【文徒】2016年(平成28)10月12日(第4巻190号・通巻877号)

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1)【記事】異業種が出版物を売る時代がやって来た
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】異業種が出版物を売る時代がやって来た

書店の兼業化が進みつつある一方、異業種が出版物を取り扱う時代にもなりつつあるようだ。「ITmediaビジネス」の「本が売れない時代に本を置く異業種店が増えているのはなぜ?」は「最近の繁盛店には業種の垣根を超えてある共通項があることが分かりました。それは『本』です」という書き出しで始まっている。
この記事は、「無印良品 有楽町店」について次のように書いている。
「来店客が普段はそのまま通り過ぎてしまうところを、本があることで商品に気付いてもらえる効果もあるのです。来店客の回遊性を高め、関連購買を促し、結果として客単価を引き上げる役割を本が果たしていると言えます。私が店頭で見ているときも3人に1人くらいが本をきっかけに店内の商品へと誘導されていました。例えば、料理関係の本をきっかけに鍋を見るなど、関連購買へとつなげるフックになり、本が客単価アップの一因になっています」
記事は「ニコアンドトーキョー」にも触れている。
「アパレルと雑貨を扱う『ニコアンド(niko and…)が2014年秋、東京・原宿にオープンした旗艦店『ニコアンドトーキョー』には書籍コーナーがあります。
そこには作家・三島由紀夫の著書など約2000冊が並んでいます。同店はもともと衣料品に大胆に雑貨を加えることで成長してきた業態です。本を置くことによってその世界観にさらなる広がりが出ているように思います。『モノがあふれ、リアルな店舗では本当に必要なモノを見つけるのが難しい』(同社)ため、本があることで新しい発見をして購買につなげる効果があるのです」
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1610/06/news008.html
確かに生活者からすればファッションを扱うショップにファッション誌や関連本が置かれていることはプラスだろう。ともに売れる幸福な関係を構築できるのであれば、異業種が本を置くことを版元は歓迎するだろう。
しかし、ここで気をつけなければならないのは、異業種に出版物を販促ツールとして徹底的に利用された挙句の果てに返品されてしまうことである。こうした事態を招いてしまっては元も子もあるまい。版元にしても、取次にしてもそこは充分注意が必要である。

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2)【本日の一行情報】

ブランディング会社インターブランドは,グローバルのブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2016」を発表した。1位「Apple」、2位「Google」、3位「Coca-Cola」、4位「Microsoft」、5位「Toyota」、6位「IBM」、7位「Samsung」、8位「Amazon」、9位「Mercedes-Benz」、10位「GE」。
AppleGoogleが4年連続で1位と2位を占めた。アジアのブランドでは,Toyotaが過去最高位である第5位にランクインしたのを筆頭に,日本から6ブランド (Toyota , Honda , CanonNissanSonyPanasonic) ,韓国から 3 ブランド(Samsung,Hyundai,Kia),中国から2ブランド(HuaweiLenovo)がベスト100にランクインした。
https://www.interbrandjapan.com/ja/data/press-release/interbrand_bgb2016_release_5oct.pdf

実業之日本社は、2017年6月10日に創業120周年を迎えるが、実業之日本社文庫のマスコットキャラクター「ジッピィ」をカンパニーキャラクターに昇格させることにした。そこで、新たに愛称を募集することに決定した。賞金は3万円。
http://www.j-n.co.jp/columns/?article_id=384

◎「ユニクロUNIQLO)」はカリスマファッションエディター、カリーヌ・ロワトフェルドとコラボしたコレクション「カリーヌ・ロワトフェルド」の2016年秋冬コレクションを11月11日より発売する。
カリーヌはフランス版「ヴォーグ」の元編集長として知られている。また雑誌「CR Fashion Book」の発起人であり、現在は編集長を務めている。
http://www.afpbb.com/articles/-/3103432

ハースト婦人画報社の創刊65周年を迎えるラグジュアリ―住宅誌「モダンリビング」は、その記念号を10月7日(金)に特別定価650円にて販売した。
また「モダンリビング」は、住まいに関する世界最大のプラットフォーム「Houzz」(ハウズ)との連携を開始した。「Houzz」(http://www.houzz.jp)に「モダンリビング」のオフィシャルアカウントを開設し、インテリア事例を含め、身近な住まいづくりに関する情報を発信するそうだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000008128.html

文教堂の帳合変更について「2ちゃんねる」のスレッドを見ておこう。
http://echo.2ch.net/test/read.cgi/books/1413732556/964-n
取次会社の「生理」からすれば、トーハン文教堂分を取り戻す帳合変更を画策することになるのだろう。

◎日販は、6月に販売が開始された図書カードNEXTを活用したオリジナル図書カードを企画・販売するが、第1弾として、広島県内を中心にチェーン展開するフタバ図書の協力のもと、「広島東洋カープ2016年セントラル・リーグ優勝記念図書カード」の申込受付を開始している。
http://www.nippan.co.jp/news/card_carp_2016/

◎modeは、独立行政法人中小企業基盤整備機構九州本部と、タイアップ合同商談会・セミナーを10月20日(木)に中小機構九州本部1Fセミナールーム(博多)で実施するが、学研ホールディングス白泉社ディノス・セシール、バイオテクニカがメディア・コンテンツ企業として参加を予定しているそうだ。
https://www.atpress.ne.jp/news/113128

◎「ダイヤモンドオンライン」の「フジテレビのずさんさが露呈、豊洲の『傾く柱』問題」。フジテレビは10月2日に放送した「新報道2001」で、豊洲市場の加工パッケージ棟の4階フロアの柱が傾いているように見える写真を紹介したが、窪田順生によれば、フジテレビは裏を取ることなく報じたという。この件は「BuzzFeed Japan」も報じている。
「通常、外から情報が持ち込まれた場合、報道機関は『裏取り』という確認作業に入る。それを経て情報が誤りであればボツ。正しいのならば報じる、という流れが一般的だ。しかし、今回の報道ではどういうわけか、そういうプロセスがしっかりとなされていないのだ」
http://diamond.jp/articles/-/103828
https://www.buzzfeed.com/kensukeseya/fujitv-toyosu-problem?utm_term=.vu2Nv5NA18#.lpw0v10OQg
結局、問題となった柱は少しも傾いてはいなかった。「新報道2001」は10月9日の放送でキャスターが「一連の報道により、誤解を招いたことを真摯に受け止めます」とは述べたが謝罪はなかったそうだ。
https://www.buzzfeed.com/kensukeseya/fujitv-toyosu-verification1?utm_term=.dv68Qw8LbR#.xvpgl7gKk0

ツイッターの身売り先が今月中には決まるかもしれない。最有力候補はSalesforceらしい。
http://jp.reuters.com/article/twitter-m-a-idJPKCN1252ND
http://business.newsln.jp/news/201610060713590000.html

◎光文社の女性ファッション誌「CLASSY.」のオンラインサイト「CLASSY.ONLINE」がリニューアルを果たした。
http://classy-online.jp/?utm_source=pr_161006_1&utm_medium=pr_161006_1&utm_campaign=pr_161006_1
前よりは良くなっているとは思う。しかし、まだ「最低限」を実現したという水準だ。質量とも、まだまだ改善できるはずである。

明屋書店は東京ブッククラブから、熊本県で「金龍堂」の店名で展開している4店舗を11月に買収する。ともにトーハンの子会社である。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO08102650W6A001C1LA0000/

トーハンは、LINEと共同で、電子コミックサービス「LINEマンガ」と連動し、コミックの書店店頭試し読み企画キャンペーン第3弾を全国150書店で実施している。10月の大賞作品は白泉社の10作品である。
http://www.tohan.jp/news/20161005_835.html

トーハンは、店頭活性化プロジェクトの企画として、「ハリー・ポッター」とのコラボ企画を10月29日(土)〜12月25日(日)の期間に、過去最大規模となる全国1,300書店で展開する。
http://www.tohan.jp/news/20161007_836.html

セブン&アイ鳴り物入りでスタートさせた「オムニ7」だが、アイテム数が少な過ぎることが最大の欠点である。2018年には600万アイテムを実現するとしているが、アマゾンや楽天は1億以上も扱っているのだ。「Business Jouenal」の「セブン&アイの柱『オムニ7』、失敗か…アマゾンや楽天に圧倒的敗北、『閉鎖性』解消がカギ」を私は頷きながら読んだ。
「オムニセブンが成功するためには、どうすればよいのだろうか。最大の問題は、セブン&アイHD内で運営していることにある。グループ内でのビジネスにとどまっている限り、アマゾンや楽天を上回る顧客サービスや買物体験を提供することはできないだろう。取扱アイテム数の圧倒的な差は、選ぶ楽しさやワンストップショッピング性に影響し、顧客の利用意向や満足度を左右するからだ。
よって、セブン&アイHDというクローズドなサービスから、オープンなプラットフォーム型ECサイトへと転換することが必要だ」
http://biz-journal.jp/2016/10/post_16829_3.html

◎「BLOGOS」の「朝日新聞、不動産とM&Aで『売上3000億円めざす』 渡辺社長『ベンチャーの気概で新しい時代に対応したい』」を読むと朝日新聞を支えているのが不動産業だということがよくわかる。
「不動産業務室の宍道学室長によれば、朝日新聞が所有する不動産の数は全国で623にのぼる(本社・支社 5、印刷工場 12、編集局舎 168、ASA販売店舗 390、賃貸物件 48)。『小さいものもあるが、数でいえば日本のメディアで一番多いのではないか』」
「同社が不動産事業に注力するのは、利益率が高いためだ。朝日新聞グループ全体の連結営業利益は2015年度で121億円だが、そのうち不動産事業の利益が42億円と35%を占めている。売上に占める割合は4.5%にすぎないが、利益の面での貢献度は大きい」
http://blogos.com/article/193004/?p=1
新聞に限らず、大手出版社にしても紙のメディアを支えるには、不動産事業が不可欠なのである。いや、不動産に支えられるのは紙のメディアに限ってのことではあるまい。テレビにしてもそうだ。

◎「東洋経済オンライン」の「アマゾン読み放題、勝手に『20社削除』の衝撃」によれば、アマゾンが「Kindle Unlimited」から削除した出版社は講談社小学館、光文社、朝日新聞出版、三笠書房、東京書籍、白泉社芳文社フランス書院など20社に及んだそうだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/139256

朝日新聞社博報堂は9月20日新興国などから注目されている日本の教育手法を広める取り組みとして、小学校高学年が楽しみながら読める無料の学習誌「みっけ」をタイで創刊した。タイの大手出版社Amarin Printing & Publishing Public Co., Ltd.との共同事業として、まずバンコクを中心とした132校を対象に約10万部の無料配布を開始した。
http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2016/10/20161007-1.pdf

◎光文社の「美ST」は、「第7回 国民的美魔女コンテスト」最終選考会を今日「六本木ヒルズアリーナ」で開催する。
https://www.atpress.ne.jp/news/113631
「美魔女」のオールスター選抜ヌード写真集をつくったならば売れるだろうな。

◎日販による9月の店頭売上前年比調査によれば、書店店頭売上は前年同月比1.7%減。内訳は、雑誌1.5%減、書籍1.5%減、コミック3.9%減、開発品23.5%増。
http://ryutsuu.biz/sales/i100620.html

◎オプティムは、雑誌読み放題サービス「タブホ」へのコンテンツ提供について、扶桑社と業務提携を行い、「週刊SPA!」を追加した。「タブホ」は読み放題サービスとしては国内最大の 532誌1,800 冊以上を擁する。
https://www.optim.co.jp/wp-content/uploads/2016/10/20161007_unlimited_tab.pdf

読売広告社とフレイ・スリーは、地方自治体向けに地域への観光促進と地域振興を推進するプログラム「1ROLL for Business・Local Edition」の提供を開始した。
http://www.yomiko.co.jp/news/item/old/pdf/20161006.pdf

トーハンは、10月12日より、東京会場を皮切りに、全国の8会場で「図書館ブックフェア2016 総合図書展示会」を開催している。
http://www.tohan.jp/news/20161005_834.html

集英社の女性ファッション誌「BAILA」11月号の付録は「セルジオ ロッシ トートバッグ」だ。
https://baila.hpplus.jp/fashion/f_matome/6468

朝日新聞出版が業務委託の週刊誌記者と編集者を募集している。
http://publications.asahi.com/company/topics/news/161007_1.html

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3)【深夜の誌人語録】

小事が大事であることもあれば、大事が小事であることもある。大事に備えることも大切だが、小事を疎かにしてはなるまい。