【文徒】2016年(平成28)9月2日(第4巻165号・通巻852号)

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1)【記事】「Kindle Unlimited」の蹉跌
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.9.2.Shuppanjin

1)【記事】「Kindle Unlimited」の蹉跌

朝日新聞はアマゾンの「Kindle Unlimited」について次のように書いている。
「…サービス開始から1週間ほどで漫画やグラビア系の写真集など人気の高い本が読み放題サービスのラインアップから外れ始め、アマゾン側から『想定以上のダウンロードがあり、出版社に支払う予算が不足した』『このままではビジネスの継続が困難』などの説明があったとしている」
http://www.asahi.com/articles/ASJ8Y41XSJ8YUCVL00C.html
想定以上のダウンロードがあったということは、アマゾンの見込みが甘かったということにほかなるまい。「GIZMODO」の「Kindle本読み放題の「Kindle Unlimited」、人気作品が消える…」も読んでみよう。何故アマゾンが「このままではビジネスの継続が困難」としている理由がわかる。
「大きな期待と注目の中で日本ローンチしただけあって、品数や人気作品をそろえようとAmazonは奮闘。年内に限り、利用料を上乗せして支払うという契約を、一部の出版社と交わしていたといいます。が、フタをあけてみれば人気作品のダウンロード数が想定を大きく上回る事態に。利用者が多いのは嬉しいでしょうが、人気作品に読者が偏れば上乗せ支払いが苦しくなります」
http://www.gizmodo.jp/2016/08/kindle-unlimited-limited.html
iPhone Mania」は「Amazon電子書籍読み放題、読める本が減少!ユーザーと出版社に募る不信感」は、こう指摘している。
「出版社は、電子書籍を配信対象から外されることで、利用料が入らなくなるだけでなく、ランキング上位が読み放題の書籍で占められることでこれまで売れていた本が売れなくなった、と反発を強めています。
出版社によっては、現在提供している全作品の引き上げを通告したほか、提供内容を大幅に制限する出版社も出ているとのことです」
http://iphone-mania.jp/news-131724/
さて、この窮状をアマゾンはどう乗り切るつもりなのだろうか。

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2)【本日の一行情報】

◎グーグルは、全国の「サークル K・サンクス」で 3,000 円以上の「Google Play ギフトカード」を購入すると、講談社の電子コミックス第 1 巻を無料でプレゼントするキャンペーンを9月12日までの期間限定で実施している。
https://www.facebook.com/GooglePlayJapan/photos/a.866971580002460.1073741828.845545982145020/1317991381567142/?type=3&theater
http://getnews.jp/archives/1514163

◎「空気のつくり方」を幻冬舎から刊行した横浜DeNAベイスターズ池田純社長は博報堂出身である。E★エブリスタの代表取締役社長も経験している。
http://mainichi.jp/articles/20160831/ddl/k14/050/206000c

博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーの原田曜平がAbemaTVの報道番組「AbemaPrime」の放送100回記念「大反省会SP」で誰もがうすうす感じていたことをズバリ指摘している。
「…スマホっていうことで、若い人も狙っているはずなんですけど、意外とテレビ層とかぶってしまって、新しいメディアになりきれていないのではないかと。テレビ離れした層を意外とつかみ切れていないのではないかと思いますね」
https://abematimes.com/posts/1179497

◎プリントシール機で知られているフリューは、10〜30代女性に向けた美容系動画メディア「otehon」を、8月31日(水)にローンチ。
https://otehon.jp/
http://www.furyu.jp/news/2016/08/otehon.html
フリューはオムロンから生まれ、 マネジメントバイアウトにより、独立した会社であり、昨年12月東京証券取引所市場第一部へ株式を上場している。
http://www.furyu.jp/company/history.html
社長の田坂吉朗はエンジニア出身である。もともとオムロンは画像技術に定評があり、フリューもその遺伝子を引き継いでいる。「otehon」のような企画は、美容誌を擁する出版社のデジタルシフトによって、本来であれば生まれなければならなかった企画である。

◎「ミュージック・ブレス・ユー!!」で野間文芸新人賞受賞、「ポトスライムの舟」で芥川賞を受賞した津村記久子の「枕元の本棚」(実業之日本社)が面白かった。津村の「楽しい読書」の記録なんだけれど、津村は読者として本当に自由なんだよね。
http://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-53689-7

◎珍しく小説を読んでしまった。高部務の「新宿物語’70」(光文社)である。久しぶりに梶芽衣子の「野良猫ロック」シリーズを無性に見たくなった。70年代の新宿を闊歩したフーテンを描いている小説だ。
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334911089

オバマ大統領が「ワイアード」の今秋号で客員編集長を務めるそうだ。AFPは、こう報じている。
ワイアードのスコット・ダディッチ(Scott Dadich)編集長は『今日のテクノロジーがいかに政治指導者に影響を与えるのかを論じたい。このテーマの追求で手を借りるのにオバマ大統領に勝る人物はいない』と述べている」
http://www.afpbb.com/articles/-/3099213

◎ぴあはオードリー5年ぶりの新刊「オードリーの悪いようにはしませんよ。ゆるっと7年史」の重版を発売前に決めた。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000255.000011710.html

◎新聞19紙は31日付で、7月10日に投開票された参院選での投票行動について各紙の読者モニターを対象に実施した共同調査結果を発表した。これによれば参院選で「投票した」は86・1%にも及んだ。今回の投票率54・70%だから、それだけ新聞を読んでいない人が多いということでもある。
http://www.sankei.com/politics/news/160831/plt1608310004-n1.html

◎オプティムは、雑誌読み放題サービス「タブホ」について、学研グループのブックビヨンドからのコンテンツ供給を強化し、「ムー」や「声優アニメディア」など、合計4誌を新たに追加した。これにより、「タブホ」で楽しめるコンテンツは、読み放題サービス国内最大の510誌1,800冊以上となった。
https://www.optim.co.jp/wp-content/uploads/2016/08/20160831_unlimited_tab.pdf
http://www.netvivi.cc/

◎AMSの提供する統合 EC フルフィルメントサービス「EXREGZIO」(エグレジオ)は、ウェアハートが運営する女性月刊誌「ViVi」の公式通販サイト「NET ViVi CoordinateCollection」に採用され、8月31日にリニューアルオープンした。
https://ecnomikata.com/pr/detail.php?id=10817

博報堂DYデジタル、博報堂DYメディアパートナーズ、シナラシステムズジャパンは共同で、パートナー事業者が保有するビッグデータを活用したメディアサービスの開発を開始した。
http://www.hakuhodody-media.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2016/08/HDYmpnews20160831.pdf

元朝日新聞記者の井上久男は「拝啓 朝日新聞さま。ジャーナリズムを捨てるのですか?」(現代ビジネス)を次のように結んでいる。
「新聞は『瓦版』であり、権力の悪口を書き、タブーに切り込んでなんぼである。怖がられる存在だから、広告も集まる。そんな基本的なことを忘れてはならない」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49521
「怖がられる存在だから、広告も集まる」のは何も新聞に限ってのことではない。雑誌も同じである。「週刊文春」に広告が集まるのは、他の週刊誌に比べて怖がられているからだ。私たちにしてもそうだろう。ただし、私たちは「瓦版」ではない。「メディアクリティーク」を創刊した際に書いたように私たちは「ビラ」である。
そうそう「現代ビジネス」は、いつの間にかリニューアルしたんだね。

ピクシブKADOKAWAが共同制作するWEBコミック誌「ビーズログCHEEK」が8月31日(水)に創刊された。
https://www.value-press.com/pressrelease/168864

◎マタニティ・ファッションのセレクトショップ「VIRINA」の代表取締役社長・青木愛婦人画報社(現ハースト婦人画報社)で「トランタン」「ヴァンサンカン」「ヴァンテーヌ」「エルジャポン」で編集者をしていたそうである。
http://wotopi.jp/archives/40086

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3)【深夜の誌人語録】

考えて、考えて、考え抜くとは、歩いて、歩いて、歩き回ることである。