【文徒】2016年(平成28)7月14日(第4巻131号・通巻818号)

ひとり出版社を立ち上げました。第一弾は「知られざる出版『裏面』史 元木昌彦インタヴューズ」です。刊行にあたりクラウドファンディングを立ち上げ、広くパトロンになってくれる方々を募集しています。何とぞ宜しくお願い申し上げます。
https://camp-fire.jp/projects/view/9683


Index--------------------------------------------------------
1)【記事】雑誌のデジタルシフトについて
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】雑誌のデジタルシフトについて

「DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT 2016 IN KYOTO」に参加したコンデナスト・ジャパン北田淳代表取締役社長は、セッション「トップランナーたちが語る出版ビジネスの未来」において
「デジタルシフトするにあたって、まずやったことは、デジタルの専門家を呼んできて、そのやり方を教わること。そして、逆にやらなかったことは、デジタル専門の部署を作らなかったことだ。紙をやる人は、デジタルもやる。紙だけをやりたい人は、他所でやってほしい。これは社内のスタッフだけでなく、社外のスタッフについても、しつこく浸透させた」
と語り、ハースト婦人画報社のイヴ・ブゴンCEOは
「パブリッシャーがデジタルシフトするには、トップダウンで全社的に、その意思を浸透させることが必要だ。そのうえで、すべての組織、プロセスを変えていかなくてはならない」
と語った。「DIGIDAY」の次のような指摘は、その通りである。
「レガシーなパブリッシャーにおいて、デジタルを理解するエディトリアル人材を確保するのも、緊急課題のひとつだ。プリントに携わってきた人は、プリントに固執する傾向が強く、デジタルに馴染まない場合も多い。また、デジタル専用の人材を新たに雇用しても、逆にパブリッシャーとしての矜持を理解できるとも限らない」
http://digiday.jp/publishers/dps2016_5-things-weve-learned/
ある時期まで大手出版社の屋台骨を支えて来た女性ファッション誌は、嫌になるほど紙の雑誌に固執する傾向が強いのは周知の通りである。
しかし、アート志向の強い欧米のモード誌であればまだしも、実用性に足場を置き、紙の一頁にそれこそスマホインターフェイスよりも小さな写真を何点入れたか競い合っていた日本のファッション誌は、現状のままではネットの新興勢力に読者を根こそぎ奪われる可能性があることを忘れてはなるまい。
ただし救いがないわけではない。日本の女性ファッション誌は実用性に全面的に依拠してきたがゆえに、メディアやコンテンツとしてではなく、サービスとしてデジタルシフト(厳密にいえばスマホシフト)を図りやすいのである。
書店に読者が足を運んでくれるのを漫然と待つのではなく、こちら側からオーディエンスのもとにデジタルとリアルを通じて出かけていく、重層的なサービスへと転換できるかどうかである。その結果、コミュニティが自然と生成されることになるのであれば、理想的な「雑誌の未来」がそこにある。
紙の雑誌は季刊であっても良いではないか。資生堂の「花椿」がそうだ。「大事なのは月刊誌を残すことではなく『花椿』を残すこと」とは、含蓄のある言葉である。
http://www.fashionsnap.com/news/2016-07-12/hanatsubaki-renewal-purpose/
女性ファッション誌の編集者は、一度、週刊誌でも経験して、ジャーナリスティックな知性を磨きなおしたほうが良いかもしれない。

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2)【本日の一行情報】

◎「ポケモンGO」の成功はまだまだ序の口である。そう、とんでもない広告収入を期待できそうなのである。
東洋経済オンライン」で本田雅一が「『ポケモンGO』超絶人気は、まだまだ序の口だ」を書いている。
ポケモンGOはプレーヤーがいる場所や現実の風景などと連動する。今後、ポケモンGOは世界中の観光地や企業などと連携したり、任天堂の他キャラクターとのAR空間での交流など、現実/仮想といった区別を越えて多様なコンテンツが集まるプラットフォームに育っていくだろう」
http://toyokeizai.net/articles/-/127064
例えば、書店にピカチュウがいるとなれば、みんな行っちゃうでしょ。すでに、DNPIngressとコラボして、丸善ジュンク堂文教堂がポータルになっている。
http://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/725960.html
ちなみに、「ポケモンGO」はIngress(ナイアンティック社の位置争奪・広告収益型無料ゲーム)というプラットホーム上にある。ネット覇権とはプラットホームの争奪であるということを、このコラボは意味しているが、Ingressのミッションには「現実世界の友情を作る」ともある。
http://japan.cnet.com/sp/target2020/35078185/
ナイアンティック社の担当だった川島優志アジア統括本部長によると、任天堂側は故岩田聡社長(昨年7月死去)の肝いりで進められたプロジェクトだったようだ。アメリカ版の「公開」ボタンを押すとき、川島は「Dreams come true!」とスピーチしたという。
https://plus.google.com/+MasashiKawashima/posts/9nrAZig9o2j

◎第1巻が刊行された高野ひと深の「私の少年」(双葉社)は、「まんが史上最も美しい第1話だ」なんて言われているんだね。
http://ddnavi.com/news/310550/a/
双葉社はノベライズにも取り組んだ方が良いと思う。それも一流の作家を起用して。映像化は当然考えていることだろう。

◎ニッチとか、マイナーとか、細分化、ナローが雑誌にとってのキイワードだと思う。光文社の写真週刊誌「FLASH」が「おそ松さん」声優の神谷浩史とマンガ家の中村光が結婚していることをスクープしたのだが、これがネットで話題になっている。
https://netatopi.jp/article/1009836.html
公式サイトを見てみると最新号の記事紹介には神谷浩史の名前もなければ、中村光の名前もない。何故ならスクープといっても、小さな小さな写真が掲載されているだけなのである。しかし、ファンにとっては衝撃的なのだろう。
http://www.kobunsha.com/shelf/magazine/current?seriesid=101002

◎「牧太郎の二代目・日本魁新聞社」。鳥越俊太郎にエールを送っている。
http://www.maki-taro.net/archives/date/2016/07/13

◎CM制作会社のAOIプロとTYOが経営統合するのか!
http://www.aoi-pro.com/ir/news/20160711-2
http://group.tyo.jp/company/
日経によれば「東北新社を抜き、国内シェア首位のCM制作グループが誕生する」ことになる。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ11HSY_R10C16A7TJC000/

◎宝島社の「日本の給料&職業図鑑 Plus」は山田コンペーが運営する「給料BANK」の書籍化第2弾である。宝島社はネットから才能やコンテンツを引き出すのが上手い。どんなジャンルでもそうだが、正攻法がゲリラ戦に切り崩される時代だ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000397.000005069.html

日本紙パルプ商事の子会社であるリーディングポートJPは、複合書店「BOWL ららぽーと富士見店」と「BOWL ららぽーと海老名店」の2店舗で「九州応援フェア」を開催している。熊本県PRマスコットキャラクター「くまモン」グッズや、同地域の商品を中心に販売し、被災地経済に貢献するとともに売上の一部を被災地への義捐金として寄付するという。「くまモン」も来店するよ。
https://www.kamipa.co.jp/news/info/451
「BOWL」は、とても魅力的な書店である。

◎米Twitterは、CBS Newsとの提携により、大統領選の山場の1つである民主党共和党という両党の全国大会をライブ配信することになった。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1607/12/news105.html

博報堂、大広、読売広告社の6月度単体売上高。三社ともインターネットとアウトドアが好調だ。雑誌は博報堂が前年比99.9%、大広が前年比105.7%、読売広告社が前年比183.5%となっている。
https://goo.gl/xntJW0

講談社の「週刊ヤングマガジン」連載中の「でぶせん」が、「Hulu」にてオリジナルドラマとして実写化される。劇団「ナイロン100度」の森田甘路が主演する。
http://www.cinemacafe.net/article/2016/07/11/41888.html

小学館の「週刊少年サンデー」は13日発売の33号から、紙版と同時に電子版をサイマル配信している。
http://mantan-web.jp/2016/07/13/20160712dog00m200058000c.html

松下幸之助の随想集「道をひらく」とハローキティのコラボ!PHP研究所は「ハローキティの『道をひらく』」を刊行する。
https://www.atpress.ne.jp/news/107529

花王が地肌クレンジングシャンプー「メリット ピュアン」のキャンペーンとして、2016年4月末より展開している「APP(あたまポンポン)されちゃおプロジェクト」第2弾は、小学館のマンガ誌「Cheese!」とコラボして、人気漫画5作品の特別編が読める特設サイト「APP HAPPYストーリー」を、2016年7月12日(火)より開設している。
http://www.47news.jp/topics/prwire/2016/07/279046.html

◎「週刊文春」が「NHKの某地方局に勤める現役女性アナウンサー(20代)が、『愛人マッチングサービス』を謳うデートクラブに登録していた」で、「週刊新潮」が「愛人クラブに登録していたのは、NHK室蘭放送局に勤める、清楚なロングヘアが印象的な女子アナウンサー(25)」と書いた。「週刊文春」の書き方では誰なのかを特定しにくいが、「週刊新潮」だと簡単に特定できてしまう。ここまで書いてしまうのならば、「週刊新潮」に実名報道するという選択肢はなかったのだろうか。これが「週刊新潮」的人権感覚なのかしらん。
http://moneytalk.tokyo/lifestyle/5883

参議院議員となった青山繁晴が「週刊文春」を公職選挙法違反で東京地検刑事告発したそうだ。
http://tocana.jp/2016/07/post_10327_entry.html

◎7月11日発売の「Number PLUS」はプロレスを特集しているが、表紙は2バージョン用意されている。中邑真輔版と新日本プロレス版だ。
https://twitter.com/bunshun_zasshi/status/752801615061487616

◎7月12日(火)に文春e-Books「週刊文春オリジナルコレクション」がリリースされた。昨年7月に刊行したプリントオンデマンド書籍の電子版である。価格は500円。
https://www.atpress.ne.jp/news/107553

小学館の「DIME」8月号の付録が絶賛されている。私も紹介した「BEAMS」と「DIME」がコラボしたジッパー型のイヤホンである。
http://getnews.jp/archives/1490363

◎ドイツの最大手書店チェーン「Thalia」がドイツのカトリック書籍出版社「Herder」に買収された。
https://hon.jp/news/1.0/0/8989

台北市の誠品書店で、マガジンハウス初の海外展覧会が7月15日〜31日まで開催される。16日には「ポパイ」の木下孝浩編集長によるトークショー&ワークショップが、23日には「アンドプレミアム」の芝崎信明編集長によるトークショー&ワークショップが企画されている。
https://www.esliteliving.com/life/event_detail.aspx?a=TW&l=b&flag=EA&class=13&no=201607040004
台湾でも、こんな風に話題になっている。
https://www.wowlavie.com/action/event.php?id=1757
http://www.styletc.com/archives/262377
http://www.setn.com/E/News.aspx?NewsID=163198

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3)【深夜の誌人語録】

やると決めたら楽しめ。やらないのであれば忘れろ。