【文徒】2016年(平成28)9月20日(第4巻176号・通巻863号)

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1)【記事】やはり 「Kindle Unlimited」は独立作家たちには「福音」か? 鈴木みその最新報告
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】やはり 「Kindle Unlimited」は独立作家たちには「福音」か? 鈴木みその最新報告(岩本太郎)

かつて2013年に「KDPで1000万円以上稼いだ男」と呼ばれた漫画家の鈴木みそが、「Kindle Unlimited(KU)」の日本におけるサービス開始から1ヵ月半が経過した去る16日、自ら前日にアマゾンから送られてきたデータをもとに「鈴木みそは『アマゾン読み放題』で儲かったのか!? 金額発表!」をブログで公開した。
http://www.misokichi.com/chinge/2016/09/post-295.html
もともとKUが始まって3日後に「読まれているけど、お金にならない!」としてKUに契約解除を申し入れつつ公表した(実際には先方から「向こう3カ月間は解除できない」と言われて頓挫したとか)という鈴木だが、その後の推移を踏まえながら見解を改めたところも多々あったようだ。ブログの記事ではアマゾンから送られてきたデータのグラフをもとに逐一検証した結果を披露している。
《「アマゾンやめる」ツイートをきっかけにして、話題になったおかげか、4日目から青いグラフがポンと伸びまして、5日目に15万ページになりました。
1ページあたり0.5円なので、日に7万円ちょっと売れてます。すごいね。
その後もペースはあまり変わらず、お盆前後のお休み期間は読まれていたようです》
最終的に8月一ヵ月の総額は1,410,445円となったそうだ。
《141万円ですよ。これに販売金額をあわせたものが振込金額になります。すげえ。
8月は無料お試し期間だったので、すごい数の本が読まれて、Amazonが悲鳴を上げて出版社との契約を変えてしまい、それによって撤退したところもかなりの数になっていると聞きます。
では9月は読まれた頁が激減しているのでしょうか。はいこれが今月のデータです》
《大手の出版社がいなくなり、競争相手が減っていることが影響しているのかもしれません。
KDPで1千万円売れた14年は、話題になった最初の月と2ヶ月目で600万円と6割を稼ぎ出し、後ろがどんどんしぼんでいったという経緯でした(笑)
今回はもしかしてじわじわ長いこと読まれ続けるんではないかと期待してます。
KindleUnlimited、いいですよ!
いけますよ!
やっぱりAmazonですよ!(手のひら返し)
Unlimitedで一番大事なのは、次の頁をめくらせる力です。次の単行本を読んでみよう、と思わせる作品であること。
実は販売よりもレンタルの方が、作品の真価を問われるのかもしれないですね。
おおー怖わー》
鈴木はエロ漫画作者の同人サークルIronSugarがブログで発表した「Kindle Unlimitedに参加したら月296万円稼いだ話」を紹介している。こちらはこんな具合だ。
《サークルIronSugarは普段は主にDMM同人でエロ作品をリリースして生計を立てているんですが、ここにきて「kindle unlimited」という過去作品を活用できる素晴らしいシステムが登場してくれたので、今後は作品をどのように公開していくか模索しながら活用して行こうと考えています。
ただ、先月からサービスの変更などゴタゴタがあって、アンリミユーザーが少し離れてしまっている感じはしています。日々のkenpcもちょっと下降の傾向が見えているので、今後の発展に期待したいです。
個人的にはエロ同人作品が増えればユーザーも増えると思っています。アマゾンにはエロ同人作家をもっと受け入れやすくする体制を整えて欲しい!
kindle unlimitedに求められているのはエロです!》
http://ironsugar.hatenablog.jp/entry/2016/09/16/023959
したたかな独立作家たちはKUに対して、自分に最も合った付き合い方を早くも体得しつつあるのかもしれない。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎NHKニュースの貧困報道について報じた『ビジネスジャーナル』記事のコメント捏造問題(NHKに取材しないまま「NHKのコメント」を捏造のうえ掲載)について、同誌発行元であるサイゾーの揖斐憲社長が毎日新聞の取材に応じた。サイゾー側は今回の問題を受けて同誌の石崎肇一編集長を更迭する方針を示したほか、NHKには「高校生に直接謝罪したい」とも伝えているそうだ。
《揖斐氏によると、編集長ら社員3人が30人程度の外部執筆者の原稿を受け取り、1日10本程度の記事を配信してきた。「記事量とチェック体制のバランスが欠けていた。コストをかけずにPVを稼ぐため、記事本数で賄おうとする無料ネットメディアの構造的問題もある」と話した。
記事を書いた20代男性は昨年秋にサイゾーと契約し7本程度の記事に携わったが、内部調査で他の記事に問題は見つかっていないという。揖斐氏は男性について「契約前に取材や記事執筆の経験はなかったが、コメントを捏造するとは疑っていなかった」と語った》
http://mainichi.jp/articles/20160919/k00/00e/040/154000c

◎10月2日に新聞の「押し紙」問題についての全国集会「新聞ジャーナリズムの正義と『押し紙』政策は共存できるのか?」が都内の板橋文化会館で開催される。この問題を追い続けてきたジャーナリストで、当日は司会を務める黒藪哲哉によれば「『押し紙』政策は失策と考えている人々が、思想信条の違いを超えて、集まる」集会とのこと。パネルディスカッションの登壇者には江上武幸(弁護士)、小坪慎也(行橋市議)、天木直人(評論家)を予定。
http://www.kokusyo.jp/oshigami/10359/

文教堂の日販傘下入りについて『東洋経済』がレポート。日販から見れば、同社が2012年より始めた文具売り場パッケージ「Sta×2(スタスタ)」の新たな販路として文具・雑貨に力を入れてきた文教堂の存在に期待が持てるのではないか、などと指摘している。
http://toyokeizai.net/articles/-/136488

◎『こちら葛飾区亀有公園前派出所』のコミックス第200巻と、連載最終回を掲載した『少年ジャンプ』が発売された17日は、「こち亀」の舞台・亀有を中心に完結を祝う一大ムーブメントが展開されたらしい。まず亀有ではコミックス第200巻と『ジャンプ』最新号が完売した書店が続出。
http://this.kiji.is/149820968487190533
ファンが書店に続々と押しかける様子はNHKニュースでも報じられた。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160917/k10010690221000.html
最寄りのJR亀有駅では、コミックス全200巻の200巻すべての表紙・背表紙の絵柄で駅構内の通路床面や壁面、階段、エスカレーターなどを飾りつくす「駅ジャック」が行われた。
http://www.oricon.co.jp/news/2078542/full/
最終回を告げる新聞広告もネット上で話題を呼んだ。
http://togetter.com/li/1025495

◎フジテレビの執行役員兼局長(元「月9」プロデューサー)によるパワハラが原因で、同局では1年間で30代の男女社員計2人(障害者枠での採用者らしい)が休職に追い込まれたという。
http://news.livedoor.com/article/detail/12031036/

◎3年前に原発問題についての映画を自主制作をしたことなどからNHKを辞めることになったジャーナリストの堀潤が『日経ビジネス』のインタビューに応じ、「僕がNHKを辞めた本当の理由」と表題(もっとも表題にそう銘打たれている割には、そこにはあまり深く言及されていないが)のもと、NHKを含めた放送界の現状について語った。以下、こんな見解も。
《この間、高市早苗総務相が電波を止める可能性があるという趣旨の発言をした際、ジャーナリストが一斉に反発しました。メディアが国にモノを申すというのは日本のテレビ局に欠けていた部分なので、歓迎すべき話ではあるのですが、僕はイマイチそれに乗れなかった。
と言うのは、テレビ局は電波を特別に使っていいと認められている側にいます。そんな利権を謳歌しながら国に対して権利を奪わないでと言うのに違和感があった。海外では電波は開放され、みんなが使えるものになっています。そういう観点から見れば、ひょっとしてつまらない放送局は潰れた方がいいのではないかとちらっと思いましたよ》
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/090800067/091300002/?n_cid=nbpnbo_fbbn&rt=nocnt

オーストリアに住む18歳の女性が、幼少期に撮られた写真(彼女にとっては恥ずかしい絵柄のものらしい)をFacebookに何百枚も載せた両親に削除を要求したものの拒まれたとして、親子間での法廷闘争に発展しているらしい。
http://news.ameba.jp/20160916-1131/

◎NHKでまもなく最終回を迎える『とと姉ちゃん』のストーリー展開について、少し古くなるが『暮しの手帖』が今月Facebookの公式アカウント上でこんなふうに言及していた。
《現在ドラマでは、あるメーカーと『あなたの暮し』が対立関係として描かれています。
自社製品の評価が低いことに激怒したメーカーの社長から、常子たちは数々の嫌がらせを受けます。
一方、実際の商品テストでは、大手メーカーはテストの結果を前向きに捉え、性能の改善へ?げることが多かったそうです。こうしたメーカーの努力の甲斐もあり、メイドインジャパンの製品の質は次第に向上していきました。
商品テストの当時の誌面やエピソード、編集長・花森のメッセージは、現在発売中の別冊『「暮しの手帖」初代編集長 花森安治』にも掲載しております。ぜひご覧ください。(担当:平田)》
https://www.facebook.com/kurashinotecho/posts/1226264847423676
以上のほかに、同誌編集長の澤田康彦が先にネットメディアで行ったという発言や、同誌OBの小榑雅章が『週刊朝日』9月23日号で行った以下の「告発」も引き合いにしながら、『リテラ』が「朝ドラ『とと姉ちゃん』を、本家「暮しの手帖」が痛烈批判! 花森安治の反権力精神を描かないのは冒涜だ」と題した以下の記事を載せているが、そこからそういう結論に持っていくのはいくらなんでも牽強付会に過ぎるだろう。
http://lite-ra.com/2016/09/post-2566.html
ちなみに先月も、『とと姉ちゃん』が高視聴率である一方、NHK内部の「視聴者対応月次報告」4月号では視聴者から寄せられた反響の内訳が「厳しい意見が好評意見の3倍を超えました」と紹介する以下の記事が出ていた。
http://www.news-postseven.com/archives/20160820_440176.html

◎登録できる「友達」は15名までという、”世界最小”を謳うソーシャルメディア「Camarilla」が誕生。
現在、日本を含む130カ国以上でAndroidアプリとiOS対応アプリとしてリリースされている。
Instagramのように、ユーザーが投稿する画像に他のユーザーがコメントを書き込む仕組みとなっているが、それぞれのコメントは、画像を投稿したユーザーとコメントを書き込んだユーザーしか閲覧できないのも特徴。旅先での思い出や日常の生活ぶりを伝える写真など、様々な画像をベースに、家族や親しい友人といった限られた人々と、一対一で有意義にコミュニケーションすることを想定している》
http://getnews.jp/archives/1520999

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3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

たわいもないおしゃべりの中から新たな発想が生まれる。しかし、絶えず緊張感も持たねば萌芽を見逃すことになる。