の一行情報】

◎学研プラスとカバヤ食品とがライセンス契約を締結し、カバヤ食品より「学研の図鑑LIVE」のミニサイズ版「学研の図鑑LIVEポータブル版」(玩具菓子)が発売された。「学研の図鑑LIVEポータブル版」は縦130mm×横95mm×厚さ10mm、全14ページで、AR(拡張現実)機能付きだそうだ。価格は300円。
https://www.kabaya.co.jp/campaign/index.php?c=release_view&pk=244
書店でも売れば良いのに。逆に「学研の図鑑LIVE」をお菓子とともに売るとか。両者を分断しては相乗効果をMAXに発揮できないはずだ。

◎本当なのだろうか?ベネッセの生活実用誌「サンキュ!」の男性読者比率!2011年には3.7%だったが、2015年に10.7%と約3倍に増加しているという。dマガジンにおいても、読者の約3割が男性だそうだ。
http://eczine.jp/news/detail/3334
男性向けに特化した「生活実用サイト」があっても良いよな。

青山繁晴西梅田スクウェア前での演説で「親が生きていたら文藝春秋本社を襲撃していることでしょう」とか「文藝春秋から『ついに虎の尾を踏んでしまった』とメールが来た!」と語っている。
http://matome.naver.jp/odai/2146639942867384601/2146762264051605903

深田恭子が、写真集「This is Me」と「AKUA」を集英社から2冊同時発売する。「This is Me」は女性誌「MAQUIA」の、「AKUA」は男性誌週刊プレイボーイ」の責任編集だそうだ。
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20160704-OHT1T50255.html

トーハン主婦の友社と共同で「夏の児童書アウトレットセット」をトーハン独占販売のMVP商品として7月上旬より全国約500書店で実施する。希望小売価格は旧価格版の最大50%オフ、全品800円以下の新価格(本体)となる。
http://www.tohan.jp/topics/20160705_778.html

◎女性向けファッションメディアアプリ「TOPLOG」は、3月1日のサービス開始から約4ヶ月で30万ダウンロードを突破したそうだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000013798.html

◎エキサイトは、「エキサイトニュース」内で展開している女性メディア「ローリエ」(LAURIER)」を独立させ、「ローリエプレス」として7月4日(月)にリニューアルした。「ローリエプレス」は、未婚女性に向け、恋愛・ファッション・美容・ライフスタイルといった女子力アップに役立つ情報を届けるメディアだそうだ。
http://laurier.press/
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000517.000001346.html

ディスカヴァー・トゥエンティワン主催のビジネス書大賞2016の大賞はベン・ホロウィッツの「HARDTHINGS」(日経BP社)、準大賞は中室牧子の「『学力』の経済学」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、審査員特別賞は松尾豊の「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」(KADOKAWA)に決まった。
http://logmi.jp/151098

◎文学的というのであれば、湊かなえの「ユートピア」(集英社)よりも押切もえの「永遠とは違う1日」の方が上だと私などは思っているけれど、違うかなあ?
http://lite-ra.com/2016/07/post-2390.html

中京テレビ放送は、自社コンテンツをネット配信する専用サイトを今秋ローンチする。
http://www.asahi.com/articles/ASJ7444HXJ74OIPE00F.html
小松伸生社長は記者会見で次のように述べている。
「現状維持は後退と考え、その環境変化に対応すべく新しい事業に積極的に取り組んでいきたい。特に、番組などのネット配信は非常に重要なテーマだと認識しており、この秋には、自社で新しいインターネットの動画配信のプラットフォームとコンテンツを開発し、そのサービスに入りたい」
http://www.ctv.co.jp/company/press/2016/20160704.pdf
雑誌にしても、現状維持は後退にほかなるまい。デジタルシフトは雑誌にとっても重要なテーマである。

◎サッカーの元日本代表監督の岡田武史が5万部突破のビジネス書「最高のリーダーは何もしない―――内向型人間が最強のチームをつくる!」の藤沢久美と対談し、次のように語っている。
「すべての俺の行動の原点がそこにある、と自分では思っているんだけど、どうして『物の豊かさより心の豊かさ』と思うようになったのかというと、一つのきっかけは、学生の頃に読んだローマ・クラブのレポート『成長の限界』(ダイヤモンド社)なんだよね」
http://diamond.jp/articles/-/93323

GMOインターネットグループGMOメディアが運営する、ファッション共有SNS「コーデスナップ」は、大手芸能事務所「ワタナベエンターテインメント」直営のスクール事業を展開する、ワタナベエデュケーショングループに賛同し、「全国新人発掘オーディション」に協力することになった。
https://www.gmo.jp/news/article/?id=5386
一昔前であれば雑誌の出番であったのにと嘆いてはなるまい。紙にとどまっていた頑迷さと鈍感さこそ厳しく自己批判する必要があろう。

◎オプティムは、関東・東海地方に限定して販売していた雑誌読み放題サービス「タブホ」を、全国のファミリーマートで7月5日より販売開始した。
http://www.optim.co.jp/news-detail/20091

◎元アニプレックス代表取締役の夏目公一朗が7月1日付けで、KADOKAWAの非常勤顧問 戦略アドバイザーに就任した。KADOKAWAからすればアニメ強化が狙いなのだろう。
http://ir.kadokawa.co.jp/topics/20160701_n4iad.pdf

KADOKAWAは夏のコミックスフェア「角コミ★2016 SUMMER」を、7月初旬から8月下旬にかけて全国の書店約2,000店で開催する。フェアステッカーが貼られたコミックスを1冊購入すると、描きおろしのコースターをその場でプレゼントする。コースターは全30種。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002483.000007006.html

ディー・エヌ・エーDeNA)とKADOKAWAは、KADOKAWAのゲーム制作ソフト「RPGツクールMV」で開発されたタイトルを、DeNAが運営するプラットフォーム「AndApp」を使って配信するすることを発表した。
http://japan.cnet.com/entertainment/35085327/

◎認定特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構(コンボ)は、7月5日、講談社の「週刊現代」山中武史編集長に対して、抗議文書を送付したという。
講談社が出版する「週刊現代」7月9日号の特集「医者に言われても断ったほうがい『薬と手術』」特集のなかにおいて、「衝撃の事実が明らかに 統合失調症の薬で85人死んだ」および「『うつ病』と『統合失調症』は薬を飲めば飲むほど悪くなります 認知症も考え直したほうがいい」という記事が掲載されました。
この2つの記事において当機構の理事・職員の発言が著しく歪曲、加工されて掲載され、さらにこれらの発言が記事の60.2%を占める形で無断で使用されています。このように発言者の意図とは大幅に異なる歪められた発言が、あたかも当機構の見解と受け取れるかのように編集され「週刊現代」に掲載されたことはたいへんに遺憾であり、当機構は講談社および「週刊現代」編集部に対して厳重に抗議します〉
https://www.comhbo.net/wp-content/uploads/2016/07/gendai-kougi.pdf

◎日本交通(東京)は5日、サントリー食品インターナショナルと提携し、「伊右衛門 おもてなしタクシー」を期間限定で導入し、、タクシー車内で緑茶の「伊右衛門」を配布する。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ05H5E_V00C16A7000000/

アッバス・キアロスタミが亡くなった。山形国際ドキュメンタリー映画祭だったと思うが、「クローズ・アップ」を見たときの衝撃は今も残っている。「トラベラー」に息づくサッカー愛も良かったよなあ。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/07/04/abbas-kiarostami_n_10806636.html

◎イーブックジャパンが2016年上半期電子書籍ランキングを発表した。男性向けトップテンには集英社が5点、講談社が3点、KADOKAWA少年画報社が1点ずつランクインしている。女性向けトップテンでは講談社が4点、集英社が3点、一迅社小学館白泉社が1点ずつランクインしている。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/news/detail/?news_id=33436

◎「Instagram」で、7月現在59万人を超えるフォロワーを擁する山崎佳(@keiyamazaki)のワンプレート朝ごはんの記録をまとめた第2弾『MORNING TABLE』が、7月30日(土)に主婦の友社から発売される。
http://corporate.shufunotomo.co.jp/newsrelease/9810/

◎もっともデジタルシフトが進んでいると言われているハースト婦人画報社でも、まだこの程度なのだという意味では、競合他社は安心できるはずだ。毎日新聞が「婦人画報」を取り上げている。
「…リーマン・ショック直後に編集長に就任した際、イヴ・ブゴン社長から『うちは出版社ではありません。コンテンツプロバイダーです』と言われた出口さん。2年ほどは新しいビジネスモデルを考える会議を重ねた。そして2010年に始めたのが編集部厳選の食品やギフトの通信販売『婦人画報のおかいもの』。13年には京都市の協力も得ながら『極上の』京都情報を発信するウェブメディア『きょうとあす』をスタートさせた。一昨年からは読者参加型の伝統産業支援プロジェクト『つくろう!日本の手仕事の未来』も開始している」
http://mainichi.jp/articles/20160706/ddm/015/040/050000c

鈴木文彦( 元・文藝春秋常務取締役)、筒井ガンコ堂( 元・平凡社 文筆家)、酒井義孝( 元・新潮社 文筆家)、但馬一憲( 元・講談社写真部次長 写真家)がパネラーとなって「池波正太郎記念文庫開設15周年記念シンポジウム 担当編集者とカメラマンが語る あの時の池波正太郎」が9月17日(土)に開催される。
http://ikenami.info/news/symposium201609/

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5)【深夜の誌人語録】

現在できないことをできるようにするためには努力しか方法はあるまい。そして、努力に妥協はない。